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リューシャ編
42話
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「打ち消し合うだけじゃない?どう言うことだ?」
ミストは、自分の直属部隊の中でも珍しい、いや、唯一ただ1人、皇子に対して敬語を使わない者だった。ただし、敬語を使わない代わりに皇子に対する忠誠心は驚くほど強かった。その頃からミストは闇の魔法を扱っており、ルクトはそんなミストによく闇の魔法の知識等をこっそり教えていたのだった。
「普通は、光と闇の魔法の比率が同じくらいでぶつかり合うと光と闇は互いに打ち消し合う。だが、どちらか片方の比率がその片方の倍以上強い場合、比率が強いほうが、弱い方を一部ながらでも飲み込んでしまうんだ。」
「…それは、妾の魔法と皇子の魔法を普通にぶつけ合わせれば打ち消し合うが、妾か皇子のどちらかの魔法の威力が格段に強ければその相手の魔法は飲み込まれると言うのか?」
ミストの問いかけにルクトは頷く。
「完全に全部飲み込むのは互いの魔法の性質上無理だがな。まあ、この知識はあまり必要ないと思うけどな。僕とミストが戦うなんてことは無いだろうし。」
「はははっ!妾と皇子が戦うなんて、妾の惨敗で終わるだろうな!」
ミストはそう笑って言った。
″…確かにあの時、この知識はあまり必要ないとは言ったが、本当に綺麗さっぱり忘れているなんてことは無い筈だけどな…″
敵なら、忘れているのは嬉しい限りだが、わざわざ忙しかった時間を割いて教えたことを忘れられているのは少し寂しい気もする。だが、そうも言っていられない。
″今、この時が…またとないチャンス…か″
ルクトはこのチャンスを逃すまいと、地面に手をついた。
「【シャイニング・アロー】!」
床の中に向かって、ルクトは光を放つ。すると床の小さな間から漏れる光が、鋭い矢となってミストの足下から放たれた。
「っ?!【ダークネス・フロア】!」
ミストは一部、ルクトの矢を受けたようだが、床全体に闇を放ち攻撃を相殺した。
「そっちから仕掛けてくるとは…何か気が変わりでもしたか?」
ミストのその言葉にルクトは笑う。
「いや…僕にとってとても大切なものを思い出しただけだ。」
「大切なもの…?前皇女のことか?」
「…っ!」
何気なしに言ったその言葉にルクトは過剰なほどに反応を示し、顔を下に俯けると、呟くようにミストに言った。
「…あいつのことは…今は、思い出させないでくれ…僕は、あいつの全部を知っている…どこにいるかまでは知らないが…な」
どこか後悔の滲むようなルクトのその言葉に、いくら今は敵同士と言えるミストでも心配せずにはいられなかった。前、神の皇子と皇女。この2人のことはよく知っているからこそ、ルクトが何に後悔しているかは察することができ、そうなることを想定できなかった自分にも、少しばかり後悔の気持ちがよぎった。
″…すまない…余計なことを言ってしまったな…″
しかしルクトはすぐに顔をあげて言った。
「…なんてな。それこそ今はそんな後悔をするときじゃない。ミストと僕の、運命の導いた戦いなんだからな。」
ルクトはそう言い、戦う体勢になる。
「妾にとっても、この戦いはプライドに関わる。負けたくなど無い。」
ルクトが元の調子に戻ったのを見た感じで確認して、ミストも戦う体勢に入った。すると、唐突にルクトがミストに問いかけた。
「…ミスト。覚えてるか?昔、お前と話していて僕との戦闘の話になったとき、お前は笑って自分の惨敗で終わるだろうと言った。…僕は自分の力を過大評価するつもりはないが、その答えは自分自身で出せた。」
ルクトは眩しいくらいに光を、握る己の右拳に纏わせる。
「魔力無しの全力でも、僕の……圧勝だ。」
自身ありげに笑うルクト。
「今までは本気でなかったということか…面白い。妾もあの時より強くなった。お主のお陰でな。お主の魔力なしの全力であったとしても、今の妾はお主の光を飲み込める自信はあるぞ。」
ミストがルクトに対抗するように闇を纏わせる。ただルクトはミストの言葉に反応を示した。
「覚えてたのか?すっかり忘れてると思ってたんだけどな。」
「お主の昔の話で思い出した。まさか、あの時はこんなことになるとは思いもしなかったな。」
「そうだな。…さて、どうする?ミスト。僕はこのままお前の闇を全て光で飲み込む。それに、勝てるのか?」
ミストは怪訝そうにルクトを見やる。
「何度も言わせるな。今の妾でもお主の光を飲み込める自信はあると言っただろう。」
「だったら、光と闇をここでぶつけ合うか?」
「それ以外の何があると言う?妾は、スヴール様のため、全力を尽くす。お主と対等の条件で魔法をぶつけ合い、妾は勝つ!」
「…望むところだ。ミスト。」
ルクトとミストはそれぞれ、手に極光と黒闇を宿し、お互いの方へと向けた。
ミストは、自分の直属部隊の中でも珍しい、いや、唯一ただ1人、皇子に対して敬語を使わない者だった。ただし、敬語を使わない代わりに皇子に対する忠誠心は驚くほど強かった。その頃からミストは闇の魔法を扱っており、ルクトはそんなミストによく闇の魔法の知識等をこっそり教えていたのだった。
「普通は、光と闇の魔法の比率が同じくらいでぶつかり合うと光と闇は互いに打ち消し合う。だが、どちらか片方の比率がその片方の倍以上強い場合、比率が強いほうが、弱い方を一部ながらでも飲み込んでしまうんだ。」
「…それは、妾の魔法と皇子の魔法を普通にぶつけ合わせれば打ち消し合うが、妾か皇子のどちらかの魔法の威力が格段に強ければその相手の魔法は飲み込まれると言うのか?」
ミストの問いかけにルクトは頷く。
「完全に全部飲み込むのは互いの魔法の性質上無理だがな。まあ、この知識はあまり必要ないと思うけどな。僕とミストが戦うなんてことは無いだろうし。」
「はははっ!妾と皇子が戦うなんて、妾の惨敗で終わるだろうな!」
ミストはそう笑って言った。
″…確かにあの時、この知識はあまり必要ないとは言ったが、本当に綺麗さっぱり忘れているなんてことは無い筈だけどな…″
敵なら、忘れているのは嬉しい限りだが、わざわざ忙しかった時間を割いて教えたことを忘れられているのは少し寂しい気もする。だが、そうも言っていられない。
″今、この時が…またとないチャンス…か″
ルクトはこのチャンスを逃すまいと、地面に手をついた。
「【シャイニング・アロー】!」
床の中に向かって、ルクトは光を放つ。すると床の小さな間から漏れる光が、鋭い矢となってミストの足下から放たれた。
「っ?!【ダークネス・フロア】!」
ミストは一部、ルクトの矢を受けたようだが、床全体に闇を放ち攻撃を相殺した。
「そっちから仕掛けてくるとは…何か気が変わりでもしたか?」
ミストのその言葉にルクトは笑う。
「いや…僕にとってとても大切なものを思い出しただけだ。」
「大切なもの…?前皇女のことか?」
「…っ!」
何気なしに言ったその言葉にルクトは過剰なほどに反応を示し、顔を下に俯けると、呟くようにミストに言った。
「…あいつのことは…今は、思い出させないでくれ…僕は、あいつの全部を知っている…どこにいるかまでは知らないが…な」
どこか後悔の滲むようなルクトのその言葉に、いくら今は敵同士と言えるミストでも心配せずにはいられなかった。前、神の皇子と皇女。この2人のことはよく知っているからこそ、ルクトが何に後悔しているかは察することができ、そうなることを想定できなかった自分にも、少しばかり後悔の気持ちがよぎった。
″…すまない…余計なことを言ってしまったな…″
しかしルクトはすぐに顔をあげて言った。
「…なんてな。それこそ今はそんな後悔をするときじゃない。ミストと僕の、運命の導いた戦いなんだからな。」
ルクトはそう言い、戦う体勢になる。
「妾にとっても、この戦いはプライドに関わる。負けたくなど無い。」
ルクトが元の調子に戻ったのを見た感じで確認して、ミストも戦う体勢に入った。すると、唐突にルクトがミストに問いかけた。
「…ミスト。覚えてるか?昔、お前と話していて僕との戦闘の話になったとき、お前は笑って自分の惨敗で終わるだろうと言った。…僕は自分の力を過大評価するつもりはないが、その答えは自分自身で出せた。」
ルクトは眩しいくらいに光を、握る己の右拳に纏わせる。
「魔力無しの全力でも、僕の……圧勝だ。」
自身ありげに笑うルクト。
「今までは本気でなかったということか…面白い。妾もあの時より強くなった。お主のお陰でな。お主の魔力なしの全力であったとしても、今の妾はお主の光を飲み込める自信はあるぞ。」
ミストがルクトに対抗するように闇を纏わせる。ただルクトはミストの言葉に反応を示した。
「覚えてたのか?すっかり忘れてると思ってたんだけどな。」
「お主の昔の話で思い出した。まさか、あの時はこんなことになるとは思いもしなかったな。」
「そうだな。…さて、どうする?ミスト。僕はこのままお前の闇を全て光で飲み込む。それに、勝てるのか?」
ミストは怪訝そうにルクトを見やる。
「何度も言わせるな。今の妾でもお主の光を飲み込める自信はあると言っただろう。」
「だったら、光と闇をここでぶつけ合うか?」
「それ以外の何があると言う?妾は、スヴール様のため、全力を尽くす。お主と対等の条件で魔法をぶつけ合い、妾は勝つ!」
「…望むところだ。ミスト。」
ルクトとミストはそれぞれ、手に極光と黒闇を宿し、お互いの方へと向けた。
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