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リューシャ編
44話
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黒闇と極光はぶつかり合い、先と同じように打ち消され合うが、先と違っているところは黒闇と極光の威力がぶつかり合う度に強くなっていること。
「…そろそろ諦めたらどうだ?ミスト。」
「お主こそ、もう折れれば良いのではないか?」
顔は笑っていようとも、目は互いを睨み合う2人は、何度も闇と光をぶつけ合い、互いに打ち消され合う度に威力を上げて再び魔法同士をぶつけ合う。
「本当に勝てると思ってるのか怪しいところだな?ミスト。」
「そっちも、自分が圧勝できるからと調子に乗ってはいまいな?」
「僕の読みに違いはないと思うけどな?」
ルクトは手から光を放ち、ミストはそれを闇で打ち消す。しかし、ミストは今現時点ではそこそこ苦しい状況に陥っていた。やはりルクトと同条件では力の差が少なからずあり、ミストはルクトよりも劣ってしまっているのだ。だが、そんなことで諦めるなんてことは出来ない。ルクトが皇子の座を降り、突然放り出されてしまったような状態で困っていたところをスヴールが拾ってくれたお陰で、自分は今ここに立って戦っていられるのだ。その恩に報いずにのこのこ負けているようではスヴールの部下として示しがつかない。
「妾は、負けるわけにはいかぬのだ…決して…」
「そんなに、スヴールに忠誠を誓ってるのか。さすがだな、ミスト。」
「これくらいの忠誠心は、常識の範疇だと思うがな?」
また、威力の上がった魔法同士をぶつけ合った。ミストは魔力を使うか使わまいかほんの少しだけ迷っていた。ルクトと同条件で戦うと宣言した以上、その宣言に嘘をつくことは出来ない。したくない。それは己のプライドが許さない。ただ、このままでは絶対的に勝てないのは明白だった。プライドか忠誠か。ミストがどちらをとるか。それもまた明白だろう。
「…スヴール様の為、どんな手を使ってでも勝とう。」
ミストはルクトに気づかれないようにそう呟き、意識を魔法を放って打ち消しながら器用に集中させる。魔力を発動させたのはもうルクトも気づいているはずだ。しかしもう遅いだろう。こちらは既に魔力を発動させ、魔法を放ったのだから。
「【ダーク・エンド】!」
勝ったと思った。ルクトの放った光をミストの闇が飲み込んだから。闇は光を押しきってルクトの方へと向かっていった。まさかルクトがそこに居なかった事などまるで想定していなかった。
「【シャイニング・アロー】」
「っ?!」
その言葉が下から聞こえた瞬間、ミストはとっさに後ろへ飛び退いた。そのお陰か攻撃は当たらずに済んだが、ミストは青ざめていた。なぜなら、あの一瞬でミストの懐まで動くのはいくら光の属性魔法使いのルクトでも不可能だから。もし、この今の状況が作れるとするならば、それは完璧にこちらがこのタイミングで魔力を発動し、魔法を使うことを予測していなければ出来ない。ミストは魔力発動時に気づかれたかと思ったが、それでも間に合わない。だから自分が魔力を発動するかなり前から予測していたのだと言う結論に辿り着き、驚いていた。
「妾のこの攻撃を予測していたと言うのか…?」
「そりゃあな。お前のことだから、自分のプライドと忠誠心をはかりにかけて迷わず忠誠心をとり、魔力攻撃をしてくるとは思ってたよ。」
ルクトはそう笑うが、普通そこまで予測できるものなのだろうか。自分が魔力を発動させることには気づけたとしても、いつ発動させるかまで予測するなど、そんなことが出来る者がいるのだろうか。いや、この男ルクトなら恐らく出来るだろう。彼は相手の考えていることを表情で読み取ってしまうような奴だ。こちらの動きの初動を少しだけでも見て確認し、動いたに違いない。
「つくづく、そう易々と勝てない相手だと実感するな…だが、負けぬ。妾はスヴール様へ恩を報いなければならぬのだ。」
「忠誠心が健気なことだな。でもな、ミスト。」
ルクトはミストをまっすぐに見つめると、真剣な目で言葉を続ける。
「それだけ忠誠心が強いのは良いことだと思うが、誰でもかれでも、助けてくれただけで強い忠誠心を抱くのは不用心すぎると僕は思う。ちょっとでも、警戒心は抱いた方がいい。使い勝手の良い奴だと思われるぞ。」
「それでも良い。助けて貰ったくせに礼の1つも出来ないなど妾にとっては恥だ。それに妾はスヴール様の部下。忠誠心を抱くのは当然のことだろう」
そんなミストの返事に小さくため息をつきかけるが、どうにかそれを押さえて呟いた。
「まあ、それもそうか…」
ルクトはおもむろに右手を前に伸ばして光を放った。一帯が眩い光に包まれ、ミストはそれを相殺しようと闇を放った。闇と光がぶつかり合って打ち消し合って消える。その瞬間、ミストの目の前にはルクトが迫っていた。
「?!」
「残念だったな、ミスト。【シャイング・ヴィリオレンス】」
また一帯が光に包まれた。光がやんだとき、ミストはその場に倒れていた。しかし意識はあるようで悔しげに呟く。
「…勝てなかった…スヴール様の為に、妾は…」
「あんまり、忠誠心を優先しすぎると自滅しかねないと思うけどな。」
「忠誠心より大切なものは無い。妾は、次こそはお主に勝つ…」
「僕は次会えたときは敵同士じゃないことを祈るよ。…昨日の敵は今日の味方とか言うしな」
ルクトはそう笑ってミストに言うと、ミストがまだ何かを言おうとしていることに気づいていながらその場から立ち去った。
「…リリエ、スカイ…」
今ごろ、リリエとスカイはどうなっているのか、それは分からない。が、相手は少なくともスヴールであることは間違いないだろう。スヴールの魔法の実力は高い。スカイであっても苦戦しているはず。
「加勢に行かないとな…!」
ルクトは急いで駆け出した。
「…そろそろ諦めたらどうだ?ミスト。」
「お主こそ、もう折れれば良いのではないか?」
顔は笑っていようとも、目は互いを睨み合う2人は、何度も闇と光をぶつけ合い、互いに打ち消され合う度に威力を上げて再び魔法同士をぶつけ合う。
「本当に勝てると思ってるのか怪しいところだな?ミスト。」
「そっちも、自分が圧勝できるからと調子に乗ってはいまいな?」
「僕の読みに違いはないと思うけどな?」
ルクトは手から光を放ち、ミストはそれを闇で打ち消す。しかし、ミストは今現時点ではそこそこ苦しい状況に陥っていた。やはりルクトと同条件では力の差が少なからずあり、ミストはルクトよりも劣ってしまっているのだ。だが、そんなことで諦めるなんてことは出来ない。ルクトが皇子の座を降り、突然放り出されてしまったような状態で困っていたところをスヴールが拾ってくれたお陰で、自分は今ここに立って戦っていられるのだ。その恩に報いずにのこのこ負けているようではスヴールの部下として示しがつかない。
「妾は、負けるわけにはいかぬのだ…決して…」
「そんなに、スヴールに忠誠を誓ってるのか。さすがだな、ミスト。」
「これくらいの忠誠心は、常識の範疇だと思うがな?」
また、威力の上がった魔法同士をぶつけ合った。ミストは魔力を使うか使わまいかほんの少しだけ迷っていた。ルクトと同条件で戦うと宣言した以上、その宣言に嘘をつくことは出来ない。したくない。それは己のプライドが許さない。ただ、このままでは絶対的に勝てないのは明白だった。プライドか忠誠か。ミストがどちらをとるか。それもまた明白だろう。
「…スヴール様の為、どんな手を使ってでも勝とう。」
ミストはルクトに気づかれないようにそう呟き、意識を魔法を放って打ち消しながら器用に集中させる。魔力を発動させたのはもうルクトも気づいているはずだ。しかしもう遅いだろう。こちらは既に魔力を発動させ、魔法を放ったのだから。
「【ダーク・エンド】!」
勝ったと思った。ルクトの放った光をミストの闇が飲み込んだから。闇は光を押しきってルクトの方へと向かっていった。まさかルクトがそこに居なかった事などまるで想定していなかった。
「【シャイニング・アロー】」
「っ?!」
その言葉が下から聞こえた瞬間、ミストはとっさに後ろへ飛び退いた。そのお陰か攻撃は当たらずに済んだが、ミストは青ざめていた。なぜなら、あの一瞬でミストの懐まで動くのはいくら光の属性魔法使いのルクトでも不可能だから。もし、この今の状況が作れるとするならば、それは完璧にこちらがこのタイミングで魔力を発動し、魔法を使うことを予測していなければ出来ない。ミストは魔力発動時に気づかれたかと思ったが、それでも間に合わない。だから自分が魔力を発動するかなり前から予測していたのだと言う結論に辿り着き、驚いていた。
「妾のこの攻撃を予測していたと言うのか…?」
「そりゃあな。お前のことだから、自分のプライドと忠誠心をはかりにかけて迷わず忠誠心をとり、魔力攻撃をしてくるとは思ってたよ。」
ルクトはそう笑うが、普通そこまで予測できるものなのだろうか。自分が魔力を発動させることには気づけたとしても、いつ発動させるかまで予測するなど、そんなことが出来る者がいるのだろうか。いや、この男ルクトなら恐らく出来るだろう。彼は相手の考えていることを表情で読み取ってしまうような奴だ。こちらの動きの初動を少しだけでも見て確認し、動いたに違いない。
「つくづく、そう易々と勝てない相手だと実感するな…だが、負けぬ。妾はスヴール様へ恩を報いなければならぬのだ。」
「忠誠心が健気なことだな。でもな、ミスト。」
ルクトはミストをまっすぐに見つめると、真剣な目で言葉を続ける。
「それだけ忠誠心が強いのは良いことだと思うが、誰でもかれでも、助けてくれただけで強い忠誠心を抱くのは不用心すぎると僕は思う。ちょっとでも、警戒心は抱いた方がいい。使い勝手の良い奴だと思われるぞ。」
「それでも良い。助けて貰ったくせに礼の1つも出来ないなど妾にとっては恥だ。それに妾はスヴール様の部下。忠誠心を抱くのは当然のことだろう」
そんなミストの返事に小さくため息をつきかけるが、どうにかそれを押さえて呟いた。
「まあ、それもそうか…」
ルクトはおもむろに右手を前に伸ばして光を放った。一帯が眩い光に包まれ、ミストはそれを相殺しようと闇を放った。闇と光がぶつかり合って打ち消し合って消える。その瞬間、ミストの目の前にはルクトが迫っていた。
「?!」
「残念だったな、ミスト。【シャイング・ヴィリオレンス】」
また一帯が光に包まれた。光がやんだとき、ミストはその場に倒れていた。しかし意識はあるようで悔しげに呟く。
「…勝てなかった…スヴール様の為に、妾は…」
「あんまり、忠誠心を優先しすぎると自滅しかねないと思うけどな。」
「忠誠心より大切なものは無い。妾は、次こそはお主に勝つ…」
「僕は次会えたときは敵同士じゃないことを祈るよ。…昨日の敵は今日の味方とか言うしな」
ルクトはそう笑ってミストに言うと、ミストがまだ何かを言おうとしていることに気づいていながらその場から立ち去った。
「…リリエ、スカイ…」
今ごろ、リリエとスカイはどうなっているのか、それは分からない。が、相手は少なくともスヴールであることは間違いないだろう。スヴールの魔法の実力は高い。スカイであっても苦戦しているはず。
「加勢に行かないとな…!」
ルクトは急いで駆け出した。
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