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リューシャ編
54話
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「私としても、リリエには少しでも緊張をほぐしてもらいたいから」
セレナの微笑みに返ってきた申し訳なさそうな笑み。緊張せずとも気軽に話してくれれば良いのにと思いながらもセレナは言葉を続けた。
「緊張しなくても、話の内容に集中してくれて良いからね?…属性魔法は強力なのは知っていると思うのだけれど、それらが強力な理由は、属性魔法に部類される魔法の特性にあるの。」
「魔法の特性で、ですか?」
リリエの問いかけに頷くと、セレナは言葉を続ける。
「属性魔法に部類される魔法は、そのまま置いておけば消えてなくなり、容易には触れられないもの…例えば、スカイの氷は、置いておけば溶けて消えてしまうでしょう?それに下手に触れば余計に溶けてしまう。リリエの扱う元素の風、火、水、土だってそう。土は少し強引な考え方になってしまうけれど、置いておけば崩れたり地面に還ったりしてしまう。すぐに無くなってしまい、容易には触れられないが故に、その形が具現化されている間は強力な力を発するの。」
限られた間の力だから、強くなる。そして強いから何個も何個も覚えられはしない。なのにそんな魔法を元素という一括りで扱えてしまう自分が、道理に従っていないことに少しの不安を覚えた。
リリエがそんな不安を覚えていることに気付いたのか、偶然それを話しようとしていたのか、セレナは呟くように言った。
「恐らく、4つもの属性魔法を覚えた上で、何の異常も無くその全ての属性を操るリリエには、別の何らかのハンデのようなものがあるはずよ。」
「ハンデ…」
〝ハンデ〟たった3文字の言葉は、リリエに重い不安をかさ増しさせた。本来なら、覚えられたとしても使うことなど不可能なことを可能にさせてしまっているのだ。それ相応の何かがあるのは確定だろう。そしてそのなにかが分からないことも、リリエの不安をかさ増しさせていることの要因の1つなのだが。
「…でも、そのハンデはあまり重いものではないのかも知れないわ」
「え…、そうなんですか?」
なにかを考えながら静かにこぼしたセレナの言葉に、リリエは驚きを隠せず思わずそう返した。セレナは未だに考えながらではあるがゆっくりと頷いた。
「本当にそれを覚えられる者がいたことは驚いたけれど、リリエの扱う魔法は元素という一括りで正規に纏められている属性魔法だった気がするわ。だから、それほど大きなハンデはないと思うのだけれど、私にもそれは分からないわ…そう言えば、話がそれてしまっていたわね。」
ごめんなさいねとリリエに声をかけ、未だに心配げなリリエを大丈夫だと優しく諭し、話をもとに戻した。
「そして、魔法の違いについてだけれど、属性か物質かは置いておけば消えるか消えないか、その上容易に触れられるか否かでほとんどを判断しているわ。そして、もっとしっかりと区別するために、属性魔法に分類される魔法にはもうひとつの名があるの。」
魔法のもうひとつの名、という言葉でリリエはピンときてセレナに訊ねた。
「それが、先程王妃様が仰っていた{元素}のことですか?」
「そう。リリエは元素の属性魔法を扱う。だから{元素}という名がつくの。例えば、スカイの氷の魔法は{氷}という名を持つわ。」
そうなんですね!とリリエは感嘆の声をこぼした。それを見てセレナは嬉しそうに微笑む。
「これで話は終わりだけれど…、どう?少しは緊張がほぐれた?」
「あ、はい。すいません気にかけて下さって。」
ペコリとお辞儀をするリリエに首をセレナは横に振る。
「良いのよ。普通は、会って話すことすら難しい者に、初対面で緊張するなという方が無理な話だもの。それに戦ってばかりだったのに、話の間立ったままで疲れてもいるでしょう?安心できる家に戻って休むことを薦めるわ。」
「ありがとうございます。そうさせて頂きます」
セレナに再びお辞儀をして、ルーナの方を向いた時、ルーナが話に加わった。
「リリエ、ちょっと待って。…セレナ様、私に、どうしても飲んでいただきたいお願いがあるのです。聞いていただけませんでしょうか?」
そう言ったルーナは、片膝をついてセレナに頭を下げた。
「えっ…ルーナ?」
「どうしたの?私に、飲んでほしいお願い?」
「…私は、セレナ様の傍付きです。でも、リリエの元で共に暮らしたいと思っているのです。それがセレナ様に多大な迷惑をかけてしまうことは百も承知です。しかし、私はリリエと一緒にいたいんです!」
突然のことで、驚きと嬉しさと申し訳なさと色々な感情が混ざり困惑してしまっているリリエと、冷静にルーナを見つめるセレナ。スカイも後方からその様子を見つめている。セレナは床に膝をつくルーナに声をかけた。
「良いわよ。全然問題なんて何もないもの。むしろ、ルーナにそんな一緒にいたいと思える存在が出来たのだと安心できたわ。あなたがしたいようにして良いのよ?あ、けれど…たまにで良いから、顔を見せに来てくれると嬉しいわ」
ルーナはゆっくりと顔をあげ、セレナを見つめた。本当にとても嬉しそうに微笑むセレナを見て、少し涙目になりながら笑った。
「ありがとうございます!セレナ様!」
ルーナがそう少し泣き笑いで返すと、セレナは優しく頷いてリリエを見た。
「リリエ、ルーナにとって、あなたは心を許せる友。おっちょこちょいなところもあるけれど、よろしく頼めるかしら?」
「リリエー!」
セレナに返事を返す前にルーナがリューシャとなり抱きついてくる。それを抱きしめて、セレナの目をまっすぐ見つめて笑って強く頷いた。
「もちろんです!私にとっても、心を許せる友、心友ですから!」
セレナの微笑みに返ってきた申し訳なさそうな笑み。緊張せずとも気軽に話してくれれば良いのにと思いながらもセレナは言葉を続けた。
「緊張しなくても、話の内容に集中してくれて良いからね?…属性魔法は強力なのは知っていると思うのだけれど、それらが強力な理由は、属性魔法に部類される魔法の特性にあるの。」
「魔法の特性で、ですか?」
リリエの問いかけに頷くと、セレナは言葉を続ける。
「属性魔法に部類される魔法は、そのまま置いておけば消えてなくなり、容易には触れられないもの…例えば、スカイの氷は、置いておけば溶けて消えてしまうでしょう?それに下手に触れば余計に溶けてしまう。リリエの扱う元素の風、火、水、土だってそう。土は少し強引な考え方になってしまうけれど、置いておけば崩れたり地面に還ったりしてしまう。すぐに無くなってしまい、容易には触れられないが故に、その形が具現化されている間は強力な力を発するの。」
限られた間の力だから、強くなる。そして強いから何個も何個も覚えられはしない。なのにそんな魔法を元素という一括りで扱えてしまう自分が、道理に従っていないことに少しの不安を覚えた。
リリエがそんな不安を覚えていることに気付いたのか、偶然それを話しようとしていたのか、セレナは呟くように言った。
「恐らく、4つもの属性魔法を覚えた上で、何の異常も無くその全ての属性を操るリリエには、別の何らかのハンデのようなものがあるはずよ。」
「ハンデ…」
〝ハンデ〟たった3文字の言葉は、リリエに重い不安をかさ増しさせた。本来なら、覚えられたとしても使うことなど不可能なことを可能にさせてしまっているのだ。それ相応の何かがあるのは確定だろう。そしてそのなにかが分からないことも、リリエの不安をかさ増しさせていることの要因の1つなのだが。
「…でも、そのハンデはあまり重いものではないのかも知れないわ」
「え…、そうなんですか?」
なにかを考えながら静かにこぼしたセレナの言葉に、リリエは驚きを隠せず思わずそう返した。セレナは未だに考えながらではあるがゆっくりと頷いた。
「本当にそれを覚えられる者がいたことは驚いたけれど、リリエの扱う魔法は元素という一括りで正規に纏められている属性魔法だった気がするわ。だから、それほど大きなハンデはないと思うのだけれど、私にもそれは分からないわ…そう言えば、話がそれてしまっていたわね。」
ごめんなさいねとリリエに声をかけ、未だに心配げなリリエを大丈夫だと優しく諭し、話をもとに戻した。
「そして、魔法の違いについてだけれど、属性か物質かは置いておけば消えるか消えないか、その上容易に触れられるか否かでほとんどを判断しているわ。そして、もっとしっかりと区別するために、属性魔法に分類される魔法にはもうひとつの名があるの。」
魔法のもうひとつの名、という言葉でリリエはピンときてセレナに訊ねた。
「それが、先程王妃様が仰っていた{元素}のことですか?」
「そう。リリエは元素の属性魔法を扱う。だから{元素}という名がつくの。例えば、スカイの氷の魔法は{氷}という名を持つわ。」
そうなんですね!とリリエは感嘆の声をこぼした。それを見てセレナは嬉しそうに微笑む。
「これで話は終わりだけれど…、どう?少しは緊張がほぐれた?」
「あ、はい。すいません気にかけて下さって。」
ペコリとお辞儀をするリリエに首をセレナは横に振る。
「良いのよ。普通は、会って話すことすら難しい者に、初対面で緊張するなという方が無理な話だもの。それに戦ってばかりだったのに、話の間立ったままで疲れてもいるでしょう?安心できる家に戻って休むことを薦めるわ。」
「ありがとうございます。そうさせて頂きます」
セレナに再びお辞儀をして、ルーナの方を向いた時、ルーナが話に加わった。
「リリエ、ちょっと待って。…セレナ様、私に、どうしても飲んでいただきたいお願いがあるのです。聞いていただけませんでしょうか?」
そう言ったルーナは、片膝をついてセレナに頭を下げた。
「えっ…ルーナ?」
「どうしたの?私に、飲んでほしいお願い?」
「…私は、セレナ様の傍付きです。でも、リリエの元で共に暮らしたいと思っているのです。それがセレナ様に多大な迷惑をかけてしまうことは百も承知です。しかし、私はリリエと一緒にいたいんです!」
突然のことで、驚きと嬉しさと申し訳なさと色々な感情が混ざり困惑してしまっているリリエと、冷静にルーナを見つめるセレナ。スカイも後方からその様子を見つめている。セレナは床に膝をつくルーナに声をかけた。
「良いわよ。全然問題なんて何もないもの。むしろ、ルーナにそんな一緒にいたいと思える存在が出来たのだと安心できたわ。あなたがしたいようにして良いのよ?あ、けれど…たまにで良いから、顔を見せに来てくれると嬉しいわ」
ルーナはゆっくりと顔をあげ、セレナを見つめた。本当にとても嬉しそうに微笑むセレナを見て、少し涙目になりながら笑った。
「ありがとうございます!セレナ様!」
ルーナがそう少し泣き笑いで返すと、セレナは優しく頷いてリリエを見た。
「リリエ、ルーナにとって、あなたは心を許せる友。おっちょこちょいなところもあるけれど、よろしく頼めるかしら?」
「リリエー!」
セレナに返事を返す前にルーナがリューシャとなり抱きついてくる。それを抱きしめて、セレナの目をまっすぐ見つめて笑って強く頷いた。
「もちろんです!私にとっても、心を許せる友、心友ですから!」
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