ツムギ ツナグ

みーな

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リューシャ編

56話

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「セレナ様、リューシャと私は本当に一緒にいて大丈夫なのですか?」
「あら、急にどうしたの?さっきはあんなにも喜んでいたのに」



セレナから一緒にいても良いという許可が出てから、リリエとリューシャ(ルーナ)は今までずっとその喜びに浸っていた。が、今リリエがなにかを思い出したかのようにそうセレナに問いかけ、セレナは許可を出したのにそんなことを聞いてくることを不思議に思って、リリエに訊ね返した。リリエは迷っているのか言葉を選んでいるのか、リューシャをその腕に抱いたまま考えるように目線を斜め下へと向けた。



「…あの…私は、世間からすれば、白亜の城に乗り込んだ反逆者です。それには理由があって、その理由をスカイやルーナ、セレナ様が知っていたとしても、世間はそんなこと分からないでしょうし、分かったとしても私を非難すると思います。そうすれば、きっと一緒にいるリューシャやルクトだって非難されてしまうと思うんです。下手をすれば王妃様やスカイも、もしかすれば、リレーニ様やフニカにだって…」
「リリエ、リレーニとフニカに会えたの?!」
「え?う、うん…」



リリエの言葉に反応したリューシャは、リリエが頷くと安堵したかのように言った。



「良かった…一応あの二人にも手を回しておいて」
「え、手を回しておいて…って?」
「あれ?リレーニ言ってなかった?リリエが望むのなら、白亜の城まで導いて欲しいって頼まれたって。私がそれ頼んだんだよ?でも、リリエを反逆者にしたてあげたくはないから、けっこうな揺さぶりをかけて欲しいって頼んでたの。それに、私自身もリリエに意思の確認をしたしね」



リューシャの言葉に記憶を思い起こす。そう言われれば、そんなことを言っていた。恐らく、リレーニの言っていたあの子、というのはルーナのことだったのだろう。そして、神の住む場所に降り立ってすぐ聞こえた声が、リューシャことルーナの声だったのだろう。



「そうなんだ…でも、私のためにわざわざ手助けをしてくれたのに、その恩を仇で返すことになったら、って不安で…」
「リリエ、そこは問題ないわ。反逆者騒ぎは広くても神たちの間で殆ど噂のように囁かれていだけだったから、あなたの気絶していた2日間でその噂は根絶できたの。少なくとも誰もあなたを反逆者と非難する者はいないわ」



セレナの言葉にリリエは驚くことが多すぎて、目を見開いて絶句してしまった。そんなリリエに気づかずセレナはまだ言葉を続ける。



「あ、後、スカイがあなたを助けに行ったのは私が頼んだからなのよ?あなたの事情は知っていたから…って、リリエ?」



ようやくリリエが絶句していることに気づいたセレナはリリエに声をかける。



「…ええぇぇぇぇぇぇっ?!」



時間差で、リリエから驚きの声が上がった。



「わ、私、2日も気絶してたんですか?!反逆者騒ぎは噂程度にしか広まってなかったってことは、反逆者云々の話はもう解決したってこと?!え、で、スカイは、王妃様に私のこと頼まれてたの?!」
「リリエ、一旦落ち着いた方がいいと思うんだけど」
「と、とりあえず、落ち着こう?全部そのリリエの問いにはうん。の一言で答えられるから」



スカイとリューシャのその言葉で、深呼吸して気持ちを落ち着かせる。



「ふう…でも、なんで私、2日も気絶してた…んですか?」



ついタメ口で言葉を発しそうになってしまい、どうにか敬語に言葉を続ける。セレナはほんの少しだけ考えて、リリエに言った。



「きっと、疲労だと思うわ。慣れていない魔法をずっと使い続けた上に、魔力も使ったのでしょう?スカイから聞いたわ。後、一時的にとはいえ使えなくなっていた魔法を無理矢理に放ってもいるのだから、仕方ないわ。」



セレナの言葉で、その時のことを振り返る。そして、リリエの中で引っ掛かっている、謎の声のことを知りたかったが、スカイに聞こえているはずが無いし、その場にいなかったリューシャやセレナに聞いても仕方がないと感じ、その疑問を記憶の奥底へ沈ませた。



「そうなんですね。」
「リリエ、家に帰って一息ついたら?セレナ様もそう薦めてたし。」
「あ、うんそうだね。王妃様、では、失礼させて頂きます。色々、ありがとうございました」



リリエが頭を下げると、良いのよとセレナは微笑む。



「スカイ。城の外までリリエとルーナを送っていってもらえるかしら?白亜の城ここは広いから。」
「分かりました。リリエ、俺について来て。」



スカイが象徴の間から出ていく後をリリエはついていく。そして部屋の入り口でまた深くセレナに向かって礼をすると、腕に和んだ表情で抱かれるリューシャを連れて去っていった。それを笑顔で見送り、その約5分後に、ルクトが象徴の間に飛び込んできた。



「セレナ様っ!第二荘の見回りは完璧です!リリエはどこですか?!」
「帰ってきて早々大変ね、ルクト。リリエなら、もう帰ったわよ?」
「なっ?!」



あからさまに落ち込むルクトを見て、セレナはクスッと笑みをこぼすと、ルクトに訊ねた。



「そんなにあの子、危なっかしいの?ルクトがこれほどまでに過保護になるなんて」
「僕は過保護じゃない!です!何故セレナ様までそんなことを?!」



その反応にまたクスクスと笑い、セレナは言葉を返した。



「冗談と捉えてもらって良いわよ?それと、恐らく今から急げば、リリエには追い付けるんじゃないかしら?」
「おっと、なら僕は行かなければならないですね!では!」



セレナの言葉で切り換えよく復活したルクトは、リリエを追って象徴の間から出ていった。



「…良かった」



セレナはそう安堵したように微笑んだ。








リリエは、ルーナの飛行系補助魔法ほじょまほうで家の近くへと降り立った。ルーナはリリエを地面に降ろし、自分も地面に降り立つと、すぐにリューシャの姿となってリリエの腕に抱かれる。



「たった、1日のことだけど、もう何日も帰らなかったみたいだね」
「そうだね。…早くはいろっ?」



リューシャが急かしてくることに、リリエは笑みをこぼすと家の扉を開ける。家には見慣れた配置の家具に…



「え、ルクト?」
「リリエ!おかえり。」



ルクトはなんと、リリエより5分ほど遅く象徴の間を出たにも関わらず、先に(リリエの)家に入り込んで、笑顔で帰りを待ち構えていたのだ。



「何で私の家にいるのかよく分からないけど…うん、ただいま!」



リリエはルクトに、笑みを返した。


《リューシャ編【完】》
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