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混沌の泉編
57話
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スヴールとの、リューシャことルーナを巡った戦いから約一ヶ月がたった。
あの日、スヴールとその部下たちはいつの間にかいなくなっていて、そんな一方で竜の方には反逆者の噂は広まっておらず、リレーニもフニカも無事に竜の城へ帰ったと言う。リリエはそれを聞いて安心したそうだ。
そしてリリエも帰ってきてからはルクト、ルーナ、スカイと過ごすことが増え、多少魔法に対する知識も魔法を持つ身として教えこまれた。
「いやーでも、魔法の詠唱一つ一つに魔法の攻撃の仕方の意味が入ってたのは知らなかったなー」
「知らないのも当然だよ。本にはそれらしきこと明記されてなかったし、リリエの魔法は特殊だったから」
リリエは明るい青空の下で笑いながらそう言う。そしてリューシャの姿で腕に抱かれているルーナがそう答える。こうしてリリエといると、家に帰ってきてすぐはルクトに死ぬほど笑われた。大人げない、年下になついている、その子竜の姿何なんだよ、etc…始めはムカッともしたものだが、今では事前の一手である一睨みで揶揄を防げるようになった。
「なんだか、あの日から一気に平和になりすぎて、リューシャを連れ戻しに行ったことさえも忘れちゃいそう」
リリエは真っ青に晴れ渡る空を見上げて呟く。
「そうだね、でも私はわざわざ来てくれたこと、嬉しくってずっと覚えてるよ。」
「…でも、忘れちゃいそうって言っても、私もずっと覚えてると思う。だって、初めての心友ができたんだもん。一生の思い出だよ。」
そうだね、と二人で笑みを交わして、リリエはそう言えば、と空から視線を外す。
「ルクトには手助けに来てくれたお礼言えたけど、スカイにはあんまり会わなかったから忘れてた…一番スカイが私のこと助けてくれてたのに」
やっちゃった…と呟いて、リューシャに問いかける。
「ルクトの家、行ってもいい?」
リューシャは竜の姿で行くと、ほぼ95%の確率でルクトにいじられる。(但し、前述しているように、リューシャの一睨みで黙りはするが。)そのおかげか、最近は、リューシャにルクトの家に行くときは必ず聞く癖が出来てしまった。
「うん、大丈夫だよ。…多分」
リューシャの最後の多分という言葉をしっかりと聞きとり、リリエは苦笑いするが、今回はスカイに直接お礼が言いたいため、知っていそうなルクトにスカイの家を聞きに行こうと思っているから仕方がない。
「まぁでも最近はネタが尽きてきて、いじらなくなってきてるから大丈夫だと思うけど…。とにかく、行こっか」
笑って、リリエはルクトの家へ向かい始める。こうしてリューシャを抱いてルクトの家に向かっていると、スヴールにリューシャが連れていかれた日のことを思い出す。あのときは、リューシャの異変に慌てていたが、本人によるとそれはスヴールの霧があるのを感じて拒否反応を起こしたからだという。
そんなことを思い出すついでに、そう言えばスヴールに連れ去られる前にリューシャは一度、喋ってしまったことがあるなぁとも思い起し、思わず笑みをこぼした。
そんなことを考えていると、ルクトの家につく。基本、ルクトは家からあまり出ることがないから今日もいるだろう。扉に近づいて、コンコンとノックする。
「リリエか?お、ルーナも一緒か」
ルクトは出てきて早々にそう笑う。
「…何も、言ってこない…?」
「ほら、大丈夫でしょ?」
中に入れと諭すルクトに聞こえぬよう玄関先でこそこそと2人で言葉を軽く交わし、リリエとリューシャはルクトの家に入った。
「今日はどうしたんだ?魔法のこと、じゃ無いみたいだな」
「あ、うん、今日ルクトに会いに来たのは、スカイの家を聞こうって思って。」
リリエの言葉に、ルクトは首をかしげる。
「スカイ?あいつに何か用でもあるのか?」
「うん、今更なんだけど、スカイにあの時のお礼まだ言えてなかったから。でも、私スカイの家知らないし、リューシャも知らないみたいだったから、ルクトなら知ってるかなーって」
ごめんね、と若干苦笑いを浮かべるリリエに謝らなくたって良い、と言うとルクトはどこからか紙とペンを取り出して素早く何かを書き出す。
「何してるの?」
「スカイの家の場所だよ。リリエが聞いてきたんだろ?あいつの家、皇都のかなり外れにあるんだよ。詳しい場所はこの紙に書いてるからそれを頼りにしてくれ」
ルクトはそう言うとスカイの家の場所を書き留めた紙を渡す。
「ありがとう、ルクト!じゃあ行ってくるね!」
とても嬉しそうにリリエは紙とリューシャを片手にルクトの家を出た。家を出るとリューシャがリリエの腕からピョンと抜け出し、ルーナの姿になる。
「リリエ、紙を貸してくれる?飛行魔法だったらすぐにいけると思うから」
「うん!はい、ルーナ」
紙を渡すと、ルーナは少しの間それを見つめて頷く。そしてリリエに左手を差し伸べる。飛行魔法はリリエは使えない。だからルーナと手を繋いで一緒に飛ぶのだ。(竜の姿は小さい竜のため乗ることができない)リリエはその手をしっかりと握り、ふわりと浮き上がった。
あの日、スヴールとその部下たちはいつの間にかいなくなっていて、そんな一方で竜の方には反逆者の噂は広まっておらず、リレーニもフニカも無事に竜の城へ帰ったと言う。リリエはそれを聞いて安心したそうだ。
そしてリリエも帰ってきてからはルクト、ルーナ、スカイと過ごすことが増え、多少魔法に対する知識も魔法を持つ身として教えこまれた。
「いやーでも、魔法の詠唱一つ一つに魔法の攻撃の仕方の意味が入ってたのは知らなかったなー」
「知らないのも当然だよ。本にはそれらしきこと明記されてなかったし、リリエの魔法は特殊だったから」
リリエは明るい青空の下で笑いながらそう言う。そしてリューシャの姿で腕に抱かれているルーナがそう答える。こうしてリリエといると、家に帰ってきてすぐはルクトに死ぬほど笑われた。大人げない、年下になついている、その子竜の姿何なんだよ、etc…始めはムカッともしたものだが、今では事前の一手である一睨みで揶揄を防げるようになった。
「なんだか、あの日から一気に平和になりすぎて、リューシャを連れ戻しに行ったことさえも忘れちゃいそう」
リリエは真っ青に晴れ渡る空を見上げて呟く。
「そうだね、でも私はわざわざ来てくれたこと、嬉しくってずっと覚えてるよ。」
「…でも、忘れちゃいそうって言っても、私もずっと覚えてると思う。だって、初めての心友ができたんだもん。一生の思い出だよ。」
そうだね、と二人で笑みを交わして、リリエはそう言えば、と空から視線を外す。
「ルクトには手助けに来てくれたお礼言えたけど、スカイにはあんまり会わなかったから忘れてた…一番スカイが私のこと助けてくれてたのに」
やっちゃった…と呟いて、リューシャに問いかける。
「ルクトの家、行ってもいい?」
リューシャは竜の姿で行くと、ほぼ95%の確率でルクトにいじられる。(但し、前述しているように、リューシャの一睨みで黙りはするが。)そのおかげか、最近は、リューシャにルクトの家に行くときは必ず聞く癖が出来てしまった。
「うん、大丈夫だよ。…多分」
リューシャの最後の多分という言葉をしっかりと聞きとり、リリエは苦笑いするが、今回はスカイに直接お礼が言いたいため、知っていそうなルクトにスカイの家を聞きに行こうと思っているから仕方がない。
「まぁでも最近はネタが尽きてきて、いじらなくなってきてるから大丈夫だと思うけど…。とにかく、行こっか」
笑って、リリエはルクトの家へ向かい始める。こうしてリューシャを抱いてルクトの家に向かっていると、スヴールにリューシャが連れていかれた日のことを思い出す。あのときは、リューシャの異変に慌てていたが、本人によるとそれはスヴールの霧があるのを感じて拒否反応を起こしたからだという。
そんなことを思い出すついでに、そう言えばスヴールに連れ去られる前にリューシャは一度、喋ってしまったことがあるなぁとも思い起し、思わず笑みをこぼした。
そんなことを考えていると、ルクトの家につく。基本、ルクトは家からあまり出ることがないから今日もいるだろう。扉に近づいて、コンコンとノックする。
「リリエか?お、ルーナも一緒か」
ルクトは出てきて早々にそう笑う。
「…何も、言ってこない…?」
「ほら、大丈夫でしょ?」
中に入れと諭すルクトに聞こえぬよう玄関先でこそこそと2人で言葉を軽く交わし、リリエとリューシャはルクトの家に入った。
「今日はどうしたんだ?魔法のこと、じゃ無いみたいだな」
「あ、うん、今日ルクトに会いに来たのは、スカイの家を聞こうって思って。」
リリエの言葉に、ルクトは首をかしげる。
「スカイ?あいつに何か用でもあるのか?」
「うん、今更なんだけど、スカイにあの時のお礼まだ言えてなかったから。でも、私スカイの家知らないし、リューシャも知らないみたいだったから、ルクトなら知ってるかなーって」
ごめんね、と若干苦笑いを浮かべるリリエに謝らなくたって良い、と言うとルクトはどこからか紙とペンを取り出して素早く何かを書き出す。
「何してるの?」
「スカイの家の場所だよ。リリエが聞いてきたんだろ?あいつの家、皇都のかなり外れにあるんだよ。詳しい場所はこの紙に書いてるからそれを頼りにしてくれ」
ルクトはそう言うとスカイの家の場所を書き留めた紙を渡す。
「ありがとう、ルクト!じゃあ行ってくるね!」
とても嬉しそうにリリエは紙とリューシャを片手にルクトの家を出た。家を出るとリューシャがリリエの腕からピョンと抜け出し、ルーナの姿になる。
「リリエ、紙を貸してくれる?飛行魔法だったらすぐにいけると思うから」
「うん!はい、ルーナ」
紙を渡すと、ルーナは少しの間それを見つめて頷く。そしてリリエに左手を差し伸べる。飛行魔法はリリエは使えない。だからルーナと手を繋いで一緒に飛ぶのだ。(竜の姿は小さい竜のため乗ることができない)リリエはその手をしっかりと握り、ふわりと浮き上がった。
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