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混沌の泉編
60話
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ルクトと別れ、帰路につくスカイは雲の上に形成される神の街を、自分の家に向かって歩いていた。
「はぁ…」
つい、ため息が口からこぼれる。昔の、12年も昔の記憶を夢で見るなんて思いもしなかったから。
「混血の分際で、か。俺だって、そんなレッテル望んで張られた訳じゃないんだけど」
あの時は言えなかった言葉をここで呟く。ただ、昔のことを思い出して今思うことは、あの時ルクトに出会えて良かったということと、藤色の髪の女性の言うことに従わなくて良かったということだ。
ルクトに対しては、普段恥ずかしくて言える訳がないのだがとても感謝している。あんなに自分のことが噂になっていたのにも関わらず、親代わりになってここまで育ててくれた。それは本当に感謝している。
ただ、今でも気になっているのが、あの藤色の髪の女性だ。純粋に自分の存在が嫌だったなのかも知れない。が、それだけではない違和感を感じるのだ。それに、女性から自分の存在を忘れさせれば良い、と言われてから自分で自分を余計に追い詰めていたようにも今なら感じる。
「…なんて、考えても分かるわけ無いけど」
諦めたようにため息を再びついて、街から出た。するとスカイは突然自分の左側へと体を逸らす。その瞬間、スカイの背中を爆風が通りすぎていった。
「俺、なんかしたっけ。わざわざ変装までして、ただ俺に攻撃しに来た訳じゃないでしょ。神の皇子。」
スカイは横目で自分の後方を見やる。そこには、フードを深く被った人物が立っている。普通なら、その人物が誰かは分からない。だがスカイは分かっているようでじっとその人物を見つめる。
「バレていたとは予想外だ。そうだな。私はただ攻撃しに来た訳ではない。」
その人物はフードを外す。スカイに攻撃した人物はスカイの言う通り、神の皇子ことレスデオ・ルディーラだった。レスデオは真剣な目でスカイを見つめ、口を開いた。
「スカイ、という名だったな。お前はサフェル…、私の息子を知らないか」
唐突に訊ねられたことは、わざわざ本人に会いに来なくても良いような質問だった。それに、レスデオの息子ならば召喚する者である者がいたはずだ。
「息子って、召喚する者?」
スカイの問いかけに、レスデオはゆっくりと首を横に振った。
「違う。あいつは、レステルトは養子だ。名前は似ているが血の繋がりはない。」
名前が似ていると言われれば確かにそうだと感じた。いや、似ていると言うよりほとんど同じだ。敢えてレスデオの名をベースに名付けたように。しかしいくら同じ種族と言えど皇子の名に子どもにつけるなどそんなことをする勇気のある者は滅多にいないだろう。
「養子のはずなのに、名が似ていることが不思議だろう。…あいつは、孤児の上に捨て子だった。物心もつかない赤子の頃に道端に捨てられていた。故に本人は養子だと知らない。物心ついた頃には私が近くにいて、名前も私が似せてつけてしまったが故に、自分が実子じゃないと疑ってもいないのだ」
辛そうに、厳密に言えば申し訳なさそうな表情をする。スカイはそれを見つめていたが、すぐに口を開く。
「で、ってことはその言ったサフェルって言うのが本当の子ども?」
レスデオは頷く。その返答にスカイはため息をつく。
「俺はそんな奴は知らない。なんで俺が知ってると思ったの?俺は皇都の外れに住んでるからそんな情報持ってるはずないし。…そもそも、そのサフェルって言う息子は、いつぐらいにいなくなったの」
ふと気になったように訊ねられた問いにレスデオはほぼ即答と言える早さで言葉を返す。
「レステルトを拾う1年前だから、約20年前だ。なんの前触れもなくいなくなった。」
悲しそうにレスデオはそう答える。
「…20年前、といえばまだ前皇子がいたんじゃない?」
スカイが感情の読めない目でこちらを見つめる。スカイのその言葉はレスデオに衝撃を与えるものであったが、レスデオも伊達に皇子はつとめていない。極力焦っているのをスカイに見破られぬように言葉を返す。
「前皇子の居場所を私は知らないのだ。会うことは…」
「俺は知ってる」
その言葉に思わず目を見開いた。スカイはそんなこと気にせず言葉を続ける。
「俺なら会えるか交渉できる。…ハッタリじゃないからね」
スカイがそう言うもレスデオは信じないと言うように首を横に振って言葉を返す。
「そんなことあるはずがない。あの人は今も当時の皇女と共に消息不明なのだ。」
「ルクト・サーフィラーでしょ、前皇子。俺、確かに知ってるけど。会ってみれば?何か分かるかもね」
その言葉に息を飲む。そんなはずはないと自分に言い聞かせる。こんな少年が今現在消息不明の皇子の居場所を知るはずがない。
「…そんな必要は無い。」
「じゃあ、どうやって子どもを見つける気なの」
知るはずがないと思ったが、いざ知っていたらと前皇子に会いたくない一心で言葉を返すが、スカイの言う通り手はもう無いに等しい。
「それは…」
「…もしかして…お父さん…?」
不意に、後ろから声が聞こえた。その声に半ば反射的に振り向いて、レスデオは目を見開いた。そこにはレスデオの身長とほぼ同じくらい背の高い青年が立っていた。
「はぁ…」
つい、ため息が口からこぼれる。昔の、12年も昔の記憶を夢で見るなんて思いもしなかったから。
「混血の分際で、か。俺だって、そんなレッテル望んで張られた訳じゃないんだけど」
あの時は言えなかった言葉をここで呟く。ただ、昔のことを思い出して今思うことは、あの時ルクトに出会えて良かったということと、藤色の髪の女性の言うことに従わなくて良かったということだ。
ルクトに対しては、普段恥ずかしくて言える訳がないのだがとても感謝している。あんなに自分のことが噂になっていたのにも関わらず、親代わりになってここまで育ててくれた。それは本当に感謝している。
ただ、今でも気になっているのが、あの藤色の髪の女性だ。純粋に自分の存在が嫌だったなのかも知れない。が、それだけではない違和感を感じるのだ。それに、女性から自分の存在を忘れさせれば良い、と言われてから自分で自分を余計に追い詰めていたようにも今なら感じる。
「…なんて、考えても分かるわけ無いけど」
諦めたようにため息を再びついて、街から出た。するとスカイは突然自分の左側へと体を逸らす。その瞬間、スカイの背中を爆風が通りすぎていった。
「俺、なんかしたっけ。わざわざ変装までして、ただ俺に攻撃しに来た訳じゃないでしょ。神の皇子。」
スカイは横目で自分の後方を見やる。そこには、フードを深く被った人物が立っている。普通なら、その人物が誰かは分からない。だがスカイは分かっているようでじっとその人物を見つめる。
「バレていたとは予想外だ。そうだな。私はただ攻撃しに来た訳ではない。」
その人物はフードを外す。スカイに攻撃した人物はスカイの言う通り、神の皇子ことレスデオ・ルディーラだった。レスデオは真剣な目でスカイを見つめ、口を開いた。
「スカイ、という名だったな。お前はサフェル…、私の息子を知らないか」
唐突に訊ねられたことは、わざわざ本人に会いに来なくても良いような質問だった。それに、レスデオの息子ならば召喚する者である者がいたはずだ。
「息子って、召喚する者?」
スカイの問いかけに、レスデオはゆっくりと首を横に振った。
「違う。あいつは、レステルトは養子だ。名前は似ているが血の繋がりはない。」
名前が似ていると言われれば確かにそうだと感じた。いや、似ていると言うよりほとんど同じだ。敢えてレスデオの名をベースに名付けたように。しかしいくら同じ種族と言えど皇子の名に子どもにつけるなどそんなことをする勇気のある者は滅多にいないだろう。
「養子のはずなのに、名が似ていることが不思議だろう。…あいつは、孤児の上に捨て子だった。物心もつかない赤子の頃に道端に捨てられていた。故に本人は養子だと知らない。物心ついた頃には私が近くにいて、名前も私が似せてつけてしまったが故に、自分が実子じゃないと疑ってもいないのだ」
辛そうに、厳密に言えば申し訳なさそうな表情をする。スカイはそれを見つめていたが、すぐに口を開く。
「で、ってことはその言ったサフェルって言うのが本当の子ども?」
レスデオは頷く。その返答にスカイはため息をつく。
「俺はそんな奴は知らない。なんで俺が知ってると思ったの?俺は皇都の外れに住んでるからそんな情報持ってるはずないし。…そもそも、そのサフェルって言う息子は、いつぐらいにいなくなったの」
ふと気になったように訊ねられた問いにレスデオはほぼ即答と言える早さで言葉を返す。
「レステルトを拾う1年前だから、約20年前だ。なんの前触れもなくいなくなった。」
悲しそうにレスデオはそう答える。
「…20年前、といえばまだ前皇子がいたんじゃない?」
スカイが感情の読めない目でこちらを見つめる。スカイのその言葉はレスデオに衝撃を与えるものであったが、レスデオも伊達に皇子はつとめていない。極力焦っているのをスカイに見破られぬように言葉を返す。
「前皇子の居場所を私は知らないのだ。会うことは…」
「俺は知ってる」
その言葉に思わず目を見開いた。スカイはそんなこと気にせず言葉を続ける。
「俺なら会えるか交渉できる。…ハッタリじゃないからね」
スカイがそう言うもレスデオは信じないと言うように首を横に振って言葉を返す。
「そんなことあるはずがない。あの人は今も当時の皇女と共に消息不明なのだ。」
「ルクト・サーフィラーでしょ、前皇子。俺、確かに知ってるけど。会ってみれば?何か分かるかもね」
その言葉に息を飲む。そんなはずはないと自分に言い聞かせる。こんな少年が今現在消息不明の皇子の居場所を知るはずがない。
「…そんな必要は無い。」
「じゃあ、どうやって子どもを見つける気なの」
知るはずがないと思ったが、いざ知っていたらと前皇子に会いたくない一心で言葉を返すが、スカイの言う通り手はもう無いに等しい。
「それは…」
「…もしかして…お父さん…?」
不意に、後ろから声が聞こえた。その声に半ば反射的に振り向いて、レスデオは目を見開いた。そこにはレスデオの身長とほぼ同じくらい背の高い青年が立っていた。
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