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ロストチャイルド編
69話
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今日も、何も変わらない日常が過ぎ去ってゆく。ルーナやルクト、スカイと何かを学ぶ日もあればただ遊びふけるだけの日もある。
時折、 ルクトから、スカイが幼かった頃の話を聞くが、決まってルクトが最後に付け加える一言は、昔のスカイはもっと可愛げがあったということだった(そう言った瞬間、スカイに叩き切られるが)。
そんな話を聞いていると、自身がもっと幼かった頃の事を思い起こす。そういえば、12歳の頃だったと思うが、自分から預けられていたルクトの家に居座ることをやめようとルクトに宣言した思い出がある。当然、過保護なルクトのことだから必死に止められたが、そんなルクトを振り切りそれぞれ別の家に住み始めた。
「懐かしいなぁ…」
ふと呟いて微笑んだ。
彼女にとって思い出とは、かけがえのないものである。些細な思い出だとしてもそれらはその時自身たちが歩んできた軌跡だと、誰に教えられたわけでも感化されたわけでもなく、物心ついた時からそう信じていた。出来る限り、嫌な思い出でも楽しい思い出でも、忘れたくはない。だって思い出は大切だから。
そんな考えを持つせいか、いつしか思い出を頭の中で思い返し、忘れないようにと記憶に焼き付ける。その行為が大した意味を成さず、忘れてしまうものは結局忘れてしまうものだと分かっていても、そういうことをついついやってしまうようになっていた。とはいえ、思い出を振り返るのは当然楽しいことで、癖になってしまうのも仕方が無いだろうと、そう自身に言い聞かせた。
そんな風にくつろいでいれば、不意に窓をこんこんと叩く音に現実に引き戻される。そしてそれに窓を開け放てば、そこから中へ飛び込んできたのは太陽の輝きを美しく反射させる白銀の小竜、リューシャ。
「リューシャ、おかえり。今回はやけにセレナ様のとこに居たみたいだけど…何かあったの?」
リューシャことルーナは、あれから定期的にリリエの元を離れセレナの元で数日間過ごすようになった。
それは王妃の傍付きとしての責務であるが故に、ルーナもそれを蔑ろにすることは無いものの、基本的に2、3日で直ぐに帰ってくる。しかし今回は1週間丸々も向こうにいたのだ。
寂しいからとルクトの家に向かったが、ルクトも不在で退屈していて、こうして家で思い出に耽るという結論に及んでいたのだった。
「そう、色々…あって、ね…」
そう返してきたリューシャの顔が妙に不穏な面持ちで真剣だった。それに何かしら異変が起こったのかと不安と心配がよぎる。
「色々、って?」
躊躇いがちに尋ねれば、リューシャは口をつぐんでしまう。そして数秒の後、漸く彼女は口を開いた。
「…あのね、セレナ様が、私の偏食を無くすとか突然言い始めて…私の嫌いなものばかりのフルコースを作って1週間訓練名義で食べさせられ続けたの!もう本当に地獄だった!でも私頑張って食べたんだよ!リリエ褒めて慰めて!」
「…へ?」
肩透かしを食らったように思わず頓狂な声を上げてしまう。が、泣いて飛びついてくるリューシャに余程嫌だったことが伺えて、よしよしと頭を撫でてやる。正直セレナ様が料理を作ることや、リューシャが偏食家であった事を色々尋ねたいと思ったがそれを口にすれば不貞腐れてしまうのは確実だからそれは言わないことにした。
「おつかれ、リューシャ」
そして場所は変わって白亜の城、セレナの居る象徴の間にて、スカイとルクト、セレナがとある報告をしていた。
「…魔力の継承?前例が無い上に今まで誰もしようとも思わなかった事だけど…それを、マイが?」
セレナが驚いたようにスカイに尋ねた。それを彼は首肯する。
「これといった証拠とかはないけど、リリエからマイの魔力を感じたってことはその線が濃厚かなって。それに、リリエは元素のうち土しか魔力を使えない。それを考えたら今リリエはマイの継承された魔力だけを使ってることになる。まぁ詳しいことは何も分からないけどね。リリエが分かってるはずもないし、唯一知ってるとすればマイだけど、マイはもう…居ないし。」
そう告げれば、セレナは自身の顎に手を当てた。
「そうね…。……そういえばルクト。ほかの世界の種族の者が来ていた、という話は本当かしら?」
ふと思い出したように尋ねればルクトはあぁ、と肯定した。
「現神の皇子に嘘の記憶を植え付けていた上に今回、皇子に攻撃を仕掛けていました。魔法がレフィネリアにはないものだったから、ほかの世界の種族なのはほぼ確定。恐らく察するに結構昔からで、多分レスデオが即位してから数年の間に懐に忍び込んだんだと思います。」
セレナは心配げに目を細めた。
「最近は不穏な動きが影で多いわ、スヴールといい他の世界の種族といい…。」
「不穏な動きは昔から表面下であったよ、それが今は表面上に薄く出始めてるだけ。早めに芽を摘んでおけば大事にはならないはずでしょ?」
スカイは相変わらず無表情にそう言うがその目はある種の鋭さを宿し何かに対する強い意志が垣間見えている気がする。
「確かにそうね。引き続き様子見を頼めるかしら?スカイ、ルクト」
穏やかさを讃える微笑みを二人に向ければ、任せてください、セレナ様と同時に声が上がった。
──当然、リリエには秘密よ?
時折、 ルクトから、スカイが幼かった頃の話を聞くが、決まってルクトが最後に付け加える一言は、昔のスカイはもっと可愛げがあったということだった(そう言った瞬間、スカイに叩き切られるが)。
そんな話を聞いていると、自身がもっと幼かった頃の事を思い起こす。そういえば、12歳の頃だったと思うが、自分から預けられていたルクトの家に居座ることをやめようとルクトに宣言した思い出がある。当然、過保護なルクトのことだから必死に止められたが、そんなルクトを振り切りそれぞれ別の家に住み始めた。
「懐かしいなぁ…」
ふと呟いて微笑んだ。
彼女にとって思い出とは、かけがえのないものである。些細な思い出だとしてもそれらはその時自身たちが歩んできた軌跡だと、誰に教えられたわけでも感化されたわけでもなく、物心ついた時からそう信じていた。出来る限り、嫌な思い出でも楽しい思い出でも、忘れたくはない。だって思い出は大切だから。
そんな考えを持つせいか、いつしか思い出を頭の中で思い返し、忘れないようにと記憶に焼き付ける。その行為が大した意味を成さず、忘れてしまうものは結局忘れてしまうものだと分かっていても、そういうことをついついやってしまうようになっていた。とはいえ、思い出を振り返るのは当然楽しいことで、癖になってしまうのも仕方が無いだろうと、そう自身に言い聞かせた。
そんな風にくつろいでいれば、不意に窓をこんこんと叩く音に現実に引き戻される。そしてそれに窓を開け放てば、そこから中へ飛び込んできたのは太陽の輝きを美しく反射させる白銀の小竜、リューシャ。
「リューシャ、おかえり。今回はやけにセレナ様のとこに居たみたいだけど…何かあったの?」
リューシャことルーナは、あれから定期的にリリエの元を離れセレナの元で数日間過ごすようになった。
それは王妃の傍付きとしての責務であるが故に、ルーナもそれを蔑ろにすることは無いものの、基本的に2、3日で直ぐに帰ってくる。しかし今回は1週間丸々も向こうにいたのだ。
寂しいからとルクトの家に向かったが、ルクトも不在で退屈していて、こうして家で思い出に耽るという結論に及んでいたのだった。
「そう、色々…あって、ね…」
そう返してきたリューシャの顔が妙に不穏な面持ちで真剣だった。それに何かしら異変が起こったのかと不安と心配がよぎる。
「色々、って?」
躊躇いがちに尋ねれば、リューシャは口をつぐんでしまう。そして数秒の後、漸く彼女は口を開いた。
「…あのね、セレナ様が、私の偏食を無くすとか突然言い始めて…私の嫌いなものばかりのフルコースを作って1週間訓練名義で食べさせられ続けたの!もう本当に地獄だった!でも私頑張って食べたんだよ!リリエ褒めて慰めて!」
「…へ?」
肩透かしを食らったように思わず頓狂な声を上げてしまう。が、泣いて飛びついてくるリューシャに余程嫌だったことが伺えて、よしよしと頭を撫でてやる。正直セレナ様が料理を作ることや、リューシャが偏食家であった事を色々尋ねたいと思ったがそれを口にすれば不貞腐れてしまうのは確実だからそれは言わないことにした。
「おつかれ、リューシャ」
そして場所は変わって白亜の城、セレナの居る象徴の間にて、スカイとルクト、セレナがとある報告をしていた。
「…魔力の継承?前例が無い上に今まで誰もしようとも思わなかった事だけど…それを、マイが?」
セレナが驚いたようにスカイに尋ねた。それを彼は首肯する。
「これといった証拠とかはないけど、リリエからマイの魔力を感じたってことはその線が濃厚かなって。それに、リリエは元素のうち土しか魔力を使えない。それを考えたら今リリエはマイの継承された魔力だけを使ってることになる。まぁ詳しいことは何も分からないけどね。リリエが分かってるはずもないし、唯一知ってるとすればマイだけど、マイはもう…居ないし。」
そう告げれば、セレナは自身の顎に手を当てた。
「そうね…。……そういえばルクト。ほかの世界の種族の者が来ていた、という話は本当かしら?」
ふと思い出したように尋ねればルクトはあぁ、と肯定した。
「現神の皇子に嘘の記憶を植え付けていた上に今回、皇子に攻撃を仕掛けていました。魔法がレフィネリアにはないものだったから、ほかの世界の種族なのはほぼ確定。恐らく察するに結構昔からで、多分レスデオが即位してから数年の間に懐に忍び込んだんだと思います。」
セレナは心配げに目を細めた。
「最近は不穏な動きが影で多いわ、スヴールといい他の世界の種族といい…。」
「不穏な動きは昔から表面下であったよ、それが今は表面上に薄く出始めてるだけ。早めに芽を摘んでおけば大事にはならないはずでしょ?」
スカイは相変わらず無表情にそう言うがその目はある種の鋭さを宿し何かに対する強い意志が垣間見えている気がする。
「確かにそうね。引き続き様子見を頼めるかしら?スカイ、ルクト」
穏やかさを讃える微笑みを二人に向ければ、任せてください、セレナ様と同時に声が上がった。
──当然、リリエには秘密よ?
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