ツムギ ツナグ

みーな

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リューシャ編

51話

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「【サプレイ・レボウ】」



先程までは、その詠唱一言で弓矢を生成するのは2つまでだった。しかし今は魔力を発動したせいなのか、1度にその倍程の弓矢を生成しスカイに休む暇なく矢を放っていた。



「【レイシャンド・フリーズ】」



絶え間なく生成され放たれる矢を、こちらも魔力を発動させているスカイが余裕たっぷりな様子で凍らせていく。
 しかしやはり温度上昇付加アディッションはかけられているようで、氷はすぐに溶けてしまうが、そのお陰で攻撃のスピードは格段に下がるために避けるのにはそれほど苦労しない。



「…俺に攻撃当てようとしてる?」



スカイはスヴールの攻撃が当たる気配の無いことに不信感を覚えてそう問いかけた。その問いかけにスヴールは未だに笑みを浮かべたままで返す。



「もちろん当てようとしているに決まっている。当てようとするからこそ、こうなる。」



その言葉に嫌な予感を察知し、体を少し右側へ逸らせた。するとそれと同タイミングでスカイの横を霧で生成された矢が通り抜けていった。



「!」
「ああ、惜しかったな。もう少し早めに撃つべきだった」



そう口では言いながらも表情には笑みが浮かんでいて、それほど余裕なのだ。と、こちらを挑発してきているような気もする。
 別にその挑発に乗ってもいいのだが、どうなるか分からないし、もし挑発に乗っているときにリリエが目を覚ませば、疲れているはずなのに自分を少しでも守ろうと無理をするだろう。



「………」



少しその様子を想像してみたが、あまりにも容易に想像できてしまった為についため息をついてしまいそうになった。



「…さすがに倒れてから、起きてすぐのリリエに無理はさせられないね」



どこか呆れたように呟いて、スカイは詠唱を唱えた。



「【ヘニレフス・アシュレン】」



スヴールを狙い氷を放つが、スヴールはそれを矢を生成して撃ちながら簡単に避ける。しかし動きながら生成されたが故に矢の標準は先程よりも不的確。そのお陰でスカイも矢を相殺することなく、かわしながら魔法を連続で放つ。が、スヴールは今度は霧を自分の周りに漂わせ、姿を隠してしまった。



「隠れんの?さっきまで俺にずっと魔法を打ってたくせに、情けないね。」



少し先で漂う濃霧にそう言うものの、返事はない。スカイは濃霧の方へ手を伸ばした。



「【レイシャンド・フリーズ】」



濃霧には温度上昇付加アディッションがかかっていなかったらしく霧を一気に残さず凍りつかせた。しかしその濃霧の中にスヴールはおらず、スカイの後ろ側へ回っていた。とはいえそんなことはスカイも承知済だ。
 スカイの背中を狙い、飛行系補助魔法ほじょまほうで滞空するスヴールは空中で生成した霧の弓を強く引く。その間にスカイは床に手を突き、滞空するスヴールに向かって氷柱を放った。その攻撃は前を向いていながらも的確で、スヴールにしっかり標準は向いている。
 スヴールは強く引いた弓から手を離し矢を放った。スカイは右へ飛び退きその矢を避けて詠唱を唱える。



「【ランスムーン・グレイド】」



スカイの手から生成され放たれた槍を、スヴールは今度は温度上昇の付加アディッションがかけられた霧で包み、溶かした。
 スカイはスヴールから視線を外さずに体勢を立て直し、スヴールは飛ぶことを止めて地面に降りると、スカイを見据えた。二人は互いに右手を前に出して詠唱を唱えようとした。



「【薔薇ローズ】!」



しかし、真に詠唱を唱えたのは、透き通るような凛とした声。そしてスカイとスヴールの間に割って入るように、そこには薔薇が舞い散り咲き誇っていた。声の方を向くと、いつの間にか白銀の髪を持つ少女が立っている。



「姫…!」



スヴールはそう言うと少女に跪く。少女は厳しい輝きを灯した青い目でスヴールをじっと見つめ、ゆっくりと口を開いた。



「スヴール。私は、彼女…リリエやその友には危害を加えないでと頼んだはず。どうしてここにスカイと、倒れているリリエがいるの?」



口調だけで、彼女が相当な怒りをスヴールに向けているのがオーラで感じられる。スヴールもそれを強く感じているのだろう。冷や汗を額に伝わせながら弁解する。



「それは、そこの小娘がスカイ様を唆し、王妃様へ反逆を起こそうとしていたので…」
「スカイが、誰かに唆されて王妃様への反逆を手助けする訳がないでしょ。」
「し、しかし!」



明らかにスヴールの弁解は意味を為しておらず、少女からの信用は無に等しくなっている。が、それでも尚弁解を続けようとするスヴールに対して、少女の目に遂に怒りが込もった。



「あなたに弁解の余地はない。あなたのこと、私も余り信用できていなかったけど、これほどまでとはね。信用できない者に護衛なんてされても、安心できない。……もう私も、己の身すら守れない子供ではない。あなたの代で、代々続いている護衛名義の監視は終わりにしましょう」



その言葉を聞いて、スヴールは慌てて半ば叫ぶかのように言う。



「姫!それだけは…!」
「その、姫呼び。止めてとずっと言っていたはずよね。私はあなたの姫じゃない。私は、王妃様の傍付き、ルーナーシュ・ラステニアよ。…もう名前を呼ぶことなんて無いと思うけれど。」



少女──ルーナーシュの厳しい目付きにスヴールは何も言えなくなり、肩を震わせた。



「…スカイ。リリエを連れて、こっちへ来てくれる?」
「ん、分かった。」



先程の緊迫した空気を平然と見つめていたスカイは、ルーナーシュの言葉に頷き、壁にもたれさせていたリリエを抱くと、スヴールを少しも見ずにルーナーシュの後をついていった。
 その場に取り残されたスヴールは、しばらく俯いたまま黙っていると、静かに両手の拳を握り締め、呟いた。



「…………必ず…必ず復讐してやる…この屈辱を、必ず果たしてやるぞ…小娘…!」



その目は、今までに無いほど紅く、紅く染まっていた。











その頃、若干忘れられているであろうルクトは、真っ白な広い部屋にいた。ルクトが向く方向には美しく装飾のなされた玉座と、そこに座る1人の女性。しかし部屋にはその玉座しかなく、どこかその部屋は殺風景に感じる。



「僕が加勢しなくて、本当に大丈夫なのか?スカイはともかく、リリエはまだ魔法に慣れてないのに…」



心配そうにそう言うルクトに、玉座に座っている黒髪の女性はクスリと笑って言葉を返す。



「相変わらず、過保護なところは変わっていないみたいね、ルクト。きっと大丈夫だわ。スカイがついているもの。」



しかし、笑った女性の笑みはすぐに消え、不安そうな面持で呟いた。



「…でも、そんなことより、まさかこんなに早くになるなんて思ってもいなかったわ…」
「セレナ様。貴方は隠し事が余り得意じゃないんだ。気を付けてくださいよ?」
「そんなこと、私が分かっていないわけが無いでしょう?心配しなくても、ちゃんとするわ」



黒髪の女性──王妃セレナは、そうルクトに微笑んだ。
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