青春怪異奇譚

諸星影

文字の大きさ
17 / 18
チャプター1(初任務編)

第十六話 『危機』

しおりを挟む
 家全体が振動した後。
 衝撃音の原因である屋上へと急ぎ向かう。

 するとコンクリート仕立ての屋上に叩きつけられた状態の
 高梨さんを発見する。

「高梨さん!」

 咄嗟に駆け寄ろうとするも不意に現れた怪異の姿に
 足が止まる。

 怪異はまさしく不死鳥の如く鮮やかな炎を身を纏った
 赤い鳥でありその大きさも相まってか威圧感が尋常ではない。

 鋭い爪や口ばしはその形状からいとも簡単に人の皮や肉を引き裂くのが
 想像でき、その身に纏う業火はまともに喰らえばきっと骨すら残らない。

 そんなのを相手を未だ五体満足でいる高梨さんを尊敬すると同時に
 目の前に広がる絶望が否応なく心を蝕む。

 隣ではぺたりと秋里さんが地面に腰を付けていた。

「二人とも離れてて」
「高梨さんもういいよ! もうやめて!」
「バカ言わないで。私はまだ負けてないわ」

 ボロボロの状態ながらも彼女は有無を言わさず立ち上がる。
 決して万全とは言えない状態であるものの、その瞳からは一切の
 諦めは感じられない。

 今回ばかりは相手の力量を鑑みて、前回のように手助けをすることも
 憚られる。

「(不甲斐ないばかりだ…………)」

「そう気に病む必要はないぞ少年。君はよくやっているよ」
「――――!?」

 直後、突如として背後に現れた一人の男性の言葉に驚き、ピクリと身体を
 飛び跳ねさせる。

「やっときたんだ、灯哉兄」
「遅くなって悪かったね藍華ちゃん」

 高梨さんが兄と呼び、高梨さんを藍華ちゃんと呼ぶその男は
 袈裟姿や持っている錫杖から京条寺関係者なのは間違いがない。

 しかし長い髪の毛を後ろでお団子にしている見た目然り、
 話し方や声色からその漂々っぷりが伺い知れ、
 とてもじゃないが高梨さんが期待していたような助っ人とは到底思えなかった。

「さてとそれじゃあ、早速不出来な妹弟子を助けてやるとするかな」

 そういうと彼は僕の心配を余所に特段警戒することなく
 高梨さんを庇うようにして怪異の前に身を晒す。

 すると怪異は先程の落ち着いた様子から一変、
 羽を大きく左右に広げ威嚇の態度を取る。

「いい霊力だ。それに人が増えて対処する優先順位を見極めるために
 数秒大人しくする思慮深さも持ち合わせている。流石は噴煙鳥をルーツに持つ
 鳥だな」

 その様子を横目に僕は満身創痍の高梨さんを連れ
 秋里さんのいる屋内に戻る。

「…………。高梨さんあの人は一体?」
「あの人は私の兄弟子で、あの八雲さんの一番弟子だよ」

 次の瞬間、巨大な火炎が空中に発生。
 それが高熱の槍となって兄弟子、灯哉さんの上に降りかかった。

 直撃すれば火傷では済まない威力。
 現にコンクリートの床が熱で溶解しているのがいい証拠だ。

 しかし不思議なことに灯哉さんは身動き一つしていないにも拘らず、
 彼の身体には火の粉一つですら掛かっていない。

 一体どういう原理なの素人の僕では全く理解できない。

「これで終わりか?」

 すると灯哉さんはそのまま錫杖をぶん回し、
 その先で黒煙鳥の顔面を殴打する。

 その衝撃は只の打撃というには些か無理があり、
 目には見えない衝撃が加えられているかのような
 凄まじい威力を発揮する。

「それ!」

 空中に逃げようとする黒煙鳥をものともせず、
 屋上に設置された柵を足場に連続して打撃を加え続ける。

 その姿はまさに圧巻であり、空気が振動するのを肌で感じつつ、
 僕たちはただその光景を終始見ているしかできなかった――――。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

秘密のキス

廣瀬純七
青春
キスで体が入れ替わる高校生の男女の話

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

処理中です...