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第4話 嵐は突然に
しおりを挟む「は、はっはー!!誠に申し訳ありませんでしたあぁぁぁ!!」
ズササササー!!
大袈裟に土下座する、大夢。
彼の前には、仁王立ちの女の姿。
「何やこれ!?」
物音で駆け付けてきた、奏子。
「ふぇ……えぇぇ!?」
そして、おかずのおすそ分けを持ってきた泉美。
「何なになに? 何か事件なの? まさか殺━━」
「な、わけあるかい!」
「そりゃそうだよねー」
奏子が大夢達をまじまじと見る。
女は黒髪、顔だち身なりからして歳は泉美より少し上のようだ。
何故、こんな状況なのか……それは2時間前に遡る━━
第4話 嵐は突然に
①らんらんらん嵐
「はあ……ついに向日葵荘に来て初めての日曜日がやってきたでー!!」
日曜日、午前7時。
大夢はちゃぶ台に朝食を並べた。
「はふ~ん、いい味出てるやないの」
平和な週のはじまりを迎えた喜びをコッペパンで噛み締めていた。
因みに大夢は日曜日を週末と呼ぶ事を断じて認めない……絶対に認めない。
「初めての一人暮らしで心配事も多かったけど、案外どうにでもなるもんやなぁ。隣人はとびきり可愛い女子高生……むふふふ」
大夢の脳裏を泉美の姿がよぎる。
それは……しおらしい姿からはじまり、怪力に終わる。
続いて奏子の姿を想像━━
「もう片方はちょっと残念な感じやけど……美人さんやし! ここは当たりやったわ!」
この時、大夢は迫り来る恐怖を知る由もなかった。
「ふぅ……特にやることも無いし、本でも読んでよっかなぁ……」
食事を済ませ、ゴロゴロ転がる。
ふと目に入ったのは、冥土図鑑。
これはメイドと間違えて買ってしまったものである。
更にいうと、持ってきたのも間違った故にだ。
「……いや、今日は近所を散策してみよっかな!!」
目に入ったのは、麦わら帽子と洗濯ネット。
……ちなみに網(ネット)違いである。
「思い立ったら出発や~!!」
思い立ち、行動までに早1時間経過中……
「はよ、行こ~♪」
と、麦わら帽子と洗濯ネットを手に取ったものの投げ捨てる。
「虫とり少年ちゃうわ!」
大夢は財布と携帯だけ持ち、玄関の扉を開けた。
その時、財布の底には大穴が━━
「ああ! 1円足りとも逃がさんで━━」
「どこへ行くんかな?」
顔を上げたと同時に財布からジャラジャラと小銭が落ちた。
「じぇじぇ! 全財産が!」
「さい銭箱かい!」
思わず女からのツッコミが入った。
「……そ、その声は……」
大夢は恐る恐る顔を上げた。
②その女、月島妹
「な……あ……麻美!?」
小銭を集め終えると、大夢は我に返った。
「どうもご無沙汰しております、兄上。」
「……あさみぃ~!!」
ドスン!!
尻餅着いた大夢の前に立つ女は、月島 麻美(つきしま あさみ)。
大夢の妹だった。
「え!? 何で? 普通に涙の再会でしょ!?」
「感動なんてあるかい!」
この兄妹は感動の再会には程遠い。
━━コト。
大夢は麻美にお茶を差し出した。
現在、午前9時。
「して、兄上。どちらへ行こうとしてたんですか? 履歴書は書いたん?」
じろりと大夢を睨み見る、麻美。
「あ、いや、その、こ、こーこここれから書こっかなぁって……」
「へぇ、外で?」
「えと、履歴書とバナナを買いに……」
麻美が一歩踏み出すごとに大夢も後ずさる。
「履歴書?」
「~と、バナナ」
大夢の顔は真っ青だった。
「どこまで?」
「そこらへん」
「嘘こけ! ど~うせ、いつもの事やから『思い立ったら出発や~!!』とか抜かして近場を散歩しようとしてたんちゃう? え!?」
「聞こえてたん!?」
「やっぱり……」
「はっ……しまっ」
ドンッ
大夢は麻美に壁ドンされ、逃げ場を失った。
「……あかん、全然トキメかん……」
「あぁ? 家を出る時、ちゃんと履歴書は早く書いて出すって母さんに約束したよな?」
「あー……はいはい、灰……チーン」
「……それやのにまた約束破って遊び呆けるつもりやったんや? えぇご身分ですな」
「一人は最高級の至福の時やからなぁ」
「……履歴書出して就職できへんのは、まあしゃあないわ。せやけど遊び呆けとるだけって……あぁ、母さんが知ったらなんておっしゃるでしょうね、愚兄殿」
「は、はっはー!! 誠に申し訳ありませんでしたあぁぁぁ!!」
大夢は猛スピードで土下座し、頭を何度も上下する。
大夢の額は次第に赤く、床は次第に凹んでいく。
「な、何!? 何の音や?」
青ジャージ姿の奏子は突然の物音にたじろぐ。
同時刻、泉美はタッパーにおかずを詰め終えた。
「ふう…………え、地震!?」
エプロンを取ると、ピンク色のワンピースがすきま風でなびいた。
ガン、グワン、ガガグワン━━!
「ちょ、兄上! 家壊れるて!」
「はっはー、はっはー!!」
無我夢中で土下座を繰り返す、大夢。
「兄上……まず……床が凹んで……き、貴様はトンカチかー!」
③絶望、そして……
そして、時間は現在に戻る。
「ふえぇ……えぇぇ!?」
「何やこれ!?」
玄関の外、立ち尽くす奏子と泉美。
━━ふと、泉美は手に持っていたタッパーを落とした。
「あ、住民の……方?」
ケロっと、表情や仕草を変える麻美。
完全に外の顔だ。
「そうやけど」
奏子が答えた。
泉美は口をパクパクするだけで言葉はでない。
「いつも兄がお世話になっております」
「……まだそんなに世話してないけどね」
ボソッと奏子が呟いた。
「申し訳ございませんが、ただいま取り込み中につき……5分ほどお待ちいただけますか?」
「……あ、はい」
「ふえぇ」
関わるのが面倒くさいと感じた奏子と、状況が飲み込めないままの泉美はそっと大夢の部屋を後にした。
この時……大夢は、この世の終わりのような顔をしていた。
「あ……あは……あはははは」
雀が餌をくわえ、飛び立っていった。
「いつまでそうしてるんや? 妹さんとっくに帰ったで」
━━午前10時。
嵐のようにやって来た麻美は煙のごとく消えるように帰った。
「しっかし、あんなしっかりした妹が居ったとはなぁ」
「ふふふ、確かにちょっと意外でしたね」
二人は持参した紅茶を飲みながら意気投合。
「って、何でお二人さんここにおるん?」
「おつ~、放心状態から帰ってきたな!」
「あ……もう大丈夫そうですね」
伸びをして、寝転がる奏子。
泉美もまた足を伸ばす。
「あんた無職なんやって?」
「うぐ……なぜそれを……」
「そ、それはですね━━」
『とりあえず、兄が忘れて行った薬。これだけ渡しといてください』
『こ、こんな大事なもん忘れてきたんかい』
奏子が受け取った鞄には薬。
1ヶ月分は軽く越えているであろう量だ。
『た、たくさんありますね……』
『ああ、それやねんけど……どれを飲んでるか分からないもんやから』
『そら分からんわ』
『せやろー? だから、その辺にあったやつ片っ端から持ってきたんですよ……』
『ふぇ……妹さんなのに?』
『あはは……母さんが忘れんように玄関の外のドアノブにかけとったんけどな……』
『……優しいお母さんですね』
『ビニール袋のままやってん。近所のおばちゃんがゴミ袋と勘違いしたん。そしたら、おっちゃんや、おばちゃんが続続とゴミ捨てて……』
『うわー。混ざってしもたんか』
一度、ゴミに埋もれたとは大夢には決して言えない事実……
『あと、もし兄が履歴書も書かず遊びまわってるようでしたら尻引っ叩いてでも書かせてください』
『そりゃストレス解消になるわ』
と、指を鳴らす奏子。
『そ、そんな……ダメですって』
『かまへん、かまへん。いつまでも無職で遊んでるようなら家に連れ戻し……いや、家に居られても迷惑やから水都の川に捨てたろっかな……』
『どっかの洗濯ばあさんが勘違いするんじゃない?』
『あっははは、昔話やあるまいし! あっははは━━』
「ってなことがあったのよ」
「……あんの小娘」
「月島さん、平日も家に居たし……もしかしたらとは思ってたけど……」
「やっぱりニートやってんなぁ」
「ん~……ミートちゃうわ。てかぁ、最後らへん……恐ろしいこと言ってへんかった?」
「気のせいちゃう?」
「う~ん……気のせい……なんかな?」
「気のせい、気のせい!」
④覚醒
「……あれ? 月島さん?」
「な、なんや、なんや? さっき起きたばっかりや━━」
「何いうてんの」
「はれ、泉美ちゃんに奥沢先輩……? 麻美は?」
実は大夢、麻美からの現実逃避をしているうちに、うたた寝をしていたのだ。
「月島さん……大丈夫ですか?」
「んん? 泉美ちゃんこそ大丈━━」
「私は正常です……月島さんこそ……」
「おかしいのは、いつものことやろ」
「ちょい待て待て待て!」
━━麻美が去ってから2時間半。
改めて状況説明をする、泉美と奏子。
「そ、そういえばさっきの月島さんは……いつもよりまともだった気も━━」
「へ? いつもの俺ってどんなよ」
「せやな、例えるなら━━」
「ちょ、奥沢さん!」
ちんぷんかんぷんな大夢だが、本人としては“現在(いま)、覚醒”したのだ。
さっきまでは、言わば夢遊状態。
「それよりさ、あの後何があったんや?」
興味津々に奏子が聞いた。
「……耳貸してください」
「ん……?」
大夢は奏子の耳元でボソボソと喋る。
その様子をじっと見つめる、泉美。
「……っ…………っ」
「……え、ぇ……ひいいぃぃぃ!! 嫌や……ゴーヤー……あかん……」
「ご……ゴーヤー……?」
奏子の顔は、みるみる青ざめ涙目になって痙攣を起こす。
「わっ、きゅ、救急車……」
「だ、大丈夫や! い、生きとる……」
痙攣しながらも必死に訴える。
見るからに病人な奏子に、はっきり言って説得力はない。
「え……なにを聞いたんだろう……」
「う~ん……知らん方がえぇよ、泉美ちゃんは……純粋な少女にトラウマを植え付けたくないし……」
「うん…………奥沢さんは……純粋じゃなかったんだ……」
泉美は気になったが奏子の様子を見て、聞く気が引けた。
「ハァ……ハァ……そういえば、妹ちゃん……ガクガク……なんか薬? 置いてったで……」
「あ……そういえば母さんから近いうちに送るって連絡あったなぁ……麻美使って送料ケチったな。確かあいつの通学定期なら確か最寄り駅」
「あ、そのまま放置しておくのもどうかと思ったので。私の鞄に入れてるよ」
泉美は青色の可愛らしい大きめのショルダーバッグから、大きな紙袋を4つほど取り出す。
「ん、ありがとう。無くても死にやせんけど、やっぱ処方された薬は飲まんとあかんよな」
紙袋を覗いて驚愕。
見たまんまの量の薬……
「って、え? 俺のどれよ」
大夢のははおやはゴミに埋もれた為、おっちゃん達の未使用の薬まで丁寧にも拾ったようだ。
「知るか」
本人のものは、本人しか分からない。
「……飲むのやめよ」
「飲めや。妹さんの好意、無駄にすんなや」
「せ、せせせせやね……」
大夢は震える手で、薬を出して4錠口に放り込むと流し台に向かう。
「あ、ひあひひ、ほふはひ……ふへ!?」
助けて、ともがいてるようにも見えなくもない大夢だったが━━
「口に薬入れたまま喋んなや。なに言うてるのかわからへんし」
「そうだよー。お行儀悪いし吹き出しちゃうよ?」
「せやせや!」
「あぁ! 言い忘れてた……『ちなみに薬は食後すぐに飲まな胃が荒れるで』って言ってた気がします」
大夢はグラスに水を入れると、一気に飲み干す。
「プハッ!! そゆことは早く━━」
「えと……月島さん、本当に胃が痛かった……とか」
ものすごい勢いで頷く大夢。
「お嬢ちゃんすごいな、うちにはハヒハヒ言うてるようにしか見えへんかったわ……これが愛の力か?」
「ち、違います!! 妹さんの言葉と月島さんの怪しげな動きが……」
「うわぁ、そんな強く否定せんでもいいやん、傷つくわー」
「も、もう! 月島さんもふざけないでよー」
「あっはっはっはっは」
顔を真っ赤にした泉美に叩かれながらも、大夢は少し嬉しかった。
決してドMではないが。
⑤ドラッグボーイと生姜焼き
「ところで……これはなんのお薬なんですか?」
「ん~、色々」
思い出しながら、指折り数える大夢。
「高血圧の薬だったり、糖尿病の薬だったり……後は━━」
「都合の悪いことは忘れる薬。それから現実逃避の薬━━」
「ちょ、奥沢さん!」
「やめて……イジメないで……」
「月島さんも、自分の事なんだからしっかりしてくださいよー……って、高血圧に糖尿病!?」
泉美の顔がみるみる真っ青になっていく。
「糖尿病って食事制限とかしなくちゃいけないよね?私……何も考えないでカレーやお菓子とか……今日も生姜焼きのお裾分けを……」
「あー、大丈夫、まだ完全に制限されてるわけちゃうから。調子乗って食べすぎない限りは、ね」
なるべく空気を重くしないために大夢自慢の半面(右顔)の笑みで説明する。
「秘技・不適な笑いや」
しかし即・誤解された。
「━━ちゃうわ! とにかくや、そんなに気にすることないってこと」
「わ……わかった……でもこの豚の生姜焼きは食べない方がいいよね……」
「え! 大丈夫だよ、泉美ちゃ━━」
「糖尿病の人は糖質を控えないとダメなんでしょ?……ご飯も欲しくなると思って入れてきちゃった……うぅ……どうしよう……」
泉美は手に持っていたタッパーをカバンにしまおうとする。
「大丈夫や! うちが食べる!」
「ノーットノーット!! 絶対ダメとかや無くて控えた方がいいって段階やから!!」
密かに泉美の持ってきた、生姜焼きを取り合う大夢と奏子。
「食べすぎんように気を付けるから、ね?」
「もう……検査で悪い結果が出ても知らないから……」
大夢と奏子の密かな争いは、泉美の馬鹿力には及ばずだった。
「お……おぉ、ありがたき幸せ!!」
「こいつは貰ったあぁぁ!!」
奏子はタッパーを奪うと、玄関へ向かって走り出した。
「なんやて!? あっ、俺の生姜焼きいぃぃ!!」
「ヘッヘーン、うちも腹減ってんねん。こいつは今日の介抱代や!! バイビー!」
そう言って、玄関を飛び出す奏子。
「う……うっそーん……俺の生姜焼き……」
大夢は、まるで目前の宝箱を横取りされたような……負け犬の顔をしていた。
そして崩れ落ちる。
「終わった……終わってしまったよ……皆、世界を守れなくてごめんやで……」
「い……意味がわからないよ……っていうか、まだ残ってるよ?」
「へ?」
大夢の目に光が戻る。
「タレに漬けてるだけだから、焼かなきゃいけないけど……私のお昼ご飯のつもりだったけど……」
「あ……あ……あ……」
大夢は、魚のように口をパクパクさせながら泉美を見る。
「あの……半分こする?」
「……う、うん」
口を閉じて、まっすぐ泉美を見て頷く大夢。
「そ、それじゃあ、うちに行きましょう」
軽くだが身なりを整え、大夢は言う。
「泉美ちゃんは、めっちゃ可愛いし優しいと思います」
「きゅ、急に何を……お、お世辞を言っても何も出ないよ~」
と言いながら、嬉しそうに顔が緩む泉美。
「お世辞なんかやないって! 料理とっても美味しいし!!」
「も、もぅ~!」
顔を赤らめる泉美。
「それにセクシー美人……」
「……一気に冷めちゃったよ」
「……はい、調子乗りました」
「分かればいいです!」
二人は笑いながら103号室を後にする。
⑥昼食は仲良く
「ん~! やっぱり泉美ちゃんの作るご飯は美味しいわ!」
「えへへ……ありがとう。」
綾崎家にて食事をする二人。
皿の上の生姜焼きには千切りしたキャベツが添えられていた。
味噌汁、白飯まであるフルコースだ。
「こんだけ美味い飯作れたら、良いお嫁さんになれるわ!」
「お……お嫁しゃん!?」
泉美は耳まで真っ赤にして、口を開けたまま固まる。
「うん、お嫁さん。泉美ちゃん可愛いからモテてそうやし。カレシとか好きな人とか居らんの?」
「い、いないよ~。わ、私に可愛いなんていう男の人、月島さんくらいだよ?」
「えー、ホンマ? 絶対、泉美ちゃんのこと可愛いと思ってる男子いると思うけどなぁ」
「そんな事ないよぉ、も~!」
泉美はすでに茹でダコ状態に真っ赤だった。
因みに大夢の彼氏の発音は「シ」の部分が強調されており、ギャル風だった。
ゴンゴンゴン
「綾崎のお嬢ちゃん戻っとる~~?」
荒くドアを叩く声の主は奏子だ。
「あ、はーい。今出ますね━━」
「あのやろう……人の生姜焼き盗っといて、よくもまあ……いけしゃあしゃあと……」
大夢の瞳にメラメラと炎が宿る。
「まあまあ、私のはんぶんこしたんだから怒らないであげて」
「むぐぐ……泉美ちゃんにそう言われたら何も言えへん」
「ふふふ、ありがと。じゃあちょっと出てくるね」
箸をやすめ、玄関へと急ぐ泉美。
バタン
「あ、お嬢ちゃん、生姜焼きごちそうさまな! 美味しかったわ」
「お粗末様でした。でも奥沢さん。お腹が空いてるからって盗ったら、メッですよ?」
「なはは、かんにんかんにん」
奏子から空になったタッパーを受け取って、一応注意する泉美はどこか母親のようだった。
「お? その靴は……月島も居る?」
泉美の後ろの靴に気付く奏子。
「一緒にお昼ご飯食べてますよ。お茶淹れましょうか?」
「あ、ホンマ? でも月島怒ってへんやろか?」
「多分怒ってませんよ、上がっていってください」
「ホンならお邪魔~♪」
食後のティータイムに浮かれる奏子。
「も~、脱いだ物はちゃんと並べて下さいよ~」
奏子が脱ぎ散らかしたサンダルを揃えて泉美も部屋に戻る。
「おう、月島! さっきぶりやな。イェーイ!」
奏子は大夢に近づき、ハイタッチを求める。
「ホンマにいけしゃあしゃあと……」
グチグチ言いながらも箸を置いて、一応ハイタッチをする。
「自分手ェ小さいなぁ」
「ぐはっ……身長の次に気にしてる身体の欠点を……」
大夢は、なんとか怒りを堪える。
「あっはっはっはっは! 男は手の大きさやないで!(まあ身長も手もデカいに越したことはないけど)」
「テンション高ぇなぁ、ォイ……」
「あー、お嬢ちゃんもイェーイ」
「え? あ、いぇーい」
「泉美ちゃん俺も俺も! イェーイ」
戸惑いながらも、奏子と大夢にハイタッチを返す泉美。
「……うん、良かった。泉美ちゃんは俺より手小さいや」
「え……」
「5つも年下の女の子より手が大きくて安心してるのは、男として小さいわな、あっはっは! ついでに背も小さ~」
「っるせーやい」
「あはは……」
大夢の目から一粒の涙が零れ落ちたような気がした。
それは悔しさなのか、図星なのか。
はたまた……それを知るのは大夢のみである━━
「あ、ビールはないんか?」
「ちょ、ムード壊すのやめてくれます?」
4話 完
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