未来は決まってない!

東雲碧

文字の大きさ
4 / 9

第1章イラストレス 2

しおりを挟む
「やっと来たな!村長に何したか知らねーけど、俺はお前を認めねーからな!」

玄関で仁王立ちするアザムがまたもこちらに剣を向けて言い放つ。
疲れているせいもあり、本気でキレそうな楓はそう言うならちょっとこっちへ来いとアザムを道場に連れてきた。

「今、訳の分からない事だらけで疲労困憊の俺はすこぶる機嫌が悪い!だからお前が何者でも構わないがほっといて欲しい。もしそれができなければ、相手になる!」

道場に掛けてあった木刀を手に持ちアザムと対峙する。楓の姿を見たアザムは物怖じせず自分の得物を構えた。

「そんな棒っ切れで俺に勝とうと思ってんのか!笑わせるな!後で泣きみてもしらねーぞ!」

アザムは慣れた手つきで今にも飛び掛ってきそうだが、楓の間合いには入ってこなかった。アザムはモンスターと命やり取りをするのだから当然だろう。
その二人のやり取りを見ていた少女がオロオロしていた。
楓はジリジリ距離を縮めもう少しでアザムの間合いに入ろうとしていた。
それをアザムも待っていたかのように飛び出す。
勝負は一瞬だった。飛び出したアザムの攻撃は後に下がった楓に避けられ空を切る。同時に素早く間合いを詰められた時にはアザムは地に顔を埋めた。
アザムは何が起こったのかわからないだろう。それほどに早い攻撃だった。

「アザム!大丈夫!」

駆け寄った少女の声に疲労が爆発した楓が少女にもたれかかるようにして倒れた。
小さい声でキャアという声を聞きながら眠りにつく。

「こいつ、結構やるぞ。危険だから今動かないうちにやっちまうか!」

「だからダメだってば!それよりもどこか怪我してないか確認が先です。」

二人が耳元で何やら騒いでいる。楓は重たい瞼を上げると

「あっ!起きた?大丈夫?」

少女が気付いて話しかけてきた。
俺は大丈夫だと言うと、アザムも謝ろう。ね?と言って謝らせていた。
少女はミルと名乗り、アザムとはつい最近モンスターに襲われたのを助けて貰いそのまま、この村に泊まっていた。

「ありがとう。ミルのおかげで少し動けるようになった。」

楓は上体を起こしながらミルに礼を言うと、アザムに帰ってくれと懇願する。
まだ剣を持って警戒していたアザムはミルにも睨まれている事を確認するとバツが悪そうに出ていった。

「さっきのが俺の本気マジだと思うなよ!強化魔法を使ってればお前なんか簡単なんだよ!」

「アザム!」

一言言って立ち去ろうとしたアザムにミルが名前を呼ぶとさらにバツが悪そうだったのは見ていて可愛そうだ。
そのやり取りを見ていた楓はアザムがいなくなりミルと二人きりなってしまった事に気付いた。
楓はミルに自室に連れて行ってもらえるように頼むとミルはそれを承諾してくれた。
アザムと戦った時にはオロオロしていたミルだが、肩を借りた時に華奢で顔立ちが良く可愛いと思った楓が「可愛い」とミルには聞こえないように小さく呟く。

自室につくと、ようやく一息付けられる喜びに身体は歓喜しミルを忘れ一目散に布団を目指した。
布団の上に寝転んだ時ミルがいた事を思い出し座り直し改めて礼を言う。
一瞬忘れされたミルは少し驚いていたが、笑みを浮かべながら大丈夫と手を振って部屋から出ていった。
楓も手を振り返しながら扉が閉まると今日の事を考えようとしたが疲労感に抗えずそのまま眠りについてしまう。

翌朝、時間軸は日本と変わらなかったのであろう、日が昇り始めた時には目が覚め、あれこれ考えるのは後にして普段通りランニングをする為外に出た。
普段なら10kmのコースは頭に入っているのだがここは異世界のイラストレス村なので、感覚を頼りに走り、道場に戻るといつものように素振りを開始し始めた。
素振りをして1時間過ぎぐらいか、道場の扉が開きミルが中に入ってきた。
ミルはこちらを見るなり驚きの表情をしていたが、素振りが終わるまでこちらには話しかけて来なかったので、そこから少し続けて朝の練習を終えた。

「楓さん、おはようございます。昨日はあんなに疲れていたのに、朝から剣の練習をして体調は大丈夫なんですか?」

ミルは心の底から心配そうに訪ねてくるので、これぐらいなら大丈夫と言ってタオルで汗を流す。
普段の行動ならここで朝食を取るところだが、ここに落とし穴があった。
ここは異世界で現代のライフラインは無い。つまり冷蔵庫の物はダメになり、炊飯器、レンジ等の家電製品も全て使えないときた。コンロに至ってはガスホースが途中から鋭利な刃物に切られたかのように綺麗に切れていた。
項垂れる楓を見たミルが、朝食まだでしたら一緒に食べませんか?と言ってきた。

「いや、でも俺は無一文ですよ?」

日本円が使えないのを昨日、村長に確認していた楓は自分で言ってて情けなくまた、恥ずかしくなり顔を染めた。

「そんなの私が払います。」

ミルは『しかし』と言う楓に困った時はお互い様です。と言うと楓の腕を掴んだ。
あまりの展開に楓は少し困りながらも諦めてミルの後を追う。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

処理中です...