優游執事は主君の為に穿つ

夕桂志

文字の大きさ
15 / 19
第三章:執事達の激闘

ノークス嬢、君達は面白いよ

しおりを挟む



 イサミルの勝手な言い分に激怒したニコル。その迫力と正論の重みにイサミルは、見えない何かに押された様に後ろに下がりそうになった。しかし、攻撃を受けた訳でもない、今のはただの気迫。ニコルの気迫はそれ程までに凄味を持っていたと感じたイサミルだったが、気迫に負けるわけにはいかなかった、ここで退いたら自らやって来た事がノークスにとって最善ではないと認めてしまうのと一緒だと考えた。すると、ニコルの気迫は軽くなり、剣でなぎ払う仕草をとり、再びビシッと立ち剣を構えた。


「流石、現役の執事の説得力は違いますね。今ので私も少し冷静さを取り戻せましたよ。ニコル君、君はノークスお嬢様を取り返しに来たと言う事で良いんですか?」


と言うイサミルは、まるで何もかもを知っている様な口調だった。それはニコルにとって、想定内の反応だった。ココまで遣って退けたイサミルが先程の言葉で変わるとは、考えていなかったが、イサミルの言葉に今まで押し殺して来た想いが爆発し、つい本音が出てしまった。


「せやっ、ノークスお嬢ハンの執事としての僕の使命はそんだけやぁ」


と言いながら、だんだんと声のトーンを落とし目を細めていったニコル。それを見たイサミルは、鼻でフッと笑い剣を構えなおし、確信を突く様にこう言う。


「そうですか、私もノークスお嬢様の執事として、貴方を追い払うだけです。しかし、その言い方だと、他に執事としてではなく、私に用があるように聞こえます」


そう聞かれたニコルは、口を歪ませ真面目な顔をしながら、冷たい声でこう言った。


「流石、お嬢ハンの元執事。最初に言うておく、執事としての使命はお嬢ハンを連れ帰る事やぁ。けど、好いた女に群らがるハイエナを、これ以上のさばらせておく気もないッ」


「フッ、私も執事としては、追い払うだけですが、個人的には少々物足らないと思っていた所でして、ノークスお嬢様をたぶらかす狐は、排除する必要がありますね」


と言うイサミルは、剣を構えながら鋭い目付きになり、刃に映ったニコルを見た。すると、ニコルは鼻で笑いながらこう言う。


「考える事は一緒っちゅう事やな。知っとるぅ?ハイエナより狐の方が綺麗やって」


「そうですね。それより、知っていますか?狐よりハイエナの方が強い事を」


と言うと二人は一呼吸置いた。そして、ニコルがイサミルの胸に向けて発砲した。それを、間一髪の所で避け、ニコルとの間合いを詰め込んできたイサミルは剣を振り切る。だが、ニコルはバク転し再び間合いを取った。この一連の動作が一瞬の間に起こった。もちろんの事ながら、常人の肉眼では追うのは不可能なスピード。二人が止まると、イサミルの服の肩の一部が切れ、血が滲み始めた。それと同様に、ニコルの右頬が浅く斬れ、少し血が出て来た。それを確認した二人は互いを見合って、フッと不敵な笑みを浮かべた。



    ***



 その時、一階のエントランスホールに居た六椥、コルネリッド、セレムを始めとした”貴族狩“のメンバー達は役所内からする筈もない発砲音に耳を疑い、二階にいるイサミルの身を案じ、一斉に階段を駆け上がろうとした時。何かに気が付いた六椥が全員を先頭で、スッと手を出し止めた。その行動にコルネリッドは焦った口調でこう言った。


「何してんだよ!六椥!」


「どうかしましたか?六椥」


とスプリット。その時、シャッシャッと裏側から光っている何かが大きな階段を分裂させ、二階に上がる手段が断たれてしまった。崩れゆく階段の土埃の中から、ゆっくりと姿を現したのは、一振りの刀を持った八椥だった。それを見たメンバーは、あちらこちらで八椥がいつ侵入して来たのかをガサガサと騒いでいた。すると、腹を立てたコルネリッドがこう一喝した。


「るっせぇぞッ!コノグレーで騒ぐな!」


「って言ってる、お前が一番ウルセェ」


とセレムに水を差されたコルネリッドは、頭に怒りマークが出てるかのように怒りながらこう言った。


「ンだとッ!セレム?」


「落ち着いてください、二人とも。六椥、指示をお願いします」


八椥一人の登場にざわめく、メンバー達をまとめる為に六椥に指示を要求するスプリット。何故なら、イサミルの次に六椥の存在は”貴族狩“にとって大きい存在であった。しかし、当の六椥は焦る事は愚か、一言も発せずただ八椥を黙視していた。


「六椥!」


『六椥さん!』


とスプリットを筆頭に痺れを切らしたメンバーが六椥の名を呼んだ。その瞬間、広場に向かっていた窓十個を破って、銃弾が数十発も飛び込んできた。それに気付き、避けたのはコルネリッド、スプリット、セレムの三人だけだった。

不思議と六椥には銃弾は飛んで来なかった。それ以外のメンバーは致命傷にならない場所に一人一発ずつ当たり、バタバタと膝を付いた。その時、玄関がバンッと音を立てて開いた。六椥以外は玄関の方に視線を向ける。すると、そこには無表情のランドネルトと、ニコッと笑っているニキが立っていた。


「まぁ、作戦成功って事かなランドネルトさん?」


とニキが両肩を少し上げ小首を傾げると、ランドネルトは眉間にシワを寄せてこう言う。


「アイツが突っ走らなければ、大成功だったんだがな」


「まぁまぁ、ニコルのフォローは八椥君がしてくれたんだから、良いじゃない?」


「乗り込む事には成功したから良いと言うものの。さてと、”貴族狩“の諸君、俺はホーシック家、次女のリバお嬢様の執事、ランドネルト・レナードだ」


と名乗りを上げたランドネルト。そして、その名を聞いた近くに居るメンバー達は顔を見合わせ、驚きの表情をしている。何故かと言うと、ランドネルトはS5、ここにいる誰もが執事をやって来たが殆どがBから下の者だった。

そんな彼らが、ファントム基イサミル、六椥以外のS級執事を見る事など初である。名前は知っていても顔は知らないと言う連中の前後に現S級が三人もいる。もちろん、名乗らない二人もS級だと言う事は彼等は知らない。そんな彼らに追い打ちをかける様に、ヘラっと笑いながらニキが名前を名乗る。


「ランドネルトさんで、驚かないでよ。僕、ニキ・アードネルト、S3だよ」


『ヒッ!』


とニキの名を聞いて驚くメンバー達。そして、一人の者がS級と対峙している事の恐怖に耐えられなくなり、粉砕された窓から慌てふためきながら逃げて行くと、その姿を見ていた他の者も我先にと、窓に流れ込んで行くかのように役所を後にした。

残ったのは、六椥・コロネリッド・スプリット・セレムの四人だけだったが、逃げて行く者を止める者はいなかった。その状況を見たランドネルトは少し眉間にシワを寄せた。


「仲間の大半が逃げたと言うのに、冷静だな」


「仲間ねー。アイツ等は仲間なんかじゃねー、まぁ、奴等がどう思ってるかは知らねーけど。少なくとも俺達はS級とかって聞いて、逃げだすような奴は仲間だとは思わない」


とランドネルトの問いに答えるコルネリッドは、以前ホーシック家のクリスマスパーティーを襲撃した時の口調に戻っていた。記憶を失くしたノークスに対する態度とは明らかに違っていた。それを見たランドネルトは、コルネリッドを目に止め右腰にぶら下っていたフォルダーから一丁のボーガンを出した。


「その考え、俺は嫌いではない。例えどんなに相手との格差があったとしても、逃げ出すなど言語道断。貴様、名は?」


「コルネリッド・スワーだ!ちなみに現役時の階級は、Sダッシュ5だったな、俺は階級とかあんまり気にしない方でよ」


「何となく分かる。俺も一緒だからな」


と言うとランドネルトは、コルネリッドに向かってボーガンを構え、引き金を引く。矢は一直線にコルネリッドとの距離を一瞬にして縮める。その時、矢が何かに当って床に落ちた。ランドネルトは矢が落とされた処を見ると、そこにはまるで生きているかのように動く鎖が、コルネリッドの片袖の中から伸びていた。


「その鎖、以前、ノークス様を学院で襲った奴はお前かッ?!」


「だったら何?まぁ、あの時のお嬢の方が勢いがあって楽しかったけど」


「お前は嫌いでないが、ノークス様を傷付けた事、万死に値する」


「万死ねぇ…。本当にアイツを傷つけていたのは俺達だけか?」


「ッ、何が言いたい!」


と鋭い眼光をして睨む。


「ココに連れて来て、俺はアイツに執事として接して来た。
 アイツは言っていたんだ、”作り笑顔は嫌い“って本当の笑顔で。
 なのに、半年前に会った時は弱い自分を見透かされるのを恐れて、強気な態度でいたり、それこそ、嫌いな作り笑顔をしたりしていた。なんでだ?」


いきなりの質問に固まってしまうランドネルト。そして、その隙を見のがさなかったコルネリッドは、腕を真横からランドネルトに向かって振った。すると、音を上げながら鎖が一直線にランドネルトに向かって飛んでいき、体に巻き付き縛り上げる。ランドネルトはキツク巻かれた反動でなのか、ボーガンを落としてしまう。動きを封じたコルネリッドは、一歩一歩近づきながら、先程の話を続けた。


「そりゃぁ、俺だって元執事だ作り笑顔が女性にとってどんな意味を持ってるか位、いいや、あの社会で作り笑顔がどんなに大切か位は分かってる。だがよ、一体アイツは誰に弱い自分を見透かされるのを恐れてたんだ」


「ッ」


「俺達みたいにアイツを襲ってくる輩にか?いいやぁ、ありぁ、自分を気に掛けて来る誰かにって感じだった。アンタ等になんじゃねーの?」


「ノークス様は、イサミルが居なくなった後も全部お一人でやって来られたのだ、弱い筈ない。そう俺達が力を貸そうとした時もッ」


と言いかけた時、何かに気付いた顔をするランドネルト。それを見たコルネリッドは、目の前で立ち止まり仕方なさそうな口調でこう言う。


「今もアイツはガキだ。だから、もっとガキの時に信頼する執事がいなくなったら、自分で何もかもやろうってムキになったんじゃねーの?それに気付いて止めてやんのが、執事じゃねーのかよ!それを放っといた、アンタ等が一番アイツを傷つけてたんじゃねーのか」


その言葉からは、コルネリッドがいかにノークスの事を考えているのかが分かった。それを聞いたランドネルトは、ゆっくりと瞼を閉じた。数秒後、再び瞼を開きコルネリッドを見つめた。


「なんだよ。俺、何か間違ってる事言ったか?」


「いいや、一ミリも間違ってはいない。確かに俺達はノークス様が何でも出来るから、お一人でも大丈夫と思っていた。だか、あのニコルが来た時に思った、一人ではダメなのだと。初めは今更と思いもしたが、良く良く考えてみればノークス様のお考えが分かった」


と言った時、自分を縛り上げていた鎖をすり抜け、落としたボーガンをつま先で蹴り上げ、手でカチャと持ち、コルネリッドに向け構えた。


「ノークス様が執事を雇わなかった三年間は、イサミルとの日常を思い出にする為に必要だった時間」


言い終わるとボーガンから矢が発射された。コルネリッドは鎖で弾こうと、鎖の先端を向って来る矢に向けて飛ばした。すると、矢は鎖の穴を通り鎖ごと壁に刺さってしまった。

一瞬の事で良く分からなかったコルネリッドは、目を見開きランドネルトを凝視した。それは、一瞬で構えて放った矢が鎖の穴に入るなど、考えられなかったからだ。見られているランドネルトは先程までの表情とは違い、元の無表情に戻っていた。


「そう、必要な時間だったんだノークス様には。
 後任を雇わなかった訳は、きっとその後任にイサミルを重ねてしまうと思ったからだ、それはその後任にも、
 重荷になるし何より失礼だ。そして、イサミルを重ねてしまった後任を見たら、ノークス様自身もお辛いから、
 イサミルを思い出にする時間、即ち、執事と距離を置く必要があった。ノークス様の事を弱いと言ったな」


「それが、なんだよ!」


と言いながら鎖を引っ張り矢ごと抜こうとしているコルネリッド。その時、ランドネルトはこう言った。


「やはり、ノークス様は強いと思う。ノークス様は弱いんだろう?お前からすれば。
 だが、誰かを失う辛さは口に出せない程、とても辛いものだ。
 いくらやせ我慢をしていようが誰であろうと周囲に分かってしまうというのに、
 ノークス様はそれを悟られまいとした。それは、自身に向けられる憐れみとかの問題ではなく、
 心配をかけまいというノークス様の優しさ、そのものだ。
 絶望の果てにそんな事に辿り着くなんて、並大抵の事ではなかった筈。
 それなのに、それをやってのけてしまうのだ。
 悲しさと絶望の中からでもノークス様は、周囲に心配されまいと強くなった。
 それはハリボテだったかもしれないが、
 そんな事を思える時点で、ノークス様はこの世で一番、優しくて強いと言う事だ」



言いきる。その顔を見た、コルネリッドはランドネルトに圧倒された。この二週間、コルネリッドは自分なりにノークスの事を見て来たつもりだった。コルネリッドはただのお嬢様になっているノークスには興味がないと言ったが、それでも、視界に入って来るのは確かだった。それだけ気になる存在と言う事なのだろう。だが、ノークスの全てを知るのには時間が足りなかった。ノークスを強いと断言したランドネルトからは、全てではないにしても自分よりはノークスの事を理解し、信頼している事が伝わって来た。

それが覆せない事実だとしても、コルネリッドは折れる訳にはいかない。鎖を矢ごと引き抜き、ランドネルトに向かって投げた。


「悪いけど、アイツは渡さねー。アイツにはココが、ココで自然に笑ってて欲しい!」


それを聞いたランドネルトは、カッと目を見開き向かって来る鎖に向かって、ボーガンの引き金を引き、矢を放ち鎖の軌道を変えて避けながらグッと掴んだ。そして、コルネリッドと綱引き状態になった。予想もしていなかったコルネリッドは焦って踏ん張ろうとするが時は既に遅し、ランドネルトに引っ張られ体ごと引き寄せられた。すると、胸倉を掴まれ至近距離でこう怒鳴られた。


「甘ったれた事を言うな!」


「!?」


意味が分からなく、呆然となる。その顔を見たランドネルトは眉間にしわを寄せ、コルネリッドの胸倉を掴む手に力かが入る。


「お前の言う通り、俺だってノークス様には自然に笑っていて欲しい。だが、ココではない。
 どんな場所であっても主君に不快な思いをさせない為に俺達、執事が居るんだ!」


その一喝で目が覚めた様な顔をしたコルネリッド、胸倉を掴む手を離す。すると、コルネリッドは床に座って俯いた。


「まさか、執事を辞めた後でそんな事言われるなんてな」


「自分から辞めたのか?」


「あぁ」


「辞めさせられた回数は?」


と聞いたランドネルトに、コルネリッドはハァ?と言いたそうな表情で見上げながら答えた。


「三十九回」


「三十九回でSダッシュ5。お前、この一連の騒動が終わったらメテオに来ると良い」


そう言いながら、ボーガンをしまうランドネルトを見て、コルネリッドは下を向き、唇を噛みしめながら手の平にある鎖を力の限り強く握りしめた。それを見ていたのか、ランドネルトは背を向けこう言った。


「筋は悪くない。だが、俺もS5だ休業執事に負けるわけにはいかない」


「なんで、俺に止め刺さないんだ。俺はアイツを攫った”貴族狩“の一員だぞ」


と鎖を床に叩きつけながら、声を荒げた。すると、ランドネルトは背中越しで少し声を張った。


「俺達がバンクス様に言い使って来たのは、ノークス様の奪還だけだ。攫った輩をどうにかする権利は俺達にはないッ」


「そうか」


「それに、もし俺達がお前達を殺してしまったら、ノークス様はお心を痛めてしまう」


と和やかな口調で言った。すると、コルネリッドは床に叩きつけていた拳を上に向け、ゆっくり広げると鎖がチャリッと垂れさがった。コルネリッドは噛み締めていた唇を離し、フッと口元を緩めて笑った。


「あぁ、確かにアイツはそういうやつだな。今は、俺達の事を本当の執事だと思い込んでるみたいだし」


「どう言う意味だ?」


とランドネルトがコルネリッドに尋ねると、片手で頭を掻きむしりながら、えーっとと言う顔で話しだした。


「俺も良くは知んねーけど、あいつココに来て二日間位はスッゴイ荒れ様で、俺等が何言っても聞かなくてさー、
 終いには自分の身体も傷付け始めて、
 まぁ、アイツの事だから目の前でS1が倒れた事を自分のせいみたいに思ったらしい。
 そしたら、ファントムがアイツの記憶を消したんだか何だかは分かんないけど。
 今のアイツは前の執事とここに新しい事業の視察に来てるって思いこんでる」


「待て…何を言っているッ!」


と言うランドネルトの表情は、信じられない事を聞かされたかの様に目を見開いて、しゃがみコルネリッドの両肩を掴み、必死にこう言った。


「何故、”貴族狩“の奴とイサミルをノークス様が間違うんだ!」


その勢いにコルネリッドは、少し身を引きながら言い辛そうな口調でこう言った。


「そのイサミルが、俺達のリーダーだ」


と聞いたランドネルトの衝撃は大きく、固まってしまった。



    ***




 その同時刻、ニキはスプリットとセレムの二人を相手にしていた。

床の一角には既にスプリットの赤外線爆破糸が蜘蛛の巣状に張り巡らされて、その上空でニキとセレムは戦っていた、着地すると爆破する筈の赤外線爆破糸のはずなのだが、今回はセレムは別にしてもニキが着地しても爆破は今の時点では起こらない。セレムは長刀でニキを襲うが何度も交わされていた。そんな攻防がニ十分位続いていた。

ニキは武器も出さずに二人を相手に余裕の笑みを浮かべていた。


「なるほど、これにもう一人とカンノさんの執事達か…。
 良くその後ノークスお嬢様を助けに行く体力あったな…ニコル。まぁ、だからこそニコルがS1なんだけど。
 ホラ、どうしたの?二人のクセにボクにかすり傷一つ付けられてないじゃん?」


「なんだ!コイツ。速ぇとか、強いとかの次元じゃねーぞ!これで、S3って、マジかよ!」


「ウソっぽいでしょ?強過ぎて」


とセレムの前に鼻と鼻がぶつかりそうな距離の処に天井から逆さまにぶら下って二ョキッと現れ、食えない笑顔でそう言った。セレムは驚き空中でバランスを失い、そのまま落下した。それを見たニキは、天井から下がっている錆びきったシャンデリアに移った。


「あーぁ、あの位でバランス崩すとはね。弱過ぎて遊び相手にもなんないよ、君達だけじゃ」


「なんだと!俺達はなS1のニコルとやり合ったんだぜ!」


「それ、あの鎖使いが居たからでしょ?見た所、君達はあの鎖使いより弱い。
 そして、二人の連携は微妙にズレる。会話からは長刀を持っている君の方が実力があるって感じだけど、
 実力だけで言ったら鎖使いのが上」


とニヒッと笑いながら二人を見下ろすニキ。ニキに痛い所を吐かれた、セレムとスプリットは悔しそうな表情を浮かべながら、手足に力を入れ直す。それを見たニキは、おもちゃで遊んでいる子供の様な口調でこう言った。


「動かない方が身のためだよ、お二人さん」


「どう言う事ですか?動けないのは貴方の方でしょう?」


スプリットが焦りながらも、こちらの方が優位と言う笑みを浮かべそう言った。だが、ニキの余裕を打ち消す事は出来なかった。ニキは両手をポンと合わせ、スプリットが言わんとした事を理解した。


「あー、そっか。床の十センチ上には君の赤外線爆破糸が張ってあったんだったね、忘れてたよ。でも、それ無駄って事に気付かないの?」


と言われスプリットが自分で張り巡らせた赤外線爆破糸を確認すると、赤外線爆破糸を螺旋状に細い紫の糸がしっかり巻き付いてた。その紫の糸は床だけではなく、壁や柱、色々な所を迂回して、シャンデリアの上に居るニキの片手五本の指から伸びていた。そして、その紫の糸はスプリットとセレムの体にも巻き付いていた。スプリットは目を見開きながら興奮した口調でこう言った。


「これは、紫外線圧縮絃しがいせんあっしゅくいと!」


「ハァッ?紫外線圧縮絃?なんなんだよ、ソレ!」


「紫外線圧縮絃。赤外線爆破糸より扱いが難しく、圧縮されている為、極細ですが絃ですから強度はあります。
 赤外線爆破糸とは違い爆破はしませんが、強度がある為少しでも操るものが力を入れると、鉄をも真っ二つに出来ます。
 その位操るのが難しい武器です。話には聞いた事がありましたが、本物を見るのは初めてです。
 赤外線爆破糸が作動しなかったのも、赤外線爆破糸を紫外線圧縮絃で巻いていたからという事でしたか」


とスプリットは紫外線圧縮絃の説明をし、何故自分の赤外線爆破糸が作動をしなかった理由を解決した。それを聞いていたセレムは、呆然と目を点にしていた。すると、ニキはシャンデリアの上でゆっくり拍手をして、笑いながらこう言った。


「凄い、凄い、紫外線圧縮絃の事を知ってるなんて、そんなにいないのに」


とふざけながら二人を煽るニキ。そして、シャンデリアに腰掛け足をブラブラさせ、考えながらこう言った。


「ずっとこのままでも別に構わないんだけどね。どうします?ランドネルトさん」


と言うニキの視線の先には、ランドネルトがコルネリッドを連れ赤外線爆破糸に巻き付いてる紫外線圧縮絃の上を歩いて来た。その歩き方はいくら紫外線圧縮絃で赤外線爆破糸を押えているとはいえ、何の躊躇もなく堂々としていた。それを見たニキは、クスクスッと笑いながらこう言う。


「ランドネルトさん、もしボクが今、ランドネルトさんが居る所だけ紫外線圧縮絃を緩めるとか考えないんですか?そしたら、赤外線爆破糸が爆破しちゃいますよ」


「その時は、お前を爆発する前に撃ち抜くから、心配無用だ。
 それにココでお前は爆発を起こさせない、何故ならこの建物にノークス様が居るからだ。
 だから、赤外線爆破糸に紫外線圧縮絃を巻き、爆破を止めているのだろう。この廃墟とした建物、
 それにさっき八椥が階段を壊したせいで、耐久性に問題があるから、だから、お前は赤外線爆破糸がある限り、
 紫外線圧縮絃を緩めないと思った。違うか?」


「さすが、ランドネルトさん。あの階段は止む終えませんでしたが、これ以上は危険ですからね」


その時、何かに気付いたランドネルトが八椥の方を見ると、険しい顔をしてニキ達にこう言った。


「まぁ、なんだ。このままでも良いのだが、物陰に隠れた方が身のためだ。赤外線爆破糸をしまえッ!」


とド迫力で言われたスプリットは思わず、赤外線爆破糸をしまった。それを確認したニキも紫外線圧縮絃をしまい、シャンデリアから降りて来た。そして、ランドネルトは後ろに居たコルネリッドをヒョイッと片手で脇に抱え近くにあったバーカウンターの中に向かって走って行った。


「ギャ~!」


とコルネリッドの叫び声について行くように、ニキとスプリットとセレムもカウンターの中に飛び込んで行った。すると、先に入っていたランドネルトは片膝を立て、いつでも飛び出せるような体勢をとっていた。その横には恐らくランドネルトに落とされたと思われるコルネリッドが頭から床に倒れていた。それを見たスプリットはコルネリッドを起こそうとした瞬間、コルネリッドはムキーッと怒りながら上半身を起こし、ランドネルトに近づきこう言った。


「なにすんじゃー!」


「お前に言うより強制連行した方が早い、そう判断した」


と相変わらずの無表情で淡々とした口調で言うランドネルトに、何も言えなくなるコルネリッド。そして、その間に水を差す様にニキが入って来た。


「ランドネルトさんが取った行動には少し驚いたけど、それをイジるのは後にして。これから、このカウンターから出ない方がいいかもね」


「何でなんだよ?」


「バカか!セレム」


とコルネリッドが少しムクれながらバカにした様な口調で、セレムに言うと、言われたセレムはカチンとした顔をして、コルネリッドの胸倉をつかみ上げた。


「ンッだと!コルネリッド!俺がバカならお前はなんだ!」


「少なくとも、お前よりは馬鹿ではないぞコルネリッドは」


とランドネルトがズバッと言った。それに腹を立てたセレムが立ち上がろうとした時、セレムの頭上を勢い良く風が吹いた。すると、セレム達の後ろにあった酒が置いてあった棚は風が当ると同時に、大きな切れ目が入った。まるで巨大な刀で切られたような跡だった。それを見たセレムは、目を見開き冷や汗を流した。

後一瞬、立ち上がりが早かったらと言いたそうな顔をしていた。セレムは直ぐにコルネリッドによって座らせられた。そして、コルネリッドに頭突きをされこう怒鳴られた。


「死にテーのか?死にテーンだな!」


「まぁ、落ち着いてコルネリッド。セレムはS級同士の戦いを見た事ないんですよ」


とコルネリッドの後ろに居たスプリットが、背中に手を添えて落ち着かせた。そして、スプリットはセレムにこう説明し始める。


「六椥と八椥、この二人は兄弟関係なのはセレムも知っての通りです。
 一見、刀を二本持っている八椥は現S2で、その実力は私達が戦ったこの二人より強いと思われます。
 ですが、六椥が”貴族狩“に入る前、S2だったと言う話は有名です。現と元どっちが勝つかって所ですね」




   ***



 役所のホールでは八椥が六椥に向かって、刀一本のまま攻撃の手を休めていなかった。その八椥の容赦ない攻撃を、スルリッとギリギリの所で避けている六椥。八椥は刀が当らない事にだんだん苛立ちを感じていた。そして、六椥は少し離れ柱の陰に行き余裕の笑みを浮かべこう言った。


「奇襲は上手くいったんだけどね、惜しいよね。僕がミクル君の事を知らなきゃ、銃弾が当っていたかもね。
 まっ、知っていなくても避けただろうね」


「やはり、知ってたか。どうりで俺が仕掛けた時も声を出さなかった訳だ」


「知ってるよ、この役所の真向かいの廃墟に二週間も潜伏して、僕達の動向を見張っていた、ミクル・ハーツ君。
 彼はその常人離れした視力と、標的の声に反応して狙いを捕捉する声帯感知ライフルで狙った獲物は今までのがした事がないって有名。そんな有名執事がホーシック家に居ない筈ないでしょ」


「チッ」


八椥は自分達が企てた奇襲作戦が、六椥に読まれていた事に舌打ちをした。六椥はそれを知っているから喋る時は物陰に行ってしまう、いくらミクルが驚異的な視力と、声帯感知ライフルで遠隔射撃の瞬間を狙っていようとも、六椥のスピードを捕らえるのはおそらく無理。かと言って、声帯感知ライフルに頼ろうとしても、物陰で喋られては直接当たらない。そう考えた八椥は一か八かの賭けに出る。

六椥の一瞬の隙を付いて、まるで電光石火の如く間合いを詰め、刀を後ろに水平に引き勢い良く突いた。すると、六椥は一瞬焦った様な表情をしたが刀が当る前に後ろに跳びはね回避した。その瞬間、六椥は物陰から出てしまった事に気が付いた。その時、ミクルの発射した弾丸が六椥を襲った。

その弾丸はさっきまでとは威力も早さも違い、通過速度が速過ぎて土埃が立ち、六椥に命中したのか近くに居た八椥も判断できなかった。その一連の事がたった一秒の事だった、誰も防ぎようがないと思っていた。それでも構えを緩めなかったのは六椥の凄さを一番知っている八椥だからこそ、そして、土埃が晴れて行く中に平然と立っていた六椥が居る。その手には白い刃の刀が握られ、床には二つに切られた弾丸が落ちていた。


「やー、さっきの突きは正直驚いたけど、ミクル君の射撃の腕には正直ガッカリだよ。
 一回目は大人数だったから、あの位になったと思ったけど、標的が一人なのにあの威力と早さしか出ないなんて。さっきから見てる限り、同じ相手には打てない様だね。まさに、奇襲専用だよね。今回は頼ったヤツの計算違いだったね」


と優しそうに今までと変わらない口調で言う六椥。対して八椥は、何かが上手く行き自信に満ちた表情をしながら、普段通り淡々とした口調に戻りこう言う。


「確かに、このコンビネーションでは倒せないって思っていたが、兄貴に刀を持たせる事は出来ると踏んでいた」


「あー、そう言う事か。確かに僕、刀抜いちゃった。以前のヤツだったらあり得ない戦法だったから、読めなかったよ。でも、僕は例えさっきのが無くても刀を抜いていたよ」


「それは、俺が強いって認めてくれたって事か?」


「あぁ、少なくとも以前よりは強いって感じてるよ」


と六椥が言いきる前に、八椥は踏み込んで一瞬にして刀を振った。その時、六椥は一歩踏み出し、二人はすれ違った。はためには、八椥だけが刀を素早く振った様にしか見えなかったが、八椥が足を止めた瞬間、右肩が切れ血が床に飛んだ。切られた八椥もいつ切られたのか分からない様子で、右肩を押えた。そして、振り返ると六椥の刀に血が一筋流れていた。そして、六椥は少し声のトーンを落とし独り言のようにこう言った。


「『白現しらうつつ』」


「なんだ、今の技は!あんなの神流流剣技にはなかった!」


「『白現』は僕が考えた。この位かわせないで、僕とやろうだなんて甘いよ」


と言う六椥は今までに見た事がない位、冷たい声色をしていた。その時、六椥の左頬からタラッと血が流れて来た。それを横目で確認した六椥は再び八椥の方を見た。すると、八椥は服の袖を切り右肩に巻き、止血していた。そして、再び構えを正して覚悟を決めた目で六椥にこう言った。


「兄貴が凄いのは以前からだったから分かっている、敵わないのも分かっている。だが、敵わないっと言っても、このまま引く気もない!」


「フーン、成程、ノークス嬢の執事になって精神的にも強くなったみたいだね」


「兄貴が何で”貴族狩“なんかに入ったのか、以前の俺はずっとそればかり考えていた。
 でも、ノークス嬢に会って自分の弱さを指摘された。
 確かに、俺は兄貴の事で他の兄貴達が出て行かないのを理由に日本町から出なかった。
 だが、それはただの甘えに過ぎないと教えられ、この人の執事にはなれないとも思った。
 そんな事は関係なく、ノークス嬢は俺を執事にして日本町から出してくれた。
 その時思った、ノークス嬢の執事になるからには、強くなり誰にも負けは許さない!」


と最後の言葉を強めた時、八椥は一瞬にして六椥に切りかかって来ていた。それを刀で受けた六椥は少し必死になる。八椥の動きが先程までと違うのは、明らかだった。なにが八椥を変えたのかは六椥にも伝わった。交えた刀から八椥のノークスに感じている感謝の想いと、護りたいと強く思っている事がジンジンと伝わってくる。だが、六椥にも譲れないモノがある。


「成程ね、実にヤツは面白いな。僕が思っていた以上の成長ぶり、正直、ノークス嬢に託したのは一か八かの賭けだったんだけどね、良い方に転んで嬉しいよ。良い事を教えてあげるよ」


と言いながら八椥の刀を弾いた。弾かれた八椥は低姿勢で飛ばされるのを防いだ。八椥は何を言っているのか分からない、といった表情をしていた。それを見た六椥は、刀をクルリと回し、もう片方の手の平に峰を置いて頬笑みを崩さずにこう話し始めた。


「ノークス嬢を見ていると面白いよ。ノークス嬢に関わる全ての人は彼女によって、形は違えど助けてもらう。
 そして、彼女を崇拝したがる。だけどね、僕は思うんだよ。彼女が正しいのは全く持ってその通りだ。
 だからこそ、そんな彼女の支えになりたいとか、彼女を守りたいって、知れば知る程に思ってしまうんだよ。
 それは僕が思うに、彼女の魅力なんだよ。
 そう彼女が悪い訳ではなく、その魅力に魅せられた方がイケナイんだよ」


その話を聞いていた誰もが息を呑んだ。そして、六椥は刀をリズミカルに手の上でポンポンと浮かす、その動作は刀さばきを読まれない様になのか、少し苛立ってとっている動作にもとれたが、それよりも八椥は楽しくて仕方がない様に感じた。その六椥は、一呼吸置いて話を続けた。


「そう彼も、ノークス嬢の魅力に魅せられた一人。面白いよね、
 同じ魅力に魅せられたのに、後から魅せられた方は側に居られて、毎日会えて声も聞こえて会話も出来て、
 触れられるのに、彼女の中には違う人間を感じて嫉妬。
 先に魅せられた方は尽して来たのに、彼女の為に自らを犠牲にして側を離れ三年、会えないし声も聞けない、
 だけど、彼女の事を一日たりとも思わなかった事はなく、彼女も彼を胸の内にとどめている。
 そんな、何もかもが逆の二人が対峙したらどうなると思う?」


その話の前者に心当たりがある八椥は、六椥に対してのある疑問が生じた。思い切って聞いてみる事にした。


「何故、兄貴はそこまで…、ノークス嬢とニコルの関係を知っているんだ」


八椥は六椥が語った前者が、ニコルを差している事が直ぐ分かった。八椥はノークスとニコルをまじかで見て来たからだ。だが、六椥はニコルとの接点なんて知っている限りでは、日本町でやり合った位だ。と思っていると六椥は自分の顎に人差し指を当て、小首を少し傾け、片目を閉じ食えない笑みを浮かべこう言った。


「さぁね…。剣士なら刀で感じてみなよ…、出来るならね」


その頬笑みと言葉は、まるで道化師の様だった。そして八椥は、腰に下がっている、もう一本の刀の柄を握った。

            



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

処理中です...