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15話
しおりを挟む「ところでマコト様は、これから何処か行く当てはあるのですか?」
「行く当ても何も、ここが何処だかすらわからないし、何処に行けばいいのかわからないよ」
「では、空いてるお部屋で良ければ泊まって行ってくださいな」
「え? 良いのか?」
「はい。そして明日、直接聞きに行ってみるとしましょう」
「聞きに行くって、何処に何を?」
「それはもちろん、お姫様のところへ事の真意を聞きにですよ」
「姫さんに会えんの!? っていうかこういうのって、王様に聞くもんじゃねえのか?」
「それが、王様と王妃様は、20周年のご結婚記念日でご旅行に出ていらっしゃるので、今はご不在なんです」
「国が滅亡するとか言ってるこんな大変な時に旅行かよ!?」
「20周年のご結婚記念日なんですから仕方ないじゃないですか!!」
「何で逆ギレされてんだおいっ!?」
「珍しく騒がしいな」
男のイケボが聞こえ、声の出所を見ると、玄関のドアを開けて入って来てたのは、一匹の茶色い太ってるっぽいネコ。
俺はそのネコの後ろからもう1人誰か入ってくると思って見てたけど、茶色いネコは器用に後ろ足で立ち上がり、ドアを閉めてそのまま中に入ってきた。
「あれ? いま確かに誰かが「客なんて珍しい」って言ってたと思うけど・・・?」
「オレが言ったんだが?」
「!?!?!?!?!?!?」
俺は驚きのあまり椅子から滑り落ちて茶色いネコを見た。
「なななななんだ!? ネネネネネネコが喋った!?!?!?」
「なにをそんなに驚く? 生まれたばかりじゃないんだから喋るに決まってるだろ。それに俺はネコじゃない。レッサーパンダだ」
「・・・マジで・・・?」
流暢に喋るネコ、じゃなくてレッサーパンダを見ながら、俺は目をまんまるにして口を開き、はたから見ればかなり間抜けな面を晒していたことだろう。
「・・・すげえ。すげえぜ異世界・・・まさか動物が喋るなんて・・・」
「マコト様のいた世界では喋らないんですか?」
「いた世界? どういうことだ?」
ファンナさんは何の躊躇もなくレッサーパンダに俺のことを説明している。
人間と動物が質疑応答しながら会話している光景。
まさに異世界。妹に自慢できるな。
・・・いや、アイツのことだ。妄想キモいって一蹴されるだけか・・・。
「・・・なるほど。随分とめんどくさいことに巻き込まれたものだな」
妹の可愛げの無さを思い出し絶望している間に説明も終わったらしく、レッサーパンダは俺の前に四足でトコトコ歩いて来ると、目の前で後ろ足で立ち上がった。
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