ある意味凄惨な異世界 ～ 憧れた異世界転移だったのに ～

６４話

「子供を可愛がるのはけして悪いことじゃないが、イザヨイのは度を越えているからな」
「・・・話はわかった。もうどうしようもないことも・・・」
「諦めないでくれ！」
「それで、何かわかったのか？」
「諦めたまま話しを進めないでくれ！！」

　イザヨイさんの悲痛な叫びを聞き流し、俺はひっくり返ったままのケンジャを起こした。

「あ、ああ。そのことなんだけど、調べれば調べるほどよくわからなくなってきてね」
「どう言う意味だ？」
「元の世界に戻るためには、７つの玉を集めれば良いとか、聖なる杯を手に入れれば良いとか、白い宇宙動物と契約すれば良いとか、なんか色々と書かれてるんだよ」
「色んなものが混じってて、色んな意味でドキドキするわ」
「この中のどれが真実なのか。全部真実なのか。それとも全部間違いなのか。現状ではどれも判断できないんだよ」
「それじゃどうしようもないじゃん。あ、別に文句言ってるわけじゃなくて、これからどうすりゃ良いんだって意味で」
「・・・そうだな。一度王都へ戻り、対策を練り直すか」
「結局、振り出しに戻る、か」
「それなら僕も同行させてもらうよ」
「お前は性懲りもなく姫さんに近づこうと――！！」
「変な言いがかりは止めてくれないかな？　僕はただ、この文献をお城の学者たちと調べれば、もっと何かわかるんじゃないかと思っただけなのに」
「あ、そ、そうだったのか。ごめ――」
「まあその過程でお姫様と運命的な出会いをしてラブロマンスが始まってしまったとしても、それはしょうがないことだよね」
「何がしょうがないことだ！！　結局姫さん目当てじゃねえか！！」
「それ以外何があるっていうんだい！！」
「開き直ってんじゃねえ！！」

　俺が一瞬でもこんな変態ウサギに謝ってしまうところだったことを後悔してると。

「・・・あの、お師匠様。ボクも一緒について行ってはダメですか？」
「お前はイザヨイたんだけじゃなくお姫様まで僕から奪うつもりかいっ！？」
「え？」
「アホかお前は！！　モモタローをお前と一緒にすんな！！　つか奪うも何もイザヨイさんも姫さんもお前のものじゃねえだろ！！」
「これからそうなるんだよ！！」
「なるわけねえだろ！！」

　何かもうお互いに遠慮がなくなってきた俺とケンジャが激しくプロレスをしている隣で、ポン太とモモタローは我関せずとばかりに話しを進めている。

「なぜ一緒に来たいんだ？」
「お城の学者さんとお話ししてみたいってこともありますけど、今まで村の外に出たことがなかったので、それで付いて行きたいなって思ったんです。・・・でも、やっぱり止めます。ただそれだけの理由ですし、ご迷惑になりそうなので」
「なんていじらしい！！　モモタロー触りたい抱きしめたいキモチヨクしてあげたいモモタローハァハァ！！」

　イザヨイさんが椅子に縛り上げられてるのにも関わらず、興奮してガタガタと椅子を揺らしている。
　・・・イザヨイさん・・・あんたもう・・・手遅れだよ・・・。