3 / 3
一章
二話
しおりを挟む目の前には男の子が立っていた。
その顔立ちはかなり整っていてまさに美少年というのに相応しいほどだった。
「どなたですか?」
問いかけるも返事はかえってこない。
真っ赤な髪が風に揺られ綺麗な水色の瞳が私をずっと見つめている。
その姿に目を奪われつい私もうっとりしてしまった。
「あの…」
目の前にいる美少年に話しかけられ我に返る。
「申し訳ございません。今日お招き頂いたアレン・フルートと申します」
フルート家の方だったの!
「私はティアナ・オルゴールと申します。お見苦しい所をお見せして申し訳ありませんでした」
ドレスの裾を持ち上げお辞儀をする。
「いっいえ、こちらこそ勝手に覗いてしまい申し訳ありません。……オルゴール令嬢、先程のは一体…」
やっぱり見られてたんだ…
「見られていましたの……あれは…『歌』というものです。ご説明が難しいのですが、言うなれば楽器のように声で音を奏ようなもの…でしょうか」
歌とはなんだと改めて聞かれると、他になんて言えばいいか分からずこれしか思いつかなかった。
「もう一度、聞かせてもらうことは出来ますか?」
「えっ?」
まさかの言葉に耳を疑い拍子抜けした声が出てしまった。
「もう一度聞かせてもらうことはダメでしょうか?」
やっぱり聞き間違いじゃなかった…
「えっと、あの…」
「無理…ですか」
「いっいえ、そんなことはありません」
「それでは少々待ってください」
一旦落ち着き息を整え準備をする。誰かに見られながら歌うというのは妙に緊張したが、すぐに気持ちを切り替え目をつぶると優雅に歌い始めた。
どこまでも 広がる空 輝く太陽 どうしてだろう この世界は 今日も美しいのにーー
淡々と歌を奏でるその姿にアレンは魅力されていった。
ティアナが歌い終わり目を開けると目の前の光景に驚愕した。目の前にいる美少年が泣いているのだから。
「どっどうされましたか!」
その状況に焦り、どうすればいいか戸惑う。
「もっ申し訳ありません。あまりにも美しかったもので感動してしまいました」
笑顔でそう言われ、なんて答えればいいか困ってしまいどうする事も出来なかった。
「お見苦しいところをお見せしました。それでもとても素晴らしかったです」
「お褒めの言葉ありがとうございます」
とりあえず褒めていただいたので感謝しそれに続き話し始める。
「歌は私の家族も知らないのです。ですからお見せするのはアレン様が初めてになります」
「そうなんですか…」
「ええ、きっかけはある本を読み歌と言うものがあるのを知りました。それから独学で学んでやっていたのですが皆に伝える機会がなく一人、ここでよく歌っているのです」
嘘をついているが本当の事も言っている。嘘に本当を混ぜることが良い嘘のつき方なのだ。
アレン様は少々黙り込んでしまったがすぐに口を開いた。
「…今のを皆に伝えてみてはいかがでしょうか?」
思いもよらない提案にポカンっとしてしまう。
「私は今の『歌』というものにすごく感激致しました。それを皆に知ってもらいたいです」
「ですが…」
「大丈夫です。私が保証します」
初めて会ったはずなのだが、どこか懐かしさを感じられる彼の言葉に押され屋敷に戻り私はオルゴール家の他にフルート家にも伝えてみることにした。
* * *
アレン様と屋敷に戻り皆のいる応接間に向かった。
応接間では何やら楽しそうな話し声が聞こえてきた。
コンコンっ
「何かね?」
「ティアナです。ただいまお庭から戻りましたわ。アレン様もご一緒です」
「おぉティアナか!入りたまえ」
「失礼いたします」
部屋に入るとソファーに座るお父様のマクナルト・オルゴールとお母様のレティシア、そしてその向かいにはフルート家の方が座っている。
私達が来るなり皆立ち上がり挨拶を交わした。
「ティアナ、こちらフルート家のシリウス様とメリア様だ。ご挨拶なさい」
「お初にお目にかかります。ティアナ・オルゴールと申します。シリウス様、メリア様よろしくお願い致します」
深々とお辞儀をして元に戻る。
「こちらこそよろしく頼むよ」
「ほらっ、アレンも挨拶なさい」
「アレン・フルートと申します。マクナルト様、レティシア様よろしくお願い致します」
「あぁ、よろしく」
「皆揃ったところですし、お茶でも致しましょうか?」
「それはいいですね!」
そう言うとオルゴール家とフルート家のお茶会が始まった。
0
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった
海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····?
友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
失踪していた姉が財産目当てで戻ってきました。それなら私は家を出ます
天宮有
恋愛
水を聖水に変える魔法道具を、お父様は人々の為に作ろうとしていた。
それには水魔法に長けた私達姉妹の協力が必要なのに、無理だと考えた姉エイダは失踪してしまう。
私サフィラはお父様の夢が叶って欲しいと力になって、魔法道具は完成した。
それから数年後――お父様は亡くなり、私がウォルク家の領主に決まる。
家の繁栄を知ったエイダが婚約者を連れて戻り、家を乗っ取ろうとしていた。
お父様はこうなることを予想し、生前に手続きを済ませている。
私は全てを持ち出すことができて、家を出ることにしていた。
竜帝に捨てられ病気で死んで転生したのに、生まれ変わっても竜帝に気に入られそうです
みゅー
恋愛
シーディは前世の記憶を持っていた。前世では奉公に出された家で竜帝に気に入られ寵姫となるが、竜帝は豪族と婚約すると噂され同時にシーディの部屋へ通うことが減っていった。そんな時に病気になり、シーディは後宮を出ると一人寂しく息を引き取った。
時は流れ、シーディはある村外れの貧しいながらも優しい両親の元に生まれ変わっていた。そんなある日村に竜帝が訪れ、竜帝に見つかるがシーディの生まれ変わりだと気づかれずにすむ。
数日後、運命の乙女を探すためにの同じ年、同じ日に生まれた数人の乙女たちが後宮に召集され、シーディも後宮に呼ばれてしまう。
自分が運命の乙女ではないとわかっているシーディは、とにかく何事もなく村へ帰ることだけを目標に過ごすが……。
はたして本当にシーディは運命の乙女ではないのか、今度の人生で幸せをつかむことができるのか。
短編:竜帝の花嫁 誰にも愛されずに死んだと思ってたのに、生まれ変わったら溺愛されてました
を長編にしたものです。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
恋愛
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
かわりに王妃になってくれる優しい妹を育てた戦略家の姉
菜っぱ
恋愛
貴族学校卒業の日に第一王子から婚約破棄を言い渡されたエンブレンは、何も言わずに会場を去った。
気品高い貴族の娘であるエンブレンが、なんの文句も言わずに去っていく姿はあまりにも清々しく、その姿に違和感を覚える第一王子だが、早く愛する人と婚姻を結ぼうと急いで王が婚姻時に使う契約の間へ向かう。
姉から婚約者の座を奪った妹のアンジュッテは、嫌な予感を覚えるが……。
全てが計画通り。賢い姉による、生贄仕立て上げ逃亡劇。
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
追放された王女は、冷徹公爵に甘く囲われる
vllam40591
恋愛
第三王女エリシアは、魔力も才覚もない「出来損ない」として、
婚約破棄と同時に国外追放を言い渡された。
王家に不要とされ、すべてを失った彼女を保護したのは、
王家と距離を置く冷徹無比の公爵――ルシアン・ヴァルグレイヴ。
「返すつもりだった。最初は」
そう告げられながら、公爵邸で始まったのは
優しいが自由のない、“保護”という名の生活だった。
外出は許可制。
面会も制限され、
夜ごと注がれるのは、触れない視線と逃げ場のない距離。
一方、エリシアを追放した王家は、
彼女の価値に気づき始め、奪い返そうと動き出す。
――出来損ないだったはずの王女を、
誰よりも手放せなくなったのは、冷徹公爵だった。
これは、捨てられた王女が
檻ごと選ばれ、甘く囲われていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
読ませていただきました!
とても面白そうです!
更新楽しみに待ってます❣