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1.平和とは
4.乙女心なる高校時代
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「…え?」
桜第3病院からの電話で、一瞬時が止まる。そして自然と手からするりとスマホが滑り落ち、画面に傷がついた。その場に座り込み、お医者さんが何か言っているのに気づいたから、画面の傷ついたスマホを持ち上げる。
「昨日心肺が停止しまして、なんとか一命を取りとめたのですが、今朝容態が突然悪化しました。そして、今日の17:31、死亡確認しました。」
「分かりました。…ありがとうございます」
私が言えることはそれだけだった。
「失礼しまーす」
突然扉が音を立てて開いた。何事かと思ったけれど、起き上がって確認するほどの力は、もう残ってはいなかった。
「す、すぐるん!大丈夫!?」
「葵…?」
そこに現れたのは、葵だった。私の高校の友達。葵を見たその時、一瞬で落ち着きが戻ってきた。そしてすぐ、涙が溢れ出した。葵がよく茜と遊んでいたことを思い出したから。
「え!?ちょ、ちょっとどうしたの?」
「茜が…茜がぁっ!」
「?」
葵と一緒に私の部屋に向かった。葵は昔から、お姉ちゃんみたいな存在だった。葵に膝枕させてもらいながら茜に関する全てを話すと、私の頭を撫でつつ
「そっかー、大変だったねぇ」
と落ち着かせてくれる。
「茜ちゃんが死んじゃったなんて、信じられないなー。」
「茜が死ぬくらいなら、私が代わりに…」
「死のうっての?」
「うん…」
「はぁ…。失望したよ、すぐるん。すぐるん史上最大の汚点だよ?」
「え?」
「すぐるん天才なのに、昔から人間関係苦手だよね。昔から好かれるのに、自分を好きな人と仲良くなろうとして、自分から仲悪くしちゃうよね」
葵の頭を撫でる手が止まる。
「どういうこと?」
「すぐるんさ。死んじゃった茜ちゃんが、すぐるんが泣きわめくのを見たいとでも思ってるの?」
「え?」
「すぐるんを守ろうとして茜ちゃん死んじゃったんでしょ?なのに、すぐるんが代わりに死にたいなんて、茜ちゃんに失礼すぎるよ!」
葵に正論を言われて、何も言い返せなくなる。
「すぐるん、茜ちゃんは誰かに殺されたんだと思うな。」
「え?」
「実は、ここに来る前に知識院の本部に行ったんだ。ほら、私ISLだし。その権限で、知識院のデータベースにアクセスして、その事件について調べたのよ。」
「え、ちょっと待って。葵ISLなの!?」
「うん。司法試験満点合格なんで」
「…!?」
ISL。それは、知識院特別捜査官『弁護部』の職員だ。基本的には司法試験1475点中1470点以上でなれるんだけど、確か今までに満点合格はいなかったはず。つまり、まさに天才だ。
「でね、茜ちゃんが殺られたセンサーあったじゃん?あれからあの家の持ち主と使用人の指紋は検出されなかったらしい」
「え?ってことは、あれを付けたのは家主さん以外の人?」
「うん。それと、検出された指紋は、茜ちゃんとすぐるんと宮沢さんと…それと、知識院長の秘書、『芥 春雨』。」
「芥さんって、あのネーミングセンスゼロの名前の人だよね。でも、なんでそんな人の指紋が…?」
小一時間ほど葵と話し合ったが、結果何もわからないという結論に達したので、とりあえず2人でお風呂に入ることにした。
「ふあー…気持ちいなー」
先に湯船に浸かっている葵が幸せそうに微笑んでいる。私はちょっと遅く入ったから、まだ体を洗っている所。
「すぐるん、体洗ってあげるよ」
「…へ?」
「体洗ってあげる」
「いいよ、なんか恥ずかしいし」
「大丈夫大丈夫。ぱぱっと洗ってあげるからさ」
「うーん、じゃあお願いするわ」
19歳の女の子が19歳の女の子に体を洗われるというなんとも言えない絵面だが、まあいいだろう。でも、他人に洗ってもらうと、なんか擽ったい。
「きゃっ!ちょっと葵、変なとこ触んないでよー」
「ごめんごめん。えっと、どこ洗ったっけなー」
「ちょっと、大丈夫?」
なんだか体を弄られてるみたいで恥ずかしいけど、よく考えたらおかしい。茜が生きてた頃はよく茜に背中流してもらってたのに、女の子に洗ってもらってるにも関わらず恥ずかしいって、どういうこと?
「すぐるん、相変わらず…」
「胸が無いっていいたいんでしょ」
「…」
もう、なんでみんな胸にしか目がいかないわけ?胸があると偉いのかよーっ!!
「うるさいなー…そんなこと言っても葵だっ…て…!?」
「んー?私意外と成長したからね?」
「このっ…裏切り者ーっ!」
「はぁ!?」
思わず葵に掴みかかる。床に座ってたおかげで、ちょっと滑っただけで済んだ。なんで?葵は普通に大っきいのに、私だけ無いのはなんで??まな板よ、まな板!
「はぁ…もうやだ、死にたい…」
「天才すぐるんの弱点その2、胸か。よし、後でメモしとく」
「しなくていいの!」
やっぱり神は不公平だ。こんなにも胸の大きさに差を出して何がしたいんだろう。葵なんて…
「お風呂入るかー」
「そうだねー」
2人で同時にお風呂に入ると、お湯が少し溢れ出す。こんな時にまで頭にアルキメデスがよぎる自分が怖い。
「ねえ、すぐるん」
「んー?」
「昔、私なんて呼ばれてたっけ?」
「んー、あおちゃんとか、あーちゃんとか?」
「おー、そっか。」
「なんで突然?」
「いや、私だけすぐるんって呼ぶの変かなって」
「じゃあ今度からあーちゃんって呼ぼうか?」
「あ、いいよ」
「じゃあそうする。」
「「…」」
まずい、本当に話すことがない。どうしよう?
「ねえ、すぐるん、こんな時に言うことじゃないと思うんだけどね」
「ん?」
「茜ちゃん、すぐるんのこと本当に大好きなんだよね。」
「だいぶ唐突ね。でも、それは無いと思うな。一緒にお風呂入った時も、私のことなんて、1度も見てくれなかったし。」
「すぐるんはほんっっとに鈍いんだから…。好きな女の子とお風呂入って騒げる男子がどこにいんのよ」
「え?」
…茜も私のことが好きってことになるのかなぁ
「すぐるん、今茜ちゃんに対して変なこと考えてる?もし茜ちゃんを襲いでもしたら、強姦罪で逮捕ね」
「わかってるわよ!ご、強姦なんてそんな…てか何回も言うけど逆だから!それに考えてるだけよ?なのに逮捕しようとしたら、『思想・良心の自由』侵害で、違憲だからね?裁判で負けるのはそっちでしょ」
「…確かに」
確かにとか言ってるけど、どうせ元々分かってたろうな(司法試験満点合格なんだし)。2人でお風呂からあがり、お茶を入れて私が買ってきたケーキでも食べようとした時だった。
「葵、ケーキ食べる?」
「あれ、もしかして忘れた?」
「え?…あ、そういや甘いもの苦手だっけ?」
「違うわ!私が卵アレルギーなの忘れたの?」
「あ、そうか」
「まったく…危うく友達に殺されるところだったわ」
何やら葵が怒っているけど、ただのツンデレだろうから見事にスルー。
「お待たせー」
「おー!すごいこれ。すぐるんが作ったの?」
「うん!私お手製の、卵不使用マドレーヌだよ!」
「うー、女子力では負けたか」
女子力も何も無いでしょこんなの…マドレーヌくらい誰にでも作れるよ?
「今時間あるし、作り方教えようか?」
「おー、頼むわ」
「それじゃー、キッチンにゴー!」
「おー!」
マドレーヌを咥えながら着いてくる葵を見て笑いを堪えながらキッチンに向かう。
「えっとー、エプロンは…」
エプロンを葵に渡して、私はもうひとつのエプロンを付ける。
「すぐるん、このエプロン『優』って書いてあるけど」
「え?あ、間違えて茜の着ちゃった。どうりでサイズが合わないわけだ」
「まあいいか。早く作り方教えて!」
「はいはい。その前に手を洗いましょー」
お菓子作りは感覚でできる人もいるらしいけど、私の場合、レシピを完璧に記憶してる。(だって、1回だけ感覚でやったら、砂糖の量多すぎて甘かったし)
「はい、洗いましたよ先生」
「先生って…。まあいいか。じゃー、行きますか」
「うん!」
葵がなにやら張り切っているから、私も珍しく本気を出す。一応言っておくけど、今23:06…。こんな時間にお菓子食べたら太るよねー
「じゃあ、まず材料から。卵使わないでいきまーす。まず、ホットケーキミックス200g」
「計量器どこ?」
「棚の上。その隣にホットケーキミックスあるよ」
「届かないんだけど」
「私も」
わかっているとは思うけど、勿論いつもは茜に取らせていた。茜より背の高い人を見たことがない私は、どうしようも出来ない。
「どうしようか」
「あ、そうだ。ちょっとまってて」
私が知る人間の中で2番目に背が高いのは?と考えた時に出てきたのは、宮沢さんだった。
〈はい。こちら知識院本部職員、宮沢です。この電話番号は、優様ですね?どうされましたか?〉
「あ、宮沢さん。ちょっとでいいからうちの事務所来て貰えませんか?理由は…来ればわかります」
〈承知致しました、15分ほどお待ちください。それと、私には敬語を使わなくて結構です。私自身、使われるのに慣れていないというのもあるのですが、私はあくまでISDの方々の執事的立場ですので。〉
「わかった、では遠慮なく」
〈それでは、少々お待ちください。〉
宮沢さん、わざわざすみません…。お礼にマドレーヌあげますから、どうかお許しを。
「宮沢さんって誰?」
「知識院の人」
「下の名前は?」
「翔…だったかな?」
「ふーん」
なんだろう、知り合いかな?まあいいや。あ、ていうか宮沢さん来るまで私たち何も出来ないじゃん!うーん、何しようかなー。あと2、30分で日付超えるしなぁ…。
「ねえ、すぐるん」
「んー?」
「高校の時よくやった、アレやってよ。」
「アレって…」
「忘れたの?」
「覚えてるよ!覚えてるけどさ…」
葵は私が少し恥ずかしがっているのを見てニヤニヤと笑っている。私が恥ずかしがる理由。それは…
「ねえ、アレってさ」
「ん?ベッドでいちゃつくこと、意外にある?」
「いや、分かってるけどさ。めっちゃ恥ずかしいんだけど」
「そう?でも、恥ずかしがってるすぐるん、めちゃくちゃ可愛いよ?特に、いつだっけな…。私がすぐるんの服を」
「うわぁぁぁぁぁっ!!!それだけはやめてぇぇぇ!!」
「あはっ!可愛い~っ!」
忘れもしない、1年前の12月。いつもは2人で勉強したあと、ベッドの上で一緒に寝たりしていた。まあ基本的には寝るだけじゃなくて「カップルごっこ」なるものをやっていた。具体的に言うと抱き合ったり、愛してるゲームやったり…。しかし、その日は違った。葵が血迷ったのか、突然私の服を脱がせ始めたのだ!
「えっ!?ちょ、ちょっと葵何して…」
「まあまあ、落ち着いて」
「落ち着けるわけないじゃん!葵のバカ!」
「なによその某アニメ映画みたいなセリフは」
「人の服脱がそうとしておいてよくそんなこと言えるわね!」
「…話せばわかる」
「犬養毅か!ってそんなことはいいのよ、何やってんの!?」
いい加減突っ込むの疲れてきた…
「あーちゃん!何して…きゃっ!胸触るな~っ!お尻はもっとまずい!今意図的に触ったよね!?何よ、無いからおちょくるために服脱がせてんの?最低!変態!もう絶交!」
「いやいや、落ち着いて。…あー、やっぱりね」
「え?やっぱりって?」
「すぐるんさ、間違えて私のシャツ着てるよ」
「え?」
「今日の体育の時間で入れ替わっちゃったんだねー。すぐるんのシャツ、私が持ってる。あれは私には小さいからねー。」
「確認するなら普通にすればいいじゃない!なんで脱がせる必要があるのよ」
「いや、何となくね。すぐるんの裸を見てやろうと…うへへへへ…」
「ごめんあーちゃん。きもい!!」
「ごめんって。とりあえず、シャツ脱いで。変えたいから私も脱がないとか」
私が間違えてしまったシャツを取り替えるためにお互い服を脱いだその瞬間だった。ドアが叩かれ、開く音がした。その間わずか2秒たらず。
「姉ちゃん入るよー…!?!?!?」
「へ?」
茜が突然部屋に入ってきたのだ。ご飯ができたと呼んでも来ないから、わざわざ部屋に呼びに来たらしい。しかし、私たちはそれどころじゃない。こっちは女子二人が服を脱いでいる!それを弟に見られるとは…。
「あ、茜ちゃん。やっほー…」
「す、すいません!失礼しました…」
「いや、大丈夫だよー」
「あの、姉ちゃん?姉ちゃんめちゃくちゃ汗かいてるけど、そこ俺のベッド…」
「わ、わかってるわよ!ごめんね、ほんとに」
「いや、大丈夫。早く服きて。できるだけ早く」
「う、うん」
茜が少し怒ったような感じで言ってくるから、急いで服を着替えた。
桜第3病院からの電話で、一瞬時が止まる。そして自然と手からするりとスマホが滑り落ち、画面に傷がついた。その場に座り込み、お医者さんが何か言っているのに気づいたから、画面の傷ついたスマホを持ち上げる。
「昨日心肺が停止しまして、なんとか一命を取りとめたのですが、今朝容態が突然悪化しました。そして、今日の17:31、死亡確認しました。」
「分かりました。…ありがとうございます」
私が言えることはそれだけだった。
「失礼しまーす」
突然扉が音を立てて開いた。何事かと思ったけれど、起き上がって確認するほどの力は、もう残ってはいなかった。
「す、すぐるん!大丈夫!?」
「葵…?」
そこに現れたのは、葵だった。私の高校の友達。葵を見たその時、一瞬で落ち着きが戻ってきた。そしてすぐ、涙が溢れ出した。葵がよく茜と遊んでいたことを思い出したから。
「え!?ちょ、ちょっとどうしたの?」
「茜が…茜がぁっ!」
「?」
葵と一緒に私の部屋に向かった。葵は昔から、お姉ちゃんみたいな存在だった。葵に膝枕させてもらいながら茜に関する全てを話すと、私の頭を撫でつつ
「そっかー、大変だったねぇ」
と落ち着かせてくれる。
「茜ちゃんが死んじゃったなんて、信じられないなー。」
「茜が死ぬくらいなら、私が代わりに…」
「死のうっての?」
「うん…」
「はぁ…。失望したよ、すぐるん。すぐるん史上最大の汚点だよ?」
「え?」
「すぐるん天才なのに、昔から人間関係苦手だよね。昔から好かれるのに、自分を好きな人と仲良くなろうとして、自分から仲悪くしちゃうよね」
葵の頭を撫でる手が止まる。
「どういうこと?」
「すぐるんさ。死んじゃった茜ちゃんが、すぐるんが泣きわめくのを見たいとでも思ってるの?」
「え?」
「すぐるんを守ろうとして茜ちゃん死んじゃったんでしょ?なのに、すぐるんが代わりに死にたいなんて、茜ちゃんに失礼すぎるよ!」
葵に正論を言われて、何も言い返せなくなる。
「すぐるん、茜ちゃんは誰かに殺されたんだと思うな。」
「え?」
「実は、ここに来る前に知識院の本部に行ったんだ。ほら、私ISLだし。その権限で、知識院のデータベースにアクセスして、その事件について調べたのよ。」
「え、ちょっと待って。葵ISLなの!?」
「うん。司法試験満点合格なんで」
「…!?」
ISL。それは、知識院特別捜査官『弁護部』の職員だ。基本的には司法試験1475点中1470点以上でなれるんだけど、確か今までに満点合格はいなかったはず。つまり、まさに天才だ。
「でね、茜ちゃんが殺られたセンサーあったじゃん?あれからあの家の持ち主と使用人の指紋は検出されなかったらしい」
「え?ってことは、あれを付けたのは家主さん以外の人?」
「うん。それと、検出された指紋は、茜ちゃんとすぐるんと宮沢さんと…それと、知識院長の秘書、『芥 春雨』。」
「芥さんって、あのネーミングセンスゼロの名前の人だよね。でも、なんでそんな人の指紋が…?」
小一時間ほど葵と話し合ったが、結果何もわからないという結論に達したので、とりあえず2人でお風呂に入ることにした。
「ふあー…気持ちいなー」
先に湯船に浸かっている葵が幸せそうに微笑んでいる。私はちょっと遅く入ったから、まだ体を洗っている所。
「すぐるん、体洗ってあげるよ」
「…へ?」
「体洗ってあげる」
「いいよ、なんか恥ずかしいし」
「大丈夫大丈夫。ぱぱっと洗ってあげるからさ」
「うーん、じゃあお願いするわ」
19歳の女の子が19歳の女の子に体を洗われるというなんとも言えない絵面だが、まあいいだろう。でも、他人に洗ってもらうと、なんか擽ったい。
「きゃっ!ちょっと葵、変なとこ触んないでよー」
「ごめんごめん。えっと、どこ洗ったっけなー」
「ちょっと、大丈夫?」
なんだか体を弄られてるみたいで恥ずかしいけど、よく考えたらおかしい。茜が生きてた頃はよく茜に背中流してもらってたのに、女の子に洗ってもらってるにも関わらず恥ずかしいって、どういうこと?
「すぐるん、相変わらず…」
「胸が無いっていいたいんでしょ」
「…」
もう、なんでみんな胸にしか目がいかないわけ?胸があると偉いのかよーっ!!
「うるさいなー…そんなこと言っても葵だっ…て…!?」
「んー?私意外と成長したからね?」
「このっ…裏切り者ーっ!」
「はぁ!?」
思わず葵に掴みかかる。床に座ってたおかげで、ちょっと滑っただけで済んだ。なんで?葵は普通に大っきいのに、私だけ無いのはなんで??まな板よ、まな板!
「はぁ…もうやだ、死にたい…」
「天才すぐるんの弱点その2、胸か。よし、後でメモしとく」
「しなくていいの!」
やっぱり神は不公平だ。こんなにも胸の大きさに差を出して何がしたいんだろう。葵なんて…
「お風呂入るかー」
「そうだねー」
2人で同時にお風呂に入ると、お湯が少し溢れ出す。こんな時にまで頭にアルキメデスがよぎる自分が怖い。
「ねえ、すぐるん」
「んー?」
「昔、私なんて呼ばれてたっけ?」
「んー、あおちゃんとか、あーちゃんとか?」
「おー、そっか。」
「なんで突然?」
「いや、私だけすぐるんって呼ぶの変かなって」
「じゃあ今度からあーちゃんって呼ぼうか?」
「あ、いいよ」
「じゃあそうする。」
「「…」」
まずい、本当に話すことがない。どうしよう?
「ねえ、すぐるん、こんな時に言うことじゃないと思うんだけどね」
「ん?」
「茜ちゃん、すぐるんのこと本当に大好きなんだよね。」
「だいぶ唐突ね。でも、それは無いと思うな。一緒にお風呂入った時も、私のことなんて、1度も見てくれなかったし。」
「すぐるんはほんっっとに鈍いんだから…。好きな女の子とお風呂入って騒げる男子がどこにいんのよ」
「え?」
…茜も私のことが好きってことになるのかなぁ
「すぐるん、今茜ちゃんに対して変なこと考えてる?もし茜ちゃんを襲いでもしたら、強姦罪で逮捕ね」
「わかってるわよ!ご、強姦なんてそんな…てか何回も言うけど逆だから!それに考えてるだけよ?なのに逮捕しようとしたら、『思想・良心の自由』侵害で、違憲だからね?裁判で負けるのはそっちでしょ」
「…確かに」
確かにとか言ってるけど、どうせ元々分かってたろうな(司法試験満点合格なんだし)。2人でお風呂からあがり、お茶を入れて私が買ってきたケーキでも食べようとした時だった。
「葵、ケーキ食べる?」
「あれ、もしかして忘れた?」
「え?…あ、そういや甘いもの苦手だっけ?」
「違うわ!私が卵アレルギーなの忘れたの?」
「あ、そうか」
「まったく…危うく友達に殺されるところだったわ」
何やら葵が怒っているけど、ただのツンデレだろうから見事にスルー。
「お待たせー」
「おー!すごいこれ。すぐるんが作ったの?」
「うん!私お手製の、卵不使用マドレーヌだよ!」
「うー、女子力では負けたか」
女子力も何も無いでしょこんなの…マドレーヌくらい誰にでも作れるよ?
「今時間あるし、作り方教えようか?」
「おー、頼むわ」
「それじゃー、キッチンにゴー!」
「おー!」
マドレーヌを咥えながら着いてくる葵を見て笑いを堪えながらキッチンに向かう。
「えっとー、エプロンは…」
エプロンを葵に渡して、私はもうひとつのエプロンを付ける。
「すぐるん、このエプロン『優』って書いてあるけど」
「え?あ、間違えて茜の着ちゃった。どうりでサイズが合わないわけだ」
「まあいいか。早く作り方教えて!」
「はいはい。その前に手を洗いましょー」
お菓子作りは感覚でできる人もいるらしいけど、私の場合、レシピを完璧に記憶してる。(だって、1回だけ感覚でやったら、砂糖の量多すぎて甘かったし)
「はい、洗いましたよ先生」
「先生って…。まあいいか。じゃー、行きますか」
「うん!」
葵がなにやら張り切っているから、私も珍しく本気を出す。一応言っておくけど、今23:06…。こんな時間にお菓子食べたら太るよねー
「じゃあ、まず材料から。卵使わないでいきまーす。まず、ホットケーキミックス200g」
「計量器どこ?」
「棚の上。その隣にホットケーキミックスあるよ」
「届かないんだけど」
「私も」
わかっているとは思うけど、勿論いつもは茜に取らせていた。茜より背の高い人を見たことがない私は、どうしようも出来ない。
「どうしようか」
「あ、そうだ。ちょっとまってて」
私が知る人間の中で2番目に背が高いのは?と考えた時に出てきたのは、宮沢さんだった。
〈はい。こちら知識院本部職員、宮沢です。この電話番号は、優様ですね?どうされましたか?〉
「あ、宮沢さん。ちょっとでいいからうちの事務所来て貰えませんか?理由は…来ればわかります」
〈承知致しました、15分ほどお待ちください。それと、私には敬語を使わなくて結構です。私自身、使われるのに慣れていないというのもあるのですが、私はあくまでISDの方々の執事的立場ですので。〉
「わかった、では遠慮なく」
〈それでは、少々お待ちください。〉
宮沢さん、わざわざすみません…。お礼にマドレーヌあげますから、どうかお許しを。
「宮沢さんって誰?」
「知識院の人」
「下の名前は?」
「翔…だったかな?」
「ふーん」
なんだろう、知り合いかな?まあいいや。あ、ていうか宮沢さん来るまで私たち何も出来ないじゃん!うーん、何しようかなー。あと2、30分で日付超えるしなぁ…。
「ねえ、すぐるん」
「んー?」
「高校の時よくやった、アレやってよ。」
「アレって…」
「忘れたの?」
「覚えてるよ!覚えてるけどさ…」
葵は私が少し恥ずかしがっているのを見てニヤニヤと笑っている。私が恥ずかしがる理由。それは…
「ねえ、アレってさ」
「ん?ベッドでいちゃつくこと、意外にある?」
「いや、分かってるけどさ。めっちゃ恥ずかしいんだけど」
「そう?でも、恥ずかしがってるすぐるん、めちゃくちゃ可愛いよ?特に、いつだっけな…。私がすぐるんの服を」
「うわぁぁぁぁぁっ!!!それだけはやめてぇぇぇ!!」
「あはっ!可愛い~っ!」
忘れもしない、1年前の12月。いつもは2人で勉強したあと、ベッドの上で一緒に寝たりしていた。まあ基本的には寝るだけじゃなくて「カップルごっこ」なるものをやっていた。具体的に言うと抱き合ったり、愛してるゲームやったり…。しかし、その日は違った。葵が血迷ったのか、突然私の服を脱がせ始めたのだ!
「えっ!?ちょ、ちょっと葵何して…」
「まあまあ、落ち着いて」
「落ち着けるわけないじゃん!葵のバカ!」
「なによその某アニメ映画みたいなセリフは」
「人の服脱がそうとしておいてよくそんなこと言えるわね!」
「…話せばわかる」
「犬養毅か!ってそんなことはいいのよ、何やってんの!?」
いい加減突っ込むの疲れてきた…
「あーちゃん!何して…きゃっ!胸触るな~っ!お尻はもっとまずい!今意図的に触ったよね!?何よ、無いからおちょくるために服脱がせてんの?最低!変態!もう絶交!」
「いやいや、落ち着いて。…あー、やっぱりね」
「え?やっぱりって?」
「すぐるんさ、間違えて私のシャツ着てるよ」
「え?」
「今日の体育の時間で入れ替わっちゃったんだねー。すぐるんのシャツ、私が持ってる。あれは私には小さいからねー。」
「確認するなら普通にすればいいじゃない!なんで脱がせる必要があるのよ」
「いや、何となくね。すぐるんの裸を見てやろうと…うへへへへ…」
「ごめんあーちゃん。きもい!!」
「ごめんって。とりあえず、シャツ脱いで。変えたいから私も脱がないとか」
私が間違えてしまったシャツを取り替えるためにお互い服を脱いだその瞬間だった。ドアが叩かれ、開く音がした。その間わずか2秒たらず。
「姉ちゃん入るよー…!?!?!?」
「へ?」
茜が突然部屋に入ってきたのだ。ご飯ができたと呼んでも来ないから、わざわざ部屋に呼びに来たらしい。しかし、私たちはそれどころじゃない。こっちは女子二人が服を脱いでいる!それを弟に見られるとは…。
「あ、茜ちゃん。やっほー…」
「す、すいません!失礼しました…」
「いや、大丈夫だよー」
「あの、姉ちゃん?姉ちゃんめちゃくちゃ汗かいてるけど、そこ俺のベッド…」
「わ、わかってるわよ!ごめんね、ほんとに」
「いや、大丈夫。早く服きて。できるだけ早く」
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