レディース総長がクソゲー悪役令嬢に強引転生させられた挙句、王子様に恋しました。

篠山猫(ささやまねこ)

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05:流れで知らない乗馬を勝手に押し付けられる試練

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校舎に入ったテリーゼは大学の様な講堂を目にする。
天井にステンドグラスの入った講堂は広い、何処にでも座れる様だ。
周りを見渡すと特に制服といった形式ばったものは無さそうだ。
席に座ったり雑談している学生が見える。
しかし、固まっているグループと孤立している者が混在している様な雰囲気が目についた。

暫くすると更に学生が増えていく。
そして教会の鐘の音が鳴り響くと40代頃の女性が入って来た。
眼鏡をかけた姿は少しインテリの様に感じる。

「今日は障害馬術を披露して頂きます、推薦はいますか?」

大きくどよめくと、複数の声で推薦が入る。
何か嫌な予感がする。

「テリーゼ様は如何でしょう。」
「テリーゼ様!」
「エレガントなテリーゼ様!」
「(馬なんか乗った事ねぇよ、どーすんだ。)」

声が静止すると眼鏡をかけた女性は言葉をつづけた。

「それでは皆さん、テリーゼ嬢に拍手を。」

テリーゼは大量の冷汗をかいている。
このままでは馬に乗れない赤っ恥のテリーゼを演出してしまう。
無い頭をフル回転し、なんとかその場を凌ぐ策を考える。
3回タップして超高性能AIと思われる機械を呼び出す。

「断るお嬢様言葉をだせ!」
わたくしには身に余りましてよ、他に推薦はいまして?」
「さ、サンキューな・・・」

テリーゼはコンソールを閉じると、それらしいイメージを浮かべながら思うがままに演じた。
勢いよく立つと共に羽扇子を勢いよく広げ、張り詰めた高い音を出す。
羽扇子で口元を隠すと更に目を細めてこのように言い放った。

「お待ちになって!
 私には身に余りましてよ、他に推薦はいまして?」

テリーゼの声にどよめきが起き、眼鏡をかけた女性も少し驚いた様子だ。
それもその筈、本来のテリーゼは断れずに引き受けるのが慣例。
周辺も意外性を感じている様だ。

「・・・エクセレント、チャンスに恵まれない学生にも推薦しましょう。」

すると長い金髪を纏めた清楚な女性が手を挙げる。
例えるならば貴族の女剣士のような凛々しい表情でどうにもかなり優等生に見えた。

「オリビア様!」

大きな声が飛び交うと、一斉に拍手が向けられた。
こうして皆が席を立つとそれぞれ移動を始めた。
校舎は表向き普通の建物に見えたが厳密には緩やかな楕円形の様だ。
裏側に移動すると広い敷地が広がり、馬術以外にも多目的用途に使えそうだ。

こうしてオリビアと呼ばれた女性は華麗に障害馬術を披露したのだった。
しかしこれで収まらなかった。
テリーゼ様!コールが鳴り響き始めた。
非常に不味い・・・バイクに乗るのはお手の物だが馬とは違う。

3回タップして超高性能AIと思われる機械を呼び出す。

「馬を操る方法を教えてくれ!💧」
「%%%%”!」
「魔法かよ!!💢」
「ご名答・・・」
「(マジか・・・)」

引き渡された馬とコミュニケーションを取っている様にごまかす。
そして周辺に分からない様に手をかざし「言う事を聞いてくれ」と強く念じた。
すると一瞬だけ淡い光が馬の首に吸い込まれた。
上手くいくかは皆目見当がつかない。

テリーゼは馬に跨ると手綱を引いた。
すると馬はなんとかテリーゼの思い通りに走ってくれる様だ。
予想していたよりも華麗に障害物を跳び越し、それを見た者は惜しみの無い拍手を送った。

馬から降りたテリーゼの内心は冷や汗物。
そこに先程のオリビアと呼ばれていた女性が近づく。
そして手を差し出して来た。
どうやら握手を求めている様だ。

「素晴らしかったわ。」

転生したテリーゼ自身には全く覚えがない。
しかし、本来のテリーゼとはどうやら親交があるようだ。
そしてお互いに握手を交わすと、更に周辺から喝采を浴びた。

オリビアのオーラはテリーゼにとっても純粋に恰好よく映った。
これが貴族なのかと、少し惚れそうになる。
自然に体が動き、気付いた時にはオリビアをハグしていた。

これを見た者は「テリーゼ様!」「オリビア様!」といった声が飛び交う。
何か言い知れぬ心地よさを感じたテリーゼであった。
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