魔女は言う。「復讐したい? なら新兵器の実験台になってくれないかしら?」と……  【鎧殻剣記】

熱燗徳利

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第6話 襲撃

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「……なんだ? たんなる火事……じゃないよな?」
 
 遠くに上がる火の手を見ながら、アルベクは驚愕する。突然の出来事に街道にいる人々もみな足を止め、ヒソヒソと話し合っていた。

(「四か月前、帝都ロージアで爆発事件が起こったでしょう? それも魔術師の仕業」)

 セフィーネの言葉が思い起される。もしそうなら……

 次の瞬間だった。後方に巨大な火の玉が落下し、そこにいた人々を巻き込んで大爆発が起こる。アルベクの身体は衝撃と熱風で宙に浮き、吹っ飛ばされた。

 まわりの人々の悲鳴が響き、前方に逃げようとする。ただし、これで終わりではなかった。逃げ惑う人々を追うように、巨大な火球が出現し、人々を焼き焦がした。
死体の山が積み重なり、人間の身体が焼ける臭いが、アルベクの鼻を突いた。

「なんだ……なんなんだよこれ……」

 さらに次々と火球は街道に落下してきた。アルベクは持ち前の運動神経で間一髪火の玉から逃れた。しかし、あたりで他に生きている人間の姿は確認できなかった。
 
「畜生! ふざけやがって!」

 アルベクが絶叫すると、空から複数の人影が飛来し、円陣を組むようにアルベクを取り囲む。
 彼らは黒いフードを身体に纏い、顔にも黒いの髑髏の仮面をかぶっていた。まるで死神のように見える。

「このあたり一帯みんな吹っ飛ばしたつもりだったが、おまえ、すばしっこいな」
 彼らのうち一人が野太い声で言う。まるで、自分たちがこの事件の首謀者だという口ぶりだ。

「……なんなんだよ。あんたら……何者だ?」
「俺達か? 俺達は自由な黒の魔術師だ」
 
 ……魔術師。やはりセフィーネの言っていたことは本当だった。ヴァルスレンの弾圧から生き残った魔術師の末裔たちが、 今アルベクの眼前にいる。

 魔術師たちはじりじりと距離を詰めてくる。
 すると、その一人がアルベクの制服に視線を向け、嘲笑う。

「ふっ、奇妙な服を着てやがるな……そうかセリオス大学の学生か?」
「良いとこの坊ちゃんか気にいらねぇな」
「安心しな、すぐに灰にしてやるさ」

 アルベクは剣術の稽古に励んできたし、格闘技の心得もある。しかし、剣は手元にない上に、無手でこの人数を相手にするのは無理がある……それにやつらは魔術師だ…… とうてい勝てるとは思えない。

「……さっきのは魔術……なんだろ? あんたらは……シェルド族か?」
 アルベクは彼らに問う。その声が少しばかり震えているのを自分でもわかった。

「そうだ、俺たちはシェルド族! ヴァルスレンに迫害された可哀そうな民族さ」
「だが、今はもう力を得た。積年の恨みを晴らす時が来たのよ」

 そう言うと、魔術師の一団はフードと黒い仮面を外す。そこからはシェルド族特有の白い髪と紫の瞳が露になった。
 また、肌には魔術式が刻まれた入れ墨も見える。

「どうだ坊主。この前、墨入れたんだ…… オシャレのためじゃねえぞ? これで魔力が向上するんだぜ。さらに、この核玉《コア》だ」
 
 魔術師の一人が自分の胸を叩く。すると、彼の胸元が黒く光る。他の魔術師の胸元も黒い光が放出されていた。そして、黒い炎が全身を覆う。

 黒い炎は彼らのローブを焼き焦がし、肉体そのものを変質させる。
 頭部は動物の頭蓋骨に酷似した外殻で覆われ、それぞれが皆異なる造形となった。牛や山羊、馬に鳥など様々な髑髏の頭部が不気味さを演出する。
 二足歩行の異形の怪物たち。髑髏の下の紫の瞳が不気味に光りながら、こちらを捉えている。

「小僧、この姿を見れるなんて光栄なことだぜ」

 その言葉とともに、アルベクの左脇にいた魔術師が上段蹴りを繰り出してくる。とっさに腕でガードしたものの、そのあまりの脚力の前に、前腕の骨が軋み、そして砕けるのを感じる。

「ぐっ……」

 衝撃と痛みの前に、アルベクは地面に倒れ伏す。彼らは身体能力を大幅に強化されているようだった。魔力のないアルベクでは手も足も出ない。

「ああ、脆いなぁ……ただの人間はこんなに脆い。俺たちみたいな超人になれなかったことを悔いながら死んでいきな」

 魔術師は、倒れ伏すアルベクの右脚を力を込めて踏みつける。

「ぐ、うぁぁぁぁぁ!!!」

 あまりの痛みに絶叫する。見なくとも、右脚の骨も砕けたことがわかる。
 逃げようとしても、もう身体はいう事を聞いてくれない。

「ざまぁねえな。ただ、てめえ一人に時間を掛けてられねぇんでな。爆ぜろ!!」

 そう叫ぶと、賊の掌《てのひら》が黒く光り、深紅の巨大な火球が放たれる。それは避けことなど不可能で、アルベクに直撃する。

 火球が肉を焦がすのを感じた後……アルベクの意識は徐々に遠のいていった……
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