魔女は言う。「復讐したい? なら新兵器の実験台になってくれないかしら?」と……  【鎧殻剣記】

熱燗徳利

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第21話 変化

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(どうすればこの男に勝てる……どうすれば)

 地面に倒れ伏しながらも、アルベクの心はまだ砕けてはいなかった。

「まだ立てるのだろう? 続きをやるぞ若人よ」

 ガルクスはこちらに向かってくる。アルベクは何とか立ち上がり、再び長剣を生成して構える。

「ほお、弱いが、その気力は良し」
「俺だって厳しい訓練をしてきたからな…… こんなことで挫けやしないさ」
「なれば、意地を見せてみよ!」

 そう言って、金砕棒を横に薙ぐ。アルベクはその攻撃に長剣をぶつける。長剣はまたしても大破し、その破片が飛ぶ。が、アルベクは右手で瞬時に新しい長剣を生成し、片手一本でガルクスの傷口めがけて攻撃を繰り出した。

「おぉ!?」

 アルベクを侮っていたガルクスであったが、この戦法は意外であった。しかし、冷静に腕を傷口の前に出してガードする。アルベクの長剣は腕の赤黒い鱗に防がれる。

「くっ!」

 搦手が効かなかったのを受けて、急ぎ後方に跳躍する。

「ふふっ。面白い事を考える。だが、所詮は浅知恵よ……」

 ガルクスの胸部が禍々しく輝き、金砕棒が黒く発光する。ただでさ強力な金砕棒の出力があがっていくのがわかる。

「この一撃、避けられるかな?」

 そう言って突き出された金砕棒はアルベクの頭めがけて伸びてくる。もの凄い速度で迫ってくる金砕棒をアルベクは頭をそらして躱そうとする。しかし、間に合わず、頭部の装甲は砕け、頭から大量の血が噴き出す。
 
「あ……あぁ」

 アルベクは地面に倒れ伏す。超高波動を纏った一撃は、核玉《コア》の力をもってしても、治りが遅い。アルベクはなんとか立ち上がらねばと思うが、身体に力が入らず、頭もクラクラとふらつくような感覚だった。
 
「これで、終わりよ」

 ガルクスは笑う。

(……畜生……立て……立て)
 
 なんとか震える身体を叩き起こそうとするが、身体は無力な赤子のように力が入らず、言う事を聞いてくれない。まるで、自分の身体ではないみたいな不思議な感覚だった。

 頭のふらつくような感覚も改善するどころかより強くなってくる。ぼやけた頭は今をどうするかではなく、過去の思い出を映し出していた。
 
 様々なことが走馬灯のように頭の中を駆け抜ける。剣術に打ち込んできた日々、叔父の顔、訓練の日々、十八年の人生で出来た友の顔。

(ここで死ぬのか……俺は)

 死ぬ寸前だというのに、不思議な多幸感があった。幸福な思い出に包まれながら逝くのも悪くないかな……そんなことも考えてしまう。

 しかし、脳に駆け巡ったのは楽しい思い出だけではない。つらい思い出……そう、殺された両親の事、そして、消えたリーナの事も同時に思い出していた。

(そうだ……俺はこんなところで死ぬわけにはいかない……まだ復讐も何も果たしてないじゃないか……)

 向こうからガルクスがゆっくりと近づいてくる足音が聞こえる。

(立たなくちゃ……両親の敵を討って、リーナを俺が救わなきゃ。立て……立て……立て……立て)

  アルベクの強い意志を受けたのか、今までになく核玉《コア》が眩く輝く。それは、赤い光だけでなく、銀色にも輝いていた。
 そして、アルベクの身体に赤い粒子が降り注ぎ、アルベクの頭部の傷を癒し、破損した装甲を修復する。また、加えて、銀色の電流が装甲の上を流れる。

「二色の光だと? 何だこれは?」

 怪訝そうな声でガルクスは呟く。珍しい事に、ガルクスの本能がここで奴を殺すべきと叫んでいた。
 その本能の命じるがままに、金砕棒を振り上げ、横たわるアルベクめがけて叩きつける。
 
 しかし、金砕棒が振り下ろされる頃には、すでにアルベクの姿は地面になかった。
 さっきまでの事が嘘のようにアルベクは後方に消え、なおかつ立ち上がっていたのだ。

「貴様……」

 よくみると、アルベクの鎧殻装は変化していた。全身に銀色の稲妻のような文様が刻まれており、頭部の角状の部位も銀色に変わっていた。
 また、その手に握られている長剣の刀身の部分の色も眩い銀であった。

「なんだその変化は……」

 アルベクの変化に戸惑いながらも、ガルクスは金砕棒を振り下ろす。しかし、アルベクはそれを直剣で受け止める。今までなら破損していた刀身は、折れるどころか傷ひとつ付くことなかった。
 そして、驚異的なのが、いくらガルクスが金砕棒で上から押し込もうと
しても、ピクリとも刀身が動かないことだ。

「力が……あふれてくる」

 アルベクはそのまま長剣で金砕棒をはねのける。そのあまりの力に、ガルクスは体勢を崩し、よろめく。すぐに防御の姿勢に入ったが、自分が力負けしたのはこれが初めてだった。

「馬鹿な……こんなことが……」

 アルベクは長剣を斜に構え、その切先をガルクスの喉元に向ける。

「あんたは、ここで倒す」

 アルベクは、そう告げる。
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