魔女は言う。「復讐したい? なら新兵器の実験台になってくれないかしら?」と……  【鎧殻剣記】

熱燗徳利

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第20話 隙

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「隊長を……よくも!」

 セートは双剣でガルクスを迎え撃つ。

 隊員の一人がなんとか傀儡兵を切り抜けて、カインの許に近づく。

「隊長……しっかりしてください」
「……ああ……俺なら……大丈夫だ」

 それはひどく弱々しい声だった。隊員はカインを優しく抱えると、いったんこの戦いの場を離脱する。

「隊長は本部まで運ぶ! 後は任せた!」

「すまない、頼んだ!」

 ネオと戦いつつ、ライサーはそう返す。ライサーとアルベクの斬撃を巧みにかわしていたネオだったが、 二人が以前より強くなっているのを感じていた。

(ええい、二人相手は面倒だ)

 そう思い、さらに傀儡兵を展開する。傀儡兵はアルベクを集中的に狙うが、アルベクはそれを的確に捌いていくいく。

「こいつらは俺がやる。ライサーはネオを」
「おう!」

 ライサーのグレイブがネオの脛を狙うが、彼は後方の店の屋根へと跳躍し、攻撃を避ける。ほんとうに身軽な戦い方をする。



 地上では、セートがガルクスに苦戦していた。このガルクスという男は、力だけでなく武器を扱う技量も一流であり、セートはまたしても防戦一方となる。
 
「どうした! これが全力か!」
「黙れってーの!」

 セートの胸部が眩く光り、双剣が黄金の輝きを放つ。出力を上げた核玉《コア》のエネルギーを身体と双剣に纏わせ、対抗しようとする。
 
 しかし、それでもガルクスの力には及ばず、金砕棒の一撃が左の剣を叩き落とす。そして、勢いそのままにセートの脇腹めがけて、金砕棒を叩きつける。

「ぐっ…… がはっ!」

 セートは脇腹に強い衝撃を受け、地面に転がる。ダメージが大きくてすぐには立ち上がれない。

「どうした? これで終《しま》いか? それではつまらぬ……」

 ガルクスは地面に横たわるセートをわざと追撃せず、起き上がるのを待った。まだまだ戦い足りなかったからである。彼は相手を殺すことよりも、戦いを楽しむことを最優先にする、そんな戦士であった。

「はぁはぁ…… 舐めやがって」

 苦痛で震える身体をなんとか起こし、セートは立ち上がる。正直、勝算は薄いが、一瞬の隙を狙うしかない。自分ならそれが出来ると、気持ちを高ぶらせて。

 そうやってセートは剣を諸手で握り、力を込める。

「ほう、やはりまだ立つか。それでこそよ」

 ガルクスは金砕棒の先端から、再び黒い光弾を放つ。セートは、冷静に剣でそれを弾く。

(落ち着け……確実に仕留めるんだ)

 そう思いながら、ガルクスめがけて駆ける。

「よいぞ。真っ向勝負だ!」

 ガルクスが金砕棒を肩に担ぎ、そのまま振り下ろす。しかし、セートはガルクスの頭を飛び越えて跳躍する。

「ぬっ!?」

 そのまま、ガルクスの背後に着地すると剣の出力を上げ、斬りかかる。振り向きざまに金砕棒を振り、その攻撃をガードするガルクスだったが、セートは手首を返して剣の裏刃での次の一撃を食らわす。
 しかし、それも冷静に躱したガルクスは、剣を跳ね上げ、セートの左肩目掛けて金砕棒を振り下ろす。巨大な重量がセートの肩にのしかかる。

「仕留めたわ!」

 セートはよろめき、地面に倒れ伏した……かに見えた。しかし、残った力をすべて込めて、踏ん張る。そして、ガルクスの脇腹めがけて、剣を薙ぐ。

「なんと!?」

 剣は脇腹に吸いこまれていき、赤い鮮血が飛び散る。

(このまま身体を両断してやる!)

 セートはそう思ったが、ガルクスは右手を金砕棒から離し、セートの顔目掛けて鉄拳を食らわす。
 すでにダメージを追っていたセートの身体は軽々と吹き飛び、地面に崩れる。

「この我に一撃を食らわせるとは……なかなかにやる。しかし、ここまでだ……」

 黒い光弾がセートの身体に激突し、爆ぜる。

「うわぁぁぁ!」

直撃を受け、セートの鎧殻装は解除され、意識は朦朧とする。後一撃でも喰らえば、終わりだ。

(身体に、力が入らない……もうダメなのか)
 
 セートがそう思った時、傀儡兵を一掃したアルベクが、彼の傍に駆け下りた。

「よくやったセート。後は俺がやる」
「……あんたじゃ無理だ。逃げろよ……」
「……出来ることは全部やる。それが、鎧殻警備隊の隊員だ」

 そう言って、アルベクは長剣を構える。

「ふふ、竜の力も持たぬ者が、我とどう戦う」

(装甲に攻撃は通用しない。しかし、セートが切り開いてくれた奴の脇腹の傷口……そこを狙えば倒せる。一か八かやってやる)

 ガルクスはアルベクにも光弾を放つが、出力をあげた長剣でそれを防ぐ。
 そのまま刀身に纏ったエネルギーをガルクスにぶつけるが、彼は微動だにしない。傷口も、半身に構えて攻撃が当たらないようにしている。

「傷口を狙おうというのだろう? その一点だけを守るなど、造作もない事……」

 そう言うと、巨体とは思えぬ速度でアルベクに向かっていき、金砕棒を振り下ろす。
「くっ!」

 何とか長剣でその攻撃を防いだが、たった一撃で刀身が叩き折れた。あまりに武器の強度が違いすぎる。

「まずい!」

 続く攻撃を新しく生成しなおした長剣でかろうじて防ぎ、後方に跳ぶ。だが、ガルクスは瞬時に距離を詰めると、金砕棒をアルベクの腹に突き出してきた。
 激痛が走り、アルベクの身体はセートの近くに吹き飛ぶ。

「他愛無い……」

ガルクスは憐れむように言った。
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