魔女は言う。「復讐したい? なら新兵器の実験台になってくれないかしら?」と……  【鎧殻剣記】

熱燗徳利

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第19話 ガルクス

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 帝都に来訪したガルクスは、鎧魔殻も纏わず、核玉《コア》の力で生成した武器を振り回し、思う存分暴れていた。
 その武器は黒く太い八角の棒で、中央の持ち手部分のみ多少細く円形になっているが、それ以外の部位には鋲《びょう》状の鋭い突起が付いている。武器の全長はガルクスの背丈ほどだ。まるで東方に伝わる八角型の金砕棒のようである。 

「そら、出てこぬか鎧殻装兵!」

 金砕棒を振り回し、鎧殻警備隊の来訪を待つ。

「……まさか、あんたが来るとはね」

 商店街の屋根の上から声がしたので、ガルクスが見上げる。そこには魔術師ネオの姿があった。

「おお、ネオか。フェルザーが怒っておったぞ」
「だろうね…… 俺も参戦していいかな?」
「構わぬが、一番の剛の者とは我が戦わせてもらおう」
「それでいいよ。あんたの方が強いしね……」

 ガルクスの強さは魔術師の中でも五本の指に入るだろう。魔力も高いが、直接的な武器での戦闘を好むタイプである。ネオもカノア島で模擬試合をしたことがあるが、一蹴された経験がある。

「おお、ぞろぞろやって来たわ」
 
 話しているうちに、カインを先頭にし、アルベク、ライサーなどの主力メンバーと隊員数十人の鎧殻装兵がこちらに向かってきていた。

「腕が鳴るねぇ、ガルクス」

 そう言うと、ネオは鎧魔殻を纏う。顔は山羊《やぎ》の頭蓋骨のような鎧魔殻で覆われ、頭頂部も山羊のような角が生える。手には反りのある刀が握られていた。

「……ネオ、お前か。それに、もう一人」

 ライサーが呟き、金砕棒を持つ大柄な男性に視線を向ける。鎧魔殻を纏っていなくとも、ただならぬ雰囲気を感じた。

「我はガルクス。最新式の冥府の核玉《コア》の力、各々方にお見せしよう!」

 ガルクスの胸が禍々しい漆黒の光を放つ、そして、赤い電撃が体中を覆い、それは徐々に赤黒い竜の鱗を思わせる装甲に変わり、頭部も竜を思わせる造形のマスクへと変質する。その頭部のみを黒い竜の髑髏のような外殻が多い、竜のごとき二本の角も生えてきた。
 
「あの姿……竜玉の核玉《コア》を模倣したのか?」

 セートは忌々しそうに呟く。

「セートの鎧殻装にそっくりだ……」
「いかにも。冥府の竜は悪魔。悪魔との契約は魔術師が最も得意とするところ。我らは悪魔と契約して、鎧魔導士となるのよ。竜の核玉《コア》を得し我の力を見よ!」

 そう言うと、ガルクスは金砕棒を振りかざしながら突撃してきた。

「よけろ!」

 危険を感じたカインは隊員にそう命じるが、セートだけは命令を無視してガルクスに向かっていく。

「このまがい物が!」

 セートが双剣で金砕棒の一撃を受けようとする。しかし、力の差があるのか、そのまま押し込まれ、後方に吹き飛ばされる。

「うわっ!」
「ははっ、他愛無い!」

 そのまま近くにいたアルベクとライサーに狙いを定め、金砕棒を振るう。二人は、何とかその一撃を躱す。

 ネオも傀儡兵を大量に展開する。この前の比ではない量の傀儡兵に隊員を襲わせつつ、自分はカインに狙いを定め、斬りかかる。

「新型じゃないけど、どこまで楽しめるかな」

 帝都の商店街はたちまち乱戦の場となった。

「クソっ!」

 セートは立ち上がると、ガルクスに向かって走る。

「そういつはあんたたちじゃ無理だ!」

 そう言って、アルベクとライサーを襲っているガルクスの背に目掛けて攻撃をする。しかし、ガルクスは巧みに金砕棒を後方に回し、ガードする。

 その隙にアルベクとライサーは波動武器の一撃をガルクスに叩きこむが、彼の装甲はビクともしない。

「やはり駄目か……」
「俺たちはネオをやろう!」

 ライサーはカインと戦うネオに視線を向ける。ネオの素早い斬撃に、カインは防戦一方だった。

「隊長から離れろ!」

 ライサーはネオに近づくと、グレイブを振り下ろす。ネオは跳躍し、再び商店街の上に立つ。

「いいよ、何人だろうと相手してやる」

 ネオは笑う。アルベクとライサーも商店街の上に乗り、武器を構える。

 セートはガルクスと戦っていたが、そのパワーの前に押され気味だった。核玉《コア》からの超高波動を纏った金砕棒の一撃は、当たれば竜の装甲だって無事ではすまないだろう…… セートはそう思いながら、なんとか防御に徹する。そして、ガルクスに隙が出来るのを待ったが、なかなかその時は訪れない。

「守ってばかりでは、勝てぬぞ」

 ガルクスの金砕棒が漆黒に光り、金砕棒の先端から黒い光弾が放出される。それは、セートの身体に直撃する。

「ぐはっ!」

 地面に膝をつくセート。その隙をガルクスは見逃さず、上から金砕棒を振り下ろす。セートは双剣をクロスさせ、なんとかその攻撃を受け止めるが、ガルクスはさらに上から力を込める。

(……このままじゃ力負けする)

「セート!」

 その様子を見たカインは、ガルクスに向かっていく。

(槍での攻撃は効かない、せめて相手の体勢を崩せれば)

 そう思ってのショルダータックルを食らわそうとするが、ガルクスは嘲笑い、セートを蹴り飛ばすと、金砕棒をカインに向けて叩きつける。

「ガはっ……」

「隊長っ!」

 重い一撃を受けたカインはその場に崩れ落ちる。当たり所がよく、生きてはいたものの身体が動かない。隊員たちは助けに行きたくとも、ネオの傀儡兵が邪魔をする。

「弱き者が強き者の戦《いくさ》に入ってくるからこうなるのよ」

「この! くらえ」

 セートは頭の上で双剣をクロスさせ、そのまま振り下ろす。超高波動の斬撃がガルクスに直撃する。しかし、ガルクスの装甲は遠距離からの攻撃では無傷だった。

「な、何っ?」
「直接斬りこまねば、致命傷にはならぬわ」

 そう言って、動けないカインなど興味もないというように、セートに向かっていく。
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