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第36話 分断
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アルベクたちに黒い火球を放ったのは魔女フェルザーであった。他の鎧魔導士を集め終えた彼女は、国王シュガルタを安全な場所に転移させてから、宮殿事火球で吹き飛ばしたのだ。
火球は巨大だが、鎧殻装に守られている身体にダメージは与えられないだろう。しかし、奴らを移動させることの出来ないフェルザーの転移魔術と違い、火球の爆風で吹き飛ばせば、奴らを散り散りにさせること出来る。つまりは征伐軍の分断がフェルザーの目的だった。
そして、今の彼女は、漆黒の竜の鎧魔殻を纏った鎧魔導士の姿になっており、その力はガルクスをはるかに凌いでいた。
「奴らの分断はすんだ、かかれ!」
魔術師というのは自尊心が強く、連携が苦手な人種である。そのため、集団で戦うことに慣れた鎧殻警備隊や親衛隊を引き離し、魔術師が戦いやすい土壌を作った。個々の強さであれば、征伐軍にも負けないとフェルザーは考えていたのだ。
鎧魔導士たちは、我先にと獲物へ向かって攻撃を始める。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
黒い火球をあびたアルベクたちは、その爆風でみな散り散りになってしまった。
(クソっ! みんなどこだ?)
アルベクが吹き飛ばされた先は、木々が生い茂る森だった。
アルベクは立ち上がりながら、皆の姿を探す。すると、天空から、無数の鎧魔導士が雨霰のようにやって来た。
(分断させて、各個撃破する作戦か?)
彼らは連携は取れていないが様子だが、この数はやっかいだ。アルベクは覚醒形態になる。そして、銀色の長剣《ロングソード》で一体一体確実に仕留めていく。
もはや通常の鎧魔導士ではアルベクの相手にならず、死体の山が積み重なっていく。
敵を屠る感触はいまだにアルベクはなれなかった。しかし、戦いをここで終わらせるという皇帝アリュードの言葉を信じ、ひたすら剣を振るう。
すると、上空から竜の鎧魔導士が飛来する。全身が紫色の鱗鎧《スケイルアーマー》で覆われており、手には斧槍《ハルバード》が握られていた。
「カノア島を汚す不届き者め。俺は百年前の復讐の機会を待っていたぞ。わが友の復讐の機会もな」
そう言って斧槍を構える。彼の名はウルファンといい、ガルクスの親友であった。
「サタナキアとヴァルスレンどっちが悪いかという話は今は置いておこう。俺は、これ以上犠牲者が出さないために戦うだけだ」
アルベクも長剣を斜に構える。
「死ぬがいい!」
斧槍の重い一撃が迫ってくる。それをアルベクはうまく受け流し、反撃する。長剣と斧槍がぶつかり、盛大に火花が散る。
両者が激しい武器の打ち合いをしていると、さらに他の鎧魔導士たちがやってきた。しかし、上空に現れた鎧魔導士の身体に魔法陣が映し出される。
「なんだこれは!?」
鎧魔導士が驚愕したのもつかの間、その魔法陣が爆発し、鎧魔殻ごとその身体を破壊する。
仲間の唐突な死を目撃した魔術師たちは、我先にと逃げていくが、彼らの身体の上にも魔法陣が出現した。
「や、やめ!」
またしても魔法陣は爆破し、鎧魔導士を焼き殺す。
それは他の場所でも起こっており、鎧魔導士はみな恐怖した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「お見事です、セフィーネ殿」
セフィーネとほぼ同じ場所に吹き飛ばされた親衛隊のユークスは、彼女の護衛についていた。
彼女は魔力で敵の鎧魔導士の位置を探索すると、そこに魔法陣を展開し、爆破していたのだ。効力は島全体に及び、直接戦わなくても相手を殺すことが出来た。
新型の核玉《コア》で魔力を強化しているからこその芸当である。
「……あまり良い気はしないし、強力な鎧魔導士には効果がないけれどね」
一方的な虐殺のようで気が引けるが、大勢の鎧魔導士が集まるのは味方にとっても厄介だった。ここは魔法陣の力で数を減らしておくのが得策であった。
この場にはいないが、鎧殻装兵となった同僚のルシェカも同じことをしているようだ。
「ふふ、やはり私たちは文字通り、帝国の魔女ね」
敵を爆殺しながら、セフィーネは自嘲する。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
カインはセートと合流しながら、敵を探していた。すると、目の前に、全身に赤い革の包帯を巻いた魔術師と黒のローブに身を包んだ魔術師が現れる。
「よぉ、あんたらが征伐軍かぁい」
独特な抑揚をつけて、赤い包帯男がしゃべる。
「ああそうだ、大人しく投降しろ」
カインの言葉を包帯男はせせら笑う。
「俺ぁよぉ、可愛い部下が帝都で殺されてんだよなぁ。その敵討ちをしなきゃぁなんねえのよ」
「部下だと?」
「ザルバスってんだけど、あんた知ってるかぃ?」
その名前を聞いてカインはハッとする。何十人もの人間を誘拐し、惨たらしく殺したあの魔術師だ。たしかに、この男と同じような包帯を身体に巻いていた。
「奴か……」
「うん? 知ってんのかい?」
「あの外道なら俺が殺した」
それを聞き、包帯男は驚きの表情を浮かべたが、すぐに笑顔になる。
「そうかいそうかい。あんたがねぇ。こんな偶然あるんだねぇ。じゃあ、この俺ザドバが殺してやるよぉ」
「望むところだ。貴様も奴のいる地獄に送ってやる」
「威勢がいいねぇ。俺がこいつを殺るから、ナルレス、あんたは『ちっこいの』を殺りなよ」
ザドバはナルレスと呼ばれたフードの男に話しかける。ナルレスは無言で頷く。
「だーれがちっこいのだ! 僕を舐めていると痛い目に会うってーの」
セートが双剣を構えると、ザドバとナルレスの身体は瞬時に変貌する。
ザドバは全身に赤い外殻を持つ狼男のような姿になり、手には波打つフランベルジュ刀身の両手剣が握られていた。
ナルレスは全身に白い外殻を纏い、顔は羊《ひつじ》の頭蓋骨のような鎧魔殻で覆われ、頭頂部も羊のような角が生えていた。波動武装は細身のレイピアだった。
奇妙なのは、二人とも、鎧殻に銀色の稲妻のような文様が刻まれていることだ。まるで、覚醒したアルベクやライサーの鎧殻装のようである。
「その姿……」
「驚いたかぃ? 俺たちはよぉ、臆病だからよぉ。死ぬのが怖くて冥府の竜の核玉は使えなかったのよ…… でもあんたたちが言うところの核玉《コア》の覚醒って奴には成れたのよぉ、これが」
「なるほど、鎧魔導士の覚醒者か。やっかいだな」
「だろう…… いくぜぇナルレス」
「……」
そう言うと、ザドバはカインにナルレスはセートに襲い掛かってきた。
火球は巨大だが、鎧殻装に守られている身体にダメージは与えられないだろう。しかし、奴らを移動させることの出来ないフェルザーの転移魔術と違い、火球の爆風で吹き飛ばせば、奴らを散り散りにさせること出来る。つまりは征伐軍の分断がフェルザーの目的だった。
そして、今の彼女は、漆黒の竜の鎧魔殻を纏った鎧魔導士の姿になっており、その力はガルクスをはるかに凌いでいた。
「奴らの分断はすんだ、かかれ!」
魔術師というのは自尊心が強く、連携が苦手な人種である。そのため、集団で戦うことに慣れた鎧殻警備隊や親衛隊を引き離し、魔術師が戦いやすい土壌を作った。個々の強さであれば、征伐軍にも負けないとフェルザーは考えていたのだ。
鎧魔導士たちは、我先にと獲物へ向かって攻撃を始める。
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黒い火球をあびたアルベクたちは、その爆風でみな散り散りになってしまった。
(クソっ! みんなどこだ?)
アルベクが吹き飛ばされた先は、木々が生い茂る森だった。
アルベクは立ち上がりながら、皆の姿を探す。すると、天空から、無数の鎧魔導士が雨霰のようにやって来た。
(分断させて、各個撃破する作戦か?)
彼らは連携は取れていないが様子だが、この数はやっかいだ。アルベクは覚醒形態になる。そして、銀色の長剣《ロングソード》で一体一体確実に仕留めていく。
もはや通常の鎧魔導士ではアルベクの相手にならず、死体の山が積み重なっていく。
敵を屠る感触はいまだにアルベクはなれなかった。しかし、戦いをここで終わらせるという皇帝アリュードの言葉を信じ、ひたすら剣を振るう。
すると、上空から竜の鎧魔導士が飛来する。全身が紫色の鱗鎧《スケイルアーマー》で覆われており、手には斧槍《ハルバード》が握られていた。
「カノア島を汚す不届き者め。俺は百年前の復讐の機会を待っていたぞ。わが友の復讐の機会もな」
そう言って斧槍を構える。彼の名はウルファンといい、ガルクスの親友であった。
「サタナキアとヴァルスレンどっちが悪いかという話は今は置いておこう。俺は、これ以上犠牲者が出さないために戦うだけだ」
アルベクも長剣を斜に構える。
「死ぬがいい!」
斧槍の重い一撃が迫ってくる。それをアルベクはうまく受け流し、反撃する。長剣と斧槍がぶつかり、盛大に火花が散る。
両者が激しい武器の打ち合いをしていると、さらに他の鎧魔導士たちがやってきた。しかし、上空に現れた鎧魔導士の身体に魔法陣が映し出される。
「なんだこれは!?」
鎧魔導士が驚愕したのもつかの間、その魔法陣が爆発し、鎧魔殻ごとその身体を破壊する。
仲間の唐突な死を目撃した魔術師たちは、我先にと逃げていくが、彼らの身体の上にも魔法陣が出現した。
「や、やめ!」
またしても魔法陣は爆破し、鎧魔導士を焼き殺す。
それは他の場所でも起こっており、鎧魔導士はみな恐怖した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「お見事です、セフィーネ殿」
セフィーネとほぼ同じ場所に吹き飛ばされた親衛隊のユークスは、彼女の護衛についていた。
彼女は魔力で敵の鎧魔導士の位置を探索すると、そこに魔法陣を展開し、爆破していたのだ。効力は島全体に及び、直接戦わなくても相手を殺すことが出来た。
新型の核玉《コア》で魔力を強化しているからこその芸当である。
「……あまり良い気はしないし、強力な鎧魔導士には効果がないけれどね」
一方的な虐殺のようで気が引けるが、大勢の鎧魔導士が集まるのは味方にとっても厄介だった。ここは魔法陣の力で数を減らしておくのが得策であった。
この場にはいないが、鎧殻装兵となった同僚のルシェカも同じことをしているようだ。
「ふふ、やはり私たちは文字通り、帝国の魔女ね」
敵を爆殺しながら、セフィーネは自嘲する。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
カインはセートと合流しながら、敵を探していた。すると、目の前に、全身に赤い革の包帯を巻いた魔術師と黒のローブに身を包んだ魔術師が現れる。
「よぉ、あんたらが征伐軍かぁい」
独特な抑揚をつけて、赤い包帯男がしゃべる。
「ああそうだ、大人しく投降しろ」
カインの言葉を包帯男はせせら笑う。
「俺ぁよぉ、可愛い部下が帝都で殺されてんだよなぁ。その敵討ちをしなきゃぁなんねえのよ」
「部下だと?」
「ザルバスってんだけど、あんた知ってるかぃ?」
その名前を聞いてカインはハッとする。何十人もの人間を誘拐し、惨たらしく殺したあの魔術師だ。たしかに、この男と同じような包帯を身体に巻いていた。
「奴か……」
「うん? 知ってんのかい?」
「あの外道なら俺が殺した」
それを聞き、包帯男は驚きの表情を浮かべたが、すぐに笑顔になる。
「そうかいそうかい。あんたがねぇ。こんな偶然あるんだねぇ。じゃあ、この俺ザドバが殺してやるよぉ」
「望むところだ。貴様も奴のいる地獄に送ってやる」
「威勢がいいねぇ。俺がこいつを殺るから、ナルレス、あんたは『ちっこいの』を殺りなよ」
ザドバはナルレスと呼ばれたフードの男に話しかける。ナルレスは無言で頷く。
「だーれがちっこいのだ! 僕を舐めていると痛い目に会うってーの」
セートが双剣を構えると、ザドバとナルレスの身体は瞬時に変貌する。
ザドバは全身に赤い外殻を持つ狼男のような姿になり、手には波打つフランベルジュ刀身の両手剣が握られていた。
ナルレスは全身に白い外殻を纏い、顔は羊《ひつじ》の頭蓋骨のような鎧魔殻で覆われ、頭頂部も羊のような角が生えていた。波動武装は細身のレイピアだった。
奇妙なのは、二人とも、鎧殻に銀色の稲妻のような文様が刻まれていることだ。まるで、覚醒したアルベクやライサーの鎧殻装のようである。
「その姿……」
「驚いたかぃ? 俺たちはよぉ、臆病だからよぉ。死ぬのが怖くて冥府の竜の核玉は使えなかったのよ…… でもあんたたちが言うところの核玉《コア》の覚醒って奴には成れたのよぉ、これが」
「なるほど、鎧魔導士の覚醒者か。やっかいだな」
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