魔女は言う。「復讐したい? なら新兵器の実験台になってくれないかしら?」と……  【鎧殻剣記】

熱燗徳利

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第41話 シェバーク式剣術

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「セート、もう大丈夫だ」 

 カインはセートの肩から手を放す。彼の脚はすでに核玉《コア》の力で回復していた。

「そう、それは良かったよ」

 森の木々をかき分けながら、セートは仲間たちを探す。すると、ライサーの姿が目に付いた。

「あ、おーい、ライ兄ぃ!」

 その声を聞き、ライサーが振り向く。

「セート、カイン隊長!」

 仲間の無事な姿を見て、ライサーは微笑む。
 一方のセートは負傷し、地面に横になっているセフィーネと首を斬られたユークスの死体を見つける。

「セフィーネ……それにユークスさん……」
「ああ、フェルザーという魔術師の頭目にやられた」
「くそっ!」

 全員が無事という訳にはいかなかったようだ。セートは悔しそうな表情をする。

「そうだったか……しかし、お前だけでも無事でよかったよライサー。セフィーネは大丈夫か?」

 カインが膝をつき、セフィーネに問いかける。

「大丈夫……じゃないけど……死にはしないわ」

 彼女は弱々しく笑う。

「他のメンバーは無事だろうか……」

 カインは心配そうに呟く。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 「ぐあぁぁぁぁ」

 ゼナベルは残りの親衛隊員を見つけ、そのすべてを葬っていた。彼は戦闘だけでなく、探索魔術も得意としていた。

「やれやれ、フェルザーの気配が消えたな。まさかやられるとは……」

 彼もまさかフェルザーが敗北するとは思っておらず、加勢に行かなかったのだが、予想外の結果となった。

「フェルザーを倒した奴のところに、征伐隊の面々が固まっているな…… どれ、行ってみるか……」

 そう言って、彼は空を駆ける。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 ウルファンを仕留めたアルベクは、その後も何人かの竜の鎧魔導士と戦闘をしたが、すべて返り討ちにしていた。

「皆はどこだ……」

 森の中を進みながら、アルベクは仲間たちを探索する。しかし、その姿を一人覗き見ている魔女がいた。ライシュである。

「……もうこちら側の鎧魔導士で生き残っているのは私とゼナベルだけみたいね」

 あと残っているのは、核玉《コア》を使えない一般のシェルド人の魔術師だった。彼らは戦力にならないので、隠れている。
 
 ライシュにとって竜の鎧魔導士がすべてやられるのは予想外だった。竜の核玉《コア》は量産したものの、危険性が高く、身体に移植するのを嫌がる魔術師が多かった。だから、数をさほど増やせなかったのもあるが……

「私が戦うしかないか……」

 彼女はため息をつく。しかし、意を決して鎧魔殻を纏う。先ほどアリュードに付けられた胸下の傷は痛むが、戦えないほどではない。

 近くで気配を感じたアルベクは長剣を構える。すると、木陰から、ライシュが姿を現す。

「鎧魔導士!」
「……」

 ライシュは無言でアルベクに斬りかかってくる。長剣と長剣がぶつかり、火花が散る。お互い、表の刃と裏の刃を巧みに使い、剣戟を繰り広げた。

(これは、シェバーク式剣術……)

 剣を交えるだけで、それがわかった。かつてバルスエン・シェバークという人物が創始した剣術で、アルベクが父より学んだ流派でもある。これは長剣同士、同流派同士の対決であった。

(シェバーク式剣術はヴァルスレンの剣術だ……まさかこいつはヴァルスレン出身)

「おまえが、帝国を裏切った魔女だな?」
「……」
「……俺の両親の仇か?」

 ライシュは無言で頷く。

「何故だ……何故、両親を殺した?」

 彼女はそれには答えず、剣を突き出す。アルベクはそれを防ぎつつ、カウンターの攻撃を返すが、それを受け流される。そして、お互い長剣の出力を上げ、ぶつける。両者の身体が吹き飛ぶ。

「くっ……」

 アルベクとライシュはすぐに体勢を立て直し、お互いの中心線の取り合いをする。
 両者、喉元に向けられた剣尖をはじき、不自然なほど静かな動作で距離をつめていく。
 あと一歩踏み込めば相手に剣の届く間合いを保ちながら、水面下の攻防を続けていた。
 先に動いたのはアルベクだった。中心線を取ると、渾身の力をこめて、諸手突きを繰り出す。

「くらえ!」
「……」

 ライシュはそれを待っていたとばかりに、アルベクの長剣の刃に自分の刃の中央部分を押し当て、軌道を逸らす。そして、剣を裏に返した上で、再度半回転させ、カウンターの突きを繰り出す。それをアルベクが防ごうとすると、剣を左側に回し、斬りつける。

 その一連の動きにアルベクは驚愕する……

 剣尖がアルベクに迫る。回避しようとするが、完全には躱しきれず、右肩に軽い傷を負う。

 しかし、そんなことはどうでもいいというように、彼女を見つめる……

「今のは……何だ?」
「……」

 (信じられない……だってこの技は……)

「今の一連の動きは……あいつが……リーナが得意とした技だ…… シェバーク式剣術独自の技じゃない…… リーナが開発した技だ」
「……」

「お前は……もしかして……」

 ライシュは自分の鎧魔殻を解除する。そこからは、長い茶髪の髪に、ブルーの瞳をもつ女性が姿を現す。

「ありえない……そんな……」

 アルベクは自身も鎧殻装を解除し、後ずさる……

「お前は……リーナなのか?」

 彼女は小さく頷く。そして、哀しそうな顔をする。

「そうだよ……アルベク……」
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