魔女は言う。「復讐したい? なら新兵器の実験台になってくれないかしら?」と……  【鎧殻剣記】

熱燗徳利

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第45話 長剣

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 リーナが鎧魔殻を纏い、長剣を振るってくる。アルベクも覚醒した鎧殻装を纏い、長剣と長剣がぶつかる。

「やめろ、リーナ。おまえと戦いたくない」
「どうして? 私は君の仇だよ? 憎くないの?」
「……わからない。とりあえず、いったんお互いに剣を納めよう」

 彼女はフッと笑う。

「私は君を殺したい。この島の侵略者を……」

 彼女の剣がアルベクの首を狙う。アルベクはそれを防ぐが、カウンターの一撃が出せないでいる。相手がリーナだと分かったからだ。

「手加減していると、死ぬよ」

 そう言って、アルベクを蹴り飛ばす。腹に直撃を受け、吹き飛ぶ。

「……リーナ。もうやめろ……」

 彼女はため息をつく。

「リーナと言いうヴァルスレンの名前は捨てたの。今はライシュ。それがシェルド族の名前だよ」
「関係ない。俺にとってリーナはリーナだ」
「ああ、そう。幼馴染の影をそうやって追いかけながら、君は死ぬ!」

 彼女はアルベクの胸めがけて突き技を繰り出す。心臓を狙った容赦ない一撃だった。
 刀身の先端を押し当ててガードするが、彼女は手首を返して次の攻撃を繰り出す。アルベクはひたすら防御に徹するものの、それも限界が来ていた。

(反撃しないと、やられる…… やるしかないのか……)

 リーナはもう変わってしまった。アルベクはそう考え、無理やり自分を納得させる。そして、反撃の一撃を繰り出す。

「ふふ、そうだよ。それでいい」

 リーナは微笑む。

 お互いの長剣の刃同士がぶつかり、技の応酬が続く。七年前までは、よく彼女とは試合をしたものだった。その時は彼女とアルベクでは剣の実力に大きな差はあったが、今は技量だけで言えばアルベクの方が上だろう。
 しかし、彼女の冥王の核玉《コア》の出力は高く、油断ならない。

(まさか、リーナと殺し合いをすることになるなんて……)

 頭がおかしくなりそうだったが、それでもアルベクは剣を振るう。

「そろそろ覚醒の力を使うかな」
「覚醒だと?」

 彼女の核玉《コア》が銀色の光をおび、身体の外殻と長剣の刀身が銀色に変貌する。そして、体中に電流が流れ、稲妻のごとき文様が刻まれる。
 冥府の鎧魔導士の覚醒形態であった。

「お遊びはもう終わり。一気に終わらせてあげる」

 これまでにない危険性をアルベクは本能的に感じ取り、核玉《コア》の出力を最大限上昇させる。そして、刀身にもそのエネルギーを集め、彼女の剣を叩き落とさんとする。しかし、彼女も剣をアルベクの刀身にぶつけてきた。
 
「ぐっ!」

 圧倒的な力の差があり、アルベクの剣は押し込まれ、身体は数歩後ろに後退させられる。

(なんて力だ)

「君の力はそんなもの? ヴァルスレン皇帝よりも弱いね」
「……陛下と戦ったのか?」
「うん、彼なら死んだよ」
「!?」

 皇帝アリュードの強さをアルベクは知っていた。試合をしたが、まだ底知れぬ実力を隠しているようであった。それを、彼女が殺したというのか?

「君も、あの世に送ってあげる」

 そういうと容赦のない剣の連続攻撃がアルベクを襲う。防ぎきれず、鎧殻装にいくつもの傷が出来る。それでも、彼女の攻撃は止まらない。
 このままでは、いずれ致命傷を負うのは目に見えていた。

 先ほど、アルベクは彼女が変わってしまったと思ったが、それは正しいのだろうか? 
 アルベクは昔から、彼女の瞳がここではない別の何かを見据えているように感じていた。今思えば、ずっと魔術師の世界のみに心を向けていたのだろう。彼女にとって、それ以外はどうでも良かったのかもしれない。
 
 だから、リーナが変わってのではなく、昔からこういう人間だった可能性も十分ある。彼女の瞳がアルベクをしっかりと捉えていなかったように、アルベクもまた彼女という人間を見誤っていたのかもしれないと。

(それでも、俺はリーナを救いたい)

 救うと言っても、どうすれば救えるかなど、もはや分からなかった。ただひたすら剣を振るうほかない。

 ついにアルベクの剣がその手から弾き飛ばされる。そして、アルベクが新しい武器を再生成する前に、彼女はその刃をアルベクの右胸に突き立てる。そして、そのまま、鎧殻装ごと、身体を貫く。

「がはッ!」

 彼女が剣をアルベクの身体から引き抜くと、一瞬で鎧殻装が解除され、地面に崩れ落ちる。胸からは大量の血が溢れでる。

「……終わりだよ。さようなら、アルベク」

 彼女は地面に横たわるアルベクの心臓目掛けて、剣を突き立てる。
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