魔女は言う。「復讐したい? なら新兵器の実験台になってくれないかしら?」と……  【鎧殻剣記】

熱燗徳利

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第61話 夜襲

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――これは、アルベクが将王に謁見したすぐ後の話。

「それで、お主はアルベクの力量をどう見た?」

 将王ナザムは鬼術衆の棟梁ガルナに問うた。ガルナは三十代半ば程の男性で、猛禽類のような鋭い目を持っていた。彼はナザムの従者として上段の間でアルベクを見ていたのだ。

「我が鬼術の瞳で核玉《コア》の出力を見ましたが、かなりのものかと。ただし、鬼術衆複数人でかかれば、倒せないこともありますまい」
「うーむ。しかし、奴はさらなる力を持っていると言っておったぞ。それにヴァルスレンにいる冥府の核玉の兵も気がかりだ……」
「将王陛下、弱気になられますな。我らには鬼王《オグルク》もおります。戦になっても敗けはしませぬ」

 ガルナはこちらの戦力に自信をもっていた。

「さりとて、我が頭を下げれば事は丸く収まる。今のヴァルスレン皇帝アリスティアは気弱なフォーレスとは違う。戦をするというのも脅しでは無かろう」
「……陛下。我が国は神国ですぞ。その君主であらせられる将王陛下がヴァレスレン皇帝なぞに頭を下げるなど、あってはなりません。どのような犠牲を払っても独立を勝ち取るべきです……」
「犠牲か…… この美しき国を戦場にはしたくない。やはり儂は交渉を続けることとする」
「奴らが、独立を認める訳がございません。どうかお考え直しを」

 ガルナは頭を深々と下げるが、ナザムは聞く耳持たずだった。

「認められなければ、戦を避けるためにもヴァルスレンへの服属はやむなしじゃ……」
「……」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 翌日の夜。

「陛下はすっかり怖気づいてしまわれた…… もはや俺が何を言っても無駄だ」
「ではガルナ、本当にやるんだね?」

 白く長い髪を持つ若い女性がガルナに問うた。

「ルフリヤ。俺も悩んだが、これしか方法はない」
「陛下のご意思を裏切ることになってもいいの?」

 ルフリヤの問いにガルナは静かに笑う。

「これも陛下の、そして将国のためだ…… 陛下もいずれ理解してくださるだろう」
「……わかった。鬼術でヨジュムに連絡をとる」
「ああ、すでに屋敷の外には鬼術衆を配置済みだ。 ……アルベク・レーニスは我らが殺す」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 ユフリヤから鬼術での通信を受け取ったヨジュムは、隣の布団でアルベクが寝ているのを確認する。

(アルベク殿……悪く思わないでください。これも将国のため……)

 そして、手から刀型の波動武装を生成し、横にいるアルベクの心臓目掛けて静かに刀を振り下ろす――が、アルベクは転がるようにしてその身を躱《かわ》す。

「なっ!」

 次の瞬間には、アルベクは瞬時に覚醒した鎧殻装を纏っていた。

「……なるほど、狸寝入りですか……」
「……ヨジュムさん、どういうつもりです!」

 アルベクの問いにヨジュムは答えず、代わりに胸部を緑に光らせる。

「!?」

 緑の光は粒子となり、彼の身体を纏わりつき、鎧殻装となった。
 
 それはバシュヌの伝統的な甲冑を思わせる造形で、後頭部の『錣《しころ》』や肩の『壺袖《つぼそで》』、太ももと膝を覆う『佩楯《はいだて》』など、今日ヨジュムから説明を受けたのと酷似した甲冑風のパーツが付いていた。
 また、後頭部からはアルベクの鎧殻装と同じく角のような部位が存在しているが弓形に曲がっていた。

「鎧殻装兵!? やはり……」
「……この国では鎧殻鬼兵《がいかくきへい》と呼びます」

 物音を聞いて、廊下で待機していた鬼術兵二人も鎧殻装を纏い、ヨジュムに加勢する。

「お覚悟を!」

 そう言って、ヨジュムは刀でアルベクに斬りかかってくる。アルベクは取り回しの良いショートソード型の波動武装を生成し、その攻撃を防ぐ。

「この戦いは無益だ!」

 腕力はアルベクが勝り、鍔迫り合いからヨジュムを押し込むと、後方に吹き飛ばす。

「くっ!」

 他の二人もアルベクを攻撃するが、それより素早くショートソードで彼らの脚を斬りつけ、アルベクは廊下に躍り出る。

「に、逃がすか!」

 体勢を立て直し、斬りかかってきたヨジュムの攻撃を弾き、蹴り飛ばしたアルベクは、屋敷の出口に向かって駆けて行った。

(ここで殺し合いをする訳にはいかない!)

 屋敷の扉を蹴破り、外に出る。しかし、すでに十人ほどの鎧殻装兵が前方からやってきていた。

「クソっ!」

 アルベクはショートソードを投げ捨て、長剣《ロングソード》を生成する。

 如何にアルベクといえども、これだけの敵を殺さずに勝つ自信がない。脇から逃走しようとするが、そこを鬼術と思われる雷や火球や突風の攻撃が襲う。

そして、アルベクの動きが一瞬鈍った隙に波動武装を一斉に繰り出してきた。

「ちっ!」

 アルベクはすかさず後方に跳躍し、屋敷の屋根の上に逃れる。そして、敵を背に一目散に駆けだした。

「逃がすな、追え!」

 鎧殻鬼兵たちの声が響く。アルベクは城下の家々の上を駆け抜ける。しかし、突如背中に鋭い痛みが走る。

「うっ!」

 鎧殻装兵の一人が弓状の波動武装から矢を放ち、それがアルベクに直撃したのだ。
 
 アルベクは屋根から落下する。そこに鎧殻鬼兵たちがやってきて、各々武器を突き出す。それらの攻撃を長剣で防御するが、次々と鎧殻鬼兵はアルベクに追いついていき、とうとう取り囲まれる。

 彼らは巧みに連携し、核玉の出力を一斉に上げると、アルベクの身体を武器で突き刺さした。

 アルベクも核玉の出力を上げ、長剣を振り回し防御しようとするが、さすがに全ての攻撃を捌ききれず、いくつかの武器が身体を貫く。

「ぐ……ああっ……」

 そして、一人の鎧殻鬼兵の刀が頭部に迫る。しかし、その時であった。

 アルベクの核玉《コア》から大量の深紅の光と黒い稲妻が放出される。赤い鎧殻装はの色はさらに濃くなり、身体に黒い稲妻の文様を刻み込まれる。二対の深紅の角はより長く太くなって、肩には鋭角の装甲が顕現し、胴や、四肢を覆う鎧殻装はさらに厚みを増した。
 鎧殻装兵アルベクの第三形態である。
 
 刀の一撃は頭部の装甲の前に弾き飛ばされ、身体に突き出され武器も堅牢な鎧殻装の前にすべて叩き折られる。

「ば、馬鹿な」

 攻撃がまるで通じず、鎧殻鬼兵たちは皆たじろぐ。

 アルベクは自分の意思が再び闇に飲まれかけるのを必死に抑えつつ、その場の全員に強烈な当身を食らわす。そして、人気のないところを目指して、必死に駆け抜けていった。
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