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第82話 制御不能
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「アルベクが危険です。行かなければ……」
シュザク城で待っていたジュナの脳内に悪いイメージが浮かぶ。とっさに立ち上がるも、まだ転移の鬼術でヴァルスレンへ移動するだけの鬼力は溜まっていなかった。
「落ち着け、ジュナ……」
「しかし、アルベクが……」
「私が行きますわ……」
そう言ってセフィーネは鎧殻装を纏う。
「アルベクが危険というなら、やはり説得は失敗したようですね…… 私なら鎧殻装もありますし、アルベクのサポートくらいできます。姫様はここでお待ちください……」
「ですが……」
「アルベクも言っていましたが、姫様が無事なら、彼も全力で戦えます。それに、私にはまだ彼が死ぬ運命は見えていない」
「……分かりました。しかし、アルベクに私の残りの鬼力を渡してください。きっと役にたつはずですから……」
そう言うと、ジュナはセフィーネの核玉に自分の鬼力をありったけ注ぎ込む。セフィーネはそのエネルギーの大きさに驚く。
「凄い力…… 確かに、アルベクに渡します。では!」
セフィーネは探知の魔術と転移の魔術を使い、アルベクの許に向かった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
アリスティアの光刃が迫った瞬間、またもやアルベクは周りの時間が止まったような感覚に陥る。
『世界を破滅に導いてしまう危険がありますが、最終形態に移行しますか?』
核玉から声が聞こえる。
(最終形態……)
『はい、非常に危険な力です。禁断の鎧殻装兵に勝ったとしても、あなたが世界を滅ぼす怪物になってしまうかもしれません。それに使いすぎれば、命を縮める危険性があります』
(命を縮める……か)
命を縮めてもアリスティアを救えればいい。ただし、自分が世界を滅ぼす怪物になっては元も子もない。アルベクは迷う。
(『ちゃんと無事に帰ってきてくださいね』)
その瞬間、走馬灯のようにジュナの顔と声がアルベクの脳内に浮かび上がる。
(そうだ、俺は…… 生きて帰らなければ……)
(『禁断の核玉を持った相手には、今のアルベクでも勝てないわ。これは仕方ないの。ただ、竜を殺した人間は、その力を手に入れられるというわ。アルベクには禁断の鎧殻装兵と戦えるぐらい強くなってもらわなければ……』)
セフィーネの台詞も頭の中によぎる。
(竜の力……俺には赤竜《レッドドラゴン》の力がある。最終形態にならずとも、まだ方法はある!)
アルベクがそう思った瞬間、深紅の鎧殻装からも赤い炎が吹き上がる。それは、文様からの黒い炎とともに、アルベクの鎧殻装を覆った。
そして、深紅の結界がアルベクの身体を包み、時間が動く。
「なんだと!?」
アリスティアは驚愕する。光刃は結界の前に弾かれ、粉々に砕ける。
アルベクは右手に赤い長剣、左手に黒い長剣を生成する。
「新たな変化か…… しかし、我には勝てな……う……なんだ……」
アリスティアの胸からさらに銀の光が放出される。
「我の意識が呑まれ……う……ぐ……ああ……」
「陛下? どうされたのです!?」
アリスティアは突然苦しみだす。
「……破壊セン。ワレガ全テヲ……」
そして、しばらくした後、感情のない声でそう呟いた。
「意識が……核玉に飲まれえたのか……」
早く助け出さねば……アルベクはそう思い、アリスティアに向かっていく。
「全テノ命をワレガ…… 燃ヤシ尽クス」
アリスティアは手から光弾を放つが、黒い長剣でそれを防ぎ、赤の長剣を繰り出す。大剣と長剣が激突し、火花が散る。
意識を核玉に飲まれた後も、アリスティアの剣の腕は変わらないどころか、核玉が限界以上の剣の実力を彼女から引き出しているように思えた。身体に負荷が掛かることなどお構いなしなようだった。
(これが禁断の核玉…… 持ち主すら破滅に導くか……)
アリスティアは剣に銀色の光刃を纏わせ、それでアルベク目掛けて振り下ろす。アルベクは二振りの長剣をクロスさせ、その攻撃を防いだ。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
そして、気合をいれつつ、光刃を跳ねのけ、アリスティアのもとに跳躍する。
アリスティアは光刃を解除すると、大剣でアルベクの双剣を防御する。
強化されたアルベクの力はアリスティアにも負けていなかった。しかし、禁断の核玉は時間が経てば経つほど、力を増す。そして、意識を吞まれているアリスティアのことも心配だった。アルベクに猶予はない。
「陛下!」
そう叫ぶと、双剣をクロスさせて、波動斬撃を放つ。しかし、アリスティアも前方に結界を張って防御する。
(畜生、時間が無いってのに……)
アルベクは双剣にエネルギーを集め、何発もの波動斬撃を飛ばす。だが、結界は強固で傷ひとつ付かない。その時だった……
『アルベク、助けに来たわよ』
転移の魔術で、セフィーネがこの空間に姿を現す。
「セフィーネ!?」
アルベクは後ろを戦闘中で振り返れなかったものの、確かに後ろにセフィーネの声が聞こえた。
「あなたに、ジュナ姫から貰ったエネルギーを転送する。それで、陛下を助けなさい」
そう言って燃え盛るアルベクの背に触る。
「くっ!」
鎧殻装ごしでも炎の熱さを感じながらも、セフィーネはジュナから貰った鬼力と自分の魔力とをアルベクに転送する。
「私たちの力、無駄にしないでね!」
「ああ!」
アルベクは自分の中に強大な力が宿るのを感じた。これなら、アリスティアにも負けない。
アルベクは接近すると、黒い長剣で結界を叩き割ると、もう一方の長剣をアリスティアの大剣に叩きつける。
その威力の前に、アリスティアは後方に下がる。そのまま、アルベクは双剣を巧みに繰り出す。アルベクの猛攻の前に彼女は防戦一方だった。
「馬鹿ナ……コノワレガ……押サレテイル……」
アリスティアはなんとか後方に跳躍すると、さらに核玉の出力を上げ、大剣にまたもや白銀の光刃を纏わせる。アルベクも赤と黒の光刃をそれぞれの長剣に纏わせる。
「叩キ潰シテヤル!」
そう言って、アリスティアは光刃でアルベクを斬りつけんとする。しかし、アルベクは左手の長剣でその攻撃を防ぐ。
「ナニ!?」
「今だ!」
そして、右手の深紅の光刃をアリスティア目掛けて一閃させる。アルベクは彼女の肉体は傷つけないように、鎧殻装だけを斬りつけたのだった。
「ソンナ……我ガ装甲ガ……」
アリスティアはよろめきながら、後ずさる。銀の鎧殻装の胴体部分には、アルベクの一撃を受けた傷がありありと刻まれていた。そして、そのダメージによって、鎧殻装は維持できなくなり、粒子状になって霧散した。
そして、生身の状態のアリスティアが地面に倒れんとするのを、アルベクは自らの鎧殻装を解除して、支える。
「陛下……ご無事ですか……」
「……アルベク……我は何を……」
「今、核玉を取り出すわ!」
セフィーネはそう言うと、彼女の胸に手を近づけ、自身の魔力を込める。すると、アリスティアの身体から、銀色の核玉が放出され、セフィーネはそれを強く握りしめる。
「邪悪な核玉よ! このセフィーネが再び汝を封じる!」
その言葉とともに、核玉からは銀の輝きが失われ、細く小さな鎖が、核玉に巻き付き、全体を覆う。
「これでもう安心よ……」
セフィーネはそう言う。
核玉が力を封じられたのを受け、この異質な空間から、謁見の間へとアルベクたちは戻ったのだった。
シュザク城で待っていたジュナの脳内に悪いイメージが浮かぶ。とっさに立ち上がるも、まだ転移の鬼術でヴァルスレンへ移動するだけの鬼力は溜まっていなかった。
「落ち着け、ジュナ……」
「しかし、アルベクが……」
「私が行きますわ……」
そう言ってセフィーネは鎧殻装を纏う。
「アルベクが危険というなら、やはり説得は失敗したようですね…… 私なら鎧殻装もありますし、アルベクのサポートくらいできます。姫様はここでお待ちください……」
「ですが……」
「アルベクも言っていましたが、姫様が無事なら、彼も全力で戦えます。それに、私にはまだ彼が死ぬ運命は見えていない」
「……分かりました。しかし、アルベクに私の残りの鬼力を渡してください。きっと役にたつはずですから……」
そう言うと、ジュナはセフィーネの核玉に自分の鬼力をありったけ注ぎ込む。セフィーネはそのエネルギーの大きさに驚く。
「凄い力…… 確かに、アルベクに渡します。では!」
セフィーネは探知の魔術と転移の魔術を使い、アルベクの許に向かった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
アリスティアの光刃が迫った瞬間、またもやアルベクは周りの時間が止まったような感覚に陥る。
『世界を破滅に導いてしまう危険がありますが、最終形態に移行しますか?』
核玉から声が聞こえる。
(最終形態……)
『はい、非常に危険な力です。禁断の鎧殻装兵に勝ったとしても、あなたが世界を滅ぼす怪物になってしまうかもしれません。それに使いすぎれば、命を縮める危険性があります』
(命を縮める……か)
命を縮めてもアリスティアを救えればいい。ただし、自分が世界を滅ぼす怪物になっては元も子もない。アルベクは迷う。
(『ちゃんと無事に帰ってきてくださいね』)
その瞬間、走馬灯のようにジュナの顔と声がアルベクの脳内に浮かび上がる。
(そうだ、俺は…… 生きて帰らなければ……)
(『禁断の核玉を持った相手には、今のアルベクでも勝てないわ。これは仕方ないの。ただ、竜を殺した人間は、その力を手に入れられるというわ。アルベクには禁断の鎧殻装兵と戦えるぐらい強くなってもらわなければ……』)
セフィーネの台詞も頭の中によぎる。
(竜の力……俺には赤竜《レッドドラゴン》の力がある。最終形態にならずとも、まだ方法はある!)
アルベクがそう思った瞬間、深紅の鎧殻装からも赤い炎が吹き上がる。それは、文様からの黒い炎とともに、アルベクの鎧殻装を覆った。
そして、深紅の結界がアルベクの身体を包み、時間が動く。
「なんだと!?」
アリスティアは驚愕する。光刃は結界の前に弾かれ、粉々に砕ける。
アルベクは右手に赤い長剣、左手に黒い長剣を生成する。
「新たな変化か…… しかし、我には勝てな……う……なんだ……」
アリスティアの胸からさらに銀の光が放出される。
「我の意識が呑まれ……う……ぐ……ああ……」
「陛下? どうされたのです!?」
アリスティアは突然苦しみだす。
「……破壊セン。ワレガ全テヲ……」
そして、しばらくした後、感情のない声でそう呟いた。
「意識が……核玉に飲まれえたのか……」
早く助け出さねば……アルベクはそう思い、アリスティアに向かっていく。
「全テノ命をワレガ…… 燃ヤシ尽クス」
アリスティアは手から光弾を放つが、黒い長剣でそれを防ぎ、赤の長剣を繰り出す。大剣と長剣が激突し、火花が散る。
意識を核玉に飲まれた後も、アリスティアの剣の腕は変わらないどころか、核玉が限界以上の剣の実力を彼女から引き出しているように思えた。身体に負荷が掛かることなどお構いなしなようだった。
(これが禁断の核玉…… 持ち主すら破滅に導くか……)
アリスティアは剣に銀色の光刃を纏わせ、それでアルベク目掛けて振り下ろす。アルベクは二振りの長剣をクロスさせ、その攻撃を防いだ。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
そして、気合をいれつつ、光刃を跳ねのけ、アリスティアのもとに跳躍する。
アリスティアは光刃を解除すると、大剣でアルベクの双剣を防御する。
強化されたアルベクの力はアリスティアにも負けていなかった。しかし、禁断の核玉は時間が経てば経つほど、力を増す。そして、意識を吞まれているアリスティアのことも心配だった。アルベクに猶予はない。
「陛下!」
そう叫ぶと、双剣をクロスさせて、波動斬撃を放つ。しかし、アリスティアも前方に結界を張って防御する。
(畜生、時間が無いってのに……)
アルベクは双剣にエネルギーを集め、何発もの波動斬撃を飛ばす。だが、結界は強固で傷ひとつ付かない。その時だった……
『アルベク、助けに来たわよ』
転移の魔術で、セフィーネがこの空間に姿を現す。
「セフィーネ!?」
アルベクは後ろを戦闘中で振り返れなかったものの、確かに後ろにセフィーネの声が聞こえた。
「あなたに、ジュナ姫から貰ったエネルギーを転送する。それで、陛下を助けなさい」
そう言って燃え盛るアルベクの背に触る。
「くっ!」
鎧殻装ごしでも炎の熱さを感じながらも、セフィーネはジュナから貰った鬼力と自分の魔力とをアルベクに転送する。
「私たちの力、無駄にしないでね!」
「ああ!」
アルベクは自分の中に強大な力が宿るのを感じた。これなら、アリスティアにも負けない。
アルベクは接近すると、黒い長剣で結界を叩き割ると、もう一方の長剣をアリスティアの大剣に叩きつける。
その威力の前に、アリスティアは後方に下がる。そのまま、アルベクは双剣を巧みに繰り出す。アルベクの猛攻の前に彼女は防戦一方だった。
「馬鹿ナ……コノワレガ……押サレテイル……」
アリスティアはなんとか後方に跳躍すると、さらに核玉の出力を上げ、大剣にまたもや白銀の光刃を纏わせる。アルベクも赤と黒の光刃をそれぞれの長剣に纏わせる。
「叩キ潰シテヤル!」
そう言って、アリスティアは光刃でアルベクを斬りつけんとする。しかし、アルベクは左手の長剣でその攻撃を防ぐ。
「ナニ!?」
「今だ!」
そして、右手の深紅の光刃をアリスティア目掛けて一閃させる。アルベクは彼女の肉体は傷つけないように、鎧殻装だけを斬りつけたのだった。
「ソンナ……我ガ装甲ガ……」
アリスティアはよろめきながら、後ずさる。銀の鎧殻装の胴体部分には、アルベクの一撃を受けた傷がありありと刻まれていた。そして、そのダメージによって、鎧殻装は維持できなくなり、粒子状になって霧散した。
そして、生身の状態のアリスティアが地面に倒れんとするのを、アルベクは自らの鎧殻装を解除して、支える。
「陛下……ご無事ですか……」
「……アルベク……我は何を……」
「今、核玉を取り出すわ!」
セフィーネはそう言うと、彼女の胸に手を近づけ、自身の魔力を込める。すると、アリスティアの身体から、銀色の核玉が放出され、セフィーネはそれを強く握りしめる。
「邪悪な核玉よ! このセフィーネが再び汝を封じる!」
その言葉とともに、核玉からは銀の輝きが失われ、細く小さな鎖が、核玉に巻き付き、全体を覆う。
「これでもう安心よ……」
セフィーネはそう言う。
核玉が力を封じられたのを受け、この異質な空間から、謁見の間へとアルベクたちは戻ったのだった。
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