魔女は言う。「復讐したい? なら新兵器の実験台になってくれないかしら?」と……  【鎧殻剣記】

熱燗徳利

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第90話 冥王リウロ・ゴバレル

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 ルフリヤは気配を消して、帝都ロージアのとある廃墟にいた。

 彼女は鬼術で悪魔五将とユフリヤの魂、そして、この世にとどまる大勢の魂を使い、冥王リウロ・ゴバレル召喚の儀式を執り行う。

「冥府におわす冥王よ! 我が求めに応じて地上に顕現せよ!」

 その言葉とともに、地面に描いた鬼術陣に無数の魂が吸い込まれていき、鬼術神は黒く光り輝く。すると、うねる黒い影が鬼術陣から出現する。影は徐々に悪魔の形を形成していった。

 その顔は、黒い髑髏のようで、瞳のない白い目が窪みから覗く。顔の側面からは、いくつもの鋭い棘がついた巨大な角が二本伸びている。胴体も漆黒で、胸元からも生気のない白い目がこちらを除いていた。背には二対の漆黒の翼が生えていた。

「冥王……リウロ・ゴバレル……」

 その迫力に圧倒させながら、ユフリヤはその名を呟く。
 次の瞬間だった。彼女の身体は縦に真っ二つに裂け、自分が殺されたことも認識できぬまま絶命した。

「ふふ、余はね…… 自分の名前ぐらい知っているよ…… 賢いんだから……」

 幼い子どものような口調で、リウロ・ゴバレルは笑う。

「核玉《コア》が一つの場所にいっぱい集まってる…… ちょうどいいや、遊びに行こう……」

 そう言って廃墟の天井を突き破り、漆黒の翼で飛翔した。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 「巨大な魔力がこちらに近づいている…… まさか……リウロ・ゴバレル!?」

 セフィーネの言葉を受け、皆に緊張が走る。

「冥王が……復活した……」
「戦うにはここでは狭い…… 皆、中庭の訓練場に出て、向かい討とうぞ」

 アリスティアはそう命じる。しかし――

『大丈夫だよ…… 余の遊び場にみんなを招待してあげる』
「な!?」

 いつのまにかアリスティアの目の前に黒い角と翼を持つ悪魔が現れる。
 
「貴様…… リウロ・ゴバレルか……」
「うん、そうだよ…… みんな遊ぼう」

 リウロ・ゴバレルがそう言うと、謁見の間にいた皆は、異空間に飲み込まれる。

「ここは……」

 地面は黒い大地、天井を見上げても白い大地が延々と広がる奇妙な世界だった。それ以外には何も存在していない。

「全員でかかってきていいよ」

 リウロ・ゴバレルは楽しそうに言う。

「ふざけるな、やってやる!」
「波動斬撃だ!」
 
 ライサーとカインが叫ぶ。
 この場の鎧殻装兵たちは皆、それぞれの武器にエネルギーを纏わせ、リウロ・ゴバレル目掛けて波動斬撃を放つ。

 いくつもの斬撃が冥王の身体に直撃する…… しかし、その身体には傷ひとつ付いてなかった。

「……ふーん、それだけ? つまんない」

 リウロ・ゴバレルは手かざす。すると、鎧殻装兵たちの身体が宙に浮く。

「「何!?」」

「いってらっしゃい!」

 そのまま彼らの身体は上昇していく。徐々に浮き上がるスピードが速くなり、待ち構えていた天井の白い大地激突する。

「「ぐあ!」」 

 鎧殻装兵たちの身体に衝撃が走る。すると、世界が反転し、白い大地が地上に、黒い大地が天井になる。

(なんて出鱈目な力だ……)

 アルベクは宙に浮くさなか抵抗しようとしたが、身体がまるで動かなかった。

「ふふ、面白かったでしょ?」

 リウロ・ゴバレルは髑髏のような顔で笑う。

「ふざけおって!」

 アリスティアは核玉の出力を上げ、大剣でリウロ・ゴバレルに斬りかかる。しかし、その刃が頭部に触れんとした瞬間、大剣の動きが止まる。

「くっ!」
「どうしたの? 余を斬ってもいいよ?」
「貴様…… クソ! 身体が動かない」

 アリスティアは出来る限り力を込めたが、身体は微動だにしなかった。

「無駄だよ…… 人間では余に触れることなど出来ない……」

 そう言って手をかざすと、アリスティアは、はるか後方に吹き飛ばされる。

「クソ!」

 セートやライサーも核玉の出力を上げて、攻撃するが、やはりリウロ・ゴバレルに武器が振れんとした瞬間、身体の自由が利かなくなる。

 そして、各々がアリスティアと同じく後方に吹き飛ばされる。

「つまんないよ…… 余、退屈…… だれか一人殺そうか……」

 そう言うと、リウロ・ゴバレルはジュナに目をつけ、彼女の前に転移する。

「させるか!」

 アルベクをはじめ、親衛隊のネリスやヒューク達がリウロ・ゴバレルに武器を振らんとするが、やはり身体の自由を奪られる。

 ジュナも逃げようとしたが身体が少しも言う事を聞いてくれない。

「やめろぉぉぉぉぉ!」

 アルベクは絶叫するが、出来るのはそれだけだった。

 リウロ・ゴバレルは手から光る黒い槍を生成すると、その穂先をジュナに向ける。

「……アルベク、助けて……」
「アルベク? ふーん、そこの赤い子? 君、その子が好きなんだ」

 リウロ・ゴバレルはそう言って、笑う。

「そうだ! じゃあ、二人の内ひとりだけ殺すことにするよ。君かそのアルベクって子、どちらかは殺すけど、もう一方は助けてあげる」
「……そんな」
「君は助かりたいでしょ? なら言うんだ…… アルベクを殺してって。そしたら、君は助けてあげる」

 悪意に満ちた声だった。まさに悪魔の囁きをジュナにする。

「ジュナ! 俺を殺すように言え!」

 アルベクは叫ぶ…… 心からそう思っていた。

 ただ、ジュナは首を振る。

「……わかりました。私を殺して、アルベクを生かしてください……」
「ジュナ!」

 「ふーん、君はそれでいいんだ。つまんないけど、そうしてあげるよ」

 そう言って、ジュナに槍を突き立てんとする。





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