魔女は言う。「復讐したい? なら新兵器の実験台になってくれないかしら?」と……  【鎧殻剣記】

熱燗徳利

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第91話 皆の力

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(畜生…… 動け身体…… ジュナがピンチなんだ。俺は彼女を守りたい!)

 アルベクは足掻くが、身体の自由は効かない。

(なんでもいい。どんな力でもいい。この局面を打開する力をくれ!)

『了解しました…… 最終形態に移行します』

 胸の核玉《コア》から、そう声が聞こえた。

 すると、核玉から暗赤色《あんせきしょく》の光が放出され、アルベクの鎧殻装と手にした剣を暗赤色に染めていく。

 すると、いままで動かなかった身体の自由が利くようになる。

「うおぉぉぉぉぉお!」

 アルベクは剣でリウロ・ゴバレルを攻撃する。

「何!?」

 ジュナを槍で貫かんとしていたリウロ・ゴバレルは、自分の束縛の力を無効化して攻撃してくるアルベクを見て、槍の矛先をアルベクからジュナに向ける。

 アルベクの長剣はその槍の穂先を易々と切断すると、リウロ・ゴバレル本体を攻撃せんとする。
 
 しかし、リウロ・ゴバレルは転移の術を使い、上空の黒の大地に移動する。

「う、うううううううううぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ!」

 アルベクは獣のような叫び声をあげる。第三形態の時のように、心が闇に飲まれているのだろうか?

「アルベク…… 大丈夫ですか……」
「ジュ……ナ…… 近づく……な……」

 しかし、ジュナの歩みは止まらない。そして、アルベクに近づくと、彼を抱きしめる。

「大丈夫……私は何度だってあなたを闇から引き揚げます」

 そう言って、すべての鬼力をアルベクに注ぎ込む。

「私たちも、アルベクに核玉のエネルギーをすべて渡すわよ」

 セフィーネの言葉に皆がうなずく。

「アルベク、俺の力はお前と共にある」

 ライサーは核玉からエネルギーをアルベクの胸に放出させる。

「僕もアル兄ぃと共に」

 セートも黄金竜の核玉のエネルギーを放出させる。

「すまない、アルベク。お前が頼りだ……」

 カインも青の竜由来のエネルギーを放出する。

「……アルベク、そなたには迷惑ばかりかけた…… 許してくれ」

 アリスティアもそう言って核玉のエネルギーを渡し、親衛隊員もそれに続く。

「アルベク、今なら思うわ。あなたに核玉を渡して良かったって」

 セフィーネも自分の白い核玉のエネルギーを放出する。

「みん……な……」

 アルベクの核玉に皆のエネルギーが集まっていく。そして、その力に支えられ、アルベクの心は落ち着きを取り戻す。

「ありがとう…… これで俺は戦える」

 すべてのエネルギーを放出して鎧殻装を解除された皆の前で、アルベクは言う。

「アルベク。あなたは皆に愛されてる…… だから、生きて帰ってきて」

 ジュナはアルベクを抱く手に力を込める。
 
「ああ、冥王だろうと何だろうと倒して帰ってくる!」

 そう言って、頭上にいるリウロ・ゴバレルを見据える。

「待っててあげたけど…… お話は終わった?」

 そう言って、リウロ・ゴバレルは手をかざす。すると、天井の黒の大地から、無数の黒い槍が振ってくる。

「ヤバい!」

 ライサーは叫ぶ。生身であれを食らったら皆一巻の終わりである。

 しかし、アルベクは冷静に左手をかざす。すると、槍は白の大地に届く前に、すべて暗赤色の炎に焼き尽くされる。

「何?」

 リウロ・ゴバレルは驚く。
 アルベクは皆の周りに強固な結界を形成すると、そのまま上空に飛翔する。そして、長剣でリウロ・ゴバレルを斬り伏せようとする。

「余を舐めないでよね!」

 リウロ・ゴバレルは穂が長く黒い大身槍を生成すると、アルベクの長剣にぶつける。

 二人は空中で激しい技の応酬を繰り広げる。その力と技は拮抗し、一撃ごとにこの空間そのものが揺れているようだった。

「はじめてだよ、余とここまで戦える人は…… だけど…… 余は悪魔の王様なんだ…… 負けないよ」
「俺も皆の思いを背負っている。負けはしない!」

 突き出される槍を巧みに長剣で逸らし、攻撃を加える。しかし、相手は転移の術を使い、間合いを詰められると距離を放してくる。一方のアルベクはこの異空間では転移の術が封じられているものの、どこから攻撃が来ようと巧みに防御していた。

「しつこいなぁ……」

 リウロ・ゴバレルは胸の第三の目からエネルギー波を放出する。それに合わせて、アルベクも胸の核玉からエネルギー波を放出した。二つの巨大なエネルギー同士が激突し、爆発する。
 
 ただ、リウロ・ゴバレルの攻撃はそこで終わりでは無かった。髑髏の口を開き、巨大な黒い火球をアルベク目掛けて放つ。

「くっ!」

 アルベクは前方に結界を張る。一発目の火球は凌ぐ。しかし、何発も火球を受けた結界は破壊され、アルベク自身も後方に吹き飛ばされる。

 さらにリウロ・ゴバレルは角に生えた棘から細い光弾をいくつも発射させ、それがアルベクを追尾する。

 すべてを長剣で弾ききれず、アルベクは光弾に打ちのめされる。

「はは、楽しいね」

 リウロ・ゴバレルは笑いながら、光弾を雨霰のように放出していった。

 アルベクは核玉の出力を上げ、全身の鎧殻装を強化し、その攻撃に耐える。

「……畜生…… まだだ、まだ負けない」

 アルベクは長剣に暗赤色の巨大な光刃を纏わせた。そこにさらにエネルギーを込めて、リウロ・ゴバレル目掛けて振るう。

 巨大な光刃はリウロ・ゴバレルに迫りくるが、彼はそれを槍に螺旋状のエネルギーを纏わせてガードする。アルベクは光刃を押し込むが、またもやリウロ・ゴバレルは転移する。

「無駄だよ!」

 そのまま大身槍でアルベクを背後から突かんとする。なんとかガードしたものの、このままでは攻略する方法がなかった。

(転移の術が厄介だ…… しかも、こうも自在に空中を動き回られちゃ、攻撃が当たらない……)

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 「アルベク……」

 アルベクが張った結界の中で、ジュナは戦闘を見守っていた。

(私はあなたを信じます…… だから、生きて帰ってきて……)

 そう思いながら、手を合わせる。

「ジュナ様、アル兄ぃなら大丈夫ですよ」

 セートが心配そうなジュナに声をかける。
 
「そうですよ、俺たちはあいつに何度も助けられてきました…… それに今あいつは一人じゃない。俺たちの力と共にある…… だから、大丈夫なんです」

 ライサーもそう言って笑う。

「ええ…… アルベクは良い仲間に恵まれたようですね……」

 ジュナは彼らの言葉に励まされるのだった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「ははは、もっと遊ぼう!」

 リウロ・ゴバレルは大身槍を振り回し、アルベクを追い詰める。
 最終形態は強力な分、エネルギーの消費が激しい…… アルベクは徐々に体力を消耗していった。

「大丈夫? 限界が近そうだよ」

 リウロ・ゴバレルは再び胸の目からエネルギー波を放つ。それがアルベクに直撃する。

「ぐっ……この!」

 ダメージを負ったアルベクは仲間たちがいる結界の許まで吹き飛ばされる。

「はは、君も仲間も皆死ぬ……」

 リウロ・ゴバレルは嘲笑うと、大身槍の穂先にエネルギーを纏わせ、それを衝撃波として放出し、全員を殺そうとする。

「させない! 誰一人お前に殺させやしない!」

 アルベクは結界の中の皆の顔を見る。そして、皆を守り切るという決意を固めると、長剣にエネルギーを纏わせ、衝撃波を弾きとばす。

 そして、リウロ・ゴバレルに向けて一気に距離を詰め、剣を振りかざす。リウロ・ゴバレルは空中に転移し、攻撃を回避する。
 アルベクもそれを追うように飛翔する。

 上空で、長剣と槍が激突する。アルベクは、体力は減り、限界も近い。ただ、アルベクは一人じゃなく、皆と一緒に戦っている気分だった。皆の力が、思いが、この胸には宿っているのだから。

「こいつ……もう限界なはずなのに、どこまでも食らいついてくる……」

 アルベクの猛攻にリウロ・ゴバレルは不快感を示す。冥府に攻めて来た鬼王《オグルク》よりも、アルベクは遥かに強かった。

 アルベクは必死に剣を振るいながら、リウロ・ゴバレル攻略の方法を考える。その結果、ひとつの考えが浮かぶ。

(相手が転移するなら、動きを封じるまで!)

 アルベクは長剣に光刃を纏わせるた後、自分ではなく、 リウロ・ゴバレルを覆う小さな丸い結界を張る。

「うん!? 何のつもりだ……」

 一見なんの意味も持たないようだが、結界の中では、転移の術が使えなかった。

「こ、この!」

 リウロ・ゴバレルは結界を突き破ろうと、槍にエネルギーを込める。その隙にアルベクは光刃をリウロ・ゴバレルに向ける。

「食らえぇぇぇぇぇ!」

 光刃には皆から貰った核玉のエネルギーが宿っていた。それは、結界を貫き、そこにいるリウロ・ゴバレルの肉体をも貫く。

「グァァァァァ! よ、よくも!」

 光刃がリウロ・ゴバレルの第三の目を貫くが、それでも彼はまだ足掻こうとする。

「これで、終わらせる!」

 そのまま残った核玉のエネルギーをつぎ込み、光刃の出力を上げる。光刃はさらなる熱を帯び、それは、リウロ・ゴバレルの身体が炎上させる。

「そ、そんな…… この余が…… リウロ・ゴバレルが……」

 炎は冥王の肉体を完全に包み込む。そして、リウロ・ゴバレルは灰となりながら、白の大地に消えていった。
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