魔女は言う。「復讐したい? なら新兵器の実験台になってくれないかしら?」と……  【鎧殻剣記】

熱燗徳利

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第92話 未来

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 リウロ・ゴバレルを倒し、アルベクたちは謁見の間に戻ってくる。

「やれやれ、宮殿は至る所ボロボロだが、皆生きて帰ってこれて良かった」

 アリスティアは安堵のため息をつく。

 しかし、鎧殻装を解除したアルベクはふらつき、床に倒れる。

「アルベク!」

 ジュナはすぐさまアルベクに駆けより、彼を抱き上げた。

「大丈夫だ…… 少し疲れただけだよ……」
「……ほんとうにどこも悪くないのですか?」
「ああ、休めば回復するさ……」

 アルベクは力なく笑った。

「すぐに医務室に……」
「俺が運ぶよ」

 ライサーはアルベクを担ぐと医務室に向かう。

「お前さんはよくやったよ。あの冥王を倒したんだから……」

 道中、ライサーはアルベクにそう言う。

「はは、皆から貰った力のおかげだよ。それがなければ倒せなかった」
「それでも……だ。お前さんがもう戦わなくていい世界をこれから作っていかなきゃな」
「そうだな…… 戦いはもう懲り懲りだよ」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 戦いから一週間後、すっかり回復したアルベクはアリスティアの部屋に呼び出されていた。

「此度《こたび》はよくやってくれたアルベク…… そなたにはどれほど謝罪と感謝を述べても足りんな」
「……そんな、陛下。俺は俺のやりたいことをやったまでです」
「そして、我も考えを改めた…… ヴァルスレン帝国が大陸を支配する時代は終わったのだ。そなたたちが言っていたように、各国の独立を認めようと思う」  
「本当ですか…… 将国の皆も喜ぶかと」

 百年に渡るヴァルスレンの統治が、名目としても終わりが来るようだ。

「これからは各国が協力し、大陸の行く末を決める議論の場と組織を作らねばなるまい。まあ、理想論だが、それでもやってみたいのだ」

 アリスティアは優しく笑いかける。

「ええ、きっとうまくいきます。我々は破滅の未来を回避しなければなりません」
「リーナや鬼王《オグルク》の申すことが正しければ、これからはシェルド族以外にも魔術師が生まれてくる時代になるだろう…… だが、昔のように排除せず、彼らと手を取り合えるようにしなければな……」

 百年前の過ちを繰り返してはいけないとアルベクは強く思うのであった。

「はい、誰もが排除されない未来を…… これも理想論かもしれませんが……」
「はは、やらなければならないことは多いな」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 この前の戦いに参加した皆は、ロージア宮殿の晩餐会に呼ばれていた。

「それで、アル兄ぃは姫様と将国に住むの?」
「私はアルベクを一国に閉じ込めようとは思いませんわ。転移の術もありますし、どこか一つに定住することにはならないかと」 

 セートの問いにジュナが答える。

「……そうだな、ライゼルのところにも顔を出したいし、大学の卒業もまだだ…… ゆっくり決めるよ」
「鎧殻警備隊に来ても良いんだぞ?」
「ありがたい申し出ですが、それは私とアルベクの会う時間が少なくなりそうですから却下です」
 
 カインの勧誘をジュナはきっぱりと断る。

「あら、お二人は、ほんとアツアツね……」
「……からかうなよ、セフィーネ」
「ふふ、良い事じゃない」

 セフィーネは悪戯っぽく笑う。

「はあ、俺も彼女欲しいよ……」

 ライサーは羨ましそうにそう言った。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 晩餐会から数日後、アルベクはジュナと共に将国を訪ねていた。

「桜はもう散ってしまったな……」
「ええ、でも来年にはまた綺麗な花を咲かせますわ。あなたがこの世界を守ったのですもの」

 誇らしそうに言うジュナを見て、アルベクは何だかおかしくなった。

「あら、事実ですよ。いくら自慢しても足りないくらい」
「はは、それが出来たのは、ジュナや皆のおかげだ。俺は色々な人々に支えられてここまで来たんだと強く思うよ」
「私はこれからもあなたを支えます」

 ジュナはそう言って、アルベクを抱きしめる。

「あなたは優しい人だから、いっぱい傷ついてきたと思います。でも、私やお仲間がいます。だから、あなたは一人じゃない」
「……ああ。分かってる。ありがとう、ジュナ」

 辛い思い出は数えきれないし、これからもそういう思いをするかもしれない。でもこれからは一人じゃくなく、ジュナや皆と歩いていく。だから、大丈夫だ。

「ジュナ…… じゃあ、俺と一緒に未来を歩いてくれ」
「ええ、どこまでも」

 二人は、手をつなぎ、歩を進めるのだった。
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