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抱きしめるのは。
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「みんな今日は来てくれてありがとう!今日の配信をお届けしたのは、みゆとー?」
私は2つのモニター画面を見ながら、マイクに向かって話す。画面には、ゲームの画面と、4人の女の子のイラスト、そして難しそうなツマミの画面が映っている。
「愛葉と!」
「白樺ユキエと」
コラボ者――4人のうち2人の女の子達だ――が次々と己の名前を述べる。
次は私の相棒の番だ。
「そしてみゆの相棒、あいらでした!」
各々がまたねー、ありがとう、と述べたのを確認すると、私は画面に映る配信終了ボタンを押した。
これで、2人のコラボ者を迎えて行った、ゲーム配信は終了だ。
ちなみに、配信していたソフトとは別の通話ソフトを使って会話をしていたので、まだ4人の通話は続いている。
「お疲れ様でしたー!」
私は主催者として、挨拶をする。
「楽しかったです。ありがとうございました!」
「今日はありがとうございました」
「2人とも、みゆが最初の挨拶グダグダさせちゃってごめんね」
私の相棒であるあいらが、私の失敗をフォローしてくれた。最初の自己紹介中に、コラボ者の投稿している動画のジャンルを間違えてしまったことを言っている。
「大丈夫ですよ、お気になさらないでください」
「そうそう!全く気にしてないです!」
「本当にすみません……」
その後、今日の配信の感想を話し、コラボ者は通話を切っていった。残ったのは私と私の相棒だけ。
私はこの相棒、あいらと2人で動画配信を行っている。
彼女と私は同じ大学で、別の学科に通っている。共通科目のグループワークを通して仲良くなった。配信者が好きという共通点があり、今では親友。
あいらが自分も配信をしたいと言ったのがきっかけで、2人で配信を始めた。
私はパソコン関係に詳しく、あいらは話すことが得意。お互い苦手なところをフォローし合って、配信を続けている。
自己紹介の事件など、反省点と改善方法を話し合って、話は段々と大学の話に脱線していった。
「でさ、あの実習ホントに意味分からないんだけど!」
あいらが興奮しながら話す。
「そっちの学科の教授、そんなに厳しいんだね」
「そうなんだよ!柔軟性に欠けるっていうか……」
教授についての愚痴を、私は頷きながら胸の高鳴りを感じていた。
最初は親友だった。中学校、高校とできた友達と同じだ。だけど、一緒にいるにつれて段々と、それとは違う感情が芽生えてくるのを私は否定できなかった。
困ったときに頼りになるところ。会話上手なところ。その少し低めの声。その声とのギャップを産む小さな身長。笑顔。涙ボクロ。
私も男の子と付き合ったことはある。その感情と同じ、もしくはそれ以上だって認めざるを得なかった。
私は、あいらに恋をしている。
認めているけど、けれども「認めてはいけなかった」。
「あーあ、あんなデブじゃなくて、ウッチーみたいなイケメンが教授ならよかったのに」
ため息混じりに呟くあいら。ウッチーとは、あいらが追っかけている男性アイドルグループ、star miracleのリーダーのこと。
あいらの恋愛対象は、男性だ。
私は「同性の大親友」。隣にいれるのは大親友、そして動画を投稿する相棒としてだけ。
そのことを考えると胸が苦しい。痛みを感じる。
抱きしめたい。その瞳を独占したい。他の人のことなんて考えて欲しくない。
私だけを見て欲しい。
でも、私は。
「そうだね、あいらはウッチーのこと大好きだもんね」
こう言って、作り笑いをするしかないんだ。
あいらが抱きしめられたいのは、女の子じゃない。あいらの瞳にずっと映るのは、私じゃない。あいらが考えるのは……。
「ちょっとみゆ、棒読みなんだけど!」
気づいてよ、あいら。
「あ、そうだ。次コラボする人の候補なんだけど、イケメンな人がいるんだよ!声もイケメンでさ。みゆ惚れちゃうかもよ?」
そうじゃないよ、あいら。
「惚れてるのは……」
「みゆ?」
「いや、なんでもない」
「みゆー?ホントは好きな人いるんでしょ?誰?どんな人?芸能人でいうと?」
楽しそうに私を質問攻めにする。
辛いけど、そんな楽しそうなあいらを見るのは嫌ではない。
「バレたら仕方ないな。頼りになって、話が上手で、笑顔が素敵な人だよ」
「へー?どんな男なんだろうなぁ。妬いちゃうな」
自分に妬いちゃうんだね、あいら。
可愛いね。
私のものになってよ。
--------キリトリ線--------
この作品は、Twitterの友人のツイートを元に作成しました。ありがとうございました。
楽しんで頂ければ幸いです。
私は2つのモニター画面を見ながら、マイクに向かって話す。画面には、ゲームの画面と、4人の女の子のイラスト、そして難しそうなツマミの画面が映っている。
「愛葉と!」
「白樺ユキエと」
コラボ者――4人のうち2人の女の子達だ――が次々と己の名前を述べる。
次は私の相棒の番だ。
「そしてみゆの相棒、あいらでした!」
各々がまたねー、ありがとう、と述べたのを確認すると、私は画面に映る配信終了ボタンを押した。
これで、2人のコラボ者を迎えて行った、ゲーム配信は終了だ。
ちなみに、配信していたソフトとは別の通話ソフトを使って会話をしていたので、まだ4人の通話は続いている。
「お疲れ様でしたー!」
私は主催者として、挨拶をする。
「楽しかったです。ありがとうございました!」
「今日はありがとうございました」
「2人とも、みゆが最初の挨拶グダグダさせちゃってごめんね」
私の相棒であるあいらが、私の失敗をフォローしてくれた。最初の自己紹介中に、コラボ者の投稿している動画のジャンルを間違えてしまったことを言っている。
「大丈夫ですよ、お気になさらないでください」
「そうそう!全く気にしてないです!」
「本当にすみません……」
その後、今日の配信の感想を話し、コラボ者は通話を切っていった。残ったのは私と私の相棒だけ。
私はこの相棒、あいらと2人で動画配信を行っている。
彼女と私は同じ大学で、別の学科に通っている。共通科目のグループワークを通して仲良くなった。配信者が好きという共通点があり、今では親友。
あいらが自分も配信をしたいと言ったのがきっかけで、2人で配信を始めた。
私はパソコン関係に詳しく、あいらは話すことが得意。お互い苦手なところをフォローし合って、配信を続けている。
自己紹介の事件など、反省点と改善方法を話し合って、話は段々と大学の話に脱線していった。
「でさ、あの実習ホントに意味分からないんだけど!」
あいらが興奮しながら話す。
「そっちの学科の教授、そんなに厳しいんだね」
「そうなんだよ!柔軟性に欠けるっていうか……」
教授についての愚痴を、私は頷きながら胸の高鳴りを感じていた。
最初は親友だった。中学校、高校とできた友達と同じだ。だけど、一緒にいるにつれて段々と、それとは違う感情が芽生えてくるのを私は否定できなかった。
困ったときに頼りになるところ。会話上手なところ。その少し低めの声。その声とのギャップを産む小さな身長。笑顔。涙ボクロ。
私も男の子と付き合ったことはある。その感情と同じ、もしくはそれ以上だって認めざるを得なかった。
私は、あいらに恋をしている。
認めているけど、けれども「認めてはいけなかった」。
「あーあ、あんなデブじゃなくて、ウッチーみたいなイケメンが教授ならよかったのに」
ため息混じりに呟くあいら。ウッチーとは、あいらが追っかけている男性アイドルグループ、star miracleのリーダーのこと。
あいらの恋愛対象は、男性だ。
私は「同性の大親友」。隣にいれるのは大親友、そして動画を投稿する相棒としてだけ。
そのことを考えると胸が苦しい。痛みを感じる。
抱きしめたい。その瞳を独占したい。他の人のことなんて考えて欲しくない。
私だけを見て欲しい。
でも、私は。
「そうだね、あいらはウッチーのこと大好きだもんね」
こう言って、作り笑いをするしかないんだ。
あいらが抱きしめられたいのは、女の子じゃない。あいらの瞳にずっと映るのは、私じゃない。あいらが考えるのは……。
「ちょっとみゆ、棒読みなんだけど!」
気づいてよ、あいら。
「あ、そうだ。次コラボする人の候補なんだけど、イケメンな人がいるんだよ!声もイケメンでさ。みゆ惚れちゃうかもよ?」
そうじゃないよ、あいら。
「惚れてるのは……」
「みゆ?」
「いや、なんでもない」
「みゆー?ホントは好きな人いるんでしょ?誰?どんな人?芸能人でいうと?」
楽しそうに私を質問攻めにする。
辛いけど、そんな楽しそうなあいらを見るのは嫌ではない。
「バレたら仕方ないな。頼りになって、話が上手で、笑顔が素敵な人だよ」
「へー?どんな男なんだろうなぁ。妬いちゃうな」
自分に妬いちゃうんだね、あいら。
可愛いね。
私のものになってよ。
--------キリトリ線--------
この作品は、Twitterの友人のツイートを元に作成しました。ありがとうございました。
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応援ありがとうございます!
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