ひらひらのあつまり

獅子倉 八鹿

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にゃんと鳴く先生、恋を知る

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「猫は自由でいいなぁ」
  こちら、我が世話しているジュリアンの呟きである。

  大型犬、と人間からひとまとめにされているジュリアンは、少し顔をしかめ、我の顔を見ながら言った。
  日光浴にうってつけの午後。我は、欠伸をしながら答える。
「教えただろうジュリアン。今の時代、我々動物に自由なんてないのだよ。そこに犬や猫は関係ない」
「先生、私の首を見て」
  ジュリアンは後ろ足を器用に操り、首に付けられた赤い輪を指す。
  ちなみに先生という呼び方は、ジュリアンが呼び始めたもので、我はこの呼び方を強要していない。
「この輪っかで、ちょっとしか動けなくしてるの。猫はそんなことないでしょ?先生みたいに自由に走りたいよ」
「確かにそうかもしれないがね。我等は祖先達のように、大自然を駆け回ることは出来ないのだよ。どれだけ自然の中で走ることを願おうとも。我等の自由は、人間に左右されているのだ」
  ジュリアンは、不服そうに首輪の近くを掻きむしる。

「そういえば、なんで先生は私に優しくしてくれるの?なんで色々教えてくれるの?」
  掻きむしる足を止め、ジュリアンは我の顔を見る。
「そうだね」
  我は返答に困ってしまった。
  胸の内をさらけ出した結果、ジュリアンは我に愛想を尽かすかもしれない。
  ジュリアンが我から離れる事になった場合、不都合が出ることは明らかだった。
「気まぐれかね」
  気が遠くなりそうな程高い場所で飛ぶ鳥を見ながら答えた。

「きまぐれって?」
  どうやらジュリアンにはまだ気まぐれという言葉を教えていなかったようだ。
「気持ちが変わることだ。ジュリアンだって、朝は睡眠を取りたいと言っていたが、今は体を動かしたいのだろう?」
  先程の言葉から、ジュリアンの心情を推測してみた結果だが、当たっていたようだ。
「すごいや。なんで体動かしたいって分かったの」

  ちぎれんばかりに尻尾を振るジュリアン。この反応が見たくて、我はジュリアンに構っているのだ。

  優越感。優位に立つ心地良さ。快感だ。
  我に知識を授けてくれた野良猫も、今の我のような気持ちで知識を授けてくれたのだろうか。
  年老い、池で溺れてしまった野良猫に、もう答えを聞くことはできない。

「先生好き!話すの楽しい!」

  その瞬間、快感は消え、我の心が暖かくなった。

  そう言えば、野良猫に教えて貰った覚えがある。
  最初の頃のことで、今の今まで忘れていた。

「好きという気持ち、それは素敵な感情ですよ。好きという感情の前では、怒りや驕りといった気持ちも消えてしまうのです」

  ジュリアンの舌が、我の体をそっと撫でた。
「いい子だ」
  我はそう言って、ジュリアンの足を舐めた。
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