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玄冬
げんとう12
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「奏汰です。覚えてるかわからないけど」
「覚えてます。インパクトあったし、同じ大学だし」
アリシャからのカミングアウトに、俺は驚きを隠せない。
「同じ大学?」
アリシャは頷いた。
「私は社会学部。同じ学部じゃないけど、キャンパスは同じだよね。ちなみに二年」
「あ、俺経済学部の二年。同い年だったんだ。なんで同じ大学って分かったの?」
「お店に来てくれた次の日かな。荷物を荷台に乗せて移動させてる時に、崩しちゃって」
「あ」
そこまで言われて思い出した。
学食を食べた後の時間。蒼依と一緒に歩いていると、前から台車を押しながら歩いてきた女子学生がいた。
本を何十冊も積み上げており、何の本だろうと思いながら目で追っていると、段差で台車が揺れ、本が崩れた。
俺と蒼依は掛け寄り、本を乗せるのを手伝ったのだ。
「あれ、アリシャさんだったんだ」
「一応あの時お礼は言ったんだけど、小声だったし気づかなかったみたいだね」
「全然気づかなかった」
「あの後、WINGのアカウントも見つけたよ」
「本当?」
「青春活動でしょ」
「うん、そう」
「裏アカでフォローしてる。九遠くんだよね」
その呼び名で呼ばれると、嫌でも蒼依を思い出してしまう。
今は、蒼依のことを思い出したくない。
「うん。アリシャさんは、誰かと電話してた?」
半ば強引だとは思ったが、話を変えることにした。
「ああ、終わったけど。うるさかったかな」
「ここで電話してたから、俺はアリシャさんに気づけた」
「良かったら、もうちょっと話していかない? イセカイトビラに来てくれる訳でもないみたいだし」
痛いところを突かれ、苦笑しながら、アリシャの横に座った。
「さっきね、お父さんと電話してたんだ」
「お父さんか」
「ネチネチうるさいんだよね。まだ進路決まってないんか! おどれ早よ決めにゃ仕事なぁなるぞ! って。しかも酒飲んだ勢いで言ってくるから。嫌になる」
「お、おう……?」
途中どこかの方言が混ざったが、よくわからない。
とりあえず、進路のことで何か言われたと解釈しておく。
「そがなこと自分がいっちゃん分かっとるわ、親じゃけぇって偉そうにせんで欲しいんじゃけど! どれだけこっちが日々頑張っちょるかあんたぁ知らんかろう! ってこっちも強く言わないと止まらなくて」
「えっと、どこの方言?」
ここまでくると八割何を言っているか分からなかった。
「あ、ごめん。広島。わかんないよね」
「正直ほとんど分からなかった」
これがテレビやアニメでよく聞く関西弁ならまだ分かるかもしれないが、広島弁は馴染みがない。
「えっと、まだ進路決まってないの? 早く決めないと仕事なくなるよって父親に言われて、そんなの自分が1番分かってる。親だから偉そうに言わないでって言いました」
「ありがとう。話の理解が進んだ」
「それで、戦いを終わらせてたら奏汰さんが来ました。私の話おしまい」
「大変だね」
「奏汰さんも、なんかあったんでしょ? さっきみ無理やり話変えたもんね。良かったら話していかない?」
逃げきれないとわかり、俺は、蒼依と三宅さんのことを話した。
「覚えてます。インパクトあったし、同じ大学だし」
アリシャからのカミングアウトに、俺は驚きを隠せない。
「同じ大学?」
アリシャは頷いた。
「私は社会学部。同じ学部じゃないけど、キャンパスは同じだよね。ちなみに二年」
「あ、俺経済学部の二年。同い年だったんだ。なんで同じ大学って分かったの?」
「お店に来てくれた次の日かな。荷物を荷台に乗せて移動させてる時に、崩しちゃって」
「あ」
そこまで言われて思い出した。
学食を食べた後の時間。蒼依と一緒に歩いていると、前から台車を押しながら歩いてきた女子学生がいた。
本を何十冊も積み上げており、何の本だろうと思いながら目で追っていると、段差で台車が揺れ、本が崩れた。
俺と蒼依は掛け寄り、本を乗せるのを手伝ったのだ。
「あれ、アリシャさんだったんだ」
「一応あの時お礼は言ったんだけど、小声だったし気づかなかったみたいだね」
「全然気づかなかった」
「あの後、WINGのアカウントも見つけたよ」
「本当?」
「青春活動でしょ」
「うん、そう」
「裏アカでフォローしてる。九遠くんだよね」
その呼び名で呼ばれると、嫌でも蒼依を思い出してしまう。
今は、蒼依のことを思い出したくない。
「うん。アリシャさんは、誰かと電話してた?」
半ば強引だとは思ったが、話を変えることにした。
「ああ、終わったけど。うるさかったかな」
「ここで電話してたから、俺はアリシャさんに気づけた」
「良かったら、もうちょっと話していかない? イセカイトビラに来てくれる訳でもないみたいだし」
痛いところを突かれ、苦笑しながら、アリシャの横に座った。
「さっきね、お父さんと電話してたんだ」
「お父さんか」
「ネチネチうるさいんだよね。まだ進路決まってないんか! おどれ早よ決めにゃ仕事なぁなるぞ! って。しかも酒飲んだ勢いで言ってくるから。嫌になる」
「お、おう……?」
途中どこかの方言が混ざったが、よくわからない。
とりあえず、進路のことで何か言われたと解釈しておく。
「そがなこと自分がいっちゃん分かっとるわ、親じゃけぇって偉そうにせんで欲しいんじゃけど! どれだけこっちが日々頑張っちょるかあんたぁ知らんかろう! ってこっちも強く言わないと止まらなくて」
「えっと、どこの方言?」
ここまでくると八割何を言っているか分からなかった。
「あ、ごめん。広島。わかんないよね」
「正直ほとんど分からなかった」
これがテレビやアニメでよく聞く関西弁ならまだ分かるかもしれないが、広島弁は馴染みがない。
「えっと、まだ進路決まってないの? 早く決めないと仕事なくなるよって父親に言われて、そんなの自分が1番分かってる。親だから偉そうに言わないでって言いました」
「ありがとう。話の理解が進んだ」
「それで、戦いを終わらせてたら奏汰さんが来ました。私の話おしまい」
「大変だね」
「奏汰さんも、なんかあったんでしょ? さっきみ無理やり話変えたもんね。良かったら話していかない?」
逃げきれないとわかり、俺は、蒼依と三宅さんのことを話した。
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