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4話
しおりを挟むあれから数日が経つ。
私は以前よりも静かな部屋で、一人きりの時間を過ごしていた。
ふと目に映ったのは、母の形見の箱。
置きっぱなしにしていたことに気づき、
私は引き出しに手をかけ、それをしまおうとした。
―――その時。
指先に、覚えのない紙の感触が触れた。
「…手紙?」
取り出したのは、一封の手紙。
しかし、中に何か入っているのか…指先にわずかな厚みを感じた。
―――もしかして。
この部屋に訪れる者は一人しかいない。
私は手に持っている箱を置き、震える指で、急いで封を開けた。
入っていたのは鍵と―――リサからの手紙だった。
それを見た瞬間、胸の奥が静かに痛んだ。
"ネメシア様へ
今この手紙を読んでいることは、私はもう、ネメシア様のお傍にいないのでしょう。
ですがどうか、心配しないでください。
私は、苦しくて離れたのではありません。
最後まで、あなたのことを思いながら、
とても穏やかな気持で眠りにつきました。
ネメシア様。
あなたは、とても優しい子です。
私は、その優しさに何度も救われてきました。
ネメシア様のことです。
きっと、ご自身のせいだと、責めてしまうのでしょう。
忘れないでください。
あなたは、誰かを不幸にするために、生まれてきた子ではありません。
前にもお話した通り、奥様も、私も、
あなたが生きて、笑ってくれることを
何よりも願っていました。
夜空を見上げた時、思い出してください。
あなたを見守る者たちが、そこにいます。
ネメシア様が、どんな困難が起きても、
あなたらしく歩いていけますように―――。
ずっと、大好きでした。
あなたのお傍にいられたこと、私はとても幸せでした。
―――あなたのリサより"
頬を伝う、温かい感触に気づいた。
指先でそっと触れると、それは―――涙だった。
「……っ…リサッ…」
声にならない嗚咽が、喉の奥で震える。
泣き方を忘れていたはずなのに…
私の目からは、涙だけが止めどなく溢れていた。
気持ちが落ち着き、鍵を手にする。
おそらく、母の形見の箱に使うのだろう。
手紙にはこの鍵のことは何も書いてない。
私は迷わず、箱の鍵穴に差し込んだ。
―――けれど、回らなかった。
まだその時ではない、と言われているように感じた。
"開ける日が来たら、夜の空へかざしなさい"
この箱を渡される時の言葉を思い出した。
「…開ける日っていつなんだろう」
ふと私は、窓の外へ目を向ける。
真っ暗な空の中、月明かりが照らしていた。
私は箱を、夜空へかざそうとする。
「ネメシア様、もう就寝のお時間です」
扉の向こうから、執事長の声が聞こえた。
「わかってるわ…」
私は、箱を引き出しの奥へとしまう。
リサからの手紙と、一緒に―――。
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