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異世界転移の章
2.錬金術
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暖かで柔らかい風が、少女達の頬を撫でる。陽光に照らされた木々の上では鳥が囀り、どこからか川のせせらぎの音が聞こえて来る。
「う………ん…………」
そんな明るく穏やかな森の中で、目を覚ましたのは日下未来。ショートボブの整った髪が、陽光に照らされて黒々と輝いていた。
「あ……れ……?ここ……何処………?」
何だか酷く頭がぼんやりとしている。寝起きなのだから当然かもしれないが、何やら頭の中が霞がかっているような感じで思考が上手く纏まらない。
しかし、隣で倒れている少女が視界に入った瞬間、未来の意識は一気に覚醒して少女の肩を急いで揺らす。
「愛莉!愛莉!」
倒れているのは幼馴染で恋人の望月愛莉。愛莉を見た瞬間、つい先ほどまでの記憶が鮮明に甦る。
「う………うう………」
「愛莉!大丈夫愛莉!?」
眠そうに目を開ける愛莉。そのままムクリと上半身を起こし、寝ぼけ眼で未来を見る。
「あれ……未来………」
「あ、愛莉………良かった愛莉……ッ!!」
ぎゅっと愛莉に抱きつく未来。その瞳からはボロボロと涙が溢れていた。
「未来……?どうしたの………?」
「うう………何で覚えてないんだよぉぉ~~」
愛莉の胸の中でわんわんと泣きじゃくる未来。それもその筈で、二人は先ほどラブホテルで火災に巻き込まれ、煙を大量に吸い込んだのだ。意識は朦朧としていって、そのまま二人は床に倒れ、意識を手放した。その直前まで覚えている未来にとって、今こうして二人が生きている事が奇跡だった。とても助かるような状況だったとは思えない。
「えっと……なんだっけ……ラブホテルでエッチして………」
「そこは覚えてるんだね!」
「だって気持ち良かったし………その後は……お風呂入ったよね」
「うん。本当はお風呂でもしたかった……ってそんな事は今はいいの!」
「えー……未来が言ったのに」
埒が明かないので未来が説明を始める。二人仲良く風呂に入っていると、急に愛莉が焦げ臭いと言い出したので、急いで着替えて部屋を出ようとしたらドアの隙間から煙が流れ込んで来た事。
「あたしが焦ってドアを開けたら煙がいっぱい入って来ちゃって………」
そこまで説明されて、ようやく愛莉も思い出す。何とか窓から逃げようと窓に近づくと、外には大勢の人の山。
どちらにしても愛莉達の居た部屋は三階だったので、窓から逃げるのは絶望的だったのだが、窓を開ければ外の新鮮な空気は吸えただろう。しかし愛莉には窓が開けられなかった。
「うん……全部思い出した」
「ごめんね……あたしがドア開けたせいで」
「未来は悪くないよ。わたしこそ……あの時躊躇しないで窓を開けていれば………」
窓を開けると、自分と未来の姿が大勢の人の目に晒される。そんな事になれば、たとえ助かったとしてもほぼ間違いなく学校に知られてしまい、良くて停学処分、最悪は退学処分になっていただろう。しかもその後は二人揃って『同性愛者』と陰口を叩かれながら生きて行かなければならない。自分達だけならそれでいいが、家族にまでその被害が及んでしまうと思うと、愛莉は窓を開ける事が出来なかった。
「でも……助かったみたいだねあたし達」
「うん。でも………何処なのここ……?」
改めて周りを見渡すと、此処が森の中だという事が分かる。分かるのだが、そこかしこから天に向かって伸びている木々は、見た事も無いほどの巨木。そんな巨木が、一定の間隔を明けて生えているのだ。
「デッカい木だよね。これ何ていう木?」
「分かんない……見た事無いよこんなの。縄文杉の何倍もありそうだし」
愛莉が巨木をじっと見つめていると、不意に視界に文字が浮かび上がった。
『グリーグの巨木』
「…………え?」
「ん?どうしたの愛莉?」
「な、何か文字が……グリーグの巨木って」
「へ?何処に書いてあるの?」
「か、書いてないの!空中に浮かび上がって………」
未来を見つめる愛莉。すると未来の頭の上に再び文字が浮かび上がった。
『日下未来(職業無し:Lv1)
ーー固有スキル:短距離転移、瞬剣(LV1)、投擲(Lv1)、言語認識
ーーパッシブスキル:腕力上昇(Lv1)脚力上昇(Lv3)回避(Lv1)』
「………何これ」
「え?何?」
「何か……未来の頭の上にステータスみたいのが浮かび上がって………」
「ステータスって………RPGゲームとかのアレ?」
「うん……って未来、RPGの”G”ってゲームの略だよ。未来の言い方だとロールプレイングゲームゲームになっーーーー」
「そんな事はどうでもいいの!それで、どんなステータスなの!?」
何やら目をキラキラさせる未来。今がどんな状況なのか分からないのに、この明るさは一体どこから来るのだろうかと嘆息するも、未来にステータスの内容を伝える愛莉。それを聞いた未来が首を傾げる。
「固有スキル?パッシブスキル?」
「固有スキルっていうのは多分、ゲームとかで言う所のアクティブスキルって奴だと思う。自分で選択して発動させるみたいな。パッシブスキルは選択しなくても常時発動してるスキルの事だよ」
「へぇ~、それでショートワープだっけ?何それ?あたしワープ出来るの?」
「分かんない……出来る訳無いって普通に考えたら思うけど……そもそもステータスが浮かび上がるのがまず変だし」
まさか何かのバーチャル空間なのだろうか。いつの間にか超高度なVRか何かを二人で始めたのだろうか?そんな考えが愛莉の脳裏を過る。
そんな事を考えていると、未来が愛莉に話し掛けて来た。その瞳は期待の篭った瞳だった。
「ねっ、ねっ!愛莉のステータスも見れるの!?」
「え、わたしの?」
「うん!あたしのが見れるなら自分のも見れるんじゃない!?ほら、自分の手とか凝視してさ」
なるほど、確かに未来の言う通りかもしれないと思い、愛莉は自分の手を凝視する。するとーーーー
『望月愛莉(職業無しLV1)
ーー固有スキル:錬金術(Lv1)、鑑定眼(Lv1)、言語認識
ーーパッシブスキル:頭脳上昇(Lv1)想像力上昇(Lv1)具現化上昇(Lv1)』
「だって。錬金術ってあの錬金術かな?」
「凄い凄い!早速使ってみようよ!」
使ってと言うが、そもそもどうやって使うのかも分からない。ゲームと違い、どこかに選択ボタンがある訳ではないのだ。
「使うって……どうやって?」
「うーん……ってか錬金術ってどんなの?」
「ゲームとかだと、何か素材とかから別のアイテムを作り出すとか……DIY?」
「ちょうどいいじゃん!愛莉DIYが趣味なんだし!あ、この枝から何か作れないの?」
未来はそう言いながら長い木の棒を拾う。巨木の枝の割には意外と普通サイズの枝だ。大きいのは幹だけなのだろうかと何とも無しに思う未来。
「この枝から……?何かって……」
「じゃあ木刀!ほら、何かあたしのスキルに瞬剣ってのあるんでしょ?剣があれば試せるかも」
木刀……まあ形状を想像するのは容易い。難しいフォルムではないし、比較的初心者向けかなと思う。しかし問題は、どうすればその錬金術が発動するのかという事だ。もしも何か道具が必要とかであれば、この場で錬金術は使用出来ない。
「考えても仕方ないか。えっと木刀木刀………」
枝を手に持ち、目を閉じて木刀を想像してみる。太さ、長さ、そして形状をよりリアルに。その瞬間、愛莉の手が輝き出した。
「わっ、わっ!愛莉の手が光ってる!」
光は愛莉の手から枝へ。枝全体を包み込み、未来の見ている目の前で枝が徐々に形を変える。その光景に目を奪われ、未来が期待を込めた瞳で見ていると、光の中で愛莉が想像した木刀が完成した。
何となく謎の手応えを感じた愛莉は閉じていた瞳を開く。そこにはーーーー
「あはは……本当に出来ちゃった」
見事なまでの木刀が完成していた。しかしその瞬間、愛莉の頭の中に謎の声が鳴り響く。
ーー錬金術のレベルが上がりました。
「ひゃわ!?」
思わず変な声が出てしまう愛莉。今まで瞳をキラキラさせていた未来は一転、今度は目を白黒させて愛莉を見つめている。
「な、なに愛莉、今の可愛い声……チョー萌えたんだけど」
「ち、違っ……何か頭の中に変な声が……」
「声が?聞こえたの?」
「うん……錬金術のレベルが上がりましたって」
「え?レベル上がったの!?すごいじゃん!」
凄いのだろうか。と言うか、上がるとどうなるのかも良く分からない。
「凄いのかな?ってか上がるとどうなるんだろう」
「あれじゃない?もっと難しい錬金が出来るようになるとか!」
まあ大方そんなものだろうと自分でも思う。きっとLvに応じて錬金出来る物が増えてゆく。そうでなくてはレベルの設定などある意味が無いだろうと。
「それよりもさ、その木刀見せて見せて!」
再び瞳をキラキラさせて手を差し出す未来。愛莉は昔から、未来のこの好奇心旺盛なキラキラした瞳が好きだ。どんな物でも、どんな状況でも楽しもうとするこの瞳が大好きなのだ。
そんな未来に、愛莉は木刀を手渡す。未来は嬉しそうに木刀を握った。
「わぁ……すごいすごい!本当に枝から木刀が出来た!」
愛莉が錬金術で作り出した木刀を何度も何度も確認する未来。すると、何やら木刀に文字が彫ってあるのを見つける。それは、北海道の有名な温泉観光地の湖の名前。それを見て、未来が愛莉に問いかける。
「愛莉……何これ」
「何って、木刀って言ったらこれでしょ?」
「いや……言いたい事は分かるけど……何でよりにもよってこの木刀なの?」
「だって、本物の木刀なんて見た事ないし」
それは有名な少年漫画の主人公がいつも持っている、あまりにも有名な木刀。あまり漫画を読まない未来でも知っているほど有名だ。
そもそも、普通の生活を送っている限り木刀を見る機会などほとんど無いだろう。それこそ、何処かの観光地の土産屋にでも行かなければ。なので愛莉の言う事も一理あるのだが、未来は思わず顔が引き攣ってしまう。
「あは…あはは……まあ、こういう所が愛莉っぽいんだけど」
「むぅ~、未来が馬鹿にしてる~」
今の状況がまだ良く分かっていない割には、どこか緊張感の無い二人。しかしそんな二人はこのあと嫌でも此処が異世界であるという事を思い知る事になる。
灰色と黒の体毛に覆われた巨大な獣が、二人にゆっくりと近づいていたのだーーーー
「う………ん…………」
そんな明るく穏やかな森の中で、目を覚ましたのは日下未来。ショートボブの整った髪が、陽光に照らされて黒々と輝いていた。
「あ……れ……?ここ……何処………?」
何だか酷く頭がぼんやりとしている。寝起きなのだから当然かもしれないが、何やら頭の中が霞がかっているような感じで思考が上手く纏まらない。
しかし、隣で倒れている少女が視界に入った瞬間、未来の意識は一気に覚醒して少女の肩を急いで揺らす。
「愛莉!愛莉!」
倒れているのは幼馴染で恋人の望月愛莉。愛莉を見た瞬間、つい先ほどまでの記憶が鮮明に甦る。
「う………うう………」
「愛莉!大丈夫愛莉!?」
眠そうに目を開ける愛莉。そのままムクリと上半身を起こし、寝ぼけ眼で未来を見る。
「あれ……未来………」
「あ、愛莉………良かった愛莉……ッ!!」
ぎゅっと愛莉に抱きつく未来。その瞳からはボロボロと涙が溢れていた。
「未来……?どうしたの………?」
「うう………何で覚えてないんだよぉぉ~~」
愛莉の胸の中でわんわんと泣きじゃくる未来。それもその筈で、二人は先ほどラブホテルで火災に巻き込まれ、煙を大量に吸い込んだのだ。意識は朦朧としていって、そのまま二人は床に倒れ、意識を手放した。その直前まで覚えている未来にとって、今こうして二人が生きている事が奇跡だった。とても助かるような状況だったとは思えない。
「えっと……なんだっけ……ラブホテルでエッチして………」
「そこは覚えてるんだね!」
「だって気持ち良かったし………その後は……お風呂入ったよね」
「うん。本当はお風呂でもしたかった……ってそんな事は今はいいの!」
「えー……未来が言ったのに」
埒が明かないので未来が説明を始める。二人仲良く風呂に入っていると、急に愛莉が焦げ臭いと言い出したので、急いで着替えて部屋を出ようとしたらドアの隙間から煙が流れ込んで来た事。
「あたしが焦ってドアを開けたら煙がいっぱい入って来ちゃって………」
そこまで説明されて、ようやく愛莉も思い出す。何とか窓から逃げようと窓に近づくと、外には大勢の人の山。
どちらにしても愛莉達の居た部屋は三階だったので、窓から逃げるのは絶望的だったのだが、窓を開ければ外の新鮮な空気は吸えただろう。しかし愛莉には窓が開けられなかった。
「うん……全部思い出した」
「ごめんね……あたしがドア開けたせいで」
「未来は悪くないよ。わたしこそ……あの時躊躇しないで窓を開けていれば………」
窓を開けると、自分と未来の姿が大勢の人の目に晒される。そんな事になれば、たとえ助かったとしてもほぼ間違いなく学校に知られてしまい、良くて停学処分、最悪は退学処分になっていただろう。しかもその後は二人揃って『同性愛者』と陰口を叩かれながら生きて行かなければならない。自分達だけならそれでいいが、家族にまでその被害が及んでしまうと思うと、愛莉は窓を開ける事が出来なかった。
「でも……助かったみたいだねあたし達」
「うん。でも………何処なのここ……?」
改めて周りを見渡すと、此処が森の中だという事が分かる。分かるのだが、そこかしこから天に向かって伸びている木々は、見た事も無いほどの巨木。そんな巨木が、一定の間隔を明けて生えているのだ。
「デッカい木だよね。これ何ていう木?」
「分かんない……見た事無いよこんなの。縄文杉の何倍もありそうだし」
愛莉が巨木をじっと見つめていると、不意に視界に文字が浮かび上がった。
『グリーグの巨木』
「…………え?」
「ん?どうしたの愛莉?」
「な、何か文字が……グリーグの巨木って」
「へ?何処に書いてあるの?」
「か、書いてないの!空中に浮かび上がって………」
未来を見つめる愛莉。すると未来の頭の上に再び文字が浮かび上がった。
『日下未来(職業無し:Lv1)
ーー固有スキル:短距離転移、瞬剣(LV1)、投擲(Lv1)、言語認識
ーーパッシブスキル:腕力上昇(Lv1)脚力上昇(Lv3)回避(Lv1)』
「………何これ」
「え?何?」
「何か……未来の頭の上にステータスみたいのが浮かび上がって………」
「ステータスって………RPGゲームとかのアレ?」
「うん……って未来、RPGの”G”ってゲームの略だよ。未来の言い方だとロールプレイングゲームゲームになっーーーー」
「そんな事はどうでもいいの!それで、どんなステータスなの!?」
何やら目をキラキラさせる未来。今がどんな状況なのか分からないのに、この明るさは一体どこから来るのだろうかと嘆息するも、未来にステータスの内容を伝える愛莉。それを聞いた未来が首を傾げる。
「固有スキル?パッシブスキル?」
「固有スキルっていうのは多分、ゲームとかで言う所のアクティブスキルって奴だと思う。自分で選択して発動させるみたいな。パッシブスキルは選択しなくても常時発動してるスキルの事だよ」
「へぇ~、それでショートワープだっけ?何それ?あたしワープ出来るの?」
「分かんない……出来る訳無いって普通に考えたら思うけど……そもそもステータスが浮かび上がるのがまず変だし」
まさか何かのバーチャル空間なのだろうか。いつの間にか超高度なVRか何かを二人で始めたのだろうか?そんな考えが愛莉の脳裏を過る。
そんな事を考えていると、未来が愛莉に話し掛けて来た。その瞳は期待の篭った瞳だった。
「ねっ、ねっ!愛莉のステータスも見れるの!?」
「え、わたしの?」
「うん!あたしのが見れるなら自分のも見れるんじゃない!?ほら、自分の手とか凝視してさ」
なるほど、確かに未来の言う通りかもしれないと思い、愛莉は自分の手を凝視する。するとーーーー
『望月愛莉(職業無しLV1)
ーー固有スキル:錬金術(Lv1)、鑑定眼(Lv1)、言語認識
ーーパッシブスキル:頭脳上昇(Lv1)想像力上昇(Lv1)具現化上昇(Lv1)』
「だって。錬金術ってあの錬金術かな?」
「凄い凄い!早速使ってみようよ!」
使ってと言うが、そもそもどうやって使うのかも分からない。ゲームと違い、どこかに選択ボタンがある訳ではないのだ。
「使うって……どうやって?」
「うーん……ってか錬金術ってどんなの?」
「ゲームとかだと、何か素材とかから別のアイテムを作り出すとか……DIY?」
「ちょうどいいじゃん!愛莉DIYが趣味なんだし!あ、この枝から何か作れないの?」
未来はそう言いながら長い木の棒を拾う。巨木の枝の割には意外と普通サイズの枝だ。大きいのは幹だけなのだろうかと何とも無しに思う未来。
「この枝から……?何かって……」
「じゃあ木刀!ほら、何かあたしのスキルに瞬剣ってのあるんでしょ?剣があれば試せるかも」
木刀……まあ形状を想像するのは容易い。難しいフォルムではないし、比較的初心者向けかなと思う。しかし問題は、どうすればその錬金術が発動するのかという事だ。もしも何か道具が必要とかであれば、この場で錬金術は使用出来ない。
「考えても仕方ないか。えっと木刀木刀………」
枝を手に持ち、目を閉じて木刀を想像してみる。太さ、長さ、そして形状をよりリアルに。その瞬間、愛莉の手が輝き出した。
「わっ、わっ!愛莉の手が光ってる!」
光は愛莉の手から枝へ。枝全体を包み込み、未来の見ている目の前で枝が徐々に形を変える。その光景に目を奪われ、未来が期待を込めた瞳で見ていると、光の中で愛莉が想像した木刀が完成した。
何となく謎の手応えを感じた愛莉は閉じていた瞳を開く。そこにはーーーー
「あはは……本当に出来ちゃった」
見事なまでの木刀が完成していた。しかしその瞬間、愛莉の頭の中に謎の声が鳴り響く。
ーー錬金術のレベルが上がりました。
「ひゃわ!?」
思わず変な声が出てしまう愛莉。今まで瞳をキラキラさせていた未来は一転、今度は目を白黒させて愛莉を見つめている。
「な、なに愛莉、今の可愛い声……チョー萌えたんだけど」
「ち、違っ……何か頭の中に変な声が……」
「声が?聞こえたの?」
「うん……錬金術のレベルが上がりましたって」
「え?レベル上がったの!?すごいじゃん!」
凄いのだろうか。と言うか、上がるとどうなるのかも良く分からない。
「凄いのかな?ってか上がるとどうなるんだろう」
「あれじゃない?もっと難しい錬金が出来るようになるとか!」
まあ大方そんなものだろうと自分でも思う。きっとLvに応じて錬金出来る物が増えてゆく。そうでなくてはレベルの設定などある意味が無いだろうと。
「それよりもさ、その木刀見せて見せて!」
再び瞳をキラキラさせて手を差し出す未来。愛莉は昔から、未来のこの好奇心旺盛なキラキラした瞳が好きだ。どんな物でも、どんな状況でも楽しもうとするこの瞳が大好きなのだ。
そんな未来に、愛莉は木刀を手渡す。未来は嬉しそうに木刀を握った。
「わぁ……すごいすごい!本当に枝から木刀が出来た!」
愛莉が錬金術で作り出した木刀を何度も何度も確認する未来。すると、何やら木刀に文字が彫ってあるのを見つける。それは、北海道の有名な温泉観光地の湖の名前。それを見て、未来が愛莉に問いかける。
「愛莉……何これ」
「何って、木刀って言ったらこれでしょ?」
「いや……言いたい事は分かるけど……何でよりにもよってこの木刀なの?」
「だって、本物の木刀なんて見た事ないし」
それは有名な少年漫画の主人公がいつも持っている、あまりにも有名な木刀。あまり漫画を読まない未来でも知っているほど有名だ。
そもそも、普通の生活を送っている限り木刀を見る機会などほとんど無いだろう。それこそ、何処かの観光地の土産屋にでも行かなければ。なので愛莉の言う事も一理あるのだが、未来は思わず顔が引き攣ってしまう。
「あは…あはは……まあ、こういう所が愛莉っぽいんだけど」
「むぅ~、未来が馬鹿にしてる~」
今の状況がまだ良く分かっていない割には、どこか緊張感の無い二人。しかしそんな二人はこのあと嫌でも此処が異世界であるという事を思い知る事になる。
灰色と黒の体毛に覆われた巨大な獣が、二人にゆっくりと近づいていたのだーーーー
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