百合JKの異世界転移〜女の子だけのパーティで最強目指します!〜

綾瀬 猫

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迷宮挑戦の章

121.運命は突然

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 未来が本気で放った【飛翔斬】を、いとも容易くガードするリザードキング。もちろんダメージは与えられていない。

 だが、突然自分の目の前から消え、思いがけない位置から攻撃を繰り出して来た少女達に対して、明らかに警戒するリザードキング。


「警戒してる……今のうちにポーション飲んどいて」


 愛莉にそう促されて、皆はそれぞれポーションを飲んでMP、SPを回復する。もちろん、飲んでいる間も警戒は怠らない。


「ふぅ……回復出来たわ。次はどうするのアイリ?」


 マジックポーションを飲んで一息ついたサフィーが、愛莉に向かって訊ねる。もちろん視線はリザードキングを見据えたままに。


「みんな気づいてる?あの三叉の槍の刃の部分」


 愛莉にそう言われて、改めてリザードキングの持つ三叉の槍に視線を送る未来、リーシャ、サフィー、エストの四人。今までは戦闘の激しさから相手の武器などじっくり見ている余裕は無かったが、改めて見るとそこにはーーーー


「あ……何か光って………」
「色んな色が……も、もしかして……ッ!?」


 そこには、何色にも光輝く石が埋め込まれていた。そう、まるで虹のような七色の光を放つ石が。


「あれが……虹輝石!?」
「だと思う。まさか武器の装飾に使われているなんて」


 つまり、これでどの道行く先は決まった。ここでリザードキングと戦い勝てば、目的の虹輝石を手に入れる事が出来る。
 既に後方の大扉は固く閉ざされ、逃げ道らしい逃げ道と言えば、玉座の後ろへと続く通路だけ。だがその先に、本当に逃げ道があるかどうか分からない。


「戦うしか無いって訳ね」
「違うわサフィー、『勝つ』しか無いのよ」


 そう、負けは死を意味する。無事に生きて帰る為には、そして虹輝石を持ち帰るにはリーシャの言う通り勝つ以外に無い。
 そしてその相手、リザードキングはこちらの様子を見ていたが、再び三叉の槍を構える。それが開戦の合図となり、クローバーの五人は素早く動き出した。


「行くわよ!風刃ヴァンラム!」


 サフィーが先手必勝と言わんばかりに魔法を放つ。パッシブスキルの『魔力上昇』で威力の上がった魔法は、初級魔法の【風刃ヴァンラム】であってもかなりの威力だ。
 だが、そんなサフィーの魔法を三叉の槍でいとも容易く消し去るリザードキング。そんなリザードキングにサフィーの魔法は二撃目、そして三撃目が次々と襲い掛かる。


風刃ヴァンラム風刃ヴァンラム!」


 あえて初級魔法を放っているのは、威力を落とす事で連続して放つ為である。サフィーとて、これで倒せるなどとは微塵も思っていない。だがこうして連続で魔法を放っている限り、相手は反撃に出れない。その間に他の仲間がダメージを与えてくれればーーーーー


 ーーそう思っていた矢先に、リザードキングが魔法を相殺しながらも穂先をクローバーの方へと向ける。そして次の瞬間には、先程と同じ弾丸のような衝撃波がサフィーの魔法を力づくで消し去りながら、少女達へと迫る。


「嘘でしょ!?」
「回避ぃぃーーッ!」


 急いで手を繋ぐ五人。何とかギリギリの所で未来の短距離転移ショートワープで攻撃を躱す。
 玉座から見て左側に立っていた筈の少女達は、今度は反対の右側に現れる。つまり、左側に正面を向けていたリザードキングにとっては、背中側に現れた事になる。この機会を逃す手は無いとばかりに、愛莉とサフィーが同時に攻撃を仕掛ける。


「月閃刃!」
炎槍フラムランス!」


 素早く魔法鞄マジックバッグから円月輪を取り出した愛莉の月閃刃と、一瞬で手のひらに強い魔力を込めたサフィーの中級魔法【炎槍フラムランス】が同時にリザードキングの背に襲い掛かる。
 完全に虚をついた二人の攻撃だが、リザードキングが振り向きざまに三叉の槍を振るうと、三本の衝撃波が発生。愛莉は急いで円月輪を操作して躱すが、サフィーの炎槍は二本の衝撃波に相殺されてしまった。そして尚も、残りの一本がクローバー目掛けて飛んで来る。


「防御壁!」
「「光壁リュミュール!!」」


 愛莉の指示でサフィーとエストが同時に防御壁を展開する。それは見事にリザードキングの衝撃波を防いだが、既に次の攻撃を繰り出そうとリザードキングが三叉の槍を構えた。だが、その視界に映るのは四人の少女達。いつの間にか一人居なくなっている。


「後ろがガラ空きだよっ!!」


 リザードキングが振り返ると同時に、単身で背後に転移していた未来。今度こそ完全に不意を突かれたリザードキングの首元に、未来の【瞬剣】が炸裂する。


「たあっ!!」


 首さえ落としてしまえば、視界が効かなくなる。そうなれば戦闘を有利に進められるとの思いで全身全霊を込めて振るった未来の剣はーーーーー


「うぐっ……かったい……!!」


 剣はリザードキングの首を斬り落とす事が出来ずに途中で止まっている。
 これは未来の瞬剣の威力が及ばなかったというよりは、剣の強度の問題だった。レベル62のリザードキングの防御力は、骨の身体であっても強度は鋼鉄並。同じ鋼鉄製の未来の剣では、たとえ研ぎ澄まされた刃であっても切断までには至らなかった。それでも半分近くまで食い込んでいるのは、それだけ未来の攻撃力の凄まじさを物語っている。
 これが愛莉の月閃刃のように、高速回転する刃なら話も違って来るのだが、未来の瞬剣は速度は凄いがただ一度振るうだけ。『回転』という二次的な力を伴う愛莉の月閃刃のようにはいかない。
 高速回転する砥石では鉄を切ったり削ったり出来るが、ただ石を振るっただけで鉄を切れないのは道理である。
 

 そんな高い防御力を持つリザードキングは、愛莉達を攻撃しようと構えていた槍をクルリと回転させ、そのまま後ろの未来へと突き出す。未来は咄嗟にリザードキングの背骨を蹴り、その勢いでクルクルと後ろに回転しながら跳躍して躱す。
 そして床に着地すると同時に、床を蹴ってリザードキングへと向かって行った。だが、後ろを向いていた筈のリザードキングはこの僅かな時間で、いつの間にかこちらを向いて槍を振り上げている。


「えーーーー」


 まさか既に攻撃態勢に入っているなどとは思っていなかった未来は、今度は自分が不意を突かれた事を悟る。だが悟った瞬間、リザードキングが振り上げた槍を物凄い速度で突き出して来た。もう短距離転移ショートワープも間に合わない。それは未来にとって、致命的な判断ミスだった。


(あ……死んだあたし………)


 ーー愛莉の顔が脳裏に浮かんだ。


 小さな頃からいつも隣を歩いていた少女は、他人にはあまり笑顔を見せない少女だった。
 だが自分にだけはいつも笑顔を向けてくれた。その笑顔が可愛くて、綺麗で、ずっと見ていたくて、だからいつも愛莉を笑わせるような言動をしているうちに、いつの間にかこの元気なキャラが日下未来という少女を形作った。

 誰に対しても、どんな時でも元気で明るい日下未来は、本当は望月愛莉ただ一人に笑っていて欲しいだけの少女。
 望月愛莉が幸せなら日下未来も幸せ。望月愛莉が悲しければ日下未来も悲しい。

 一日でも会えないと、悲しくて涙が出て来た。中学ニ年生の時、望月愛莉がインフルエンザで一週間学校を休んだ時は、人前ではいつもと変わらず元気で明るかった日下未来は、人の居ない所で何度も泣いた。
 好きで好きで、好きすぎて何度も泣いた。好きすぎて何度も笑った。それなのに、もう会えなくなるのだ。


(ごめん愛莉……失敗しちゃった……)


 思えば先程のリザードジェネラルの時も、彼女の叫び声のお陰で何とか助かった。助けて貰ったばかりなのに、何故また失敗してしまったのか。それは彼女を、望月愛莉を悲しませるだけなのに。


(お願い……生きて帰って……)


 この世界で死ぬとどうなるのだろう。日下未来の魂は何処へと彷徨うのだろう。
 魂だけでも元の世界に帰れるのだろうか?それとも、この世界を永遠と彷徨い、そしていつか違う誰かとしてこの世界で生まれ変わるのだろうか?だが願わくばーーーーー


(また……愛莉と一緒がいい………な………)


 走馬灯のような刹那が終わりを告げ、リザードキングの槍は無慈悲にも未来の華奢な身体をーーーーー


「未来ゥゥゥーーーーーッ!!」


 最後に愛しい人の声が聞こえたような気がして、日下未来は微笑みを浮かべたーーーーー



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