百合JKの異世界転移〜女の子だけのパーティで最強目指します!〜

綾瀬 猫

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最終章

283.未熟者

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「アルダー!」
「うおぉぉぉーーッ!!」


 クローバーが死霊王との戦いを始めたその頃、上の階ではプリュフォールがネクロマンサーとの戦闘を激化させていた。

 初めのうちはアルベルト、マディアス、オルガノフの三人に押され気味だったネクロマンサーだが、そこは流石に冥界の覇者を名乗る強者、徐々に三人同時の攻撃にも退かなくなり、更には隙を作る事にも成功する。
 そしてその僅かに出来た隙を縫って、離れた所に居るレイナとアルダーに狙いを絞った。正直どちらもネクロマンサーにとっては取るに足らない相手だが、仲間を殺されればあの三人も浮足立つ、そうなればこちらが更に有利になるとの判断だ。


「私の攻撃が魔法だけだと思うなよ!?こうして剣も使えるのだよ!」


 ネクロマンサーの凄まじい剣戟を死にものぐるいで盾で防ぐアルダー。しかしその剣には魔力を付与しており、一撃一撃がとんでもなく重い。体格では圧倒しているアルダーだが、やはりレベル差が有り過ぎるので、この細身の男の攻撃にジリジリと押されてゆく。


「クックッ、木偶の坊めが、当然私には魔法もあるぞ!?」


 右手で剣を振るいながら、左手で魔法を撃ち出すネクロマンサー。アルダーの身体が業火に包まれる。


「ぐあぁぁぁーーーーッ!!」
「アルダァァァーーーーッ!!」


 レイナのすぐ目の前で魔法による業火に包まれるアルダー。並の者なら即死級の魔法だが、重戦士のアルダーはパッシブスキルに『魔法耐性』を持っている。なのでギリギリの所で死だけは免れているが、それも時間の問題だ。


「よくぞ耐えたアルダーよ!!」


 アルダーに攻撃を仕掛けるネクロマンサーの死角から、アルベルトが反撃の一撃を仕掛ける。
 

「はっ!」
「ちっ!」

 その一撃を剣で受け止め、すぐに左手で魔法での迎撃を試みるが、そのタイミングでオルガノフが反対側から攻撃を仕掛けて来る。


「うらぁぁ!!」
「人間風情が!!」


 アルベルトへの迎撃をオルガノフに切り替え、オルガノフに魔法を放つネクロマンサー。それを咄嗟に避けたオルガノフだが、すぐにネクロマンサーの蹴りが飛んで来て、何とか剣の腹で受け止める。


瞬雷ライトニング


 体勢を崩したネクロマンサーに、マディアスの魔法が直撃。更に追い打ちを掛けるべく、アルベルトが剣を横薙ぎに振るう。


「はぁぁぁ!!」


 それはネクロマンサーの胸を切り裂き、大量の血が噴出する。しかしネクロマンサーはその自分の血を魔力で操り、目の前のアルベルトの目に向かって飛ばす。


「何ッ!?」


 血をまともに目に受けたアルベルトは視界を遮断される。今が絶好の機会だが、ネクロマンサーはアルベルトには目もくれず、床に蹲っているアルダー………を、回復魔法で治療しているレイナ目掛けて一直線に剣を振るう。


「!!?」
「まずは一人目だ!!」


 おそらくこの女の存在は、この者達にとっての一種の安らぎ。その存在を刈り取る事で、この者達に絶望を与える。
 だが、殺しはしない。この女を含め、この場に居る全員、世にも惨たらしい死を与えると決めている。一撃で殺すなど、そんな安らかな死は与えない。先ほど受けた屈辱を、万倍にして返すのだ。

 その異常とも言えるネクロマンサーの妙なプライドによる手加減が、ネクロマンサーの運命を決めた。


「はぁっ!!」


 アルダーへの治療の手を止め、レイナが法衣服の中から抜いたのは細身の剣。普段は法衣服のマントに隠れていて見えない、レイナの奥の手。


「なっ……剣だと!?」
「わたしは……剣士ゼノンと回復術士ティリスの娘レイナ!!」


 冒険者の最高峰、Sランクまで駆け上がった偉大な父と母。その父が剣を振るい、母が回復魔法で仲間を助けたのなら、わたしは両方出来るようになろう。
 幼い頃からその一心で、剣と回復魔法修業に明け暮れたレイナ。そんな幼いレイナに初めて剣の手ほどきをしたのは他でも無い、幼少の頃にたまに世話を引き受けていたオルガノフだった。
 

「お父さん!お母さん!レイナだって戦えます!」
「舐めるな小娘がぁ!!」


 もちろんレイナの剣技は、ネクロマンサーに肉薄出来るレベルには無い。本来なら今の一撃で首を跳ねられていても不思議ではなかったが、ネクロマンサーの手加減した一撃のお陰で防ぐ事が出来た。
 そんなレイナにネクロマンサーは魔法を放とうとするが、瀕死のアルダーがレイナの前へと出て、身体全体でレイナを守る。


「うおぉぉぉーーーーッ!!」
「ちいッ!邪魔をするな木偶の坊!!」


 ネクロマンサーの視界いっぱいにアルダーの大きな身体が映る。だからこそ、そのアルダーを隠れ蓑にして振るったアルベルトの一撃に、ネクロマンサーは対応出来なかった。


「はぁッ!!」


 振り下ろされたアルベルトの剣が、ネクロマンサーの左腕を斬り落とす。


「ぐッ……ぐあぁぁぁーーーーッ!!」


 激痛がネクロマンサーを襲い、堪らずに後ろへとバックステップを試みる。しかしそこへマディアスが魔法を発動させる。


石縛ピエルバイン


 突如として石の床から伸びた束縛魔法が、ネクロマンサーの動きを止める。


「何ぃぃーーッ!!?」


 もちろんこれは、一瞬の足止め程度にしかならない。しかしその一瞬でアルベルトは追撃となる剣をネクロマンサーに向かって振るう。


「はぁぁ!!」
「ぐっ………」


 それを何とか剣で受け止めたネクロマンサーだったが、もはやこれまでだった。このパーティにはもう一人居るのだ。


「終わりだ。流星ーーー」


 動きを一瞬止められ、前にはアルベルト。そして左腕を失ったネクロマンサーに、後ろから斬りかかる男を止める手段は無い。


「待っーーーー」
「絶点!!」


 流れるようなオルガノフの一閃が、ネクロマンサーの首を跳ね飛ばす。絶望の表情に染まったネクロマンサーの首が床を転がり、首を失った胴体は血飛沫を撒き散らしながら、無惨にも床に倒れた。そしてピクリとも動かなくなる。

 次の瞬間、全員の頭の中に「レベルが上がりました」の声が何度も響く。そのあまりの回数の多さにレイナは一瞬戸惑ってしまうが、すぐにアルダーへの治療を再開する。


「アルダー!アルダー!」
「ああ……勝ったんだな……俺達」
「うん……陛下達が倒してくれたよ!」
「はは……流石……やっぱり俺達は……ただの足手まといだったなぁ……」


 アルダーのその言葉を聞いたアルベルトが、アルダーとレイナに近寄る。そして膝を折って、アルダーに声を掛けた。


「それは違うぞアルダーよ。あのまま私とマディアス、オルガノフの三人だけで戦っていても、奴には勝てなかっただろう」


 アルベルトに続き、マディアスとオルガノフもアルダーとレイナの傍へと来て膝を折る。


「その通りです。私の魔法もタイミングが読まれていたし、アルとオルガノフの剣技もです。反撃するには何かきっかけが無ければ出来なかった」
「お前らがそのきっかけになった。礼を言うぞレイナ、アルダー」


 まだまだ未熟な二人だが、その二人を起点にして反撃する事が出来た。そして相手の慢心や油断を誘ったのも、二人が未熟だった為。皮肉にも、結果としてネクロマンサーは、その未熟者二人に足元を掬われたのだ。
 だからこれは紛れもなく、プリュフォール全員が一丸となって手繰り寄せた勝利。誰か一人欠けていても、きっと勝てなかっただろう。


「ありがとうございます皆さん……それはそうと、物凄くレベルが上がったみたいなのですが……」
「わたしも……一体いくつになったのかなぁ………」
「俺も十回以上コールされてたぞ。こりゃあレベル100超えたな」
「私もです。まさかこの年齢になってレベル100を超える日が来るとは……人生分からないものですね」


 皆がそんな会話をしていると、入口の方から声が聞こえて来た。


「おい、陛下達ご無事だぞ!?」
「陛下!グランドマスター!!」
「レイナーーッ!!大丈夫だった!!?」


 それは合流したエタンセル、グロワール、クラージュ、そしてツヴァイフェッターのメンバー達。どうやら誰も欠ける事なく、それぞれの危機を乗り越えて来たらしい。


「アイツら……なかなかやるじゃねぇか」
「だから言ったでしょう、彼らなら大丈夫だと」


 プリュフォールの皆に駆け寄る他のパーティの面々。よく見ると、誰もが疲労の色が表情に色濃く出ている。
 だがそれはきっと、自分達もそうなのだろう。この場に疲れていない者など一人もいない。誰もが満身創痍で、とても全力で戦えるとは思えない。
 それでも行かなければならない。この世界の命運を一身に背負った、あの若き少女達の元へと行かなければならない。


「アルダーよ、立てるか?」
「はい。ただ、少し火傷が酷いようで……しばらく風呂には入れそうにありません」


 アルダーの発言を受けて、誰もが互いに顔を見合わせる。この状況において、風呂とはどういう事なのかと。


「風呂……風呂となアルダー?」
「え?あ、はい。帰り道でもアイリさんが風呂を作ってくれるんですよね?あの風呂に数日入れないのは残念だなと」


 誰もが目を白黒させた次の瞬間、辺りは笑い声に包まれる。発言したアルダー本人は、何故皆が笑っているのか見当も付かない。


「くっくっく……最終決戦のさなかに帰りの風呂の心配とは……何と豪胆な男だ」
「もう……アルダーったら馬鹿なんだから」
「何だアルダー、火傷してるのかよ?んなもんお前、唾つけときゃ治るだろ」
「はぁ……相変わらずゼレットはお馬鹿な事言うんだから……」
「まったくだ。脳筋の貴様と一緒にするな」


 そうやってひとしきり笑い合い、ようやく走り出す冒険者達。世界の命運が掛かっている緊迫した状況の中、これほど弛緩した空気になるのは、この先で戦っているのがクローバーだから。彼女達であれば、きっと相手が何であれ必ず勝つと、誰も勝利を疑っていないから。


 そしてその勝利を確実なものにする為に、皆は熱い思いを胸に走り続けるのだったーーーーー


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