【R18】まじめ優等生JDと純愛エロ教授の複雑怪奇なお話

牧村燈

文字の大きさ
8 / 22
scene2

誓約書

しおりを挟む
 早速、エグチは監督のグロザワになずなの代役にアカリを立てるアイデアを話した。グロザワは、そりゃあアイデアは面白いが、現実的じゃねえなと一蹴した。昔ならいざ知らず、今のご時世まともに販売されるAVで、女優の同意を得ずに撮影するなんてことはご法度である。あのプライドのバカ高い脚本家のアカリが、スク水の撮影に同意することなど逆立ちしてもあり得ない。

 しかし。このアイデアは、簡単に捨ててしまうにはグロザワにとってあまりに魅惑的だった。あの小憎らしいアカリにスクール水着を着せて、その股間をカメラで視姦する場面を思い描く。思わず股間が疼いた。そうだ。自分自身の本能にグッと来るシーンを撮ってこそ、観る者の股間を熱くすることができる。AVファンはこれを待っているんだ。

 やってみるか。グロザワは撮影シーンの追加の相談も含めて、プロデューサーに連絡を入れてみることにした。

 電話口の向こうのプロデューサーの穴掘は、グロザワの話を一通り聞き終わると、それから暫く黙っていた。珍しい。いつもなら話の途中で会話を遮るタイプである。脈有りか。グロザワの予感はズバリ的中した。

「わかった。要はうまいこと同意させればいいだけのことじゃねえか。そのアイデア、アカリ先生のつまらない本より100倍面白いぜ。何でもいいからアカリ先生に誓約書を書かせろ。グロザワの撮りたいっていう、そっちの絵を本編にしちまってもいいくらいだ」

 悪乗りした穴掘は、これから現場に向かうと言い出した。久しぶりに穴掘が本気モードになった。

 業界でも敏腕で知られる穴掘だが、一方で塀の上のギリギリの撮影の噂も絶えない。それをやれるだけの交渉術と胆力も持ち合わせていた。ハードな絡みを撮りたいグロザワには、最強の後ろ盾だった。壊れる寸前の女にこそ最高の美がある、と言う美学も共有している。二人の脳裏には、官能に崩れ落ちてゆくアカリの、苦悶と愉悦の入り混じる表情がハッキリと見えていた。

「分かりました。とりあえず仕込みをしておきます」

 電話を切ったグロザワは、エグチを呼び出し、プロデューサーの意向を伝えた。アイデアが採用されたエグチの顔がパッと明るくなる。グロザワがアカリをハメる算段について指示を出すと、エグチは、それは自分に任せてくれと胸を張った。アカリと何度か現場を共にしたことのあるエグチは、アカリの強気な性格の裏側にある『脆さ』を良く知っていたのだ。

 アカリは、監督やプロデューサーといった権威には一切なびかないが、裏方が困るような無理は言わないし、ADがこき使われる場面では、そっと手を差し伸べる気遣いが常にあった。上からの面倒くさい女という評価とは異なり、アカリを慕うスタッフは多い。しかし、その優しさこそが、すなわちアカリの『脆さ』だった。貶めようとするならば、そこを突けば落とせるとエグチは踏んでいた。アカリにはいつも仲良くしてもらっているし、何の恨みがあるわけでもない。心が痛まないこともなかったが、ここは作品の為に勘弁してもらおう。俺たちはプロなんだからさ。

 早速、エグチは、アカリに深刻な顔で相談を持ち掛けた。

「実はですね……、なずなさんのスクール水着の撮影の件で、プロデューサーが来るっていうんです。それで説得の全責任は助監督の僕にあると言われてしまって……。もし出来なかったら、僕、クビですかね……」

 姉御肌のアカリは、年上ではあるものの腰が低いエグチを憎からず思っていた。そう言えばエグチさん、最近お子さんが産まれたんだったなあ。今にも泣き出しそうなエグチの顔を見ていると、ついつい手を貸したくなってしまう。

「まったく現場ほっといて勝手な奴よね。ほら、そんな顔しないでさ。まあ、私も手伝うからさ、ね、頑張ろう」

 アカリはエグチの肩をポンと叩いた。

「ホントですか。助かります。アカリ先生にそう言ってもらえれば百人力だ」

 よし、と思わず心の中でガッツポーズをしたエグチの笑顔の本当の意味に、アカリは全く気がついていなかった。
 
 取るものもとりあえず、アカリはエグチと一緒になずなの説得にあたった。さっきの様子からもある程度予想されたことではあったが、アカリが思う以上になずなは頑なだった。説得の方もエグチはまるで口を挟むでもなく、完全にアカリ頼みだ。

「だって先生、そんなコスプレのシーンの撮影なんて打ち合わせから今まで一度も出てないんですよ。カッコいいビキニなら着てもいいけど、ださいスク水なんて冗談じゃないわ」

「まあ、わかるんだけどね、突然ビキニって訳にもいかないのもわかるでしょう?スクール水着は一応ストーリーでも出てくるんだし、監督の言うシーンも全くの無理筋ってこともないと思うのよ」

「ええっ、アカリ先生、先生もそっち側になっちゃうんですかあ?心外だなあ。先生は私の味方してくれると思ったのになあ」

「敵とか味方ってことはないのよ。ただ、いい作品を作って欲しいと思うだけ。なずなちゃんだってデビュー作品をいい作品にしたいと思うでしょう?」

 実はこのアカリとなずなの会話の前に、エグチはなずなを呼び出して奸計を含ませていた。アカリがスク水の説得に来ても乗らなくていい。タイミングをみはからって、そんなに言うならアカリが代わりをやればいいと振ってくれと言われていたのだ。チャンスはここね。なずなはほくそ笑んだ。成功報酬、出演料2割増し出すよというエグチの提示は超魅力的だった。なずながこの世界に求めているは、単純に金だ。

「そりゃ私だって、いい作品にしたいとは思うけど、スク水はねえ。あ、そうだ。アカリ先生が、代わりに着てくださいよ、ね、いいでしょ。アカリ先生が着てくれたら、私も考えてもいいかなあ」

「えっ?何言ってんのよ。私は脚本家よ。女優じゃないんだから、そんなの無理よ」

「アカリ先生、スタイルいいし全然大丈夫よ。私、アカリ先生がやってくれなきゃ絶対やらないからね」

「そ、そんなあ……」

 なずなの無理難題にアカリはどうしよう、と考えを巡らせた。隣のエグチがうさぎのような目でこちらを見ている。しょうがないか。

「もし……私がスクール水着を着たら、なずなちゃんも着てくれる?」

 なずなの顔がパッと明るくなる。やったあ、倍額ゲット。

「それは、先生が頑張ってくれるんならね。私も女優ですから」

「絶対よ。約束してね」

「はーい」

「分かった、じゃあ監督に話してみるわね」

 別にスク水を着るなんてどうでもいいんだけど、ごねてみるもんね。なずなは思わぬ収入増に込みあげてくる笑いを必死で堪えていた。


 早速アカリはグロザワに話しに行った。無論出来レース。グロザワは仕方ないな、などと笑いを噛み殺した小芝居で了承し、ただ備品の水着を着るんだから出演者として扱うからなと言って、エグチに繋ぐ。エグチはアカリに何度も頭を下げて礼を言い、一応ルールだからとアカリに誓約書にサインをするようにお願いする。

「アカリ先生、本当にありがとうございます」

 エグチはくどいほど感謝の言葉を連呼していた。

「あ、先生、申し訳ないんですけど、ここだけでいいので読んでくれますか。あ、はい、確認なんで声を出してお願いします」

 サインを終えて誓約書を斜め読みしていたアカリは、その途中でエグチの指差すところに目を移した。

「ここでいい?私は、私の意思で本作品に出演します」

「はい、ありがとうございます。これでOKです。時間もないので早速準備に入ってもらっていいですか」

 エグチはそう言うと、誓約書を奪うように取り上げ、大事そうに封筒に入れて内ポケットにしまった。アカリの朗読シーンには、密かにカメラが回されていた。

(続く)
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜

桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。 上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。 「私も……私も交配したい」 太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

隣の親父

むちむちボディ
BL
隣に住んでいる中年親父との出来事です。

処理中です...