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長K VS スニーフ
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肌色のニロニロ軍団がSとMの体中を這い回って覆いつくすと、やがてその身体を持ち上げて移動を始めた。ニロニロたちはスニーフにも取りついていたが、フラフラと立ち上がったスニーフの尻尾に振り払われた。後退し円を作ってスニーフを取り囲んでいたニロニロを、ワニオが薙ぎ払う。
「邪魔だ、邪魔だ。おおスニーフ。お前はまだ元気があるみてえだな。それなら俺様が相手をしてやろう」
ワニオはそのワニに似た顎を大きく開くと、スニーフに向かって突進した。しかしワニガメも亀。威勢の割に進みが遅い。何だこいつ、めちゃくちゃ遅いじゃねえか。スニーフはその場で大きく一回転して、回転キックの要領でしならせた尻尾をワニオに叩きつけた。
「ぎゆあああああああああっ」
見た目のゴツサに警戒したが、ワニオはあまりにも呆気なく宙を舞い、小人たちのクリスマスツリーに突っ込んだ。その衝撃で小人たちがバラバラと木から落ちた。小人たちの代わりにワニオが木に引っ掛かっている。
「くっそお、降ろせ」
こいつ見かけ倒しにもほどがあるな。苦笑するスニーフ。
「何が可笑しい。スニーフ」
長Kの低い声。おっと、まったく。こいつの声は五臓六腑に響くってやつだな。
「ワニオが見かけ倒しなのは分かっていた。むしろ見かけだけで十分だったのだ。お前のような飛びぬけたバカな輩でなければ、誰もあの厳ついワニオに歯向かおうなんて思わない」
「ハハハ、違いねえな」
「さっきから、随分、好き放題やってくれたみたいだが、スニーフ、お前そんなに死にたいのか」
「まさか。死ぬ気なんてカケラもねえさ」
スニーフが身構える。一方の長Kはまったくの自然体である。
「身構えたところでどうにもならない。そんなこと十分分かっているだろう、スニーフ」
Kが指を一つ鳴らすと、スニーフは後方にもんどりをうって転がされた。Kの指がもう一つ鳴ると今度は宙に浮き、指揮を振るうように人差し指をさっと下に降ろすとドドーンと背中から地面にたたき落とされた。くそお。子ども扱いかよ。スニーフは背中に走る猛烈な痛みに耐えながら、反撃の機会を伺うが、全く打開出来る気がしない。せめてこの完全にロックオンされているKの気を散らすことが出来れば……。
SもMもニロニロの群れに連れ去られ、悪夢城に消えようとしている。二人とも悪夢の虜になって狂い死ぬのか。
「長K。Mはオイラの大事な友だちだ。それはお前だって知ってるだろう。どうして…….うううううわあああああああ」
スニーフの必死の訴えも、その訴えを遮り、Kは魔術で首を締め上げ、再び宙に上げては叩き落とすを繰り返す。一度、二度、三度……。ドドン、ドドン、ドドン……。スニーフの苦悶の声が次第に小さくなっていく。
ズキューン
その時、一発の弾丸が長Kに向けて発射された。Kは難なくその弾丸を避けたが、スニーフに掛けた魔術が緩み、宙に浮かべる直前でスニーフに自由が戻った。
その弾丸は小人たちの銃から発射されたものだった。クリスマスツリーから逃れた小人たちがKを襲ったのだ。信じられない、まさかの反逆だ。
小人たちは銃口をKに向けたまま、じっと対峙していたが、次の瞬間紙ふぶきのように全員が高々と宙に舞った。ズキューンという最後の銃声はKの足元に跳ねてそれる。反逆はそこまでだった。小人たちが飛ばされた先には針山がある。30人以上の色鮮やかな小人たちは、グサグサと針山の針に身体を貫かれ、鮮血と共に絶命した。
「バカどもめ。私に逆らうとは一体どんな了見か。さっきの旅人がMに使っていた謎の呪術のせいやも知れぬな。そんなことをせねば小人どもも死ぬこともなかった。恨むならあの旅人を恨むがいい」
小人たちの命懸けの反撃は、Sの術がもたらしたものではないとスニーフは思っていた。小人たちが木に引っ掛かったあの時「みんなあ、あとで助けにくるからな」と声を掛けたSへの気持ちに小人たちは応えたのだ。その勇気に、今度は自分が応えなければ。
Kの意識がこちらに向く前に勝負に出る必要があった。そうしなければ何も出来ないまま殺される。SもMも助けられない。しかし、いかに自由が戻ったとは言え、既に散々痛めつけられているスニーフにはもう力が殆ど残っていたかった。先のKの攻撃から見出した魔術の弱点の仮説、最後の一撃をそれに賭ける。選択肢はない。
「とんだ邪魔も入ったし、私はそろそろMと旅人の処刑に向かわせもらうことにしよう。楽しかったぞ、スニーフ、グッドラックだ」
Kは再びスニーフに術を掛けようと指を鳴らした。一か八か。スニーフはそのタイミングに合わせて自ら宙に飛んだ。フワリ。スニーフの身体にKの意思が伝わらない。思った通りだ。自分の意思で宙にいるものにはKの術は掛からない。つまりKの術は地面の震動がキーだった。
スニーフは宙に浮かんだ状態のまま尻尾で大地を蹴り、一気に長Kとの距離を詰めた。そして全力で体当たりをかます。それがスニーフの指せる最後の一手だった。
避けきれない。そう思ったKはスニーフの渾身の体当たりを真正面から受けた。
ズドドドドドドドド
辺りを昼間のように照らす閃光に続いて、激しい衝撃音が周りにあったモノというモノを粉砕していく。あたかもそこに時間の歪みが生じたかのようなスローモーションで悪夢城の城門が崩れていった。
(続く)
「邪魔だ、邪魔だ。おおスニーフ。お前はまだ元気があるみてえだな。それなら俺様が相手をしてやろう」
ワニオはそのワニに似た顎を大きく開くと、スニーフに向かって突進した。しかしワニガメも亀。威勢の割に進みが遅い。何だこいつ、めちゃくちゃ遅いじゃねえか。スニーフはその場で大きく一回転して、回転キックの要領でしならせた尻尾をワニオに叩きつけた。
「ぎゆあああああああああっ」
見た目のゴツサに警戒したが、ワニオはあまりにも呆気なく宙を舞い、小人たちのクリスマスツリーに突っ込んだ。その衝撃で小人たちがバラバラと木から落ちた。小人たちの代わりにワニオが木に引っ掛かっている。
「くっそお、降ろせ」
こいつ見かけ倒しにもほどがあるな。苦笑するスニーフ。
「何が可笑しい。スニーフ」
長Kの低い声。おっと、まったく。こいつの声は五臓六腑に響くってやつだな。
「ワニオが見かけ倒しなのは分かっていた。むしろ見かけだけで十分だったのだ。お前のような飛びぬけたバカな輩でなければ、誰もあの厳ついワニオに歯向かおうなんて思わない」
「ハハハ、違いねえな」
「さっきから、随分、好き放題やってくれたみたいだが、スニーフ、お前そんなに死にたいのか」
「まさか。死ぬ気なんてカケラもねえさ」
スニーフが身構える。一方の長Kはまったくの自然体である。
「身構えたところでどうにもならない。そんなこと十分分かっているだろう、スニーフ」
Kが指を一つ鳴らすと、スニーフは後方にもんどりをうって転がされた。Kの指がもう一つ鳴ると今度は宙に浮き、指揮を振るうように人差し指をさっと下に降ろすとドドーンと背中から地面にたたき落とされた。くそお。子ども扱いかよ。スニーフは背中に走る猛烈な痛みに耐えながら、反撃の機会を伺うが、全く打開出来る気がしない。せめてこの完全にロックオンされているKの気を散らすことが出来れば……。
SもMもニロニロの群れに連れ去られ、悪夢城に消えようとしている。二人とも悪夢の虜になって狂い死ぬのか。
「長K。Mはオイラの大事な友だちだ。それはお前だって知ってるだろう。どうして…….うううううわあああああああ」
スニーフの必死の訴えも、その訴えを遮り、Kは魔術で首を締め上げ、再び宙に上げては叩き落とすを繰り返す。一度、二度、三度……。ドドン、ドドン、ドドン……。スニーフの苦悶の声が次第に小さくなっていく。
ズキューン
その時、一発の弾丸が長Kに向けて発射された。Kは難なくその弾丸を避けたが、スニーフに掛けた魔術が緩み、宙に浮かべる直前でスニーフに自由が戻った。
その弾丸は小人たちの銃から発射されたものだった。クリスマスツリーから逃れた小人たちがKを襲ったのだ。信じられない、まさかの反逆だ。
小人たちは銃口をKに向けたまま、じっと対峙していたが、次の瞬間紙ふぶきのように全員が高々と宙に舞った。ズキューンという最後の銃声はKの足元に跳ねてそれる。反逆はそこまでだった。小人たちが飛ばされた先には針山がある。30人以上の色鮮やかな小人たちは、グサグサと針山の針に身体を貫かれ、鮮血と共に絶命した。
「バカどもめ。私に逆らうとは一体どんな了見か。さっきの旅人がMに使っていた謎の呪術のせいやも知れぬな。そんなことをせねば小人どもも死ぬこともなかった。恨むならあの旅人を恨むがいい」
小人たちの命懸けの反撃は、Sの術がもたらしたものではないとスニーフは思っていた。小人たちが木に引っ掛かったあの時「みんなあ、あとで助けにくるからな」と声を掛けたSへの気持ちに小人たちは応えたのだ。その勇気に、今度は自分が応えなければ。
Kの意識がこちらに向く前に勝負に出る必要があった。そうしなければ何も出来ないまま殺される。SもMも助けられない。しかし、いかに自由が戻ったとは言え、既に散々痛めつけられているスニーフにはもう力が殆ど残っていたかった。先のKの攻撃から見出した魔術の弱点の仮説、最後の一撃をそれに賭ける。選択肢はない。
「とんだ邪魔も入ったし、私はそろそろMと旅人の処刑に向かわせもらうことにしよう。楽しかったぞ、スニーフ、グッドラックだ」
Kは再びスニーフに術を掛けようと指を鳴らした。一か八か。スニーフはそのタイミングに合わせて自ら宙に飛んだ。フワリ。スニーフの身体にKの意思が伝わらない。思った通りだ。自分の意思で宙にいるものにはKの術は掛からない。つまりKの術は地面の震動がキーだった。
スニーフは宙に浮かんだ状態のまま尻尾で大地を蹴り、一気に長Kとの距離を詰めた。そして全力で体当たりをかます。それがスニーフの指せる最後の一手だった。
避けきれない。そう思ったKはスニーフの渾身の体当たりを真正面から受けた。
ズドドドドドドドド
辺りを昼間のように照らす閃光に続いて、激しい衝撃音が周りにあったモノというモノを粉砕していく。あたかもそこに時間の歪みが生じたかのようなスローモーションで悪夢城の城門が崩れていった。
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