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FINAL SHOOT
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バン、バン、バン
夜の帳の降りた森の広場を煌々と照らしていた照明が、突然音と共にひとつ、ふたつと落ちていった。
「何だ、何だ」
徐々に暗くなる広場とそれと逆行して森の民のざわめきが大きくなる。舞台上でMを人質に取られて緊迫した状態にあったSたちも、唐突な広場の停電に空気が変った。
広場は間もなく僅かに傾いた月の光だけを残して闇に包まれた。恐らく何者かが照明施設に侵入して操作をしたのだろう。お互いに相手の差し金と疑ったが、導師にもSたちにもこのハプニングを起こした下手人に思い当たる人物はいなかった。
しかし。このハプニングは明らかにSたちに分があった。土下座をしろなどという中途半端な命令を下してしまった導師は、暗闇の中で次の命令をするタイミングを逸してしまった一方で、Sたちは闇に紛れて導師の命令を無視し、然るべき次の行動に移ることが出来た。
「何だ、どうしたというのだ」
導師の質問への答えは誰からも返って来ない。導師の表情に焦燥感が浮かぶ。既に曲がりになりも森の民に影響を持っていた長老をはじめとした巨大化ニロニロを失い、慌てて作った第二陣さえもその場から一掃されていた。導師に従う者はもはや誰もいなかった。己の力に溺れ、誰も信じることなく、たった一人でやって来た影の支配者の脆さが、その焦りの表情に露見していた。
SとKは当然のように触手を切断してMを救出し、スニーフは合図があれば即座に攻撃出来る態勢を整えた。Kの落雷の閃光が光った瞬間が攻撃開始の合図だ。
勝てる。Sは心の中でそう確信した。スニーフの攻撃力、そしてお姉ちゃんの術。自分は導師が術を発動する動きを止めればいい。
ビカビカビカ
落雷が花舞台を明るく照らし出した。来た。落雷が直撃した導師に向かってスニーフは尻尾の全力攻撃をお見舞いした。
バシィィィィ。
100%の手応えがあった。導師は花舞台の手すりを突き破って広場に落ちていった。これでお仕舞だな。そこに照明がひとつ、ふたつと灯り始める。
森の民たちが黒こげのボロ雑巾のようになった導師の周りを遠巻きに囲んだ。これが森を恐怖政治に陥れた本当の黒幕の最期。巨星、堕つ。
恐る恐る覗き込んだ森の民たちから声にもならない戦慄の悲鳴があがった。
「ぎゃあああああああああ」
そこに倒れていたのは導師ではなかった。黒焦げになったのは紛れもなくMだった。
「Mだって。まさか、そんな」
スニーフがMの亡骸に縋り付く。どうして、どうしてだ?尻尾に残る打撃の感触がおぞましい。
「ハハハハハ。何とも安易な策に溺れたようだな。どうだスニーフ。自らの手で最愛の仲間を殺した気分は。お前たちのような輩の考える策など、私には通用しないということがわかったか」
「まさか、そんなマネができるなんて」
Kは、導師を狙った雷が進路を捻じ曲げられ、しかもそれをMに直撃させた導師の術の恐ろしさに驚愕していた。自分が避けるだけならともかく、雷の進路を変えるなんて。恐ろしい使い手だ。勝てるのかこんなやつに。
「どうして、どうしてだ・・・・・・」
Sは暗がりの中で導師の動きだけを注視していた。瞬きもしないで見ていたはずだ。術にいくような動きなんてまるでなかった。なのに。Kの落雷が捻じ曲げられたのだ。そんな馬鹿な。
Mを失い、嘆き、悩み、苦しむ3人に対して、導師が言う。
「最後のチャンスをやろう。お前たちが、私の洗脳を受け、私のしもべになることを約束するならば、Mを生き返らせてやっても良いぞ」
Kが言う。
「私は処刑されて仕方のない身だ。私を殺してMを生き返らせてくれ」
Sが言う。
「ぼくが森の長になるから、Mを生き返らせて」
スニーフが言う。
「Mを、Mを生き返らせてくれ」
導師は三人の答えに再びイライラを募らせる。
「勝手なことをいうな。私の洗脳を受けて、私のしもべになると約束しろと言っているんだ。それ以外のことを言うんじゃない」
そこでまた照明が落ちる。今度は一度に暗くなった。
「何なんだ、いちいち、いちいち」
導師のイライラは頂点に達する。しかも今度はいきなり真っ暗になったので、さっき以上に目が利かない。
これがホントにラストチャンス。Sは目を瞑り全身全霊を集中した。今まで誰かを傷つけるような術を使ったことはない。これが最初で最後。そのSの背中をKが押した。お姉ちゃん。大丈夫、私も一緒にやるから。姉妹の術が重なった。
大きく、大きく、そして強く。ターゲットがぼんやりと輪郭を現した。
(続く)
夜の帳の降りた森の広場を煌々と照らしていた照明が、突然音と共にひとつ、ふたつと落ちていった。
「何だ、何だ」
徐々に暗くなる広場とそれと逆行して森の民のざわめきが大きくなる。舞台上でMを人質に取られて緊迫した状態にあったSたちも、唐突な広場の停電に空気が変った。
広場は間もなく僅かに傾いた月の光だけを残して闇に包まれた。恐らく何者かが照明施設に侵入して操作をしたのだろう。お互いに相手の差し金と疑ったが、導師にもSたちにもこのハプニングを起こした下手人に思い当たる人物はいなかった。
しかし。このハプニングは明らかにSたちに分があった。土下座をしろなどという中途半端な命令を下してしまった導師は、暗闇の中で次の命令をするタイミングを逸してしまった一方で、Sたちは闇に紛れて導師の命令を無視し、然るべき次の行動に移ることが出来た。
「何だ、どうしたというのだ」
導師の質問への答えは誰からも返って来ない。導師の表情に焦燥感が浮かぶ。既に曲がりになりも森の民に影響を持っていた長老をはじめとした巨大化ニロニロを失い、慌てて作った第二陣さえもその場から一掃されていた。導師に従う者はもはや誰もいなかった。己の力に溺れ、誰も信じることなく、たった一人でやって来た影の支配者の脆さが、その焦りの表情に露見していた。
SとKは当然のように触手を切断してMを救出し、スニーフは合図があれば即座に攻撃出来る態勢を整えた。Kの落雷の閃光が光った瞬間が攻撃開始の合図だ。
勝てる。Sは心の中でそう確信した。スニーフの攻撃力、そしてお姉ちゃんの術。自分は導師が術を発動する動きを止めればいい。
ビカビカビカ
落雷が花舞台を明るく照らし出した。来た。落雷が直撃した導師に向かってスニーフは尻尾の全力攻撃をお見舞いした。
バシィィィィ。
100%の手応えがあった。導師は花舞台の手すりを突き破って広場に落ちていった。これでお仕舞だな。そこに照明がひとつ、ふたつと灯り始める。
森の民たちが黒こげのボロ雑巾のようになった導師の周りを遠巻きに囲んだ。これが森を恐怖政治に陥れた本当の黒幕の最期。巨星、堕つ。
恐る恐る覗き込んだ森の民たちから声にもならない戦慄の悲鳴があがった。
「ぎゃあああああああああ」
そこに倒れていたのは導師ではなかった。黒焦げになったのは紛れもなくMだった。
「Mだって。まさか、そんな」
スニーフがMの亡骸に縋り付く。どうして、どうしてだ?尻尾に残る打撃の感触がおぞましい。
「ハハハハハ。何とも安易な策に溺れたようだな。どうだスニーフ。自らの手で最愛の仲間を殺した気分は。お前たちのような輩の考える策など、私には通用しないということがわかったか」
「まさか、そんなマネができるなんて」
Kは、導師を狙った雷が進路を捻じ曲げられ、しかもそれをMに直撃させた導師の術の恐ろしさに驚愕していた。自分が避けるだけならともかく、雷の進路を変えるなんて。恐ろしい使い手だ。勝てるのかこんなやつに。
「どうして、どうしてだ・・・・・・」
Sは暗がりの中で導師の動きだけを注視していた。瞬きもしないで見ていたはずだ。術にいくような動きなんてまるでなかった。なのに。Kの落雷が捻じ曲げられたのだ。そんな馬鹿な。
Mを失い、嘆き、悩み、苦しむ3人に対して、導師が言う。
「最後のチャンスをやろう。お前たちが、私の洗脳を受け、私のしもべになることを約束するならば、Mを生き返らせてやっても良いぞ」
Kが言う。
「私は処刑されて仕方のない身だ。私を殺してMを生き返らせてくれ」
Sが言う。
「ぼくが森の長になるから、Mを生き返らせて」
スニーフが言う。
「Mを、Mを生き返らせてくれ」
導師は三人の答えに再びイライラを募らせる。
「勝手なことをいうな。私の洗脳を受けて、私のしもべになると約束しろと言っているんだ。それ以外のことを言うんじゃない」
そこでまた照明が落ちる。今度は一度に暗くなった。
「何なんだ、いちいち、いちいち」
導師のイライラは頂点に達する。しかも今度はいきなり真っ暗になったので、さっき以上に目が利かない。
これがホントにラストチャンス。Sは目を瞑り全身全霊を集中した。今まで誰かを傷つけるような術を使ったことはない。これが最初で最後。そのSの背中をKが押した。お姉ちゃん。大丈夫、私も一緒にやるから。姉妹の術が重なった。
大きく、大きく、そして強く。ターゲットがぼんやりと輪郭を現した。
(続く)
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