Dazai & JK

牧村燈

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第1章 太宰とJKが過ごしたある初夏の日々

第3話 100年を超えて

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 その後、太宰先生はこの姉の部屋で、私が太宰先生だけを感じる時にその影を見せてくれると言うことを知った。私が他の誰かの気配に気を取られると消えてしまうのだ。

 太宰先生は幽霊だったが、少しもおどろおどろしいところがなくて、先生と話をするのはとても楽しかった。それでもエッチな先生はやっぱり私に触りたいらしくて、すぐにこっちに来いとか言うのだけど、私は先生が動けないことをいいことに、いつも先生の手の届かない場所に座って、とりとめなく色んな話をした。

『時に君は、学校で何を勉強しているのだね』

「私、学校行ってないんですよ。あ、でもね今は誰も行ってないんだなあ。だからみんな不登校。おかしいでしょう。ずっとこのままならいいのにな」

『それは素晴らしい。学校などというものは、そもそも行かんで済むものならそれに越したことはないのだ。教師ほどあてにもならず、何も物を知らぬ者はないからな。そのようなものから一体何を学べというのか、私にはさっぱり理解できなかった。時の為政者はなかなかの者のようだな』

「先生、それは言い過ぎですよ。教師にだって中にはちゃんとした人はいますから」

 おっと、私が教師を擁護するなんて、どういう風が吹き回っているのだろう。

「それに今学校に行けないのは、Cウィルスのせいなんです。病気ですね、感染病。別に総理大臣が学校がダメだから行かなくていいって言ったわけじゃないですよ」

『なるほどそれで矢鱈と皆マスクをしていたわけか。ようやく合点がいった。時に君はスペイン風邪を知っているかね』

「とーーぜん。Cウィルスと何かと比較対象になってますよ」

『そうであろうな。時代は100年進んだのだ。それで今の君たちはそのCウィルスとやらにどんな風に対処しているのだね』

「手洗いうがい手指消毒、三密にならない、かな」

『三密?三密とは、何を意味するのであろうか』

「うーんと、なんだったかな。ちょっと待ってくださいね。調べるから。えーと、あったあった密閉、密集、密接だ」

『なるほど。教えていただきかたじけない。だとすれば、100年前とやっていることはまったく同じというわけだ』

 先生は100年前のウィルス対策をあれこれ教えてくれた。殆ど今と同じだ。手を洗って、人ごみを避けて、学校も休校になったらしい。テレビやネットがないのが今との違い。大事なことを普及するが大変だったそうだ。

「え~~。だって毎日テレビで専門家っていう人が100年前にやってたことと同じことをペラペラ偉そうに、いかにも専門的な難しい話みたいにしゃべってるんですよ。女都知事さんとかメチャしたり顔で<三密を避けてください、命を守る為>になんて、何か凄い上段の構えで言うんですよ。こんな感じに」

 私は都知事風に両手を広げて、先生に向かって三密禁止のアピールをした。いつも通り影なので顔の見えない先生が、それでも笑っているように見える。

『つまり100年経っても人間なんてそんなに変わるもんじゃないってことだよ。君にとって私などカビの生えた遠い昔の人に思えるのかも知れないが、たかが100年。随分飾り道具は増えたようだが、それを取り去ってしまえば何も変わりはしないんだ。さあ、君もそんな珍妙な服は脱ぎ捨てて、生まれたままの姿で私のところへ・・・・・・』

 折角いい話っぽくなってきたと思ったらヤッパリ最後はそれ。私が怒った顔をして腰に手を当てたら、ヤバイって感じでモジモジしている太宰先生。でもどうせ・・・・・・。

『時に君は、私の本は読んだかね?』

 ほらね。すぐに話題を変えて話しかけてくる。私もすぐにその話に乗っかるの。姉が家を出て三ケ月。Cウィルスもあって慌ただしくはあったけど、とても寂しかった時間が、急に賑やかで楽しくなった。私は時間を忘れて先生とのお喋りを楽しんだ。

「はい、勿論ですよ。私が好きなのはね…」

(続く)
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