Dazai & JK

牧村燈

文字の大きさ
13 / 15
第2章 太宰とJKが初体験に煌めいた夏休み

第1話 夏のプロローグ

しおりを挟む
 2020年の7月23日から26日は真夏の4連休。本当なら東京オリンピックが開幕して、大いに盛り上がっていたはずだが、それもこれもCウィルスのお蔭ですべてがおじゃんだ。連日感染者が何百人出ましたと、それが多いのか少ないのかも定かではないニュースが垂れ流され、その上にお出掛けを応援する政策と、外出は控えましょうという呼び掛けが同時に降ってくる。立場が変われば言うことも変わる。だからどうしたと国のリーダーに開き直られてしまうと、一般庶民はどうしていいか分からない。まあ、そんな時は天気次第かと思っていると、いつまでたっても明けない梅雨が、あちらこちらで災害級の大雨を降らせた。これじゃあ遊びに行く気分も盛り上がらない。アタフタするばかりの人間たちに比べると、まったくもって自然というものは良く出来ているものだと感心する。

 学校の方は休校続きだった春先のつけで、夏休みがギュッとコンパクトにされてしまった。まあどうせそんなこんなで何処に行くことも出来ないのだから、学校に行くのも悪くない。ついこの間まで不登校をしていた私が、そんな風に思えるようになったのだから、きっと太宰先生なら『つまり、塞ぐものあれば開くものありだ』なんてことを言うのかも知れない。そんなことを想像するだけで口元が緩む。思い出し笑い。何だかおばあちゃんにでもなった気分だ。

 そう。私の先生は太宰治だ。どの位の人が信じてくれるか分からないけど、先生は5月の緊急事態宣言の真っただ中に私の家にやって来た正真正銘の幽霊である。不登校で時間を持て余していた私は、このとっても不思議でちょっとエッチな文豪先生と、約1ケ月、色々な話をして過ごした。

 今思えばどこからどう見てもふて腐れていた私が、その間に先生に教えられて見つけることが出来た大事なことのお蔭で、N美との友情を復活させ、自分を残して家を出た姉を一人の女性として見る視点を開くことが出来た。成長した?なんて言うとちょっとおこがましいけれど、いつもオドオドとしか生きられなかった私が、少なくともしっかりと前を向けたのは間違いない。

 遅まきながら、さあ、ここからが私の高校デビューだなんて思ったりもしたのだけれど、時は既に高校三年の夏、将来のこととか、将来のこととか、将来のことをどうするのかという問いがあちこちから降って来て、元気になりかけていた私の脳を腐らせた。

 何でも相談しようねと約束はしたものの、大学に進学することを決めて受験勉強を始めたN美には、やっぱり相談し辛かった。

「だって、そんなの考えたこともないんだから、分かんないよ」

 両親や先生にそう大声で言えたなら、まだ良かったのかも知れない。ノーヒントで最高難度の迷宮に挑む初心者ゲーマーのように、一歩迷宮に足を踏み入れる度にゲームオーバーを繰り返している内に、ずっと影を潜めていた眠れない病が、俄然勢力を増してきた。

 元の木阿弥にはなりたくないと思った私は、短い夏休みが始まると同時に、姉のところで暫く厄介になるからと言い残して家を出た。姉に了承を得てのことではない。何度か泊まらせてもらったことはあるが、突然訪ねるのは初めてのことだった。

 何となく不安はあったのだが、やはり姉の家の前で立ち往生することになる。留守。連絡してみると、5分ほどで返信があった。考えてみればあって然るべきなのだが、今日から3日ほど旅行に出ているのだと言う。

 うーん、どうしよう。だからと言ってすごすご家に帰りたくはなかった。姉が帰ってくるまでの3日間くらい、友だちのところに転がり込んで、などとまるで普通のJKみたいなことを考えてみるが、N美の勉強の邪魔をする以外では当てなどない。

 うーん、どうしよう。私の頭で考えた所で妙案なんて出て来ないことは分かっているのだが、どこに動き出すことも出来ないまま姉の部屋の前で固まっていた。長い夏の日も西に大きく傾いて、辺りはオレンジ色に染まっている。東の空に月が昇っていた。満月だ。ああ、太宰先生。満月の日に出会い、満月の日に分かれた先生を思い出す。
 
 先生、こんな時私ははどうすれば良いでしょうか?

(続く)
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

彼女が望むなら

mios
恋愛
公爵令嬢と王太子殿下の婚約は円満に解消された。揉めるかと思っていた男爵令嬢リリスは、拍子抜けした。男爵令嬢という身分でも、王妃になれるなんて、予定とは違うが高位貴族は皆好意的だし、王太子殿下の元婚約者も応援してくれている。 リリスは王太子妃教育を受ける為、王妃と会い、そこで常に身につけるようにと、ある首飾りを渡される。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

大好きなおねえさまが死んだ

Ruhuna
ファンタジー
大好きなエステルおねえさまが死んでしまった まだ18歳という若さで

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

処理中です...