VRMMOのキメラさん~〜モンスターのスキルを奪える私は、いつの間にか《キメラ》とネットで噂になってました!? 【リメイク版】

水定ゆう

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EX1ー1:真夏の今日はキャンプ日和

◇206 //夕陽だよね

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 私達は登山をしていた。
 実際、夕雲山は登山ができる山。
 毎年何千人もの登山客がやって来る。

「ふんふふーん」
「烈火、楽しそうだね」

 軽快な足取りで登っていく烈火。
 鼻歌混じりで、私は訊ねた。
 何だか凄く楽しそうで、烈火はクルンと振り返った。

「うん。登山好きだよー。って言うより、動くの楽しいー」

 烈火はとにかく体を動かすことが大好き。
 そのせいか、疲れが一切溜まっていない。
 底知れない無限の体力を目の前に、私達も余裕だった。

「私達も全然大丈夫だよね?」
「うん」
「もちろん」

 烈火だけじゃなくて、由里乃と祭は運動部。
 卓球部だけど体力は凄く必要。
 寧ろ運動部に所属していない私が、三人に一歩も譲らないのがおかしいのかな?
 そんな風に自分を卑下する中、烈火はドンドン突き進む。

「ふんふふーん」
「烈火、相変わらず速いね」
「本当、体力バカ」
「確かに」

 これは凄い褒め言葉だった。
 私も同感で祭に対して相槌を打つ。
 そうこうしているうちに、周囲一帯は夕暮れ時。
 黄色とオレンジの境界線が彩る。

「もう少しで頂上かな?」
「その筈」
「よし、みんなラストスパートだよ!」

 夕雲山は凄く高いって程の山じゃない。
 そこそこの標高で、登山初心者からでも楽しめる。
 ただ手すりとか、整備された階段は無い。普通に一本の太い坂道を登り続けると、私達はいよいよ頂上に辿り着く。

「おーい、みんなこっちこっちー!」

 先に頂上まで登り切っていた烈火。
 呼び出されると、私達も駆け上がる。
 そうして頂上に辿り着くと、烈火が出迎えた。

「みんなお疲れー」
「お疲れ様、烈火」
「あはは、私は疲れてないけどねー」

 烈火は全然疲れていない。
 だけどお互いに声を掛けて支え合う。
 軽口をたたき合えるくらいが丁度よかった。

「でさ、ここになにがあるの?」

 烈火は先に頂上に登ったのに気が付いていなかった。
 もしかして後ろ向きで辿り着いたのかな?
 危ないことはしないで欲しいけど、それならそれでビックリする筈。
 私は指を指すと、後ろを向くように誘導した。

「なにって、アレだよ」
「アレ? うわぁ!」

 烈火は驚いていた。
 口をあんぐりと開けると、想像には無かったもの。
 もちろん私達は知っている。この夕雲山の頂上、そこは絶景スポットだった。

「なにあの夕陽、凄く綺麗なんだけどー!」

 この一言が全てを物語る。
 目の前に浮かんでいるのは緑一面の大地。
 その先には山。そして巨大な夕陽が出迎える。

「うわぁ、凄く綺麗!」

 正直、それが最初の感想だった。
 だって、それくらいしか言えない。
 実際に綺麗なものを目の前にすると、他の言葉が安く感じる。

「エモいね~」

 烈火の言う通り、エモい(※元はエモーショナル)な気分になる。
 って言うより、今の時代にそんな言葉云うのは珍しい。
 もしかして、ずっと昔の時代の言葉が最熱しているのかな?

「確かに凄くエモいよね。みんなこれを見に登るんだよ」

 そう、夕雲山はその名前の通りだった。
 夕陽と雲のコントラスト。それが絶妙に適合マッチしている。
 今日は特にいいのか、雲は全く無くて、綺麗な夕陽を見ることができた。

 みんなこの夕陽を見るためにわざわざ登る。
 朝じゃダメで、夕方じゃないと意味が無い。
 今日は偶々誰も居ないだけで、本当なら、こんな時間を四人で過ごすことは出来ないんだ。

 だからとってもラッキー。
 私達はそう思うと、ただ単に視線を釘付けにされる。

「綺麗」
「水平線に沈む夕陽もいいけど、山の頂上からユックリ沈んで行く姿もいいよね」

 水平線に沈んで行く夕陽もいい。
 だけどそれとはまた違った魅力が浮かぶ。
 視界の先にはもう一つ大きな山。その谷間を消えるように、太陽が夕陽となって揺らめく。

「なんだか心が洗われるね」
「うんうーん」

 私はとても気分がよかった。心が澄んでいた。
 烈火も燃えるようなメラメラとした心が更に猛る。
 そのおかげか、何故かウズウズ体を動かす。

「なんだろ。凄く燃えてきた」
「烈火?」
「あはは、もしかして感化されちゃったの?」
「烈火らしい」

 本当にその通りかもしれない。
 烈火らしい姿にいつも通りを感じる。
 私はフッと息を吐き気持ちを整えた。
 目の前を過ぎ去る太陽に、ソッと気持ちを傾けた。

「なんか、いいね」

 本当にそれしか出なかった。
 だけど見に来られてよかった。
 登山をした甲斐があったってまさにこのことで、達成感がある。

「この瞬間を留めてもいい」
「留める?」

 祭がポツリとエモいことを言った。
 ふと私は耳を傾けると、少し考える。
 スマホで撮るのって、場違いかな? そうは思いつつも、一応提案してみる。

「あっ、そうだ。みんな、写真撮ろうよ!」

 私はみんなを誘った。
 すると烈火を始め、由里乃と祭も意外そうな顔をする。

「どうしたの、みんな?」

 もしかして、ダメだったかな?
 そうだよね。これだけ綺麗な夕陽、自分の目で見ただけで満足だよね。
 そう思った私は訂正しようとすると、ニヤッと由里乃は笑みを浮かべる。

「いいね、明輝。それ待ってたよ」
「えっ?」

 私がポカンとすると、烈火は私の首に腕を回した。
 グッと引き寄せると、隣に立たされる。
 姿勢が崩れるけど、それくらいが丁度いい。

「はいはい、祭も寄って寄って」

 私達は一塊になる。
 由里乃はポケットからスマホを取り出す。
 スッと腕を前に出すと、端っこに立っているから、全体の画角がまとまる。

「それじゃあ撮るよ、イェーイ!」

 パシャリ!

 私達は写真を撮った。
 背景に綺麗な夕陽を使う。
 映し出される黄昏時の輝きが、私達のことを美しく照らす。

「おお、いい感じだね」
「うん。綺麗」
「夕陽が特に」
「ちょっとちょっとー、私達は?」

 各々が好き勝手に感想を呟いた。
 だけど烈火にだけは如何しても首を縦に触れない。
 寧ろ目を細めて凝視すると、烈火は首を捻る。

「えっ、なに?」
「烈火、それはないよ」
「それはない」

 私と祭はジトッとする。
 それだと自意識が高いみたいで少し嫌。
 私はそう思うと、由里乃はニコッと笑う。

「あはは、みんな可愛いでしょ?」
「「由里乃……」」

 今はそう言うことを言う時じゃない。
 由里乃まで烈火のノリに合わせていた。
 だけど私と祭は如何しても“可愛いかな?” と自問自答してしまう。

「まっ、それはいいよね。後で写真送っておくよ」
「ありがとう、由里乃」
「うん、任せて。それじゃあ、テントに戻ろっか」

 私達は見たかった夕陽を見終えた。
 背景に写真も撮れた。
 何だか凄くいいキャンプになった気がして、私達は夕陽が沈み行くのに合わせ、テントまで戻るのだった。
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