生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう

文字の大きさ
8 / 86

8話 薬を作ります②

しおりを挟む
 まずは薬の材料の説明から。

 サラマンハーブ。
 炎蜥蜴でお馴染みのサラマンダーに似た赤いハーブ。
 熱処理に優れていて、食べれば体内の毒素を余分な脂肪分ごと、燃やし尽くす。

 すやすや草。
 ミントみたいな色をした、小さい花の葉っぱ。
 匂いを嗅ぐだけで、気持ちが安らぐ。
 高い睡眠効果を持っていて、今回は香り付け。

 黄金ニンジン。
 今回の肝。黄金色に輝く立派なニンジン。
 Sランク素材で、一口食べればたちまち肌は治り、傷も一発で塞ぐ。
 ゴブリンやオークに辱められた人の体を元通りに戻せるほどだそう。

 それから水だ。
 これは山奥の湧き水で、毎年冬になると降り積もるスノーパウンドと呼ばれる雪が溶けたもの。

 かなりレアで、自力で汲んできた。
 一応Aランク素材で、一本辺り千二百ギルはくだらない。

「ほとんど師匠たちの仕送りだけど、貯めてきた甲斐があった」

 こういう時に役に立つ。
 全部高級品ばかりで、普通にはとても買えない。

 冒険者なら自力で採ってこれるから、まだなんとかなっている。
 お店で売れば、黄金ニンジン一本で数年は食べていけるだろう。

 だけどここはありがたく使う。
 使わずに腐って捨てたら元も子もない。
 それにどんなに高級な素材でも、使い方を間違えれば全部無駄に終わる。

 そこで僕はスノーパウンドの雪解け水を百八十度の高温にしたんだ。
 さてと、まずはサラマンハーブを砕きますか。

「乳棒で細かく砕いて。細かく、細かく。均一になるまで、細かく細かく。細かく細かく細かく細かく。少しでも大きいのがあると、気になるから、細かく細かく細かく細かく……」

 念仏のように唱え続けた。
 この方が集中できる。

「よし。すやすや草は香り付けだから少し千切って……黄金ニンジンはすり潰す……」

 細かく、黄金ニンジンをすり潰した。
 大根おろし器ならぬ、ニンジンおろし器で、細かくした。

 すると乳鉢の中には、これなんなのか? 首を傾げてしまうぐらいに細かく、結局何かわからなくなったカスが溜まっていた。

「これぐらいすり潰せばいいかな。残りは、この水を加えてと……」

 僕はまだ熱くて手で触れない瓶をタオルで巻いたまま持ち上げ、瓶の蓋を開ける。

 中で沸騰した水。
 空気に触れて、熱せられた瓶に入った亀裂が広がった。

 パリィーン!ーー

 瓶が砕けた。
 破片が入らないように気をつけながら、中に入っていたお湯を満遍なく流し、僕は残りをかき混ぜる。

「後は、全力でかき混ぜる!」

 均等に均一に、一定のペースで乳鉢の中のものを、乳棒を使って混ぜ合わせる。
 最初は沈殿していたけど、だんだん細かくなり、お湯に溶ける。

 そのタイミングを見計らい、僕は別で要していたポットの中に注ぎ込んだ。
 二度お湯を加える。
 そうすることで、ようやく人が飲めるようになる。

「これってそのまま飲むと激薬なんだよね。一回死にかけたもん」

 昔リュウラン師匠の言いつけを破ったことがあった。
 あの時は、本当に死にかけた。
 なかったら、本当に死んでたかもしれない。

 悪寒がした。
 全身が身震いに包まれて、鳥肌が立つと、頭を左右に振ってから。ティーポットとカップを持って部屋を出た。

 まあなんとかなったでしょ。
 今回こそはきっと上手くいった。
 信じれば、大丈夫。自分を強く言い聞かせて、を運んだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

捨てられた貴族六男、ハズレギフト『家電量販店』で僻地を悠々開拓する。~魔改造し放題の家電を使って、廃れた土地で建国目指します~

荒井竜馬@書籍発売中
ファンタジー
 ある日、主人公は前世の記憶を思いだし、自分が転生者であることに気がつく。転生先は、悪役貴族と名高いアストロメア家の六男だった。しかし、メビウスは前世でアニメやラノベに触れていたので、悪役転生した場合の身の振り方を知っていた。『悪役転生ものということは、死ぬ気で努力すれば最強になれるパターンだ!』そう考えて死ぬ気で努力をするが、チート級の力を身につけることができなかった。  それどころか、授かったギフトが『家電量販店』という理解されないギフトだったせいで、一族から追放されてしまい『死地』と呼ばれる場所に捨てられてしまう。 「……普通、十歳の子供をこんな場所に捨てるか?」 『死地』と呼ばれる何もない場所で、メビウスは『家電量販店』のスキルを使って生き延びることを決意する。  しかし、そこでメビウスは自分のギフトが『死地』で生きていくのに適していたことに気がつく。  家電を自在に魔改造して『家電量販店』で過ごしていくうちに、メビウスは周りから天才発明家として扱われ、やがて小国の長として建国を目指すことになるのだった。  メビウスは知るはずがなかった。いずれ、自分が『機械仕掛けの大魔導士』と呼ばれ存在になるなんて。  努力しても最強になれず、追放先に師範も元冒険者メイドもついてこず、領地どころかどの国も管理していない僻地に捨てられる……そんな踏んだり蹴ったりから始まる領地(国家)経営物語。 『ノベマ! 異世界ファンタジー:8位(2025/04/22)』 ※別サイトにも掲載しています。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。 地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。 俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。 だけど悔しくはない。 何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。 そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。 ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。 アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。 フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。 ※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

処理中です...