生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう

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21話 新緑の森①

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 僕とリーファさんは森の中を駆けていた。
 いつもとは違う、若葉色の葉っぱが目印の、深い深い森だ。

 その奥地を走る僕らは、ある魔物を持っていた。
 そいつは、森の木々に身を隠しながら、移動しているつもりだが、動きすぎて逆にバレバレなのが、気になるちょっと抜けたやつだった。

「リーファさん、そっち行ったよ!」
「見えていますよ。全く、少しは学習したらいいんですが」
「それを言ったらおしまいだよ」

 僕は皮肉混じりなリーファさんに、白い目を向ける。
 しかしリーファさんは、腰のベルトからミスリル製の相棒を引き抜いた。

 ミスリルの剣が、ギラリと光る。
 銀色の刃が美しく、僅かに差し込む太陽の光に反射して、まるで鏡のように透過した。

「はぁっあ!」
「ギィシャ!」

 魔物が叫んだ。
 リーファさんの剣が、魔物の体を切りつけたんだ。

 グサっ!と深く入り込み、それから引き抜く。
 たったこれだけがとっても痛い。
 リーファさんの動きには、まるで無駄がなく、ミスリル製の、少し細身の剣を上手く使って、背中の突起を破壊した。

 魔物の名前は、ステゴラス。
 背中に三角形のビラビラが棘のように生えている、かなり珍しい四足歩行の、魔物だった。

「リーファさん気をつけて!」
「棘が飛んでくるんですよね。心得ていますよ」

 その読みは、完全に合っていた。
 リーファさんの動きに無駄はなく、一瞬にして背後に倒れ込むようにして、身をかわすと、そのまま棘が発射された。

 放たれた棘は痛そうで、瓦屋根が強風に煽られて、落下してくるみたいな速度だった。
 それもそのはず、ステゴラスの背中の突起物は、瓦屋根レベルで痛く、普通に怪我もするし、最悪貫かれておしまいだ。

「よっと!」

 けれど全く当たらない。
 それどころか、見事に波長とタイミングを合わせて、回避すると、背中は後ろにあった木にぴたりとくっつく。

「ふぅ。えっ!?」
「リーファさん!」

 けれどリーファさんの動きはかなり危うい。
 上手くかわしたつもりが、逆に罠に嵌められたみたいで、背中を預けていた木が、真っ二つに裂ける。

「おっとっと。結構危ないですね」
「うん。やっぱり、かなり希少な魔物だから、何をしてくるか、わからないね」

 リーファさんは急いで僕の側まで駆け寄った。
 一度体制を立て直すことにしよう。そのためには、この瞬間を逃しちゃいけない。

 僕はナイフをベルトから、一本飛び出して、目印の赤いひらひらをつけると、そのまま勢い任せに、ステゴラスに刺した。
 ステゴラスはそのことに気づかず、走っていく。

 鈍感な魔物って、強いけど危ういんだよね。
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