生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう

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38話 小さな瞳

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 僕は森の中をゆっくりと、だけど急いで走っていた。
 その腕の中には少女がいる。
 手首や足首を縛る、拘束の縄は、既に外してあって、僕はか細い胴と足を持ち、森の中にいた。

「大丈夫? 怪我とかしてない?」
「う、うん」

 少女の反応は薄い。
 未だに目を閉じたままで、僕の顔を見ようともしない。だからこそ、

「そっか。じゃあ急ぐよ。早く、お父さんのところまで連れて行ってあげるから」
「あ、あの!」

 僕は少女から声をかけられた。
 それこそ、待っていたわけじゃない。だけど、声をかけられたら、返答をする。

「どうしたの? もしかして、痛かった?」
「そうじゃないです。そうじゃなくて……」
「?」

 僕には悟ることができなかった。
 もしかして、目を瞑るように言ったから開けないのかな? それとも僕が怖いから。
 それならわかる。
 何せ、最初は僕の声がはっきり聞こえていたんだから。

「僕のことが怖い?」
「そ、そんなこと」

 自然と少女の声が裏返っていた。
 もしかしたら、本当なのかもしれない。しかし、僕はというと、何事もない素振りで、繰り返す。

「無理しなくてもいいよ。僕のこと、ちょっと怖いでしょ。わかるよ、その顔」
「・・・」

 さあどう出るか。言葉に間が空いた。
 格別された何かを感じ取り、次第に距離が開く。

 でも僕は興味ない。
 だから堂々としている。

「僕は君を助けた。それだけで十分だから」
「どうして、そんなに強いの」
「ん? 僕は強くないよ。自分のできる最高をしようとしてるだけ。その結果を見てるだけだよ」
「それでも……私は、怖くないよ。すっごくかっこよかった」

 まさかの反応。
 今の僕の言葉や行動を聞いて、かっこいいなんて普通言えない。

 しかし少女は口元を緩め、笑っていた。
 それだけではない。
 閉じていた目を開こうとする。

「それに私、ずっと見えてたから」
「見えてたって?」
「お兄ちゃん、私の目見たことないでしょ。見せてあげる、私の目はね」

 少女はゆっくりと瞼を上げた。
 するとそこにあったのは三白眼。
 しかし妙なことがある。色が変だった。

「紫の、煌眼?」
「うん。私の目、この目でずっと見えてたの。私の目、

 少女はそう口にした。
 そこにあったのは、確かに少女の小さな瞳。でも不思議と、見ていられた。その理由は、明らか。

「宝石みたいな目だね」

 少女の目に心当たりはある。
 僕も似たようなことがたまにあるからだ。自発的に止められるタイプと、そうでないタイプがあるが、これは後者。
 それこそ、珍しい色をした能力だった。

「私の目。ずっとこの目で視ていたの。だからね、お兄ちゃんのこと、私怖くないよ」

 優しく少女は言ってくれた。
 柔和な笑みと、金髪を揺らして、僕に視線を送るのだった。
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