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40話 救出完了
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僕は少女を連れて、馬車まで戻ってきた。
そこには復旧した馬車と、冒険者の見るも無惨な姿。顔には白い布がかけられている。
それから腕に添え木と、包帯を巻いた男の人。隣には警備を務める、リーファさんの姿。
リーファさんは、僕の姿を一目散に確認すると、すぐさま口角を緩め、緊張を解きほぐす。
時を同じくして、スーツ姿の身なりのいい男の人も、僕が戻ってきたことに、安堵した様子だった。
「天月さん!」
「警備ご苦労様、リーファさん。こっちは無事に片付いたよ」
僕は少女を抱き抱えたままだった。
お姫様抱っこ、ってやつ。
安心しきっているのか、服の襟を離そうとしない。
でも、僕は少女をお父さんの元まで連れ帰ると、軽く揺すった。
「はい、起きて起きて」
「ううっ? あっ、パパ!」
すぐに視界が開け、そこにいたお父さんに抱きついた。
お父さんの方も、腕の痛みを隠しながら、少女に擦り寄る。
「ヴィア! よかった。無事だったのだな」
「うん。パパ、その腕は?」
「ちょっと怪我をしてしまったんだ。大丈夫、すぐに良くなるとも」
無理をしているのがわかる。
リーファさんが耳打ちしてくれた。
「あの怪我、骨まできていました。切断面が酷く、繋ぎ合わせましたけど、かなり痛いですよ」
「そっか。ご苦労様」
「いえ、これぐらい当然です」
リーファさんは謙遜していた。
しかし、それがどれだけ難しいことか、僕はよく知っている。
リュウラン師匠曰く、魔法の回復は至難の業。だけど回復は再生の基礎にあたるって。
つまり骨を接着剤みたいにくっつけるなんて、離れ業、普通に考えてするのは難しいだろう。
だからだろうか?
僕は失礼に、リーファさんの頭を撫でてしまっていた。
「君達、ありがとう。娘は無事に帰ってきてくれた」
「いいですよ。それより、その子のこと」
「わかっている。これからは……」
「パパ!」
ヴィアと呼ばれた少女は、お父さんに威勢よく声を張った。
するとその目を見て、唖然とする。
「私、この目のこともう嫌いじゃないよ。だからね、私もっと上手く使えるようになって、きっと役に立つから!」
「ヴィア……」
蒼白な顔が血の色を取り戻す。
だけどそれはほんの一瞬のこと。でも、それは家族愛を見た。だからこそ、僕は歯痒い気持ちと言うのを、ガツンと味わった。
「家族ですね」
「そうだね。あんな風な生活ができてたら、今頃僕は……」
脳裏に焼き付いた記憶。
どんなにぬぐい払おうとしても、落とせやしない。劣悪な気分が、上々に湧き上がり、胸から喉へと、醜い酸が溢れ出る。
「うっ」
「天月君?」
リーファさんが心配していた。
でも僕はすぐにリセットして、あの忌々しい過去とおさらば。
いつもの平然とした雰囲気を取り持つと、スーツ姿の男の人は、僕達に礼をした。
「本当にこの度はありがとう。おかげで娘は助かった。これからは、娘のために全力を尽くすよ」
「そうですか。でも、頭は上げてください。頑張ってね、ヴィアちゃん」
「うん! 私いつか、お兄ちゃんの役に立てるようになりたい」
「あはは。それは面白いね」
僕は苦笑い。
でもあの目は、きっと役に立つ。そんな予感がした。
そんな中、スーツ姿の男の人は、後ろの冒険者の遺体を丁重に扱いながら、その瞳は僕たちを覗き込んだ。
そのうえで、こう言った。
「改めて名前を名乗らせてもらえるかな。私は、ヴィルティア。マルシアの町で商業をしている、ヴィルティア・レイダーだ」
「レイダー? レイダー商会ですか!」
「そうだとも。今後、何かしらの形で関わるかもしれないが、その時は君たちに真っ先に声をかけさせてもらうよ。今後とも、何卒」
そう言いつつ、ヴィルティアさんは馬車に乗り込んだ。
自分で御者をやるなんて、凄い。
だけど何よりは、
「レイダー商会って、この辺り一体では最大急の?」
「うん。商業商会だね」
僕はそう口にした。
まさかとは思うが、こんなところでこんな繋がりができるなんて、世界は狭いんだなと、感じるのは、僕だけだろうか?
そこには復旧した馬車と、冒険者の見るも無惨な姿。顔には白い布がかけられている。
それから腕に添え木と、包帯を巻いた男の人。隣には警備を務める、リーファさんの姿。
リーファさんは、僕の姿を一目散に確認すると、すぐさま口角を緩め、緊張を解きほぐす。
時を同じくして、スーツ姿の身なりのいい男の人も、僕が戻ってきたことに、安堵した様子だった。
「天月さん!」
「警備ご苦労様、リーファさん。こっちは無事に片付いたよ」
僕は少女を抱き抱えたままだった。
お姫様抱っこ、ってやつ。
安心しきっているのか、服の襟を離そうとしない。
でも、僕は少女をお父さんの元まで連れ帰ると、軽く揺すった。
「はい、起きて起きて」
「ううっ? あっ、パパ!」
すぐに視界が開け、そこにいたお父さんに抱きついた。
お父さんの方も、腕の痛みを隠しながら、少女に擦り寄る。
「ヴィア! よかった。無事だったのだな」
「うん。パパ、その腕は?」
「ちょっと怪我をしてしまったんだ。大丈夫、すぐに良くなるとも」
無理をしているのがわかる。
リーファさんが耳打ちしてくれた。
「あの怪我、骨まできていました。切断面が酷く、繋ぎ合わせましたけど、かなり痛いですよ」
「そっか。ご苦労様」
「いえ、これぐらい当然です」
リーファさんは謙遜していた。
しかし、それがどれだけ難しいことか、僕はよく知っている。
リュウラン師匠曰く、魔法の回復は至難の業。だけど回復は再生の基礎にあたるって。
つまり骨を接着剤みたいにくっつけるなんて、離れ業、普通に考えてするのは難しいだろう。
だからだろうか?
僕は失礼に、リーファさんの頭を撫でてしまっていた。
「君達、ありがとう。娘は無事に帰ってきてくれた」
「いいですよ。それより、その子のこと」
「わかっている。これからは……」
「パパ!」
ヴィアと呼ばれた少女は、お父さんに威勢よく声を張った。
するとその目を見て、唖然とする。
「私、この目のこともう嫌いじゃないよ。だからね、私もっと上手く使えるようになって、きっと役に立つから!」
「ヴィア……」
蒼白な顔が血の色を取り戻す。
だけどそれはほんの一瞬のこと。でも、それは家族愛を見た。だからこそ、僕は歯痒い気持ちと言うのを、ガツンと味わった。
「家族ですね」
「そうだね。あんな風な生活ができてたら、今頃僕は……」
脳裏に焼き付いた記憶。
どんなにぬぐい払おうとしても、落とせやしない。劣悪な気分が、上々に湧き上がり、胸から喉へと、醜い酸が溢れ出る。
「うっ」
「天月君?」
リーファさんが心配していた。
でも僕はすぐにリセットして、あの忌々しい過去とおさらば。
いつもの平然とした雰囲気を取り持つと、スーツ姿の男の人は、僕達に礼をした。
「本当にこの度はありがとう。おかげで娘は助かった。これからは、娘のために全力を尽くすよ」
「そうですか。でも、頭は上げてください。頑張ってね、ヴィアちゃん」
「うん! 私いつか、お兄ちゃんの役に立てるようになりたい」
「あはは。それは面白いね」
僕は苦笑い。
でもあの目は、きっと役に立つ。そんな予感がした。
そんな中、スーツ姿の男の人は、後ろの冒険者の遺体を丁重に扱いながら、その瞳は僕たちを覗き込んだ。
そのうえで、こう言った。
「改めて名前を名乗らせてもらえるかな。私は、ヴィルティア。マルシアの町で商業をしている、ヴィルティア・レイダーだ」
「レイダー? レイダー商会ですか!」
「そうだとも。今後、何かしらの形で関わるかもしれないが、その時は君たちに真っ先に声をかけさせてもらうよ。今後とも、何卒」
そう言いつつ、ヴィルティアさんは馬車に乗り込んだ。
自分で御者をやるなんて、凄い。
だけど何よりは、
「レイダー商会って、この辺り一体では最大急の?」
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