生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう

文字の大きさ
54 / 86

50話 ヴェルティア・レイダーの依頼

しおりを挟む
 社長室に入ると、そこにいたのは作業に没頭する男の人の姿。
 その人こそ、レイダー商会の代表であり、僕たちを指名してくれた人だった。

「おや、よく来てくれたね、天月君、リーファ君」
「お久しぶりですヴェルティアさん。怪我方はもう大丈夫ですか?」
「うん、何ともないよ。この通り、快調だとも」

 ヴェルティアさんは、右腕を肩から回してみせた。
 如何やら包帯も無事に取れたみたいで安心した。リーファさんの治療は、完璧だったらしい。

「リーファ君、治療の程感謝するよ。おかげで後遺症も残らなかった」
「いえ、私は当然のことをしたまでです。ですが、あのときの冒険者さんまでは……」
「うん。私も心を痛めているんだ。そうは見えないだろうがね」

 ヴェルティアさんは、顔面蒼白だった。
 これは家庭環境によるものらしいが、その実態までは知らない。

 しかしそのせいで、表情を表に出せないのさ、きっと辛いことのはずだ。
 僕だって、師匠たちに出会っていなければ、今頃は……考えただけでも、心が痛い。

「まあ、腰をかけるといいよ。ここに来たということは、依頼書を見てくれたということだからね」
「それはいいんですけど、何を討伐するかまではまだ」
「ん? 如何やらこちらの不備のようだね。私が依頼したのは、確かに討伐依頼も含まれるが、主に護衛の依頼だよ」
「「護衛ですか!?」」

 僕たちは驚いた。
 そんな話聞いていないし、文面にもなかった。

 それに護衛なんて、僕たちに務まるのかどうかも、わからない。
 しかしヴェルティアさんの表情は、満足げだった。

「私は君たち二人の腕を見込んで頼んだんだ。だから間違いはないよ」
「そ、そんな過信されても」
「これは家臣じゃない。確信だよ。それに、君たちにしか任せられない相手なのは変わらないんだ。どうか、頼めないか」

 ヴェルティアさんは、頭を下げた。
 深く深くだった。ここまで頭を下げられて、断るわけにはいかないし、それに信頼を断ち切りたくなかった。

 そんな願望が心の奥底から湧き立って、僕の心を震え起こす。
 それが確信に変わったのは、内側から出る物凄い熱量。

 ただ熱いのではない。
 高鳴る鼓動を胸にして、

「天月さん」
「そうだねリーファさん。ヴェルティアさん、その依頼お引き受けします」
「ありがとう、二人とも。これで安心したよ」

 ヴェルティアさんは胸を撫で下ろす。
 すると僕たちに依頼の内容を伝えてくれた。
 その内容はあまりにシンプルで、

「私が二人に依頼するのは、あくまで護衛依頼だ。討伐依頼は、別途でいい」
「その護衛依頼って?」
「私の商会の一人で、チェリム君の馬車を護衛してほしいんだ。馬車は、ここから七十キロ近く先の村、ソトオニ村。そこに、リュウガの卵を届けてほしいんだよ」
「リュウガの?」
「卵?」

 僕とリーファさんは揃って顔を見合わせた。
 そんな名前、聞いたことがない。だからこそ、顔を不思議そうになるのも間違いではないが、僕の知識はこう見えて振り切っているので、知っていた。その希少性の、有無すらね。

 そう、このリュウガの卵は特殊な竜の卵。
 高温に晒されるのではなく、それこそ特殊な条件で反応する、孵化しないのが特徴な珍しい卵なんだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】

のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。 そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。 幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、 “とっておき”のチートで人生を再起動。 剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。 そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。 これは、理想を形にするために動き出した少年の、 少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。 【なろう掲載】

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

【薬師向けスキルで世界最強!】追放された闘神の息子は、戦闘能力マイナスのゴミスキル《植物王》を究極進化させて史上最強の英雄に成り上がる!

こはるんるん
ファンタジー
「アッシュ、お前には完全に失望した。もう俺の跡目を継ぐ資格は無い。追放だ!」  主人公アッシュは、世界最強の冒険者ギルド【神喰らう蛇】のギルドマスターの息子として活躍していた。しかし、筋力のステータスが80%も低下する外れスキル【植物王(ドルイドキング)】に覚醒したことから、理不尽にも父親から追放を宣言される。  しかし、アッシュは襲われていたエルフの王女を助けたことから、史上最強の武器【世界樹の剣】を手に入れる。この剣は天界にある世界樹から作られた武器であり、『植物を支配する神スキル』【植物王】を持つアッシュにしか使いこなすことができなかった。 「エルフの王女コレットは、掟により、こ、これよりアッシュ様のつ、つつつ、妻として、お仕えさせていただきます。どうかエルフ王となり、王家にアッシュ様の血を取り入れる栄誉をお与えください!」  さらにエルフの王女から結婚して欲しい、エルフ王になって欲しいと追いかけまわされ、エルフ王国の内乱を治めることになる。さらには神獣フェンリルから忠誠を誓われる。  そんな彼の前には、父親やかつての仲間が敵として立ちはだかる。(だが【神喰らう蛇】はやがてアッシュに敗れて、あえなく没落する)  かくして、後に闘神と呼ばれることになる少年の戦いが幕を開けた……!

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...