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62話 影を失い、少女は想う②
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少女が語り出したのは、少し前の話。
それは、少女が影に目覚めた話だった。
「お父さん、また町に行くの?」
「そうだぞ、クロッサ。今日はな、少し遠くの町まで買い出しだ。次に村に戻るのは、一ヶ月後になるかもしれんな」
「そんなにー?」
「そんなにだ。まあ気楽に行こうや」
私のお父さんは、楽観的な人だった。
ソトオニ村とウチオニ村を行き交い、商品を売り買いする商人。時々、遠くの町まで行って、買い出しをするけれど、最近はこっちの方がめっぽう多い。
「それよりクロッサ。最近はお父さんとばかり一緒にいるが、村の友達はいいのか?」
「うん。だって、お父さん一回帰ったら次いつ帰ってくるからわからないんだもん」
「そうかー。すまんな、クロッサ」
私のお父さんは心配性な人でもありました。
小さい頃にお母さんを病気で無くしてしまい、それからは私は村にいる間が寂しくて仕方がなかった。
だから、私はお父さんっ子。
一緒に行動しているお父さんの仕事仲間の人とも仲良しになった。
村では友達が多いけど、やっぱりこの時間が一番好き。
私もいつかは、村を出て外の世界で皆んなの役に立つんだ。そう誓っていました。でも、現実は苦く押し寄せてしまった。
「ん? タイショー、なんか見えますぜ?」
「どうした。何が見える」
「わかりません。って、うわぁ!?」
一緒に行動していた五台の馬車のうち、一台がぴたりと動きを止めた。
一番先を行く、馬車だったが、急に動かなくなると、赤いものが窓から見えました。私は不思議に思って、キョロキョロします。
「お父さん、あれ何?」
「見るな、クロッサ!」
「はうっ!」
こんなお父さん、見たことがなかった。
私は顔を背けてしまい、お父さんは私の頭を撫でながら、「ここにいるんだよ」と言い残しました。
それから馬車を降りる前、私に言いました。
「ちょっと見てくるから、待ってておくれ」
「う、うん」
「タイショー」
「どうした、何があったんだ」
「わかりません。とりあえず行ってみましょう」
そう言って、他の馬車に乗っていた男の人たちが、倒れた馬車の元にまで歩いて行きました。
手には武器を持っています。
きっと大丈夫。なんでもないんだと思い、待っていると、突然発狂が上がりました。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!ーー」
「た、助けてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!ーー」
聞いたこともない叫び声に、私は耳を塞ぎました。
それから、窓の外を覗き込めば、そこには赤い液体が地面に汚していました。それと同時に、男の人の体が見えます。動いていません。
「ど、どうしたのかな?」
きっと大丈夫。
私はそう信じました。頭が回らなくなって、おかしくなりそうでした。
何も見えない。何も聞こえない。そんな時、聞こえてきたのはお父さんの声でした。
「クロッサ!」
「お、お父さん!」
私は窓の外を見ました。すると、お父さんの姿があります。だけど様子がおかしい。
私が見たのは、お父さんが四本脚の犬に、噛み付かれて服が真っ赤になっている姿。
茶色い革製のベストが、色褪せて真っ赤になっています。
私は、絶句しました。それから言葉も出ずに、座り込んでしまいました。
ペタンと、体が震えて止まりません。
そんな時、お父さんが言ったのは、これまでにない真剣な声で、最後の一言を述べました。
「クロッサ、早くここから逃げろ! そして、必ず自分の夢を見つけて向き合え!」
「お父、さん?」
「早く。ここはお父さんが止めておくから。早く行くんだ!」
「お父さん……お父さん……」
「早く行け!」
私の体が何かに押し出されました。
それから一生懸命、ひたすらに走っていました。どこに行くにもわからず、前だけ向いて、後ろは振り向かなかった。
心は次第に廃れて、壊れて、何も感じなくなって。
目の前の景色が色を失って、真っ暗になって、それからそれから、心は。
心は闇に、影に救われ囚われていました。
その先は何もない。
その先は何も見えない。それが、私の最後の景色。お父さんの声が、耳につんざき離れずに、私は心を失っていた。
それは、少女が影に目覚めた話だった。
「お父さん、また町に行くの?」
「そうだぞ、クロッサ。今日はな、少し遠くの町まで買い出しだ。次に村に戻るのは、一ヶ月後になるかもしれんな」
「そんなにー?」
「そんなにだ。まあ気楽に行こうや」
私のお父さんは、楽観的な人だった。
ソトオニ村とウチオニ村を行き交い、商品を売り買いする商人。時々、遠くの町まで行って、買い出しをするけれど、最近はこっちの方がめっぽう多い。
「それよりクロッサ。最近はお父さんとばかり一緒にいるが、村の友達はいいのか?」
「うん。だって、お父さん一回帰ったら次いつ帰ってくるからわからないんだもん」
「そうかー。すまんな、クロッサ」
私のお父さんは心配性な人でもありました。
小さい頃にお母さんを病気で無くしてしまい、それからは私は村にいる間が寂しくて仕方がなかった。
だから、私はお父さんっ子。
一緒に行動しているお父さんの仕事仲間の人とも仲良しになった。
村では友達が多いけど、やっぱりこの時間が一番好き。
私もいつかは、村を出て外の世界で皆んなの役に立つんだ。そう誓っていました。でも、現実は苦く押し寄せてしまった。
「ん? タイショー、なんか見えますぜ?」
「どうした。何が見える」
「わかりません。って、うわぁ!?」
一緒に行動していた五台の馬車のうち、一台がぴたりと動きを止めた。
一番先を行く、馬車だったが、急に動かなくなると、赤いものが窓から見えました。私は不思議に思って、キョロキョロします。
「お父さん、あれ何?」
「見るな、クロッサ!」
「はうっ!」
こんなお父さん、見たことがなかった。
私は顔を背けてしまい、お父さんは私の頭を撫でながら、「ここにいるんだよ」と言い残しました。
それから馬車を降りる前、私に言いました。
「ちょっと見てくるから、待ってておくれ」
「う、うん」
「タイショー」
「どうした、何があったんだ」
「わかりません。とりあえず行ってみましょう」
そう言って、他の馬車に乗っていた男の人たちが、倒れた馬車の元にまで歩いて行きました。
手には武器を持っています。
きっと大丈夫。なんでもないんだと思い、待っていると、突然発狂が上がりました。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!ーー」
「た、助けてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!ーー」
聞いたこともない叫び声に、私は耳を塞ぎました。
それから、窓の外を覗き込めば、そこには赤い液体が地面に汚していました。それと同時に、男の人の体が見えます。動いていません。
「ど、どうしたのかな?」
きっと大丈夫。
私はそう信じました。頭が回らなくなって、おかしくなりそうでした。
何も見えない。何も聞こえない。そんな時、聞こえてきたのはお父さんの声でした。
「クロッサ!」
「お、お父さん!」
私は窓の外を見ました。すると、お父さんの姿があります。だけど様子がおかしい。
私が見たのは、お父さんが四本脚の犬に、噛み付かれて服が真っ赤になっている姿。
茶色い革製のベストが、色褪せて真っ赤になっています。
私は、絶句しました。それから言葉も出ずに、座り込んでしまいました。
ペタンと、体が震えて止まりません。
そんな時、お父さんが言ったのは、これまでにない真剣な声で、最後の一言を述べました。
「クロッサ、早くここから逃げろ! そして、必ず自分の夢を見つけて向き合え!」
「お父、さん?」
「早く。ここはお父さんが止めておくから。早く行くんだ!」
「お父さん……お父さん……」
「早く行け!」
私の体が何かに押し出されました。
それから一生懸命、ひたすらに走っていました。どこに行くにもわからず、前だけ向いて、後ろは振り向かなかった。
心は次第に廃れて、壊れて、何も感じなくなって。
目の前の景色が色を失って、真っ暗になって、それからそれから、心は。
心は闇に、影に救われ囚われていました。
その先は何もない。
その先は何も見えない。それが、私の最後の景色。お父さんの声が、耳につんざき離れずに、私は心を失っていた。
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