生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう

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61話 影を失い、少女は想う①

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 僕の魔法の話は、ひとまず置いておく。
 そこで話の本題は、倒れた少女に向き合うことにした。

 そこにいるのは女の子。
 だけど、草原の上に横になり、寝息を立てている。気持ちよさそう。

 さっきまで、あんなに交戦的だったのが、嘘のように大人しくなる。
 僕は朗らかな笑みを浮かべて、少女の頭を撫でた。

「よく眠っていますね」
「全身から憑き物が取れたからじゃないかな?」
「そうですね。安心した顔です」

 優しく少女の髪を撫で回した。
 僕はさっきまでの本気の殺し合いから、解放され、ようやく気持ちが安定した。

「ふぅ。やっと、肩の力が抜けれる」
「お疲れ様です」

 リーファさんが僕に笑顔をくれた。
 それから少女を、馬車まで運ぶと、横にする。すると、

「ううっ」
「あれ、気がついた?」

 僕は少女を背負い、馬車まで運んだ。
 その直後、少女は目が覚める。薄らと瞳を見せ、馬車の補強された天井を見る。

「ここは? どこ?」
「ここは馬車の中だよ」
「誰?」

 少女は僕の顔を見た。
 ゆっくりと首を動かして、僕の表情を見ると、何かを悟ったのか、寝ぼけ眼がカッと開く。

「あ、ああ。さ、さっきの!」
「そう、さっきのだよ。どう、気がついたかな?」

 僕がさっき見せた表情。
 それはきっと睨んだ瞳。真っ赤に咲いた花のようで、少女を上から目線で睨んでいた。

「あ、ああ。こ、殺さないで」
「殺さない殺さない。さっきのは、僕も本気になっちゃってただけだから、ごめんね」

 僕は丁寧に謝った。
 すると少女は、何かを思い出したのか、僕の顔をじっと見ながら、自分の記憶を呼び起こす。すると、

「あ、あああ……あああ。わ、私! 私、私は!」
「大丈夫だから。言ったでしょ? 怖いのは僕だけでいいからって」

 僕は少女の頭に手を優しく乗せた。
 あまり大きくない手だ。
 ちゃんと撫でてあげられないのが、残念で、僕はだからこそゆっくりと丁寧に宥めるように撫でた。

「どうかな? 僕のこと、嫌いになっちゃった?」
「は、はい。で、でもそれは自分を偽るための嘘です。だから本当は……」

 少女はギュッと手を握った。
 僕は、少女が自分の口で話し出すのをじっと待つ。それは長いようで、短い。たった数秒の間だった。

「私は、自分が嫌いです。でも、私は……」
「嫌いになれないんでしょ? 僕のことも嫌いになれない。だから、何を恨んだらいいかわからない。血で血を恨むのは、やめた方がいいよ。それだけは確かだからね」

 僕は少女の頭を撫で回した。
 ちょっとだけ、柔らかい表情を浮かべ直す。もしかしたら、少し心が解けたのかもしれない。それだったら、嬉しいな。

「聞かせてよ、何があったのか。僕はちゃんと聞いてあげるよ」
「本当に?」
「うん。なんだったら、僕だけじゃなくて僕の友達もね。暴走しても、ちゃんと止めてあげるから、安心して話してよ」

 僕は少女に自由を与える。
 元から自由だ。だからこそ、僕の言っていることは間違いかもしれないけど、少女はその言葉に救われたみたいに、にっこり笑顔になっていたよ。
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