生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう

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60話 心配の顔色

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 僕は夢を見ていた。
 懐かしい夢だった、これを夢と認識できるなんて、僕は明晰夢めいせきむっていうのを見ているらしい。いい夢だ。

「起きてください……起きて、ください! ……」

 しかし夢が遠のいていく。
 誰かが僕を目覚めさせようとしているらしいが、一体誰だろうか。

 まだ眠っていたいな。
 僕はまだ疲れが取れていないんだ。体は治っていても、心が壊れかけている。そんな気でいっぱいだ。

「だから聞こえてるよ。わかったから……」
「起きて、起きて天月さん! 起きてください。起きてください、よ……」

 遠くの方から、僕の名前を呼んでいる。僕を呼ぶのは一人しかいない。僕の友達。大切な、仲間だ。

「どうして、手を掴んでるの?」
「天月さん!」

 近い。リーファさんの手が近い。
 僕はあまりの顔の近さに驚くとともに、何故か手を握られていたのが、不思議だった。

「どうして手を握ってるの? それに、顔が近いしちょっと赤い?」
「あっ!? あ、っふぁっ、あっあああ。ご、ごごごごめんなさい。じゃなくて、すみません。こうした方が、いいと思いまして」
「う、うん。それは別にいいんだけど」

 如何して顔が赤いのかな?
 僕はそこに目が奪われてしまった。

「ふぅーはぁーふぅーはぁー」
「だ、大丈夫?」
「大丈夫です!」

 対してリーファさんは顔を真っ赤にして、頭から湯気を出していた。
 そう見えるのは、もしかして魔力の影響かな? ここまで、魔力が昂っているのを見ると、よっぽどのことがあったんだろうね。

「それより、本当に平気なんですか?」
「うん。この通りね」
「ですが先ほどは、首を影に噛まれていたような気がするしたのですけど」

 リーファさんはちゃんと見てくれていたらしい。
 凄いな。僕は感心した。

「そうだよ。でも大丈夫、痛かったのはほんの一瞬ですぐに治ったから」
「治った? えっ、それはどういう……」
「そのままの意味で受け取ってくれていいよ。でも、まだ秘密かな」

 僕はリーファさんには秘密にした。
 だってこれ、僕の魔法じゃなくて、リュラン師匠が施してくれた、魔法なんだ。

 僕には魔法は使えない。正確には、僕には魔法を上手く使えない。その技量がない。
 その原因は、あの日僕が死にかけた時。
 あの日の経験が今僕の中に、凄く根付いているけれど、対価として僕は魔法が擦り切れそうになった。

 それを精神で繋ぎ止め、なんとか再構築した直したが、僕には他の魔法がまともに使えない。
 だからこそ、僕はリュウラン師匠から、保護者みたいに便利で強力な魔法を刻み込んでくれたんだ。

 この魔法は、その一つで《自己修復》。
 正式には、禁忌的最上級魔法ー《自己反転完全修復フル・オートリペア》だった。

 この魔法はとっても強力。
 一言で言おう、チート魔法だ。
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